アスコマーナ錠の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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アスコマーナは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬ハルシオンのジェネリック医薬品(後発品)です。ハルシオンは1983年から発売されていますので、すでにジェネリック医薬品も多数発売されています。

ジェネリック医薬品も、昔はいろいろな製薬会社がそれぞれの商品名をつけて販売していました。アスコマーナもそのひとつです。いろいろな商品があると紛ら わしくなってしまったり、管理が大変になってしまいますね。最近では、一般名(成分名)の「トリアゾラム」をジェネリックとして処方することに統一されつつ あります。アスコマーナはまだ生き残っています。

アスコマーナは、効果が強くて切れ味のよい睡眠薬です。入眠障害の患者さんにはとても有効ですが、副作用や依存性が問題になります。ここでは、アスコマーナの効果と副作用について、詳しく見ていきたいと思います。

 

1.アスコマーナの特徴

アスコマーナでは、脳の活動を抑えることで睡眠をもたらします。まずはじめに、アスコマーナの特徴をメリットとデメリットに分けてみていきましょう。それを踏まえて読み進めていただければ、より理解が深まるかと思います。

 

1-1.アスコマーナのメリット

  • 即効性がある
  • 入眠障害に有効
  • 翌朝への持ち越し効果が少ない
  • 効果が早くて強い

アスコマーナには即効性があります。飲み続けているとジワジワ効いてくるようなお薬ではなく、薬を飲みはじめたその日から効果が期待できます。眠れないのはつらいので、早く抜け出したいですよね。また、睡眠薬の半減期をみれば作用時間を予測することができます。アスコマーナは作用時間が短いので、入眠障害に有効な睡眠薬です。

アスコマーナは睡眠薬の中でも効果が出てくるのが早く、また効果も比較的に強いです。このため、スッと効いてスッと抜けていくような非常に切れ味のよい睡眠薬といえます。睡眠薬の効果が翌朝にも続いてしまって眠気がでてくるようなことは少ないです。

 

1-2.アスコマーナのデメリット

  • 中途覚醒や早朝覚醒には効果なし(作用時間が短い)
  • 睡眠の質が落ちる
  • ふらつきが出やすい
  • 健忘の副作用が多い
  • 依存性が高く、離脱症状・反跳性不眠が多い

アスコマーナの作用時間は非常に短いです。このため入眠障害には有効ですが、中途覚醒や早朝覚醒には効果があまり期待できません。また、寝つきはよくなるのですが、睡眠の質が落ちてしまうというデメリットがあります。浅い睡眠が増えてしまい睡眠のメリハリが悪くなってしまいます。睡眠時間はしっかりと寝たのに疲れがとれない、寝不足感がある、となってしまうことがあります。

また、副作用に注意する必要があります。アスコマーナでは筋弛緩作用もあるので、ふらつきには注意が必要です。高齢者では、夜にトイレで目覚めることも多くなります。薬が効いてふらついたままトイレに行くと、転倒してしまって骨折してしま うこともあるので注意が必要です。

アスコマーナは作用時間が短い睡眠薬ですので、健忘の副作用は出やすいです。急激に効果がでる睡眠薬では中途半端な覚醒状態にしてしまうことがあります。この健忘を面白がって、「ハルシオン遊び」といって乱用されることもありました。また、効果も強い睡眠薬なので依存性も高いです。薬をやめていく時に、イライラや不安などの離脱症状や不眠がよけいに悪化する反跳性不眠などがみられることが多いです。

 

2.アスコマーナの作用時間と効き方

アスコマーナは半減期が2.9時間の超短時間型睡眠薬です。寝つきに効果を発揮する睡眠薬です。

アスコマーナを服用すると0.8時間で血中濃度がピークになり、そこから2.9時間かけて半分の量まで身体からぬけていきます。ですから、寝る前にハルシオンを服用すると、10~15分くらいですぐに効果がでてきて寝つきをスムーズにしてくれます。ですが、寝ている間に薬の効果がきれてしまって、睡眠の後半になると薬の効果はなくなってしまいます。

この2.9時間というのを「半減期」といいます。薬の濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間を考える目安になります。ハルシオンは半減期が非常に短い「超短時間型」に分類されます。

睡眠薬のタイプ(作用時間)と特徴をまとめました。

睡眠障害にもいろいろなタイプがあります。寝つきが悪い「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、明け方に目が覚めてしまう「早朝覚醒」。睡眠障害のタイプに合わせて、睡眠薬の作用時間を変えていく必要があります。アスコマーナは、基本的には入眠障害に使うお薬です。すぐに効果がでてきますので、ベットに入る直前にお薬を飲むようにしてください。

アスコマーナはベンゾジアゼピン受容体に強く働くので、効果の強い睡眠薬です。まずは少量の0.125mgから始めることが多いです。効果を見ながら、0.25mgまで増量します。どうしても効果が不十分な場合に限って0.5mgまで増量ができます。

 

3.睡眠薬での作用時間の比較

半減期をもとに、睡眠薬の作用時間を予想することができます。

代表的ンな睡眠薬の作用時間(半減期)を比較しました。

睡眠薬の作用時間の違いを比較してみましょう。

薬の効果を見る時は、最高血中濃度到達時間(ピーク時間)と半減期をみていきます。

最高血中濃度到達時間が短いほど、効きが早いということですね。ほとんどの睡眠薬が1~3時間になっているかと思います。中間型や長時間作用型では長いものがありますね。これらのお薬では即効性はあまり期待できません。

 

半減期をみると作用時間が予想できます。アスコマーナをはじめとした超短時間型や短時間型では、即効性を期待して使われます。入眠障害だけで困っているならばアスコマーナなどの超短時間型、中途覚醒で困っているならば半減期の長い短時間型がよいでしょう。

中間型や長時間型は、身体に薬が少しずつたまっていくことで寝付きやすい土台を作るようなお薬です。中間型は4~5日かけて、長時間型は1週間以上かけて効果が安定します。

 

4.アスコマーナの副作用

アスコマーナで注意すべき副作用は、どのようなものがあるでしょうか?対策も踏まえてみていきましょう。

 

4-1.眠気の翌朝への持ち越し

アスコマーナでは少ないです。睡眠時間を確保しても変わらない場合、減量したり、作用時間の短いマイスリーに変更します。

睡眠薬は夜だけに効いてくれれば理想ですね。ですが睡眠薬が効きすぎてしまうと、翌朝まで眠気が続いてしまうことがあります。これを「持ち越し効果(hung over)」といったりします。眠気だけでなく、だるさや集中力の低下、ふらつきなどがみられます。

「眠気が強くて朝起きれない」
「午前中がぼーっとしてしまう」
となってしまうと生活に支障がきてしまいますね。事故などにつながることもあるので注意が必要です。

 

アスコマーナは、超短時間型の睡眠薬に分類されます。半減期は2.9時間と睡眠薬の中では非常に短いので、普通に服用していると翌朝に眠気を持ち越すことはありません。効果が強い睡眠薬なので、体質的にアスコマーナの代謝が悪い方では薬が効きすぎてしまうこともあります。実際に市販後調査では、1.20%の報告があります。

 

このような時は、はじめに睡眠時間がちゃんと確保できるかを確認します。睡眠時間が短かったら、薬の効果が朝に残ってしまうのも当たり前ですものね。その場合は、睡眠時間を確保するようにしていただきます。それでも眠気が翌日に持ち越してしまうようですと、より短い作用時間の睡眠薬に変えるか、アスコマーナを減量していくかになります。

0.25mgや0.5mgを使っていて睡眠も改善できている方では、まずは減量を検討していきます。睡眠薬の量を減らすと作用時間が短くなります。減量すると上手くいかない時は睡眠薬を変更していきます。アスコマーナ自体が非常に作用時間が短い睡眠薬ですので選択肢は少ないですが、より作用時間が短い睡眠薬としてマイスリーに変えてみてもよいでしょう。

 

4-2.健忘

アスコマーナを飲んだらすぐに布団に入って寝るようにしましょう。それでも改善がなければ、減量したり、効果の持続が長い薬に切り替えます。

睡眠薬を服用した後に、記憶することができなくなってしまうことがあります。朝起きると自分でも全く覚えていないのにお菓子の袋が散らかっていたり、友達に電話してしまっていたりします。アメリカの議員がマイスリーを服用した後に、記憶がないままに車の事故をおこしてしまったことを機に注目されるようになりました。

記憶することができないだけですので、不思議かもしれませんが周囲からみると普通に行動しています。当の本人は全く覚えていないので不気味ですし、生活にも支障をきたしますね。

 

睡眠薬を飲んでから物忘れが起こってしまうので、「前向性健忘」といいます。このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうためです。その結果、海馬を中心とした記憶に関わる部分の機能だけが落ちてしまうのです。

前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすいです。

  • 効果の短いタイプの睡眠薬
  • 睡眠薬の量が多い
  • アルコールと睡眠薬を併用した時

このような時には、前向性健忘がおこりやすくなってしまいます。アスコマーナは超短時間型の睡眠薬ですので注意が必要です。もし前向性健忘がみられたときは、まずは睡眠薬を飲んだらすぐに布団に入るようにしましょう。それでも改善がないときは、

  • 効果の長いタイプの睡眠薬に変える
  • アスコマーナを減量する
  • アルコールと一緒に睡眠薬を絶対に飲まない

これらの対策をとっていきましょう。アスコマーナよりも効果の長い、短時間型のレンドルミンやエバミールなどに切り替えを検討していきます。

 

4-3.ふらつき

作用時間が短いので、ふらつきが問題になることは少ないです。ふらつきがみられたら、減量するか、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に変更を検討しましょう。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は睡眠作用を期待して作ったお薬ですが、その他にも筋弛緩作用も働いてしまいます。緊張が強くて肩がこってしまったり、身体に緊張やこわばりがある時はむしろ大歓迎の作用になります。ですが、高齢で足腰が弱っている方に筋弛緩作用が強く出てしまうと、ふらついてしまって危ないです。トイレで夜中に目が覚めた時に、眠気も相まって転倒して骨折してしまうようなこともあります。

アスコマーナは作用時間の短い睡眠薬です。すぐに身体から抜けていく睡眠薬ですので、ふらつきで問題になることは比較的少ないです。とはいっても、市販後調査では1.27%の報告があります。

 

ふらつきがみられた場合、アスコマーナを減量するか、睡眠薬の変更を検討します。アスコマーナを少なくすれば作用も弱くなってしまいますが、ふらつきの副作用も軽減されます。減量が難しい時は、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のマイスリー・アモバン・ルネスタへの変更を検討しましょう。これらは作用が睡眠に特化していて、筋弛緩作用が非常に少ないです。高齢の方では、積極的に切り替えを検討した方がよいかも知れません。

 

4-4.睡眠薬依存

アスコマーナは依存を形成しやすいです。離脱症状や反跳性不眠のために、なかなか薬をやめられなくなる方もいらっしゃいます。

睡眠薬では、依存してしまって止められなくなってしまうことがあります。ですから、ちゃんと出口を見据えて薬を使っていくことが大切です。

依存には大きく3つのポイントがあります。身体依存と精神依存と耐性の3つです。

身体依存とは、薬が急になくなってしまうことで身体がビックリしてしまう状態です。身体が薬のある状態に慣れてしまうことで、急になくなるとバランスが崩れてしまいます。身体の依存です。睡眠薬を急にやめてしまうと、むしろひどい不眠(反跳性不眠)や体調不良(離脱症状)におそわれることがあります。

精神依存とは、精神的に頼ってしまうということですが、これは効果の実感の強さが重要です。効果が早く実感され、効果がきれる実感が大きいものほど精神的に頼ってしまいます。心の依存です。不眠は非常につらいですから、睡眠薬には頼ってしまうようになります。

耐性とは、薬が体に慣れてしまい効果が薄れていくことです。はじめは1錠で効いていたのに少しずつ眠れなくなってしまう時は、耐性が形成されています。

 

睡眠薬の依存を心配されている方は多いですが、アルコールに比べたらマシです。過度に心配することはありません。医師の指示通りの量を守って服用していれば、ほとんど問題ありません。睡眠薬依存が本当に問題になるのは、睡眠薬の量がどんどん増えて大量になってしまう方です。耐性ができて薬が効かなくなっていき、その結果どんどん薬の量が増えているのです。このような方は注意が必要ですが、ちゃんとある程度の量でコントロールできているならば大丈夫です。

 

アスコマーナは効果も強くて切れ味のよい睡眠薬です。このため効果の実感も強く、依存しやすい睡眠薬です。漫然とした使用は必ず避けなければいけません。

アスコマーナなどのベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の方が依存性は少ないです。できれば非ベンゾジアゼピン系のマイスリー・アモバン・ルネスタなどが使えれば理想的です。

そして、睡眠薬とアルコールの併用は絶対にやめましょう。眠れないから寝酒をしている方も多いかも知れませんが、これは睡眠には悪影響です。それに加えて睡眠薬と併用すると、依存が一気に形成されてしまいます。絶対にやめましょう。

 

詳しく知りたい方は、
ハルシオンの離脱症状や反跳性不眠とは?
ハルシオンの依存性とは?
をお読みください。

 

5.アスコマーナが向いている人とは?

  • 寝つきだけが悪い方
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬で効果がなかった方

アスコマーナを寝る前に服用すると、10~15分くらいですぐに効果がでてきて寝つきをスムーズにしてくれます。ですが、アスコマーナは睡眠薬の中でももっとも作用時間が短い睡眠薬です。寝ている間に薬の効果がきれてしまって、睡眠の後半になると薬の効果はなくなってしまいます。

このため、途中で目が覚めてしまうような中途覚醒の方には向いていません。寝つきが悪い入眠障害だけで悩んでいる方には非常に有効です。寝つきだけで困っている方には一番効果があるといっても過言ではありません。

アスコマーナは効果が強いのですが、ふらつきや健忘などの副作用が多く、依存性も高い睡眠薬です。このため、はじめから使う睡眠薬とはいえません。まずは副作用や依存性の低い非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を使っていきます。マイスリーやアモバンやルネスタといった睡眠薬です。これらの睡眠薬では効果が不十分な場合、アスコマーナを試してみましょう。アスコマーナを使ったとしても漫然と使わないようにしましょう。

 

6.一般名と商品名とは?

一般名:トリアゾラム 商品名:ハルシオン・アスコマーナ

まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。

一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「トリアゾラム(triazolam)」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。

商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「ハルシオン(halcion )」は、製造元であるファイザー社がつけた名前です。古代ギリシャの伝説の鳥Halcyonに由来していて、この鳥は風と波を静め、穏やかな海にする不思議な力をもっていると言い伝えられています。ハルシオンにも不眠を静めてほしいという気持ちをこめているのでしょう。

 

ハルシオンは、日本では1983年から発売されています。すでに特許もきれて、ジェネリック医薬品もいろいろなものが作られました。アスコマーナもそのうちのひとつで、他にもハルラック、ミンザイン、パルレオン、トリアゾラムなどのジェネリックが発売されました。こんなに種類がありますと患者さんも違う薬と誤解して しまいますし、医療機関での薬の管理も大変になってしまいます。

このため現在では、「トリアゾラム」という一般名(成分名)に統一がすすめられています。トリアゾラ ム「会社ごとの名称」といった形になっています。ミンザイン・パルレオンは2013年にこの流れを受けて、それぞれトリアゾラム「日医工」・トリアゾラム 「テバ」に名称変更となっています。今後もハルシオンのジェネリックとしては、トリアゾラムとして発売されることが増えてくると思います。

 

アスコマーナの効果や副作用について詳しく知りたい方は、
ハルシオン錠の効果と強さ
ハルシオンの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

まとめ

アスコマーナは、GABAの働きを強めて脳の活動を抑えます。

アスコマーナのメリットとしては、

  • 即効性がある
  • 入眠障害に有効
  • 翌朝への持ち越し効果が少ない
  • 効果が早くて強い

アスコマーナのデメリットとしては、

  • 中途覚醒や早朝覚醒には効果なし(作用時間が短い)
  • 睡眠の質が落ちる
  • ふらつきが出やすい
  • 健忘の副作用が多い
  • 依存性が高く、離脱症状・反跳性不眠が多い

アスコマーナが向いている方は、

  • 寝つきだけが悪い方
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬で効果がなかった方

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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