本当に正常な血圧とは?高血圧の数値基準

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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血圧計が身近になってきて、血圧を測る機会は増えてきていると思います。

血圧が正常と出てきても、気を付けなければいけないこともあるのをご存知ですか?正常の血圧の中にも、分類があるのです。

ここでは、高血圧の数値基準がつくられた根拠をふまえて、本当に正常な血圧とはどれくらいなのか、考えていきたいと思います。

 

1.血圧の数値基準と高血圧の数値基準

診察室血圧と家庭血圧で基準が異なります。140/90以下であれば正常域ですが、本当に正常な血圧は120/80以下です。

高血圧の基準値をガイドラインに基づいてまとめました。

世界中のガイドラインでは、診察室での血圧140/90以上を高血圧とすることで共通しています。

それ以下は正常とされていますが、より血圧が低い方が心血管病の発症率が低く、また血圧が悪化しにくいことがわかっています。できるだけ低めに血圧をコントロールした方がよいということですね。ですから、本当に正常な血圧ということでしたら、120/80以下になります。

最近では、家庭血圧を測ることが推奨されています。家庭血圧では、135/85以上を高血圧とします。至適血圧は125/80未満、この間を正常高値血圧としています。

また、血圧は1日の中で変化していて、昼に高く夜に低くなります。24時間血圧測定を行う場合は、平均値で130/80以上、昼間血圧で140/85以上、夜間血圧で120/70以上を高血圧とします。

収縮期血圧と拡張期血圧がそれぞれ違う分類になった時は、どのようにすればよいでしょうか?このような時は、それぞれの血圧が別々のリスクにつながりますので、どちらか高い方の分類に組み入れて考えます。

また、表の最後の収縮期高血圧とは、高齢者の方などで動脈硬化がすすんでいるとみられます。動脈の壁が硬くなってしまって弾力がなくなってしまうと、心臓が収縮すると血圧が急激に上がります。反対に心臓が拡張すると血管のクッションがなくなっているので、一気に血圧がおちてしまいます。

動脈硬化が進むと、収縮期血圧が上昇して、拡張期血圧が低下することになります。

 

2.高血圧基準の考え方

心血管病のリスクで血圧の基準を考えています。

高血圧の基準はどの国のガイドラインにおいても、140/90以上を高血圧としています。これは世界中のさまざまな研究の蓄積の結果で、日本でも、久山町研究や北海道の端野・壮瞥町研究など、町規模での血圧研究を行って結果、140/90以上は心血管病と死亡率が優位に上がることが示されています。

140/90以下は正常域とされていますが、その中でも、正常高値血圧・正常血圧・至適血圧にわけられています。この順に心血管病の発症率が高いことが、欧米および日本の研究でわかっています。また、正常血圧や正常高値血圧の方では、将来的に高血圧に移行する確率が高いことがわかっています。

家庭血圧に関しては、心血管病のリスクが最小となるのは、120~127/72~76といわれています。138/83以上では、明らかにリスクが高くなってしまったので、高血圧の基準は135/85となりました。日本でおこなわれた6470人を平均8.3年追跡した研究でも、この基準が妥当としています。

 

3.血圧の正しい測り方

上腕式の血圧計を使って、正しい方法を意識して、1日朝夕2回測りましょう。

家庭血圧は診察室で測る血圧よりも精度が高く、診断・治療の重要な情報になります。ですから、できれば血圧の自己測定をしていきましょう。血圧計は大きく分けて3種類あります。指式・手首式・上腕式ですがが、上腕式を購入しましょう。手首式や指式は不正確な測定になってしまいます。

血圧計で測定を開始すると、腕にまいたベルト(カフ)に圧が加わり、上腕動脈をふさぎます。少しずつ血管に加える圧を落としていき、血流がどの程度の圧で再開するかを、血液の音で確認しています。血流が再開する圧=収縮期血圧、血管の音が聞こえなくなる~拡張期血圧となります。

ですから、カフの付け方と高さに気をつけましょう。肘にかからないようにして、指1本分くらいの余裕をもってカフをまきます。そして背筋を伸ばし、カフが心臓の位置と同じ高さにくるように意識してください。リラックスして測りましょう。血圧の測定は、1日朝・夕の2回が原則です。1回のタイミングで2回の測定を行い、平均をとりましょう。

詳しくは、「血圧を正しく測れていますか?正しい血圧の測り方」をお読みください。

 

4.高血圧診断の流れ

家庭血圧の方が日常での血圧を反映しますので、正確な情報で判断ができます。

病院や健康診断で血圧を測定して高血圧が疑われた時に、すぐに「あなたは高血圧です!」とはなりません。べらぼうに高い場合を除いて、すぐに薬を出す医師は要注意です。

血圧は、1日の中でも変動しますし、状況によっても変化します。ですから血圧が高かったとしても、少なくともあと1回高い状態を確認しないと判断はできません。

また、診察室という状況が血圧に影響してしまうことがあります。診察室で高くなってしまう「白衣高血圧」や、反対に診察室では正常になってしまう「仮面高血圧」などが知られています。

このため、できる限り家庭血圧を測定していただきます。家庭血圧を2週間以上つけていただいて、その結果をみて診断をして治療方針を考えていきます。

日本には4000万台の血圧計があるといわれています。高いものは1~₂万しますが、安いものでしたら3000円程度からあります。ぜひ、高血圧が心配な方は購入して測定してみてください。家庭血圧を測定した結果をもって受診していただければ、すぐに診断して治療を進めていくことができます。

 

まとめ

診察室血圧と家庭血圧で基準が異なります。140/90以下であれば正常域ですが、本当に正常な血圧は120/80以下です。

心血管病のリスクで血圧の基準を考えています。

上腕式の血圧計を使って、正しい方法を意識して、1日朝夕2回測りましょう。

家庭血圧の方が日常での血圧を反映しますので正確です。2週間以上測定した結果をもって、病院で判断してもらいましょう。

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