トピナ錠(トピラマート)の効果と特徴
トピナ錠(トピラマート)は、2007年に発売された抗てんかん薬です。世界的にも新しい薬で、1995年にイギリスで承認されたのが始まりです。
日本での適応は、「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない部分発作の併用療法」のみとなっています。海外では片頭痛の予防薬としても適応が認められています。また、体重減少の副作用をうまく利用したり、衝動性のコントロールに使われたりしています。
厳密には気分安定薬に分類はされていませんが、気分安定作用をみとめることがあります。衝動性をコントロールする効果が強いので、抗躁効果が期待できることがあります。反対にうつ状態に転じてしまうこともあり、使いこなすのが難しい薬です。
ここでは、トピナ錠の効果と特徴について詳しくお伝えしていきます。
1.トピナの効果と特徴
気分安定薬には、3つの効果が期待されています。トピナでの3つの効果の強さは以下のようになります。
- 抗躁効果(弱い)
- 抗うつ効果(わずか)
- 再発予防効果(弱い)
これを踏まえて、まずはトピナの特徴をメリットとデメリットに分けてまとめたいと思います。専門用語も出てきますが、後ほど詳しく説明していますので、わからないところは読み飛ばしてください。
1-1.トピナのメリット
- 衝動性を抑える効果が期待できる
- 体重減少に働く
- 相互作用が少ない
トピナは、衝動性に効果が期待できます。過食や自傷行為、薬物依存などといった、抑えが効かなくなってしまって何かを欲してしまうような状態を和らげてくれます。このような症状を認める方には効果が期待できます。
また、トピナには体重減少の副作用があります。これを逆手にとって、過食や体重増加の治療に使うことがあります。衝動性を抑える効果と合わせると、過食の方にはひとつの有効な選択肢となります。
トピナは相互作用が少ないお薬です。他の薬に追加する薬としては、影響が少ないです。
1-2.トピナのデメリット
- 副作用が全体的に多い
- うつ状態を引き起こすことがある
- 単剤で使えない
- 薬価が高い
トピナは副作用が全体的に多いお薬です。眠気やめまい、しびれや体重減少などが認められます。飲み始めに認められることが多く、副作用がつらくて中止せざるをえないことも多いです。
また、トピナではうつ症状が副作用として認められることがあります。高用量からはじめたり、増量のペースが早いとうつ症状が起こりやすいので、少しずつ量を増やしていく必要があります。
トピナは、併用療法のみで保険適応が通っています。このため、トピナ単剤で処方することができません。何らかの抗てんかん薬との併用が必要で、私は相互作用が少ないデパケンと併用することが多いです。
トピナは新しい薬なので、薬価も高いです。ジェネリックが発売されるのもしばらく先になります。
トピナの副作用について詳しく知りたい方は、
トピナの副作用(対策と比較)
をお読みください。
2.トピナの作用の仕組み(作用機序)
トピナがどうして効果があるのか、はっきりと分かっていません。GABAの働きを強める作用、神経細胞膜を安定させる作用、グルタミン酸受容体を抑制する作用が関係していると考えられています。
双極性障害は躁うつ病とも呼ばれ、気分の浮き沈みを繰り返す病気です。何らかの脳の機能的な異常があると考えられていますが、どうしてこのような異常が引き起こされるのかは定かではありません。
トピナは厳密には気分安定薬には分類されません。副作用で脱落してしまう患者さんも多く、うまく統計がとれないのです。しかしながら実際に使ってみると、気分安定化作用を持ち合わせているお薬です。
気分安定薬としては3つの作用が期待されますが、私の印象で強さを表すと以下のようになります。
- 気分を鎮める抗躁効果(弱い)
- 気分を持ち上げる抗うつ効果(わずか)
- 気分の波を少なくする再発予防効果(弱い)
トピナがどうしてこのような効果があるのかは、現在でも正確にわかっていません。いくつか推測されている作用機序があるのでご紹介していきます。
現在考えられているトピナの主な作用は3つになります。
- GABAの働きを強める
- グルタミン酸受容体を抑制する
- 神経細胞膜を安定させる
「GABAって聞いたことある」という方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があ ります。
トピナは、このGABAの働きを強める作用があります。同時に、グルタミン酸という興奮性の神経伝達物質の働きをブロックします。このため、抑制性のGABAを増やして興奮性のグルタミン酸を減らすのです。
また、トピナには神経細胞の膜を安定させる作用もあります。これはナトリウムとカルシウムという2つのイオンが関係しています。通常の神経細胞は、内側がマイナスで外側がプラスの電位差があります。ナトリウムやカルシウムはプラスイオンですから、これらのイオンが細胞内に入ってくると神経細胞が興奮(脱分極)します。
トピナは、これらのナトリウムやカルシウムのイオンチャネルという通り道をブロックします。これによってプラスイオンが細胞内に入れなくなり、細胞が興奮しにくくなります。このため、神経細胞膜を安定させる作用があるのです。
3.トピナ錠の効果時間・血中濃度と使い方
トピナ錠は最高血中濃度到達時間が1~4時間、半減期が20~30時間の気分安定薬です。200~400mgから開始して、定期的に血中濃度を測りながら有効血中濃度まで使っていきます。
トピナ錠を服用すると、1~4時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、20~30時間ほどで血中濃度が半分になります。
この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。
トピナ錠は作用時間は長いため、1日1回でも効果は持続します。しかしながら副作用を緩和するため、1日2回に分けて服用することが一般的です。毎日服用していると、およそ6~7日で血中濃度が安定します。このため、少なくとも1週間は様子をみながら効果をみていきます。
トピナの開始用量は50~100mgとなることが多いです。慎重にいくならば、25mgから使っていった方がよいです。
添付文章では、維持量は200~400mgとされています。トピナは少量で効果がある方もいれば、ある程度使わないと効果が認められない方もいます。最大量は600mgまで使うことができます。
4.トピナの適応疾患とは?
<適応>
- 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作に対する併用療法
<適応外>
- 衝動性が強い場合
- 過食
- 片頭痛
- PTSD
- アルコール依存症
トピナは、添付文章では、てんかんの併用療法のみしかありません。何らかの抗てんかん薬で治療していても効果が不十分な場合に使われます。難治性部分てんかんに対する併用療法としては、最も効果があるとする報告もあります。
トピナの適応だけをみると、かなり用途が限定されてしまいます。実際には適応外という形で、様々な病気に使われています。
トピナには、衝動性をコントロールする効果が期待できます。このため、過食や自傷行為、薬物依存などといった、抑えが効かなくなってしまって何かを欲してしまうような状態を和らげてくれます。このような衝動性は発達障害の患者さんに多く、効果が期待できます。
また、体重減少の副作用を逆手にとって、過食や体重増加に対して使われます。海外ではかなり販売されている薬ですが、多分にこの使われ方によるところが大きいと思います。
アメリカでは片頭痛の予防薬として適応が通っています。日本では抗てんかん薬のデパケンが適応になっているので、デパケンでも効果が十分でない時に追加するのも方法です。
PTSDの外傷記憶にも効果があると考えられています。ぐっとこみあげてくるフラッシュバック(再体験症状)を抑えてくれる働きがあります。
アルコール依存症でも効果が確認されています。飲酒量や飲酒頻度の減少が報告されていて、節酒効果が期待できます。節酒薬としてレグテクトが発売されていますが、グルタミン酸抑制作用がある点で共通しています。
5.トピナが向いている人とは?
- 衝動性が強い方
- 体重減少を期待する方
トピナの特徴は、「衝動性を抑える効果が期待できる薬」であることです。
病気にかかわらず、何かを欲してしまって抑えが効かなくなるような衝動性を抑えることができます。具体的には過食、自傷、ギャンブル、飲酒、過食といった行動を和らげてくれます。このような行動が認められる方には、トピナを追加してみてもよいでしょう。
また、トピナで特徴的なのは体重減少の副作用です。精神科の薬は太りやすいものばかりなので、体重減少に働く薬は数少ないです。とくに過食発作が認められる方には、トピナがうまくいくことがあります。
まとめ
トピナは、「衝動性を抑える効果が期待できる薬」です。
- 抗躁効果(弱い)
- 抗うつ効果(わずか)
- 再発予防効果(弱い)
トピナのメリットとしては、
- 衝動性を抑える効果が期待できる
- 体重減少に働く
- 相互作用が少ない
トピナのデメリットとしては、
- 副作用が全体的に多い
- うつ状態を引き起こすことがある
- 単剤で使えない
- 薬価が高い
トピナが向いている方は、
- 衝動性が強い方
- 体重減少を期待する方
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