トリプタノール錠の効果と特徴
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
トリプタノールは販売開始1961年と、非常に長い実績のある抗うつ薬です。三環系抗うつ薬に分類されています。昔からある三環系抗うつ薬の中でも古くから使われていて、第一世代と呼ばれたりもします。
最近では、トリプタノールが治療の初めから使われることはとても少なくなりました。まずは副作用の少ないSSRI・SNRI・NaSSAといった新しい抗うつ剤が使われることが一般的です。
ですが三環系抗うつ薬は、副作用が多いですが効果も大きいです。その中でもトリプタノールは、最強の抗うつ剤といっても過言ではありません。またトリプタノールは抗うつ効果を期待してだけではなく、悪夢の軽減や疼痛のコントロールに使われることもあります。
ここではトリプタノールの効果を中心に、その使い方や適応疾患、向いている方などをお伝えしていきたいと思います。
1.トリプタノールとは?
はじめに、トリプタノールの特徴を簡単に紹介したいと思います。
<メリット>
- 抗うつ効果が最も強い
- 鎮静作用が強い
- 鎮痛効果がある
- 悪夢に有効
- 薬価が安い
<デメリット>
- 副作用が強い
三環系抗うつ薬は、ハイリスク・ハイリターンな薬です。その中でもトリプタノールは、最もその特徴があらわれている薬です。効果は最強といっても過言ではありませんが、副作用も強く出てきてしまいます。
トリプタノールは体内で代謝されて、ノリトリプチンという成分にかわります。この成分だけ取り出したものが、ノリトレンとして薬になっています。ノリトレンは副作用は抑えられていますが、効果もうすくなってしまいます。
トリプタノールの効果としては、セロトニンとノルアドレナリンの両方を増やします。このため、抗うつ効果と意欲改善効果を期待できます。また、気持ちを落ち着ける作用が強く、不安や不眠、焦りなどの改善も期待できます。夢を減らす効果もあるので、悪夢がある時にも使われることがあります。
トリプタノールの大きなメリットとしては、鎮痛効果が期待できることです。三環系抗うつ薬の中では鎮痛効果がもっとも強く、慢性疼痛などにも使われています。また、古くからある薬なので、薬の価格が安くなっているのもメリットです。
トリプタノールはしっかりとした効果が期待できる反面、デメリットが色々と出てきてしまいます。副作用はすべての抗うつ剤の中で、もっとも強くでてきます。
2.トリプタノールの作用機序(作用の仕組み)
セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで効果を発揮します。
不安や落ち込みといった症状には「セロトニン」が関係しているといわれていて、意欲や気力は「ノルアドレナリン」、興味や楽しみは「ドパミン」が関係しているといわれています。
トリプタノールは、脳内のセロトニンとノルアドレナリンという神経伝達物質の増加することで抗うつ効果がもたらされると考えられています。セロトニンとノルアドレナリンは、神経と神経の間の橋渡しを行う神経伝達物質です。
分泌された神経伝達物質は、役割を果たすと回収されます。これを再取り込みと呼びます。トリプタノールは、この再取り込みを阻害することによって、セロトニンやノルアドレナリンの量を増やします。これによって、これらの物質の受け皿である受容体の刺激を増加させて作用します。
トリプタノールは古くからある三環系抗うつ薬に分類されます。三環系抗うつ薬は、セロトニンやノルアドレナリンを中心に作用するお薬になります。新しい抗うつ薬に比べると、これらの物質以外にも作用してしまうため、副作用が多くなってしまいます。
日本で発売されている三環系抗うつ薬は、現時点で5種類あります。
- アナフラニール
- トフラニール
- トリプタノール
- アモキサン
- ノリトレン
になります。続けて、抗うつ剤の効果について比較してみましょう。
3.トリプタノールの効果の特徴
セロトニン・ノルアドレナリンを強力に増加させる三環系抗うつ薬です。
トリプタノール自体はセロトニンを優位に増やします。ですが、代謝産物であるノリトレンはノルアドレナリンを優位に増やすので、結果としてはセロトニンとノルアドレナリンのどちらにも強力に作用して増加させます。このため、セロトニンが増えることによる抗うつ効果と、ノルアドレナリンが増えることによる意欲改善効果が期待できます。
また、ノルアドレナリンが増えると、身体の痛みが感じにくくなります。何かに集中していると痛みを感じにくいことを経験したことはありませんか?ノルアドレナリンは交感神経系に働く物質ですので、痛みの刺激を抑えるように働きます。このため、鎮痛効果が期待できます。
気持ちを落ちつける鎮静作用も強いです。このため、不安や不眠、焦りなどの改善も期待できます。睡眠に対しては、レム睡眠を減少させる効果があります。このため、悪夢がある時などにも使われます。
トリプタノールは、いろいろな受容体に作用して効果がしっかりとでてきます。一方で、副作用も強く出てきてしまいます。すべての抗うつ剤の中でも、最もハイリスク・ハイリターンといえます。
4.トリプタノールの効果の強さ
三環系抗うつ薬の中でも強力で、最強の抗うつ薬といっても過言ではありません。
代表的な抗うつ剤の作用を表にまとめてみます。
それぞれの受容体に対する薬の作用の強さ(Ki値)をもとに、ざっくりと5段階にして整理しました。
見ていただくと、三環系抗うつ薬はいろいろな受容体に働くことがわかると思います。このことは、副作用が多いことにつながりますが、効果が厚くでることにもなるのです。このため、数字以上に効果が出てきます。
トリプタノールは、他の三環系抗うつ薬と比較してもいろいろな作用を持っています。その分、効果が厚くでてくるので、最強の抗うつ薬といっても過言ではありません。抗うつ薬の中では、切り札として使われています。
5.トリプタノールの効き方
血中濃度は4.4時間でピークとなり、31時間で半減します。このため、1日1~3回で服用することが多いです。
抗うつ剤は、不安や不眠に関しては、効果がすぐに表れることもありますが、一般的には効果が出てくるには2週間程度かかります。
抗うつ剤が安定して効果を発揮するためには、常に身体の中に薬がある状態が必要です。薬を規則正しく服用していると、身体の中に少しずつ薬がたまっていきます。およそ服用を始めて4~5日ぐらいで薬の体内での濃度が安定します。この状態のことを定常状態といいます。
トリプタノールを服用すると4.4時間ほどで血中濃度が最高値になります。そこから徐々に血中濃度が低下していき、31時間前後で血中濃度が半減します。抗うつ剤の中でも薬が身体から抜けるのが遅い薬です。
このため、1日1回の服用でも効果は十分発揮します。ですが、トリプタノールは副作用の大きな薬です。血中濃度が高くなると副作用がでやすくなるので、複数回に分けて服用することが多いです。
1日1回からはじめて大きな副作用がないかを確認して、問題なければ服薬回数を増やしていきます。1日に2~3回服用することが多いです。
6.トリプタノールの副作用
抗うつ剤の中でもっとも多く、便秘・口渇・ふらつき・眠気・体重増加・性機能障害が多いです。
トリプタノールは、いろいろな受容体に作用します。抗コリン作用も強く、便秘や口渇などが認められます。抗ヒスタミン作用も強く、体重増加が認められます。抗α1作用も比較的強いので、他の作用とも合わせてふらつきや眠気も強いです。性機能障害は、新しい抗うつ薬ほどではないですが、多く認められています。
代表的な抗うつ薬の副作用の比較を以下にまとめます。副作用の多い三環系の中でも、副作用が多いことがわかりますね。
トリプタノールの副作用について詳しく知りたい方は、
トリプタノールの副作用(対策と比較)
をお読みください。
7.トリプタノールが向いている人は?
トリプタノールはどのような人に向いているでしょうか?トリプタノールの適応をふまえて、実際にどのような方に向いているお薬なのか、みていきましょう。
7-1.トリプタノールの適応疾患
<適応>
- うつ病・うつ状態
- 遺尿症
- 末梢性神経障害性疼痛
<適応外>
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- 慢性疼痛
- 線維筋痛症
- 悪夢
トリプタノールは、うつ病やうつ状態に対して適応が認められています。詳しくは後述しますが、抗うつ剤の中でもトリプタノールは効果が強いです。抗うつ剤の中では切り札的に使われるお薬です。
トリプタノールは抗コリン作用が強く、尿が出にくくなります。この副作用を逆手にとって、遺尿症の適応が認められています。いわゆる「おねしょ」の治療に使われます。おねしょは幼少期は誰しもあることで、年を経るにつれてなくなっていきます。ですがおねしょが続くと、本人の自尊心も傷つけられてしまいます。そんな時に、トリプタノールが使われることが多いです。
またトフラニールには鎮痛作用も認められます。トリプタノールは様々な疼痛に対して、適応外で使われてきました。効果がはっきりしているのは明らかなので、2015年に末梢神経障害性疼痛に対して公知申請がなされました。これは臨床試験などのステップを踏まなくても、効果が明らかなので適応として追加する申請です。無事認められて、適応に追加されました。
また適応外として、悪夢が多いときに使われることがあります。夢を見ているときの睡眠状態であるレム睡眠、これを減少させる効果が認められるためです。
7-2.トリプタノールが向いている人とは?
- 他の抗うつ剤で効果が十分でない方
- 慢性疼痛がある方
- 悪夢がある方
トリプタノールはうつ状態にも用いられますが、副作用が大きいため一番はじめに使われることは少ないです。まずは副作用の少ない、SSRI・SNRI・NaSSAといった新しい抗うつ剤が使われることがほとんどです。それでも効果が乏しい場合、より効果のある三環系抗うつ薬が使われます。
ですから、新しい抗うつ薬で効果が不十分であった場合、「副作用は仕方ないからもう少し効果のあるものを試したい」という人に、トリプタノールが向いているといえます。三環系抗うつ薬の中でも、トリプタノールは効果が強いかわりに副作用も強いので、男性向けかと思います。他の三環系抗うつ薬で効果が不十分だった時に使うこともあります。
副作用の抗コリン作用を利用して、遺尿症(おねしょ)にも使われます。抗コリン作用はおしっこを出にくくします。また、トリプタノールは睡眠を深くするので、合わせて効果を発揮します。
また、三環系の薬剤ではトリプタノールが最も鎮痛効果が強く、その次に鎮痛効果が強いのがトフラニールやノリトレンです。ですから、さまざまな痛みを軽減させるために使われます。痛みの治療としては、副作用の少ないSNRIのサインバルタから使っていくことが多いです。それでも効果が不十分な時は、トリプタノールを使っていきます。
トリプタノールは悪夢を軽減させる効果もあります。レム睡眠を減少させる効果があるので、夢が減っていきます。うつ病やうつ状態の患者さんは悪夢で苦しんでいる方も多いです。朝のはじまりが悪夢からですと、気持ちも晴れていきません。このような時は、睡眠薬の代わりとして使われることもあります。
まとめ
トリプタノールは、三環系抗うつ薬に分類されていて、セロトニン・ノルアドレナリンといった伝達物質の再取り込みをブロックすることで、これらの量を増やす薬です。
効果としては、セロトニン・ノルアドレナリンのどちらも強力に増加させます。
他の抗うつ剤と比べて、効果は最強といっても過言ではありませんが、副作用も最も強いです。ハイリスク・ハイリターンな薬になります。
血中濃度は4.4時間でピークとなり、31時間で半減します。副作用を軽減するために服用を分けることが多く、1日1~3回で服用することが多いです。
副作用としては、抗うつ剤の中で最も多く、便秘・口渇・ふらつき・眠気・体重増加・性機能障害などがみられます。
この薬は、他の抗うつ剤で効果が十分でない人、慢性疼痛がある人、悪夢がある人に有効です。
販売者名 | 日医工業株式会社 |
分類 | 三環系抗うつ薬 |
剤形 | 錠剤(10mg・25mg) |
薬価 | 錠剤(9.6円・9.6円) |
ジェネリック | アミトリプチリン・ノーマルン・ラントロン |
成分(一般名) | アミトリプチリン |
半減期 | 31±13時間 (三環系の中では半減期が最も長い) |
用法 | 1日1~4回 最大300mgまで |
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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