アンヒバ坐薬の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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アンヒバ坐薬は、1980年にマイランECD製薬会社より発売されたアセトアミノフェン系解熱鎮痛剤の座薬です。ロキソニンなどのNSAIDsとは別の作用機序になります。

安全性が高い解熱鎮痛薬として、内服ができない小児を中心に処方されています。また、内服ができない高齢者にも使用することがあります。

注意が必要なのは、アンヒバ坐薬などの解熱・鎮痛薬は症状を一時的に抑えるお薬であり、病気自体を治す治療薬ではないということです。

安全性が高いし便利だろうということで安易にアンヒバ坐薬に頼っていると、思わぬ重篤な病気が隠れている可能性もあります。

ここでは、アンヒバ坐薬の効果の特徴を詳しくお伝えし、どのような疾患・症状に使われるのか、説明していきたいと思います。

 

1.アンヒバ坐薬のメリット・デメリット

<メリット>

  • 坐薬として使用できる
  • 副作用が少ない
  • 使用してはいけない条件が少ない
  • NSAIDsとは違った機序の解熱鎮痛作用を持つ
  • 妊婦に対しても使用可能
  • 内服できない小児や高齢者に確実に投与できる

<デメリット>

  • 痛みや発熱の原因を解決するわけではない
  • 肝障害が出現する可能性がある
  • 内服としては使用できない

アンヒバ坐薬は、昔はロキソニンなどと同じNSAIDsに属してました。NSAIDsとは、Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略です。日本語にすると、NSAIDsとは「ステロイド作用を持たない炎症を抑えるお薬」ということになります。

ステロイドは熱や痛みの原因となる炎症や免疫を抑えますが、それ以外にも様々な影響があり副作用がとても多いです。ステロイドについて詳しく知りたい方は、「プレドニンの効果と特徴」について一読してみてください。

NSAIDsは、アラキドン酸カスケードをブロックすることで炎症を抑えて効果を発揮します。それに対してアンヒバ坐薬の有効成分のアセトアミノフェンは、このアラキドン酸カスケードにはほとんど関与しないことが分かってきました。そのためアセトアミノフェンは、NSAIDsとは別の新しいお薬として位置づけられています。

NSAIDsと違って良い点は、高用量のアンヒバ坐薬を長期にわたって使用しても副作用が少ないことです。NSAIDsは、胃腸障害や腎障害など多岐に渡ります。詳しく知りたい方は、「ロキソニンの副作用と安全性」一読してみてください。それに対してアンヒバ坐薬は、稀に肝機能障害を認める程度です。このため、慢性疼痛にも使いやすいお薬になります。

ですからアンヒバ坐薬が使用できない症例は、重度の肝機能障害を認める方ぐらいです。NSAIDsは妊娠後期の方には赤ちゃんに影響を与えるので禁忌ですが、アンヒバ坐薬は影響が少ないです。さらにインフルエンザでは、NSAIDsはインフルエンザ脳症のリスクを高めるので使われません。アンヒバ坐薬は、インフルエンザなどの発熱に対しても良く処方されます。

このように、安全性が高いのがアンヒバ坐薬です。アンビバ坐薬はその名の通り坐薬のため、お尻の穴に入れることで効果を発揮するお薬です。そのため内服できない小さな子供の方を中心に使用されます。小児だけではなく、内服が難しい高齢者にもアンヒバ坐薬は臨床でよく使用されます。

お尻から入れるというと抵抗があるかもしれませんが、逆に内服がうまくできない、お口に入れても吐いてしまうお子さんには、確実にお薬が投与できるというメリットがあります。一方でアンヒバ坐薬は、坐薬としてしか使用できません。大きくなって内服できるようになったからといって、飲み薬としてアンヒバ坐薬を使用しないようにしましょう。

アンヒバ坐薬が登場したのが1980年です。アセトアミノフェンの内服として最も有名なカロナールが1984年に発売されましたが、アンヒバ坐薬はそれよりも古いお薬になります。

副作用も少なく、効果も高い万能なアンヒバ坐薬ですが、一つ注意することがあります。アンヒバ坐薬は、病気を治しているわけではありません。一時的に症状を緩和しているに過ぎないのです。症状を緩和するというのは、警報機をオフにするようなものです。私たちの体は、重篤なことが起これば、強い痛みや熱を発して私たちの体に何かあったことを教えてくれます。その警報機を切ってしまうのです。

そのことをよく理解して、アンヒバ坐薬は慎重に使うようにしましょう。

 

2.アンヒバ坐薬の適応と投与量は?

アンヒバ坐薬は、鎮痛剤や解熱剤として多くの病気に適応があります。また小児に対しても適応があります。

アンヒバ坐薬は、

  • アンヒバ坐薬小児用200mg
  • アンヒバ坐薬小児用100mg
  • アンヒバ坐薬小児用50mg

があります。アンヒバ坐薬の適応疾患ですが、

  • 小児科領域における解熱・鎮痛作用

となっています。つまり小児の痛みを取りたい場合や、熱が出た場合にアンヒバ坐薬は広く使われています。アンヒバ「小児用」坐薬と記載されているように。原則は小児に用いるお薬になります。一方で、作用機序的に大人に使って不都合があるわけではありません。

成人の方は内服できることがほとんどなために、あえて臨床試験などが行われていないため適応に記載されていないだけです。しかし飲み薬を飲む力が落ちてしまって、むせこんでしまうお年寄りの方などには、アンヒバ坐薬はよく使用されます。

投与量ですが、乳児・幼児及び小児にはアセトアミノフェンとして、体重1kgあたり1回10~15mgを直腸内に挿入します。投与間隔は4~6時間以上とし,1日総量として60mg/kgを限度とします。

1Kgあたりだとピンと来ないかもしれません。目安としては、

  • 体重5kgの場合:アンヒバ坐薬として50mg1個(アセトアミノフェンとして50mg)
  • 体重10kgの場合:アンヒバ坐薬として100mg1個(アセトアミノフェンとして100mg)
  • 体重20kgの場合:アンヒバ坐薬として200mg1個(アセトアミノフェンとして200mg)

がおおよその目安となっています。内服量=坐薬量として効果があります。そのため高齢者に使用する場合も、小児と同じように体重で計算して良いでしょう。ただしアンヒバ坐薬は安全性が高いため、増量して使用することもしばしばあります。

アンヒバ坐薬は33.0℃~35.5℃で溶けるように作られていますので、肛門に入れると自然と溶けていきます。しかしすぐに溶けるわけではありませんので、肛門に入れたあとは坐薬が出てしまわないように気を付けましょう。場合によってはしばらく抑えておくことも必要です。

また、アンヒバ坐剤は肛門から入れる坐薬になりますので、使用する前は出来るだけ排便を済ませた後が良いでしょう。ただしアンヒバ坐薬を使用する方は小さなお子さんや認知症のある高齢者がほとんどのため、事前に排便が難しいかもしれません。

アンヒバ坐薬は、最高血中濃度に達するのが1.6時間です。またアンヒバ坐薬は、投与してから2時間半前後に半減期を迎えるため、蓄積も少ないお薬です。なおアセトアミノフェンを経口投与した場合と効果速度および持続時間はそこまで大きな違いはありません。

 

3.アンヒバ坐薬の薬価は?

アンヒバ坐薬はジェネリック医薬品ですが、カロナールと全く同じ価格です。

次にアンヒバ坐薬の薬価です。アンヒバ坐薬は、

  剤型 薬価 3割負担
アンヒバ坐薬 50mg 19.3円 5.8円
アンヒバ坐薬 100mg 19.3円 5.8円
アンヒバ坐薬 200mg 28.2円 8.5円

※2016年12月1日の薬価です。

となっています。なお、アセトアミノフェンとして有名なカロナールの坐薬の価格は、

  剤型 薬価 3割負担
カロナール坐薬 100mg 19.3円 5.8円
カロナール坐薬 200mg 28.2円 8.5円
カロナール坐薬 400mg 44円 13円

※2016年12月1日時点での薬価です。

となっています。アンヒバ坐薬は、カロナール坐薬と用量の違いはあれ、薬価は同じ価格です。アセトアミノフェンの成分は、1800年代から広く使用されていました。そのため、先発品・後発品の考えが始まる前から使われていたため、アンヒバ坐薬やカロナールに限らず多くのアセトアミノフェン系のお薬は、ほぼ同じ価格となっています。

 

4.アンヒバ坐薬の副作用の特徴

アンヒバ坐薬の副作用として気を付けるべきものとして、肝機能障害があります。

アンヒバ坐薬の添付文章では、6,090例中,副作用は14例(0.23%)に認められました。その主なものは、

  • 皮疹4件(0.07%)
  • 食欲不振3件(0.05%)
  • 下痢,軟便,便意2件(0.03%)
  • 悪心・嘔吐 2件(0.03%)

となっています。最も多い副作用でも0.07%と非常に少ないです。さらに食思不振や下痢、嘔吐はアンヒバ坐薬の副作用ではなく、アンヒバ坐薬を使用する風邪症状の可能性もあります。そのため、これらの副作用を過度に心配する必要はないと思います。

アンヒバ坐薬を使用していて最も懸念されるのは、

  • 肝機能障害

です。アンヒバ坐薬は主に肝臓で代謝されるために、肝臓を傷めることがあります。肝臓にダメージが加わると軽度であれば症状は出ないのですが、肝障害が進むと、

  • 嘔気・嘔吐
  • 食欲不振
  • 倦怠感

などの症状が起こります。ただしこれらはアンヒバ坐薬の副作用だけでなく、体調が悪くても起こりえるため注意が必要です。さらに重篤になると、

  • 発熱
  • 腹痛
  • 黄疸
  • 腹水貯留
  • 意識障害

などが生じ、最悪命に危険が及びます。アンヒバ坐薬の添付文章では、肝機能障害の頻度は不明とされています。さらにアンヒバ坐薬の添付文章の警告文で、

1.アンヒバ坐薬により重篤な肝障害が発現するおそれがあることに注意し、定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与すること

2.アンヒバ坐薬とアセトアミノフェンを含む他の薬剤との併用により、アンヒバ坐薬の過量投与による重篤な肝障害が発現するおそれがある。

と肝臓のことが警告されていることからも、昔は過度にアンヒバ坐薬の副作用を恐れていたことがわかります。しかし近年では、アンビバ坐薬を過量に長期使用しない限りは、ほぼ肝機能障害は起こらないとした報告が多いです。そういった背景から、カロナールでは400mgの坐薬が登場しています。

ただし、肝機能障害が決して起こらないわけではありません。1~2日程度しかアンヒバ坐薬を使用しない場合は問題ないですが、長期間アンヒバ坐薬を内服する場合は、定期的に採血するよう心がけましょう。

なおNSAIDsに属さないアンヒバ坐薬は、NSAIDsでよくみられる胃腸障害はほぼ起こりません。(添付文章では、アンヒバ坐薬を高用量投与したとき起こり得ると記載されています。)

ロキソニンなどのNSAIDsは、アラキドン酸カスケードのCOXという物質を阻害するため胃腸障害が起こります。しかしアンヒバ坐薬は、近年このアラキドン酸カスケードにほぼ関与しないことが分かってきたため、一般的には胃腸障害は起こらないと考えられています。

 

5.アンヒバ坐薬が使用できない疾患は?

アンヒバ坐薬は、重篤な肝機能障害がある人には通例は使用できません。また、アスピリン喘息は注意が必要です。

アンヒバ坐薬の添付文章では、

  1. 消化性潰瘍のある患者[消化性潰瘍が悪化することがある。]
  2. 重篤な血液の異常のある患者[血小板機能障害を起こし、悪化するおそれがある。]
  3. 重篤な肝障害のある患者[副作用として肝障害が報告 されており、悪化するおそれがある。]
  4. 重篤な腎障害のある患者[急性腎不全、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがある。]
  5. 重篤な心機能不全のある患者[心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある。]
  6. 重篤な高血圧症のある患者[血圧を更に上昇させるおそれがある。]
  7. 本剤の成分に過敏症の既往歴のある患者
  8. アスピリン喘息[喘息発作を誘発することがある。]

となっています。この中で注意が必要なのは、

  • 重篤な肝機能障害
  • アスピリン喘息

の2つです。まず消化性潰瘍に関しては、完全にNSAIDsに属していた名残で禁忌に記載されています。先ほどの副作用でも記載したように、アンヒバ坐薬が潰瘍を引き起こす可能性は少ないです。むしろ現場では、NSAIDsが使えない代わりにアンヒバ坐薬を処方することが多いです。

また他の「重篤な」という一言がついている病気も、NSAIDsの名残です。「ロキソニンの安全性は大丈夫?ロキソニンの飲み合わせと妊娠への影響」で禁忌を見比べてみてください。アンヒバ坐薬とまったく同じ文言となっています。このように添付文章には、アンヒバ坐薬がNSAIDsと考えられていたころの名残が色濃く残っています。

実際に現場で気を付けるとしたら、

  • 重篤な肝機能障害

の患者さんに使用する場合です。先ほどの副作用で記載したように、肝機能障害が最も警戒する副作用です。様々なデータでも肝障害がない患者さんには比較的に安全に投与できるとありますが、肝機能障害がある方は話は変わります。

重篤な肝機能障害がある方は、痛み止めを使いづらいのです。お薬はほとんどが、

  • 肝臓
  • 腎臓

のどちらかで代謝されます。

「かんじんな時に頼りになる」などと使われる「かんじん」は、漢字では「肝心」となります。このことからも、肝臓は昔から非常に重要な臓器とされてきたことがわかるかと思います。つまり重篤な肝臓の障害があっても使用できるお薬と言うのは、実はほとんどありません。

そのため実臨床では、

  • 肝臓がなんの疾患が原因で悪くなったか?
  • 肝臓がどれくらい悪いのか?
  • 肝臓が今後良くなる見込みがあるのか?

など踏まえて、肝障害がある方でもアンヒバ坐薬が投与されることがあります。特に肝臓は採血で、

  • AST(GOT)
  • ALT(GPT)
  • γ-GTP
  • ALP
  • ビリルビン

などで評価します。AST・ALTの数値が非常に目安になります。(本当に肝臓が悪くなった時はむしろ上がらなくなりますが、ここでは説明を割愛します。)

そのため痛みや発熱など辛い症状がある肝機能障害の患者さんは、肝臓の専門医と相談しながらアンヒバ坐薬を投与しますが、定期的に採血して肝臓がさらに悪くならないかみていくことは大切です。

もう一つ気を付ける病気としては、アスピリン喘息です。アスピリン喘息は、喘息の中でもかなり特殊な病態です。喘息は、もともとは気道の慢性炎症によって気管支が狭くなる病気です。一般的には、Ⅰ型アレルギーに属します。Ⅰ型アレルギーは、好酸球やIgEが関与するアレルギー疾患で、他には花粉症や蕁麻疹などが挙げられます。

しかし最近、アレルギー以外が原因となる喘息があることが分かってきました。実はこの非アレルギー性の喘息の方が、対策もしづらく難治性といわれています。アレルギーではないということは分かっているのですが、細かい機序までは解明できていないためです。アスピリン喘息は、この非アレルギー性の喘息のひとつになります。

アスピリン喘息について詳しく知りたい方は、「痛み止めで喘息に?アスピリン喘息の症状と特徴」を一読してみてください。

実は以前では、NSAIDsを中心にこのアスピリン喘息は起きると言われており、アンヒバ坐薬は安全と考えられて処方されてきました。しかし近年の研究で、アセトアミノフェン1000~1500mg投与したアスピリン喘息の方の33%の方で呼吸状態が悪化したと報告されています。

そのためアンヒバ坐薬は、アスピリン喘息の方は300mg以下に抑えるように喘息のガイドラインでは記載されています。絶対に使ってはいけないわけではないですが、アンヒバ坐薬でもアスピリン喘息が悪化することがあることを念頭においておきましょう。

 

6.アンヒバ坐薬は高齢者・小児・妊婦には使用できるの?

アンヒバ坐薬は、高齢者には慎重に投与するように記載されています。小児でも積極的に選択されています。アンヒバ坐薬は妊娠の方にも投与できるお薬です。

まずご高齢の方ですが、アンヒバ坐薬は高齢者に対しては慎重に投与するように記載されています。理由としては、副作用が出やすいためとあります。特に上の文章をもう一度見て欲しいのですが、

  • 腎臓
  • 血液
  • 肝臓
  • 心臓

などに注意するように記載されています。高齢者は今まで指摘されていなくとも、上記のどれか悪いことはしばしばあるため注意が必要です。

特にアンヒバ坐薬は、熱を出してる原因を治療するものではありません。どうしても若年者よりも免疫機能も落ちているため、アンヒバ坐薬で様子を見ていたらあっという間に状態が悪くなったということが多々あります。

高齢者でアンヒバ坐薬を使用する場合は長期にわたって様子をみず、必ず定期的に医療機関を受診するようにしましょう。

また小児に関しては、添付文章には、

低出生体重児、新生児及び3ヵ月未満の乳児に対する使用経験が少なく、安全性は確立していない。

と記載されています。3か月以上の乳幼児には、安全性がある程度確立されていることになります。実際にアンヒバ坐薬はアンヒバ坐薬小児という製品です。そのため小児を中心に使用されいます。

ただし高齢者の時と同様に痛みや熱の原因を治すわけではないので、使用している時は病態の悪化に注意しながら使用しましょう。

妊婦の方は、アセトアミノフェンはよく使用されます。NSAIDsは逆にお腹の赤ちゃんへ血液を介して移行するため、「動脈管閉塞」が生じることが報告されています。特に動脈管の働きが重要になるのが妊娠後期です。そのため妊娠後半には、大部分のNSAIDsが禁忌とされています。

そのため普段はNSAIDsで頭痛などコントロールしていた方も妊娠が分かったらアンヒバ坐薬に切り替えることが多々あります。ただし、

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。

の一文が添付文章では記載されています。しかし多くの方はカロナールなどの飲み薬で対応することが多いため、アンヒバ坐薬が登場することは少ないかもしれません。嘔吐が凄くて内服ができない人など適応は限られると思います。

 

7.アンヒバ坐薬が向いてる人は?

<向いてる人>

  • 内服できない高齢者や小児
  • 消化管潰瘍がある方
  • 腎機能障害がある方
  • 解熱薬として座薬を使用する方
  • インフルエンザの方

アセトアミノフェンは多数の内服薬が登場していますが、小さなお子さんや嚥下ができない高齢者は、坐薬は良い適応になります。また、吐き気があって内服しても吐いてしまいそうな人などにも、坐薬は確実に投与できるため使いやすいです。

坐薬の鎮痛解熱薬はアンヒバ坐薬などのアセトアミノフェンのもの以外には、NSAIDsの坐薬があります。

アンヒバ坐薬は肝機能障害以外の副作用も少なく、使用できる条件も広いため、医師によってはNSAIDsよりもまずアセトアミノフェンという方も大勢います。

アンヒバ坐薬が向いてると言えるのは、NSAIDsが使用できない症例です。NSAIDsは胃腸障害が多いため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍がある方は使用できません。そういった方はアンヒバ坐薬が向いています。

このようにアンヒバ坐薬は安全性が高く、長期にわたってお薬を使う必要がある慢性疼痛の方に向いています。肝臓に負担がかかるため、肝機能障害には注意しながら使っていきます。

またNSAIDsは、腎機能障害も出現します。アンヒバ坐薬も「重篤な腎障害には使用できない」と記載がありますが、NSAIDsよりは腎機能障害が少ないというのが臨床での感覚です。そのため軽度の腎障害であれば、まずアンヒバ坐薬などのアセトアミノフェンと考える医師が多いです。

インフルエンザの方も、アンヒバ坐薬の方が良いです。インフルエンザにNSAIDsを使用すると、インフルエンザ脳症になるリスクがあるためです。

このようにNSAIDsが使用できない症例には、アンヒバ坐薬は良い適応です。また、効果も近年見直されてきています。決してNSAIDsよりアンヒバ坐薬が劣っているというわけでもないです。

大切なのは、アンヒバ坐薬は症状の原因を治すことは一切しません。反対にアンヒバ坐薬で長期間様子をみていたら手遅れになってしまった症例を、医師は数多くみています。

原因が分からずアンヒバ坐薬でも効果がない場合は、まず病院を受診するようにしましょう。

 

8.アンヒバ坐薬の作用機序は?

アンヒバ坐薬は、脳の視床下部に働きかけることで熱を下げたり、痛みを感じづらくさせます。

解熱鎮痛薬として多く使用されるNSAIDsは過剰なプロスタグランジンが関係しています。アンヒバ坐薬を含むNSAIDsは、PGを生産する経路であるアラキドン酸カスケードをブロックすることでその効果を発揮します。その作用点は、シクロオキシゲナーゼ(以下COX)になります。

このCOXを阻害して痛みを和らげるのです。アンヒバ坐薬などのアンヒバ坐薬は、このCOXを阻害する作用がほとんどないことが分かっています。アンヒバ坐薬の細かい作用機序は現在でも不明な点が多いですが、一般的に脳に働きかけて調整することが知られています。

解熱と疼痛、それぞれについてみていきましょう。

 

8-1.アンヒバ坐薬の解熱作用は?

アンヒバ坐薬の解熱の作用は、脳の視床下部の体温調節中枢に作用して熱を下げるといわれています。具体的には以下の2点です。

  1. 皮膚血管を拡張させて体温を下げる
  2. 汗を促す

まず1の血管拡張の効果ですが、手や足の末梢の血管が開くと血流が良くなります。血流が良くなることで、熱の放出につながります。

2の汗を促すのは、熱を下げる一般的な作用です。私たちが夏場に汗をかくのは、汗をかいて体を冷やそうとする生理作用です。汗をかくことで、蒸発する時に周りの熱を奪って体を冷やします。

この時に気を付けなければいけないのが、脱水や血圧低下です。血管が開いて血流が流れやすくしますが、そもそも流れる血液が足りなければ血圧が下がるだけです。さらに汗をかくことで、さらに水分が減ってしまいます。

熱を出している時は、食欲もなく脱水になりやすいです。そのためアンヒバ坐薬を内服する際は、脱水にならないように水分補給を気を付けるようにしましょう。

またアンヒバ坐薬は高熱を正常な体温に下げる作用はありますが、正常な体温を更に下げてしまうという事はほとんどありません。そのため、非常に使いやすいお薬です。

 

8-2.アンヒバ坐薬の鎮痛作用は?

アンヒバ坐薬の鎮痛作用の機序ですが、こちらも完全には解明されていません。アンヒバ坐薬にて脳の視床と大脳皮質に作用する事で痛みを感じにくくさせているのだと考えられています。

痛いと感じるのはけがや病気をした部位ではなく、その部位から発生した物質を脳が感じていたいと感じるのです。痛みの物質は、プロスタグランジンといいます。

NSAIDsはこのプロスタグランジンを阻害することで、痛みが和らぎます。アンヒバ坐薬はこのプロスタグランジンを脳で感じづらくさせること(痛みの閾値をあげること)で鎮痛作用を有するとされています。

その他、カンナビノイドやセロトニンなど痛みを感じるづらくする物質を増やすことで痛みを感じづらくする作用があると考えられています。

 

まとめ

<メリット>

  • 坐薬として使用できる
  • 副作用が少ない
  • 使用してはいけない条件が少ない
  • NSAIDsとは違った機序の解熱鎮痛作用を持つ
  • 妊婦に対しても使用可能
  • 内服できない小児や高齢者に確実に投与できる

<デメリット>

  • 痛みや発熱の原因を解決するわけではない
  • 肝障害が出現する可能性がある
  • 内服としては使用できない

<向いてる人>

  • 内服できない高齢者や小児の方
  • 消化管潰瘍がある方
  • 腎機能障害がある方
  • 解熱薬として座薬を使用する方
  • インフルエンザの方

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