ニューレプチル錠(プロペリシアジン)の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ニューレプチルは、1964年に発売された第一世代の抗精神病薬(定型抗精神病薬)です。
ニューレプチルは古いお薬になりますが、鎮静作用が強く、攻撃性の強い方に今でも使われることがあります。統合失調症だけでなく、認知症やせん妄などでも使われることがありました。
新しい第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)が発売されると、処方される機会はどんどんと減ってしまっています。
ここでは、ニューレプチルの効果と特徴を詳しくお伝えしていきたいと思います。他の抗精神病薬とも比較しながら、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。
1.ニューレプチルの効果と特徴
まずは、ニューレプチルの作用の特徴をまとめたいと思います。専門用語も出てきますが、後ほど詳しく説明していますので、わからないところは読み飛ばしてください。
ニューレプチルの陽性症状や陰性症状に関係する効果は、ドパミンD2遮断作用とセロトニン2A遮断作用によるものです。
- ドパミンD2受容体遮断作用(強力):⊕陽性症状改善 ⊖錐体外路症状・高プロラクチン血症
- セロトニン2A受容体遮断作用(強い):⊕陰性症状の改善・錐体外路症状の改善・睡眠が深くなる
ニューレプチルでは、「D2遮断作用>セロトニン2A遮断作用」となっています。
ニューレプチルは、その他の受容体にも作用します。悪い方に作用すると、副作用となります。
- セロトニン2C受容体遮断作用(?):体重増加
- α1受容体遮断作用(強い):ふらつき・立ちくらみ・射精障害
- ヒスタミン1受容体遮断作用(?):体重増加・眠気
- ムスカリン受容体遮断作用(?):口渇・便秘・排尿困難
ニューレプチルの作用に関して調べてみたのですが、各受容体に対する強さの情報が一部しか得られませんでした。?となっていますが、どの作用もある程度認められると思います。
これらをふまえて、ニューレプチルの特徴をメリットとデメリットに分けて整理してみましょう。
1-1.ニューレプチルのメリット
- 鎮静作用が強い
- 錐体外路症状や高プロラクチン血症が、比較的少ない
ニューレプチルは、ドパミン遮断作用だけでなく、ノルアドレナリン遮断作用が強いお薬です。このため、攻撃性や衝動性を和らげる作用が強いお薬です。その他の受容体の作用とあわせて、鎮静作用が強いお薬として使われます。
ニューレプチルは、定型抗精神病薬の中ではドパミン遮断による副作用が少ないです。錐体外路症状(ソワソワ・筋肉のこわばり・ふるえ)や高プロラクチン血症(乳汁分泌・生理不順・性欲低下・性機能障害)は比較的少ないです。
1-2.ニューレプチルのデメリット
- 抗幻覚・妄想作用が強くない
- 副作用(眠気・体重増加・便秘など)が全体的に多い
- 抗α1作用による副作用(ふらつき・起立性低血圧・性機能障害)が多い
- 重篤な副作用のリスクがある
統合失調症の治療では、ドパミンをしっかりとブロックする必要があります。ニューレプチルではいろいろな受容体に作用するので、幻覚や妄想を改善できる量まで使うと副作用が強くなってしまいます。このため、ニューレプチルでは抗幻覚・妄想作用が強くありません。
ニューレプチルはいろいろな受容体に作用するため、副作用が全体的に多いです。眠気やふらつき、体重増加、便秘といった副作用が多く認められます。
その中でも特に、抗α1作用による副作用が目立ちます。抗α1作用は血管の調節に関係しているので、めまいや立ちくらみ(起立性低血圧)、射精障害などが多いです。
さらに、第二世代抗精神病薬に比べると、重篤な副作用が起こるリスクが高いです。もっとも注意しなければいけない副作用は、悪性症候群です。発熱や自律神経症状とともに、筋肉が固まったり、話づらくなるといった神経症状が認められます。死に至ることもあるので、注意が必要です。
その他にも、危険な不整脈が起こりやすいです。ニューレプチルの量が多くなってくると、心電図に異常が認められやすいです。時に心室性の不整脈がつながることがあり、死に至る可能性もあります。また、長くニューレプチルを使っていると、遅発性ジスキネジアという不随意運動(勝手に身体の一部が動いてしまうこと)が起こりやすくなってしまいます。
2.ニューレプチルの作用時間と使い方
ニューレプチルは最高血中濃度到達時間が3~4時間、半減期は12時間の定型抗精神病薬です。統合失調症では15~30mgから使われることが多く、最大量は60mgとなっています。
ニューレプチルを服用すると、3~4時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、12時間ほどで血中濃度が半分になります。
この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。
このようなお薬なので、1日効果を持続させるためには1日2回以上服用する必要があります。統合失調症で使う時は、2~3回に分けて使っていきます。15~30mgから開始していくことが多いです。添付文章では、統合失調症では10~60mgとなっています。実際にはもう少し量を使うこともあります。
ニューレプチルは、5mg・10mg・25mgの錠剤、10%細粒、1%液剤が発売されています。
3.ニューレプチルとその他の抗精神病薬の比較
ニューレプチルは、いろいろな受容体に作用するお薬です。抗ドパミン、抗セロトニン、抗α1作用は強いですが、それ以外の作用はそこまで強くありません。
まずは第二世代の非定型抗精神病薬から処方されることが一般的になっています。陰性症状への効果も期待できますし、何よりも副作用が軽減されていて患者さんへの負担が少ないからです。非定型抗精神病薬には、大きく3つのタイプが発売されています。それぞれの特徴をざっくりとお伝えしたいと思います。
- SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬):ドパミンとセロトニン遮断作用が中心
商品名:リスパダール・インヴェガ・ロナセン・ルーラン
特徴:⊕幻覚や妄想などの陽性症状に効果的 ⊖錐体外路症状や高プロラクチン血症が多め - MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬):いろいろな受容体に適度に作用
商品名:ジプレキサ・セロクエル・シクレスト
特徴:⊕鎮静作用や催眠作用が強い ⊖太りやすい・眠気が強い・糖尿病に使えない - DSS(ドパミン受容体部分作動薬):ドパミンの分泌量を調整
商品名:エビリファイ
特徴:⊕副作用が全体的に少ない ⊖アカシジア(ソワソワ)が多い・鎮静作用が弱い
非定型抗精神病薬がしっかりと効いてくれればよいのですが、効果が不十分となってしまうこともあります。急性期の激しい症状を抑えるためには、定型抗精神病薬の方が効果が優れています。また、代謝への影響は定型抗精神病薬の方が少ないです。
定型抗精神病薬は、セレネースの系統とコントミンの系統の2つに分けることができます。
- セレネース系(ブチロフェロン系):ドパミン遮断作用が強い
特徴⊕幻覚や妄想などの陽性症状に効果的 ⊖錐体外路症状や高プロラクチン血症が多い - コントミン系(フェノチアジン系):いろいろな受容体に全体的に作用する
特徴⊕気持ちを落ち着ける鎮静作用が強い ⊖幻覚や妄想などの陽性症状には効果が乏しい
ニューレプチルは、コントミンと同じ系統に分類されます。このため、コントミンほどではありませんが、いろいろな受容体に作用します。ですから軽減されているとはいえ、副作用が比較的多いです。とくに抗α1作用が強いので、ふらつきや起立性低血圧などに注意が必要です。
4.ニューレプチルの副作用とは?
- 第二世代抗精神病薬と比べると、副作用が多い
- 副作用が全体的に多い(眠気・ふらつき・体重増加・便秘)
- 特に抗α1作用による副作用が目立つ
- ドパミン不足による副作用は少ない
- まれに重篤な副作用がある
ニューレプチルは、第一世代の抗精神病薬(定型抗精神病薬)に分類されます。第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)と比較すると、副作用は全体的に多いです。
第二世代では、ドパミン遮断作用による副作用が大きく軽減されています。具体的にいうと、
- 錐体外路症状(ソワソワやふるえなど)
- 高プロラクチン血症(生理不順・性機能低下など)
といった症状です。
また、第一世代では、重篤であったり難治な副作用が起こるリスクは高くなります。
- 悪性症候群(高熱から死に至ることもある)
- 危険な不整脈(心室細動・心室頻拍)
- 麻痺性イレウス(腸が動かなくなってつまってしまう)
- 遅発性ジスキネジア(身体の一部が勝手に動いてしまう)
このような副作用が起こるリスクが高いと言われているので、注意が必要です。
それでは、新しい薬がすべて良いのかというと、そんなことはありません。
第一世代の定型抗精神病薬は、第二世代の非定型抗精神病薬よりも代謝への悪影響がありません。この違いはよくわかっていませんが、非定型抗精神病薬には体重増加や糖尿病、脂質異常症などがよく認められます。このため、定期的に採血をして確認していかなければいけません。
ニューレプチルは、いろいろな受容体に作用するお薬です。このため、第一世代の中でも副作用が全体的に多いお薬です。眠気やふらつき、体重増加や便秘といった副作用が目立ちます。ニューレプチルでは抗α1作用が強いので、ふらつきや起立性低血圧には特に気をつける必要があります。その一方で、ドパミン不足による副作用は少ないです。このため、錐体外路症状や高プロラクチン血症はそこまで多くはありません。
5.ニューレプチルの適応疾患とは?
<適応>
- 統合失調症
<適応外>
- せん妄
- 認知症の周辺症状
まずは、正式に添付文章に「適応」となっている病気についてみていきましょう。
ニューレプチルは、攻撃性や衝動性が強い時に使われることがあります。ドパミンとノルアドレナリンをしっかりと抑えるので、鎮静作用が強いためです。現在では非定型抗精神病薬がたくさん発売されたので、処方される機会はかなり減りました。
適応外としては、せん妄や認知症の周辺症状に使われることがあります。
せん妄とは、認知症に限らずにおこる急激に認められる意識障害です。急にぼけてしまって、今どこで何をしているのかがわからなくなってしまいます。このため周りの言葉も入らなくなってしまい、興奮したり暴力的になってしまうこともあります。
認知症の周辺症状として、暴言や暴力がみられることがあります。矛先は介護の方に向けられることが多く、高齢者とは思えない力でケガをしてしまうこともあ ります。声出しが止まらず、周りの方に迷惑してしまうこともあれば、突然思い立ったかのように歩き回って徘徊してしまうこともあります。
このような症状を緩和させる効果が期待できます。
6.ニューレプチルが向いている人とは?
- 興奮が強い方
- 昔からニューレプチルを服用している方
ニューレプチルをはじめとした第一世代抗精神病薬は、現在は主剤として初めから使われることはありません。まず第二世代抗精神病薬が使われて、ニューレプチルはそのサポートとして補助的につかわれることがほとんどです。
ニューレプチルは鎮静作用が強いため、攻撃性や衝動性が高く、興奮が強い時に使われます。このような使い方としても、第二世代抗精神病薬が使われることが多くなっています。
また、昔からニューレプチルを使っていて安定している方では、あえて新しい薬に切り替える方がリスクを伴うことがあります。無理に変える必要はありません。
7.一般名と商品名とは?
一般名:プロペリシアジン 商品名:ニューレプチル
まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。
一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「プロペリシアジン(propericiazine)」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。
一方で商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「ニューレプチル(newleptil)」は、neuroleptics(神経弛緩薬)に由来しています。
まとめ
ニューレプチルの効果の特徴は、「鎮静作用の強い定型抗精神病薬」です。
ニューレプチルでは、「D2遮断作用>セロトニン2A遮断作用」となっています。
- セロトニン2C受容体遮断作用:?
- α1受容体遮断作用:強い
- ヒスタミン1受容体遮断作用:?
- ムスカリン受容体遮断作用:?
ニューレプチルのメリットとしては、
- 鎮静作用が強い
- 錐体外路症状や高プロラクチン血症が、比較的少ない
ニューレプチルのデメリットとしては、
- 抗幻覚・妄想作用が強くない
- 副作用(眠気・体重増加・便秘など)が全体的に多い
- 抗α1作用による副作用(ふらつき・起立性低血圧・性機能障害)が多い
- 重篤な副作用のリスクがある
ニューレプチルが向いている方は、
- 興奮が強い方
- 昔からニューレプチルを服用している方
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