効果のある睡眠のサプリメントとは?
不眠が続くと、心身共にすり減ってきます。夜になると今日もまた寝れるかなぁと不安にもなります。私も不眠がちだったので気持ちが分かります。
だからといって睡眠薬を飲むのはちょっと・・・と思う方が多いでしょう。そんな時に日本人が頼るのがお酒です。お酒に頼るのだけは絶対にやめてください。最初は良くても、少しずつ睡眠が不安定になってしまいます。
そんなときに、睡眠のサプリメントを検討されている方もいらっしゃるかと思います。睡眠のサプリメントも、実にさまざまな種類が発売されています。ですが、根拠のはっきりしないものも多いです。
ここでは、睡眠に有効といわれている成分やサプリメントを紹介していきたいと思います。
1.メラトニンの睡眠への効果
低用量のメラトニンには多少の入眠効果があります。
メラトニンは、体内時計のリズム調整に関わっていると考えられているホルモンです。生理的には20時ころから分泌されて真夜中にピークとなり、明け方になると少なくなっていきます。このように生理的な物質ですので、メラトニンをサプリメントとして摂取すると睡眠によい影響を与えます。自然な眠気が強く感じられるようになります。
ですが、メラトニンをサプリメントとして摂取すると、1~2時間くらいですぐに分解されてしまいます。半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)は30分程度といわれていて、寝つきしか効果がありません。このため、睡眠の維持には効果が期待できません。
実際に、0.1~0.3mg程度の低用量で寝つきが改善されたという報告はあります。ですが、寝つきが多少良くなる程度かと思います。どちらかというと、時差ぼけや夜勤などで生活リズムが乱れている方が、リズムをリセットするために使う方が効果が期待できるでしょう。睡眠前に少量服用すれば、睡眠効率が上がる可能性があります。
サプリメントで販売されている量は1~3mgが多いです。作用時間を長くしたサーカディン(circadin)という徐放製剤も販売されています。
睡眠薬としても、メラトニンをターゲットにした薬が発売されています。メラトニン受容体作動薬のロゼレムという薬です。メラトニンを分泌するように促すことで、睡眠効果を期待します。ロゼレムでは、メラトニンよりも睡眠維持効果が期待できます。
詳しく知りたい方は、「メラトニンの睡眠サプリメントの効果と副作用」をお読みください。
2.GABAと睡眠
GABAをサプリとしてとっても、脳には直接届きません。
GABAをご存知でしょうか?最近ではリラックスする物質として、チョコレートなどいろいろな商品に取り入れられて宣伝されています。
GABAとは、脳の中で情報のやりとりをする神経伝達物質です。脳の細胞に対して興奮を抑える方向に働きます。ですから、GABAは睡眠にはプラスに働きます。実は、多くの睡眠薬はこのGABAの働きを強めることで効果を発揮します。
このようにGABAは睡眠には有効です。ですが、GABAをサプリメントの形で服用することは話が異なります。口から摂取されたGABAはアミノ酸の一種です。ですから、消化の過程で分解されてしまいます。また、吸収されて血中に取り込まれても、脳と血液の間には血液脳関門というバリアーがあります。GABAはこのバリアーを通過できません。
ですから、GABAは吸収されても脳には直接届きません。確かに、GABAを作る材料が不足することはなくなるかと思います。ですが、材料が増えたからたくさん脳内でGABAがつくられるわけではありません。このため、不眠や不安に対しての作用は乏しいと思われます。
3.グリシンと睡眠
グリシンは、末梢血管を拡張させて深部体温を下げることで睡眠を促します。入浴に近いものと考えられます。
グリシンはアミノ酸の一種です。グリシンの効果としては、体表の血流を増加させて深部体温を低下させます。体温が下がると眠りにつきやすくなります。これは冬眠をイメージすると分かりやすいです。
冬は無駄なエネルギーを使わないために、体温を低くして代謝活動を抑えます。ですから、睡眠中は体温は低くなるのが一般的で、深部体温は1℃近く低くなります。グリシンにはこの働きを強める作用が考えられています。
グリシンのサプリメントを発売するにあたっては、発売している会社が臨床試験を行って睡眠への効果が証明されたとしています。しかしながら11名での臨床試験です。後述する出版バイアスを考えれば、これをもって効果があるとは断言できません。
詳しく知りたい方は、「味の素グリナ(グリシン)の効果とは?」をお読みください。
4.ビタミンと睡眠
ビタミンB12はメラトニンの合成を促します。ビタミンB6はGABAの材料になります。
ビタミンB12はトリプトファンからメラトニンの合成を促すといわれています。ですから、メラトニンを作る能力が高い子供などでは、まずはビタミンB12を補充することも方法です。これにより、メラトニンの合成が進み、結果として自然な眠気が強くなる可能性があります。
ビタミンB6は、タンパク質をアミノ酸に分解するサポートをし、GABAをはじめとする神経伝達物質の合成に働きます。ですからGABAの生成に欠かせない栄養素です。ビタミンB6が欠乏状態にある時は、これを補充することで効果がある可能性があります。
ただ、普通に食事をバランスよくとっていれば、これらのビタミンが欠乏することは考えにくいです。食事が偏っている方は、検討してみてもよいかも知れません。
以下に、それぞれのビタミンをよく含む食事をまとめます。
<ビタミンB12を多く含む食事>
- 魚介類:かつお、さんま、のり、すじこ、貝類など
- 肉類:レバーなど
- 乳製品:チーズなど
- その他:もやし、納豆など
<ビタミンB6を多く含む食事>
- 肉類:レバー
- 魚介類:さんま、まぐろ、かつお
- 豆類:大豆製品、ピスタチオ
- その他:卵、にんにく、バナナなど
5.ハーブ・アロマと睡眠
バレリアンは睡眠の質と寝つきをよくする報告があります。ホップやレモンバームは動物実験では効果が示されていました。
ハーブやアロマなどでも用いられるバレリアン(セイヨウカノコソウ)は、鎮静や催眠薬として知られています。GABAへの作用などが考えられていますが、メカニズムは詳しくわかっていません。ですが、飲み初めて4~6週間までなら睡眠の質と入眠を改善することが報告されています。
またビールに含まれているホップにも効果があるといわれています。動物実験では効果は示されていますが、人に関してはしっかりとした根拠がありません。
ハーブとしてよく用いられるレモンバームも同様に動物実験では効果が示されていますが、人に関してはしっかりとした根拠がありません。
詳しく知りたい方は、「バレリアン(セイヨウカノコソウ)の効果」をお読みください。
6.サプリメントは効くのか?
サプリメントに過度な期待はしないほうがよいです。また販売元の信用力には十分注意してください。
サプリメントはどこまで効果があるのでしょうか?
2013年12月17日、サプリメント大国のアメリカの専門誌に、「サプリメントは効果がない」と発表されて衝撃が走りました。ですがしっかりとこの論文を読んでいくと、全く効果がないというのも極端で根拠が薄いものでした。
それでも考えてみてください。サプリメントで本当に効果があったら、製薬会社がだまってみていると思いますか?例えば魚の油のEPAはサプリメントとして売られていましたが、今ではエパデールやロドリガといった脂質異常症のお薬になっています。もし効果があったとしても、デメリットが大きいので製薬会社が薬をつくらないだけです。
世の中には様々なサプリメントが販売されています。そして、根拠のない効果が平気でうたわれて、メリットばかりを強調して広告されています。一見まともなサイトにみえてもサプリメントの購入を誘導しているだけであったり、医者であっても金儲けの道具として根拠のないことを平気で語っている方もいるので注意してくださいね。
サプリメントや健康食品の研究論文は注意してみていく必要があります。多くの場合が業者からの資金援助などをうけて研究をしています。ですから、思わしくない結果がでたら論文とされずに、都合のよいものだけが論文になりやすい傾向があります。これを出版バイアスといいます。また、規模の小さな研究は研究方法に問題がなくても結果のばらつきが大きくでる傾向があります。
このため、思わしくない結果がでた論文は発表されずに、小さな研究でうまくいったものが積み重なってしまうことがあります。その結果、いろいろな論文をトータルでみてサプリメントが有効となってしまいます。ですから、このようなサプリメントの効果を見ていくときは、規模の大きな研究を重要視してみていく必要があります。
また、サプリメントは製造業者によって成分も精度もまちまちです。あまりに安価なものの中には、有害な成分が入っていたりすることもあります。サプリメントの信用力には十分ご留意ください。また、サプリメントを使用する際は薬との相互作用があることもあるので、必ず医師にご報告ください。
まとめ
メラトニン | 低用量では多少の入眠効果あり |
GABA | 直接脳には届かない |
グリシン | 深部体温を低下させるが、データが不足している |
ビタミンB12 | メラトニンの合成を促す |
ビタミンB6 | 脳内でGABA生成に必要 |
バレリアン | 睡眠の質と寝つきを良くする報告あり |
ホップ | 動物研究では有効 |
レモングラス | 動物研究では有効 |
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