下の血圧が高い!拡張期高血圧とは?
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
血圧には「上」と「下」の2つの数値があります。みなさんが高血圧と聞いてイメージされるのは、「上」の高血圧です。ですが、「下」の血圧も重要です。
「下の血圧」が高いために高血圧を指摘されても、あまり問題にしない方が多いです。しかしながら「下の血圧」は、不摂生を反映する値なのです。
ここでは、「下」の血圧である拡張期血圧の意味をわかりやすく説明し、この数値が高いことの意味を考えていきたいと思います。
1.血圧とは?
血圧を考える時は、「タンクのついた自転車の空気入れ」を考えるとわかりやすいです。
「ポンプ=心臓」、「空気をためておくタンク=太い血管」、「先端のホース=末梢血管」と考えてみてください。自転車の空気入れのポンプを押すと、タンクに空気がたくわえられます。このため、ポンプを引いているときにもタンクからホースに一定の空気が流れるようになっています。
血圧も同じように考えてみましょう。心臓がポンプの役割をしていて、血液を押し出す時の力が収縮期血圧(上の血圧)、拡張して血液の流れが緩やかな時が拡張期血圧(下の血圧)です。
血管の弾力があると血液をたくわえることができて、タンクの役割を果たします。動脈と毛細血管をつないでいる細動脈から先を末梢血管といいます。ホースから一定の空気が流れるように、末梢血管でも一定の血圧で血液が流れています。
心臓のポンプを動かしても、タンクである血管の弾力でストックされます。そして、タンクからホースである毛細血管へは、一定の血圧で血液が流れていきます。
2.血圧はどのようにして決まるの?
「心拍出量=ポンプの力」と「末梢血管抵抗=ホースがきつくなること」で決まります。
血圧は、心拍出量の増加と末梢血管抵抗によって増加します。先ほどの「空気入れ」で考えると、
- 心拍出量の増加=ポンプの力の増加
- 末梢血管抵抗=ホースがきつくなること
を意味します。
ポンプの力が強くなる原因としては、大きく3つあります。
まずは交感神経が活性化される場合です。具体的には、脱水や貧血で血液をたくさん回さないといけない時や、甲状腺ホルモンがたくさん出て心臓にムチをうつ時などです。
また、食塩が多いと血液の量が増えます。腎臓でNaをうまく捨てられない時も、血液の量が増えてしまいます。このため、ポンプの力が強くなります。
ホースが詰まる原因としては、ホースが収縮して小さくなった時やホースが硬くなった時、中を流れるものがネバネバしていて流れにくくなった時です。
交感神経が活性化されると血管が収縮します。また、レニン・アンジオテンシンというホルモンが働くと、血管が収縮して身体をめぐる血液の量も増えます。動脈硬化がすすんでいると、ホースが硬くなるのでつまりやすくなります。
心拍出量の増加は収縮期血圧と関係強く、末梢血管抵抗は拡張期血圧と関係が強いです。
3.加齢での血圧変化
動脈硬化に伴って、収縮期血圧は上昇して拡張期血圧は低下します。脈圧と平均血圧が大きくなります。
血圧は加齢に従って全体的に上がっていきます。収縮期血圧は右肩上がりに上がっていきますが、拡張期血圧は変化があります。最初はあがっていくのですが、50~60歳になるあたりで下がっていきます。これによって、収縮期と拡張期の血圧の差である脈圧が大きくなります。
これは動脈硬化が進んでいくことが原因です。動脈硬化が進んで血管の弾力がなくなると、タンクの容量が小さくなっていきます。
極端な例として、「空気入れ」のイメージで、タンクがなくなってしまった場合を考えてみましょう。ホースの空気は、ポンプの影響をダイレクトに受けてしまいますね。血圧に置き換えると、血管の弾力というタンクがなくなるので、収縮期血圧は上昇し拡張期血圧は低下してしまうのです。
4.拡張期血圧だけが高くなる原因
ホースだけがつまりやすくなっている状態で、肥満・運動不足・飲み過ぎ・喫煙などが原因です。
拡張期血圧は、末梢血管抵抗との関係が強いです。つまり、ホースがつまりやすくなる要因である血管収縮・動脈弾性の低下・血液粘性の増加が原因となります。
ほとんどの場合で、拡張期血圧が高ければ同じように収縮期血圧が高くなります。先ほどあげた原因の中で、交感神経やレニン・アンジオテンシン系のホルモンは、ポンプの力にも影響しますので収縮期も拡張期も高くなります。
拡張期血圧だけが増加するのはどのような時でしょうか?
この状況は、末梢の血管だけがしめられていて、太い血管は弾力が保たれている時に起こります。つまり、ポンプもタンクも問題ないけれども、ホースがつまりやすい時におこります。
収縮時ほどの高い血圧でしたらホースを通るのもたやすいですが、拡張期では血圧を高くしないとホースを通過できません。このため拡張期だけ上がってしまうのです。
このような状態になるのは、60歳までの青年~壮年の方です。肥満や運動不足、お酒や喫煙などによって、末梢血管だけが閉塞しやすくなっている方にみられます。ですから、生活習慣の改善がなによりも重要です。
収縮期血圧と比べると拡張期血圧は心臓病のリスクに直結しません。ですが、収縮血圧とは異なる原因が隠れているので、拡張期高血圧にも注意していかなければいけません。
まとめ
血圧を考える時は、「タンクのついた自転車の空気入れ」を考えるとわかりやすいです。
血圧は、「心拍出量=ポンプの力」と「末梢血管抵抗=ホースがきつくなること」で決まります。
動脈硬化に伴って、収縮期血圧は上昇して拡張期血圧は低下します。
拡張期血圧だけが高い状態は、ホースだけがつまりやすくなっている状態です。肥満・運動不足・飲み過ぎ・喫煙などが原因です。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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