DHA・EPAはうつ病に効果があるのか
魚に多く含まれるDHAやEPAは魚油ともいわれていて、青背の魚に多く含まれている成分です。魚を多く食べている地域ではうつ病が少ないという統計から、うつ病への効果が期待されています。
DHAやEPAにはどのような効果が期待できるのでしょうか?
DHAやEPAをサプリメントとして摂取するべきなのでしょうか?
ここでは、DHA・EPAといったω-3脂肪酸のうつ病への効果についてお伝えしていきます。
1.DHAやEPAなどのω‐3脂肪酸とは?
魚の油に多く含まれる成分で、中性脂肪を下げるお薬として発売されています。サプリメントとしても摂取されています。
DHAやEPAはω-3脂肪酸と呼ばれています。脂肪酸にはさまざまな種類があって、ω3脂肪酸は、ω3位に炭素二重結合があるために名付けられました。ようは化学構造からつけられた名称です。
DHAやEPAは、多価不飽和脂肪酸(PUFA)に分類されます。DHAやEPAは生命維持に必要不可欠な必須脂肪酸になりますが、体内で合成することができずに食事から摂取するしかありません。
DHAやEPAは魚に多く含まれていることが分かっています。まずこの成分が注目されたのは、脂質異常症(高脂血症)への効果です。コレステロールや中性脂肪を下げて、動脈硬化を抑制するのではと考えられました。
しかしながら、2012年に発売された国際的な臨床試験ORIGINスタディでは、「EPAは中性脂肪を低下させる効果のみで、心血管系イベント抑制には寄与しない」とする衝撃の結果となりました。
日本では、より高濃度での臨床試験JELISスタディが行われていて、2007年に発表されています。この結果では、中性脂肪だけでなくコレステロールも下げ、心血管系イベントの減少効果も示されています。
現在は中性脂肪を下げるお薬として、エパデール(EPA)やロドリガ(DHA+EPA)がお薬として発売されています。サプリメントとしても広く発売されています。
2.DHAやEPAはうつ病に効果があるのか
DHAやEPAの抗うつ効果は多少あるのかもしれませんが、残念ながらそこまで大きく期待はできません。抗うつ効果を期待するならば高用量になります。
DHAやEPAがうつ病に効果があると考えられるようになったのは、魚をたくさん食べる地域ではうつ病にかかる方が少ないということからです。
1998年に行われた多国間での魚の消費量とうつ病の罹患率の関係を調べた報告では、魚の消費量が多いほどうつ病の罹患率は低いと示されました。その後、うつ病患者さんの血中ではω-3脂肪酸が低下していることが報告されたり、うつ病患者さんの死後の脳にはDHAが低下しているという報告がなされました。
このような根拠に基づき、いくつかのDHAやEPAの臨床試験が行われています。これら35の研究をまとめた論文では、うつ症状には多少の効果は認めたが、うつ病の予防効果は認められなかったという結果になっています。この論文では、規模の小さな研究結果で効果があるとされている点(均一性がない)で、あまり質の良いものとはいえません。また、効果がみられるのは高用量のものが多いです。
DHAやEPAの抗うつ効果は、残念ながらそこまで大きく期待はできません。うつ病の患者さんで中性脂肪が高ければ、治療もかねて使ってみようかな・・・といった具合に使ったことはあります。私の少ない使用経験では、EPAやDHAによって明確な抗うつ効果は認められていません。
3.DHA・EPAの費用対効果
DHAやEPAは高用量で効果が期待できるので、市販のものは含有量が少ないです。中性脂肪高値が明らかであれば、病院に受診された方が安くなります。
DHAやEPAは、どちらも中性脂肪のお薬として発売されています。
- エパデール(EPA)
- ロドリガ(DHA+EPA)
それぞれのお薬の薬価をみてみましょう。抗うつ効果を期待するには、高用量で使っていく必要があるので、最高用量で比較します。
- エパデール(EPA):用量1800mg,先発品7122円/月,後発品2904円/月
- ロドリガ(DHA+EPA):用量4000mg,先発品円15678円/月
この金額に、自己負担比率をかけたものです。通常は3割負担ですので、エパデールならば871~2137円、ロドリガなら4703円となります。
これに対して市販のサプリメントでは、どれもEPAやDHAの配合量が少ないです。サントリーの配合サプリメントでは、1日量としてDHAが300mg、EPAが100mgとなっています。1か月が4000~5000円強となっています。
含有量のわりに安価なものとして、DHAが550mg、EPAが200mgで1000円というものがありました。
DHAやEPAをサプリメントとして使うときには、高用量でなければ効果は期待しづらいです。サプリメントを予防のために使うと考えても、少なくとも低用量では心血管イベントを防ぐことは難しいと考えられています。そしてうつ病でも、高用量である必要があります。
そのように考えると、市販の含有量では効果としては期待しずらいと考えられます。中性脂肪が高い方でサプリメントを検討されているのでしたら、病院に受診された方が高用量で品質の確かなものを安く使うことができます。
4.DHAやEPAの脳での作用
海馬での認知機能の改善、セロトニンやドパミンなどの効果の増強などが考えられています。DHAは主に認知機能、EPAは抗うつ効果が期待されています。
ω‐3脂肪酸はαリノレン酸から体内で変換され、EPAを経てDHAになっていきます。EPAを食事として摂取しても、体内ではDHAに変換されていきます。
DHAとEPAでは、脳での占める割合が全く異なります。DHAでは脳内に占める割合が多く、前頭葉では脂肪酸の13.5%をしめています。しかしながらEPAでは、ほとんど脳内には存在しません。さらにEAPは、脳に達すると1分もたたないうちに分解されてしまい、DPAという物質からDHAとなっていきます。
このためDHAとEPAの作用は、ひっくるめて多価不飽和脂肪酸(PUFA)として研究されていることが多いです。現在、DHAやEPAの作用としてわかってきているのは、以下のようになります。
- DHAやEPAが海馬に作用して神経を再生し、認知機能を改善する
- DHAやEPAがセロトニン2受容体の増加とドパミン2受容体の減少させる
- DHAやEPAが脳内麻薬の受容体に作用する
- DHAやEPAが抗炎症作用により心身のバランスを整える
- DHAは酸化ストレスに対する脳保護作用がある
海馬には、おもにDHAの影響が強いと考えられていて、認知機能の改善効果はDHAが優れると考えられています。抗うつ効果としては、EPAの作用が大きいのではと考えられています。血中のEPA濃度とうつ症状の程度には相関がみられた、という報告もあります。
まとめ
ω‐3脂肪酸とは魚の油に多く含まれる成分で、中性脂肪を下げるお薬として発売されています。サプリメントとしても摂取されています。
ω‐3脂肪酸のDHAやEPAでは、抗うつ効果は多少あるのかもしれませんが、残念ながらそこまで大きく期待はできません。抗うつ効果を期待するならば高用量になります。
DHAやEPAは高用量で効果が期待できるので、市販のものは含有量が少ないです。中性脂肪高値が明らかであれば、病院に受診された方が安くなります。
海馬での認知機能の改善、セロトニンやドパミンなどの効果の増強などが考えられています。DHAは主に認知機能、EPAは抗うつ効果が期待されています。
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