ポンタールの副作用と安全性
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ポンタール(一般名:メフェム酸)は、解熱鎮痛剤として多くの人に使用されています。ポンタールは、NSAIDsとして現在最もよく使われる解熱鎮痛剤の1種類です。
ただしよく使われているからといって、全く安全というわけではありません。NSAIDsは副作用として、胃腸障害が問題になります。また妊娠後期の方含めて、使用することができない人もいます。
ここでは、ポンタールにどのような副作用があり、どのような方が使えないのかみていきましょう。
1.ポンタールの副作用の特徴
ポンタールの副作用として気を付けるべきものとして、胃腸障害と腎障害があります。
ポンタールの添付文章では、総症例12,070例(散剤を含む)中、795例(6.59%)に副作用が認められました。主な副作用は、
- 消化器-胃腸障害(0.90%)
- 悪心(0.88%)
- 下痢・軟便(0.55%)
- 過敏症-発疹(0.31%)
と報告されています。一番多いのは、消化器症状などの胃腸障害です。これは、ポンタールがアラキドン酸カスケードのCOXという物質を阻害するためです。COXは、1と2に分けられます。
- COX-1は胃粘膜、血小板などを含め多くの細胞に常に発現しており、痛みの症状とは無関係です。逆にCOX-1を邪魔することで胃が荒らされて胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる副作用が出現します。
- COX-2は、体が炎症など種々の刺激を受けると、関連細胞で発現が増します。これが阻害されると、痛みや炎症を引き起こすサイトカインの産生が抑えられます。つまりNSAIDsは、COX-2に結合することで鎮痛作用を発揮するのです。
ポンタールは痛みの原因となるCOX-2を抑えると同時に、胃の粘膜を保護するCOX-1も阻害してしまうため胃があれてしまうのです。このことが結果として、腹痛や嘔気につながります。この副作用はポンタールに特徴的というよりは、ポンタール含めてNSAIDsに特徴的な副作用です。
副作用の対策について詳しく知りたい方は、「ロキソニンの副作用と安全性」を一読してみてください。
ロキソニンとポンタールは、同じNSAIDsなのでほぼ対策は同じです。
2.ポンタールが使用できない疾患は?
ポンタールは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍がある人には使用できません。また、アスピリン喘息の方は使用できません。
ポンタールの添付文章では、
- 消化性潰瘍のある患者[消化性潰瘍が悪化することがある。]
- 重篤な血液の異常のある患者[血小板機能障害を起こし、悪化するおそれがある。]
- 重篤な肝障害のある患者[副作用として肝障害が報告されており、悪化するおそれがある。]
- 重篤な腎障害のある患者[急性腎不全、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがある。]
- 重篤な心機能不全のある患者[心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある。]
- 重篤な高血圧症のある患者[血圧を更に上昇させるおそれがある。]
- 本剤の成分に過敏症の既往歴のある患者
- アスピリン喘息[喘息発作を誘発することがある。]
- 過去にポンタールで下痢を起こした患者[ポンタールに対し耐薬性を失い、下痢を再発することが多い。]
- 妊娠後期の婦人
となっています。この中で注意が必要なのは、
- 胃腸障害
- アスピリン喘息
の2つです。
②~⑥は、「重篤な」という一言がついています。基本的にどの疾患にしろ重篤な状態であれば、入院で加療することがほとんどです。特に上記にあげられる病態は、命に関わることが多いです。そのためこれらの②~⑥でポンタールの使用に注意するのは、患者さん側ではなく処方する医師側になります。
そのため患者さんにとって気を付けるとするならば、消化性潰瘍とアスピリン喘息の2つになります。
ポンタールは副作用で説明したように、痛みの原因となるCOX-2を抑えると同時に、胃の粘膜を保護する物質も阻害してしまうため胃があれてしまうのです。ここで大切なことは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と知らずにポンタールを連用してしまうことです。
ポンタール=万能薬と考えている人は、お腹の痛みに対してもポンタールを飲んでしまう人が多いです。しかしそのお腹の痛みの原因が胃潰瘍や十二指腸潰瘍であれば、逆にポンタールを飲んだせいで病状が悪化してしてしまいます。そのため腹痛の人は、絶対にポンタールを安易に飲まないようにしましょう。
またアスピリン喘息は、喘息の中でもかなり特殊な病態です。喘息は、もともとは気道の慢性炎症によって気管支が狭くなる病気です。一般的には、Ⅰ型アレルギーに属します。Ⅰ型アレルギーは、好酸球やIgEが関与するアレルギー疾患で、他には花粉症や蕁麻疹などが挙げられます。
しかし最近、アレルギー以外が原因となる喘息があることが分かってきました。実はこの非アレルギー性の喘息の方が、対策もしづらく難治性といわれています。アレルギーではないということは分かっているのですが、細かい機序までは解明できていないためです。アスピリン喘息は、この非アレルギー性の喘息のひとつになります。
アスピリン喘息について詳しく知りたい方は、「痛み止めで喘息に?アスピリン喘息の症状と特徴」を一読してみてください。
アスピリン喘息の人にポンタールを使用し続けると重篤な喘息発作が出現するため、必ず避ける必要があります。
この2つに加えて、ポンタールで下痢などの副作用を起こした方は禁忌となっています。これは、ポンタール特有の一文です。ポンタールで下痢を起こした人は、再度使うと下痢になりリスクが高いためです。
このためポンタールで下痢を起こした人は、気を付けて使用するようにしましょう。
3.ポンタールで注意するべき疾患は?
消化管潰瘍が過去にあった人は、やはり注意が必要です。
上記の状態の方は、添付文章上では使用してはいけないとされている方です。ただし上記以外の方でも、添付文章には以下の疾患の方は気を付けるように記載されています。
- 消化性潰瘍の既往歴のある患者[潰瘍を再発させることがある。]
- 血液の異常又はその既往歴のある患者[溶血性貧血等の副作用が起こりやすくなる。]
- 肝障害又はその既往歴のある患者[肝障害を悪化又は再発させることがある。]
- 腎障害又はその既往歴のある患者[浮腫、蛋白尿、血清クレアチニン上昇、高カリウム血症等の副作用が起こることがある。]
- 心機能異常のある患者[心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある]
- 過敏症の既往歴のある患者
- 気管支喘息の患者[病態を悪化させることがある。]
- 潰瘍性大腸炎の患者[病態を悪化させることがある。]
- クローン病の患者[病態を悪化させることがある。]
- SLE(全身性エリテマトーデス)の患者[病態を悪化させることがある。]
- 食道通過障害のある患者[食道潰瘍が起こることがある。]
上記であげた疾患のうち、血液・肝臓・腎臓・心臓は重篤ではなくとも悪化することがあるため、注意が必要となっています。しかし、これらの疾患はポンタールの副作用でも悪くなるし、風邪などの病気でも悪くなることは多々あります。
また、一度でもポンタールで腎臓や肝臓などが悪化したことがあれば、その旨を医師に伝えることが重要になるので覚えておきましょう。
ここでも最も問題になるのは、過去に胃潰瘍や十二指腸潰瘍があった人です。医師の中でも、過去に胃潰瘍が十二指腸があったというだけで禁忌の扱いにして、ポンタールを処方しない方もいます。
また、食べた食べ物が最初に通過する食道に何か異常がある方も注意するように記載されています。食道で薬がとどまった場合、食道も潰瘍ができるリスクがあるためです。
そのため、もし胃潰瘍や十二指腸潰瘍、食道の異常が疑われて、ポンタールが内服できるか知りたい方は、一度胃カメラで精査することをお勧めします。また安定していたとしても、ムコスタなどの胃薬と一緒に飲むことで胃の粘膜を守ることが必要です。
アスピリン喘息だけでなく、ポンタールによって気管支喘息も起こりやすくなると記載されています。ただし喘息に関してはポンタールの副作用というよりも、病気によるストレスで喘息発作を起こすことのほうが多いです。
さらに、ここには記載していない疾患で気を付けるべき疾患がインフルエンザです。インフルエンザの方にポンタールを使用した場合、インフルエンザ脳症になるリスクがあります。添付文章では重要な基本事項として、
小児のインフルエンザに伴う発熱に対しては、原則として本剤を投与しないこと。
と記載されています。インフルエンザは小児に限らず、一般的にはカロナールなどの解熱薬が使われており、NSAIDsは避けられる傾向にあります。
ここで大切なのは、流行時期にインフルエンザを完全否定することが難しい点です。インフルエンザキットで検査して陰性だからといって、インフルエンザを完全に否定したわけではありません。むしろインフルエンザは、発症12時間から24時間以内はインフルエンザキットが陰性でも十分にインフルエンザの可能性があります。
詳しく知りたい方は、「インフルエンザの検査方法と検査のタイミングは?」を一読してみてください。
そのためインフルエンザが流行している時期の発熱は、まずインフルエンザと考えてポンタールを内服しない方が無難と考えられます。
4.ポンタールと併用してはいけない薬はないの?
ポンタールは、併用するのに注意が必要なお薬もあります。
ポンタールの添付文章では、特に併用してはいけない薬はありません。ただし、他にも併用するのに注意が必要なお薬はあります。
- ワルファリン(抗凝血作用を増強するおそれがあるため)
- 炭酸リチウム(血中リチウム濃度を上昇させる恐れがあるため)
- チアジド系利尿薬 (利尿・降圧作用を減弱するため)
- 降圧薬(アンジオテンシン阻害薬など)(降圧作用が減弱するため)
の4つが挙げられています。もしこれらのお薬を使用して気になる人は、一度医師に相談してみましょう。ただしこれらのお薬は、他のNSAIDsでもほぼ慎重投与になるため注意が必要です。
5.ポンタールとアルコールは一緒に摂取して良いの?
ポンタールは胃腸を悪くするお薬です。胃を荒らす可能性があるアルコールと一緒に内服するのは、勧められません。
ポンタール含めてNSAIDsは、胃腸障害が最も多い副作用のお薬です。そのため、空腹に飲むことは勧められていません。一方で食事の時に、お酒を飲みながらポンタールを飲んでも良いかという質問をよく受けます。
結論としては、アルコールで一緒にポンタールを内服しない方が安全です。ポンタールと一緒にアルコールを摂取することで、胃腸を荒らす可能性があるからです。
特にポンタールを内服するということは、体にどこか異常があるということです。そしてポンタールはその異常を治すお薬ではなく、痛みや熱を感じなくしづらくするお薬です。
そのため、「頭が痛いけど飲み会だからポンタールを飲んで頑張ろう」などと無理をしてしまうと、かなり負担がかかることになります。
どんな病気も、基本は安静にして休むことが一番になります。ポンタールを飲むくらい体調が悪いのであれば、アルコール自体なるべく避けるようにしましょう。
6.ポンタールは、高齢者・小児・妊婦には使用できるの?
ポンタールは、高齢者には慎重に投与するように記載されています。ポンタールは、新生児も含めて小児に投与可能なお薬です。妊娠後期の妊婦の方は使用できないので、注意が必要です。
まずご高齢の方ですが、ポンタールは高齢者に対しては慎重に投与するように記載されています。理由としては副作用が出やすいためとあります。特に上の文章をもう一度見て欲しいのですが、
- 腎臓
- 血液
- 肝臓
- 心臓
ポンタールは、熱を出してる原因を治療するものではありません。どうしても若年者よりも免疫機能も落ちているため、ポンタールで様子を見ていたらあっという間に状態が悪くなったということが多々あります。
また小児に関しては、ポンタールは年齢の制限がありません。新生児に関しても、ポンタールシロップの添付文章では、
新生児には極度の体温上昇などやむを得ない場合にのみ投与すること。[新生児は一般に体温調節機構が不完全なため、本剤の投与により過度の体温低下を起こすおそれがある。]
となっています。他のNSAIDsでは、「安全性が確立されていない」となってしまいますが、ポンタールは「やむを得ない場合投与すること」と記載されています。
ただし、ポンタールを乱用して良いわけではありません。ポンタールは、痛みや熱を一時的にごまかしているだけです。ですから、本当に赤ちゃんが辛そうな時のみ使用しましょう。軽症な時に使用したからといって、風邪が早く治るわけではありません。
妊婦の方は、ポンタールはかなり注意が必要です。ポンタールはお腹の赤ちゃんへ血液を介して移行するため、「動脈管閉塞」が生じることが報告されています。
お腹の中にいる赤ちゃんは羊水の中にいるために、自分自身で息を吸ったり吐いたりすることができません。そのため赤ちゃんは、お母さんが吸った酸素をもらって体に酸素行き渡らせます。その酸素を運ぶ血液の経路ですが、心臓から出た血液の大半は動脈管を介して大動脈に流入して全身に行きます。
つまり心臓と体を結ぶ大切な血管が動脈管なのです。そこが閉塞すると、心臓から流出する血液が体に行き渡らなくなってしまい、非常に重篤な状態になります。ポンタールはこの動脈管を塞いでしまいます。動脈管の働きが重要になるのが妊娠後期です。そのため妊娠後半には、絶対にポンタールを飲まないでください。
また添付文章には、産後にお母さんがポンタールを飲んだ際は、授乳は避けるようにと書かれています。赤ちゃんにポンタールの成分が移行するからです。しかしこれも医師の考え方によってまちまちで、一定の見解は得られていません。
もしポンタールが心配な人は、カロナールなどNSAIDs以外の痛み止めを処方してもらうと良いかもしれません。
まとめ
- ポンタールは胃腸障害副作用であります。
- 胃潰瘍がある人は注意が必要です。
- ポンタールはどのようなお薬とも一緒に飲んで絶対ダメな薬はありません。
- ポンタールとアルコールは一緒に摂取しないようにしましょう。
- ポンタールは新生児も含めて投与できるお薬です。
- ポンタールをインフルエンザに投与しないようにしましょう。
- ポンタールは妊婦の方には注意が必要です。特に妊娠後期には使用しないようにしましょう。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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