精神安定剤・抗不安薬の種類とは?
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
精神安定剤とは、一般的には抗不安薬のことを意味します。脳の機能を抑えることで気持ちを落ち着かせるお薬で、そのほとんどがベンゾジアゼピン系に属します。
今日では、さまざまな精神安定剤が開発されています。患者さんの不安の状態にあわせて、医師は精神安定剤を選んで処方しています。現在の精神安定剤は安全性が高くなってはいますが、もちろん副作用もあります。漫然と使っていると依存してしまうこともあるので、注意が必要です。
精神安定剤にはどのような種類があるのでしょうか?
ご自身が飲まれている精神安定剤はどのようななお薬なのでしょうか?
正しく理解して、精神安定剤を適切に使っていくことが大切です。ここでは、精神安定剤にはどのような種類があるのか、特徴をふまえてご紹介していきたいと思います。
1.精神安定剤の開発の歴史
現在使われている精神安定剤は、その大部分がベンゾジアゼピン系抗不安薬になります。
精神安定剤の開発の歴史は、1950年代にはじまります。それまで抗不安効果のあるお薬としては、睡眠薬として使われていたバルビツール酸系のお薬でした。催眠作用が強いだけでなく、パルビツール酸系のお薬は耐性(薬が慣れて効かなくなること)や依存性を形成しやすく、呼吸中枢を強く抑制してしまい、死に至ることもありました。
1950年代になってから、ベンゾジアゼピン系のお薬としてクロルジアゼポキシドが発見されました。このお薬は1960年代に入って発売され、現在でもバランス/コントールとして生き残っています。すぐに、このお薬の効果を強めたものとしてジアゼパム(セルシン/ホリゾン)が開発されると、その効果と安全性のバランスのよさから一気に広まりました。それ以後、さまざまな精神安定剤が開発されるようになります。
精神安定剤には抗不安作用だけでなく、催眠作用や筋弛緩作用があります。このため、作用時間が長いお薬では、薬が蓄積して眠気やふらつきが多くなってしまいます。これを解決するために、作用時間が短くて切れ味のよいソラナックス・ワイパックス・デパスといったお薬が開発されていきました。
とても効果的なお薬だったのですが、次第に耐性や依存性の問題が表面化して、作用時間が長いお薬の必要性が高まってきました。この流れの中で作用時間が長いけれども副作用が少ないお薬としてメイラックスが開発されました。ベンゾジアゼピン系は開発しきってしまった感があり、メイラックス以後は新しいお薬が作られていません。
日本で発売されている精神安定剤は、そのほとんどがベンゾジアゼピン系です。ベンゾジアゼピン系でない精神安定剤は、唯一アザピロン系のセディールだけです。
それでは、それぞれの精神安定剤についてみていきましょう。
2.ベンゾジアゼピン系抗不安薬
- グランダキシン
- リーゼ
- デパス
- レキソタン
- ワイパックス
- ソラナックス・コンスタン
- セルシン・ホリゾン
- セパゾン
- リボトリール・ランドセン
- メイラックス
- その他(コレミナール・バランス・コントール・セレナール・レスミット・エリスパン・メレックス・メンドン・レスタス)
ベンゾジアゼピン系は、GABAの効果を増強することで効果を発揮します。GABAは脳の興奮を鎮める働きのある物質ですので、脳の活動が抑えられます。これによって、抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれんの4つの作用が期待できます。
お薬によって、それぞれの作用の強さと作用時間が異なります。この2つのポイントを意識して、適切なお薬を選んでいきます。
副作用としては、眠気やふらつきなどがあります。また、耐性(薬が身体に慣れて効かなくなること)や依存性が認められるので、漫然とした使用には気を付けなければいけません。
3.アザピロン系抗不安薬
ベンゾジアゼピン系以外の抗不安薬というと、日本ではセディールしかありません。このお薬は、セロトニンに作用することで効果を発揮します。
セロトニンは、神経と神経の橋渡しを行う神経伝達物質と呼ばれています。セロトニンは精神安定作用があるとして知られています。セディールは、セロトニン1A受容体部分作動薬です。部分作動薬とは少しだけ作用するお薬で、セロトニンが多い時は抑えるように働き、セロトニンが少ない時は増やすように働きます。このため、セディールはセロトニンのバランスを整えるお薬です。
このため、ベンゾジアゼピン系抗不安薬とは効き方が異なります。即効性はあまり期待できず、2~4週間服用を続けることで効果が発揮されます。効果の実感は薄く、「何となく気にならなくなってきた」というような効き方をします。精神安定剤としての強さといわれると、弱いと言わざるを得ません。
このようなお薬なので、依存性や耐性の心配はありません。また、眠気やふらつきといった副作用も非常に少ないです。
4.精神安定剤(抗不安薬)の作用時間と強さの比較
抗不安薬には、さまざまな種類が発売されています。抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。
- 作用時間(最高血中濃度到達時間・半減期)
- 4つの作用への強さ(抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれん)
よく使われるベンゾジアゼピン系抗不安薬で、この2つのポイントを比較しながら見ていきたいと思います。
4-1.精神安定剤の作用時間の比較
精神安定剤は、短時間型・中間型・長時間型・超長時間型の4つに分類されます。
作用時間の長さは、4つのタイプに分類することができます。
- 短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は3~6時間
(グランダキシン・リーゼ・デパス) - 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は12~20時間
(ワイパックス・ソラナックス/コンスタン・レキソタン) - 長時間型:効果のピークは1~8時間、作用時間は20~100時間
(セルシン/ホリゾン・リボトリール/ランドセン・セパゾン) - 超長時間型:効果のピークは1~8時間、作用時間は100時間~
(メイラックス・レスタス)
短時間~中間型に関しては、即効性を期待して使うことが多いです。一方で超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ち着かせる土台をつくるようなお薬です。長時間型は即効性も期待できますし、飲み続けていくことで不安を落ち着かせていくこともできます。
作用時間によって副作用も異なってきます。
- 短いほど依存しやすい
- 長いほど身体に薬がたまって眠気やふらつきが出やすい
といえます。
4-2.精神安定剤の強さの比較
精神安定剤は、抗不安作用・催眠作用・筋弛緩作用・抗けいれん作用の4つの作用があります。
患者さんの不安の状態から、どの作用時間の抗不安薬が適切か考えていきます。その上で、作用の強さを比較して選んでいきます。
短時間型では、デパス>>リーゼ>グランダキシンです。デパスは催眠作用が強く、睡眠薬にも分類されることがあります。また、筋弛緩作用も強いので、肩こりなどにも使われます。
中間型では、レキソタン>ワイパックス≧ソラナックス/コンスタンです。いずれも抗不安効果が強く、不安の発作にも使われます。レキソタンは筋弛緩作用が強いです。
長時間型では、ランドセン/ランドセン>セパゾン>セルシン/ホリゾンです。セルシン/ホリゾンには注射があります。服薬ができない時は、筋肉注射が有効です。
超長時間型では、レスタス>メイラックスです。このタイプは非常に作用時間が長いです。このため、副作用が一度出てしまうと抜けるのに時間がかかってしまいます。ですから、副作用の穏やかなメイラックスの方がよく使われています。
4-3.その他の精神安定剤の比較
この他にも、抗不安薬はたくさん発売されています。頻度はかなり減りますが、服用されている方もいらっしゃるかと思います。それぞれのお薬の特徴を表にまとめましたので参考にしてください。
まとめ
現在使われている精神安定剤は、その大部分がベンゾジアゼピン系抗不安薬になります。
精神安定剤を比較するポイントは、作用時間と作用の強さです。
精神安定剤は、短時間型・中間型・長時間型・超長時間型の4つに分類されます。
精神安定剤は、抗不安作用・催眠作用・筋弛緩作用・抗けいれん作用の4つの作用があります。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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