精神安定剤・抗不安薬の注意すべき3つの副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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不安が強い方は、「精神安定剤は怖いから使いたくない」とおっしゃる方も多いです。

「薬を使ったらやめられなくなってしまう」
「精神安定剤は脳に作用するから危険な薬だ」

といったように、誤解されている方が多いです。不安が強いと物事がうまくいかなくなってしまいます。すると、自信がなくなってしまってますます不安になってしまいます。不安はこのように、悪循環におちいりやすいです

精神安定剤を使っていくことで、この悪循環を止めることができます。精神安定剤とは一般的に抗不安薬を指しますが、ちゃんと用法どおりに使っていれば安全性は高くなっています。

ここでは、精神安定剤・抗不安薬のデメリットである副作用を正しく理解して、納得して精神安定剤を使っていただく手助けができれば幸いです。

 

1.精神安定剤・抗不安薬の副作用とは?

精神安定剤は抗不安作用だけでなく、催眠作用・筋弛緩作用・抗けいれん作用があります。このため、眠気やふらつきに注意が必要です。また、依存性にも注意が必要です。

精神安定剤とは、一般的に抗不安薬のことをいいます。日本で発売されている抗不安薬は、そのほとんどがベンゾジアゼピン系にに属します。ベンゾジアゼピン系は脳内のGABAの働きを強めることで効果を発揮します。GABAとは、リラックスさせる脳内神経伝達物質で、脳の活動を抑えることで落ち着かせるお薬です。このため抗不安薬である精神安定剤では、以下の4つの作用が期待できます。

  • 抗不安作用
  • 催眠作用
  • 筋弛緩作用
  • 抗けいれん作用

精神安定剤で期待する効果は、おもに抗不安作用です。しかしながら、催眠作用や筋弛緩作用が強く出てしまえば、眠気やふらつきといった副作用につながってしまいます。とくに眠気は、抗不安薬の中でももっとも多い副作用のため、注意が必要です。

 

また、ベンゾジアゼピン系のお薬では依存性にも注意が必要です。精神安定剤は、長く飲み続けていくと身体に慣れてしまいます。効きが悪くなって、今までの薬では効果が薄れてしまうことがあります。その結果、どんどんお薬の量が増えてしまいます。そこまでいかなくても、離脱症状が起きてやめられなくなってしまうこともあります。

それでは、精神安定剤・抗不安薬で認められる副作用や依存性について、対策も含めてみていきましょう。

 

精神安定剤の効果について詳しく知りたい方は、
精神安定剤・抗不安薬の選び方(効果と強さの比較)
をお読みください。

 

2.精神安定剤の副作用①―眠気

精神安定剤では、「眠気」が多いです。様子を見ても改善しないようならば、抗不安薬の減量か、眠気の少ない薬に変更します。

精神安定剤は抗不安作用を期待するお薬ですが、催眠作用もあるお薬が多いです。お薬が効きすぎてしまったら、眠気も強く出てきてしまいます。

精神安定剤は、日中の不安感や緊張感を和らげるために使っていきます。夜に眠気が出てくる分にはよいのですが、日中には注意が必要です。不安感や緊張感が強い時は、交感神経が活発になっているので眠気どころではありません。ですがお薬を飲んで落ちつくと、もとの自律神経のバランスに戻っていきます。その中で少しずつ眠気の副作用が目立ってくることがあります。お薬の強さの感覚がわかってくるまでは、お薬を服用した後の眠気に注意しましょう。

精神安定剤の副作用としては、ほとんどのお薬で眠気の副作用が一番多いです。このため、注意が必要です。

 

精神安定剤で眠気が認められたときは、どうすればよいでしょうか?

まだ服用して間もないときは、できれば様子をみてください。薬が身体に慣れてくると眠気が薄まって、ちょうど効果だけを実感できるようになるかもしれません。薬の服用時間を変更すれば解決できることもあるので、できることは試してみます。

それでも眠気が続く場合、2つの方法があります。

  • 薬の量を減らす
  • 催眠作用の弱い薬に変える

薬の量を減らせば、当然効果は減ってしまいます。ですが、副作用である眠気も和らいでいきます。効果との兼ね合いではありますが、大丈夫そうでしたら少しずつ減薬をしてみましょう。

それでも眠気が残るようでしたら、催眠作用の弱い薬に変えていきます。

詳しく知りたい方は、
精神安定剤(抗不安薬)の眠気と5つの対策
をお読みください。

 

3.精神安定剤の副作用②―ふらつき・倦怠感

精神安定剤では、「ふらつき」や「倦怠感」に注意が必要です。様子を見ても改善しないようならば、抗不安薬の減量か、眠気の少ない薬に変更します。

精神安定剤には筋弛緩作用も認められます。

筋弛緩作用は、緊張が強くて肩がこってしまったり、身体に緊張やこわばりがある時は、むしろ効果として期待ができる作用になります。ですが、高齢で足腰が弱っている方に筋弛緩作用が強く出てしまうと、ふらついてしまって危ないです。眠気も相まって、転倒して骨折してしまうようなこともあります。身体に力が入らなくて、倦怠感を感じることもあります。

 

精神安定剤でふらつきや倦怠感が認められた場合、どうすればよいでしょうか?眠気と対策は同じになります。

まだ服用して間もないときは、様子を見ていくことでなれていくことがあります。それでも改善がない場合、減量するか、筋弛緩作用の弱い薬に変更するかのどちらかになります。

 

4.精神安定剤の副作用③―依存と離脱症状

精神安定剤には、依存性が認められます。長期にわたる時はSSRIなどの抗うつ剤へと切り替え、漫然と使わないようにしましょう。

精神安定剤では、依存してしまって止められなくなってしまうことがあります。ですから、ちゃんと出口を見据えて薬を使っていくことが大切です。

依存には大きく3つのポイントがあります。身体依存と精神依存と耐性の3つです。

身体依存とは、薬が身体からなくなっていくと離脱症状が起こることです。身体が薬のある状態に慣れてしまうことで、急になくなるとバランスが崩れてしまいます。身体が依存してしまう状態です。ベンゾジアゼピン系抗不安薬を急にやめてしまうと、離脱症状が生じるようになってしまいます。

精神依存とは、精神的に頼ってしまうということですが、これは効果の実感の強さが重要です。効果が早く実感され、効果がきれる実感が大きいものほど精神的に頼ってしまいます。心が依存してしまう状態です。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は効果がしっかりとしていて即効性もあるので、どうしても頼ってしまいます。

耐性とは、薬が体に慣れてしまい効果が薄れていくことです。はじめは1錠で効いていたのに少しずつ効かなくなってしまう時は、耐性が形成されています。

この3つが重なると、どんどんとお薬の量が増えていってしまいます。

 

依存しやすい薬としては、

  • 作用が強い
  • 作用時間が短い

このような特徴があげられます。

依存を防ぐポイントは、以下になります。

  • できるだけ少量・短期間で使う
  • アルコールと一緒に服用しない
  • 作用時間が長い抗不安薬にする

 

依存を心配される方は多いですが、アルコールに比べたらはるかにマシです。お酒を飲んでいる方はいっぱいいますが、アル中になる方はごくわずかですよね?ですから、過度に心配することはありません。医師の指示通りの量を守って服用すれば問題ありません。

そうはいっても、精神安定剤は漫然と使うべきお薬ではありません。あくまで一時的に不安を落ち着けるために使うお薬です。不安の根が深い方は、はじめからSSRIなどの抗うつ剤を併用していきます。抗うつ剤は効果がゆっくりと出てくるので、効果が感じられたらベンゾジアゼピン系抗不安薬を減らしていきます。

詳しく知りたい方は、
精神安定剤(抗不安薬)の離脱症状とは?
をお読みください。

 

5.精神安定剤・抗不安薬の副作用比較

作用時間と4つの作用の強さから、副作用を予想することができます。

精神安定剤の副作用がどうしても改善できない時は、他のベンゾジアゼピン系抗不安薬への変更を検討します。その時は、効果と副作用のバランスをみながら、適切な薬を選んでいきます。

抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。

  • 作用時間(最高血中濃度到達時間・半減期)
  • 4つの作用への強さ(抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれん)

このポイントを意識して、適切な薬を選んでいきましょう。

よく使われている抗不安薬を比較すると、以下のようになります。

代表的な抗不安薬の効果や作用時間について比較した一覧表です。

この他にも、抗不安薬はたくさん発売されています。頻度はかなり減りますが、服用されている方もいらっしゃるかと思います。それぞれのお薬の特徴を表にまとめましたので参考にしてください。

マイナーな抗不安薬の比較

6.精神安定剤の作用時間による副作用の違い

作用時間の短い精神安定剤では依存性が高いです。作用時間が長い精神安定剤では、眠気やふらつきが多いです。

精神安定剤の作用時間によって、どのような副作用の違いがあるのかみていきましょう。

作用時間が短い精神安定剤では、すぐに薬が効いてきますが、薬が身体から抜けていくのも早いです。

このようなお薬では、依存性が問題となります。精神安定剤の服用を続けていくと、少しずつ薬が身体に慣れていきます。作用時間の短い精神安定剤では急激に血中濃度が変化します。身体はできるだけ早く、大きな変化に慣れようとします。このようにして身体にすぐに慣れていきますが、この状態で精神安定剤をやめてしまうと、離脱症状が生じてしまいます。

 

作用時間が長い精神安定剤では、飲み続けていくうちに薬が身体にたまっていきます。薬が身体から抜けるのも遅いです。

このようなお薬では、眠気やふらつきが多くなります。精神安定剤の作用時間が長いと、薬が身体にたまっていきます。次第に眠気やふらつきが強くなってしまうことにも注意しなければいけません。

 

このように、依存性と副作用(眠気とふらつき)はトレードオフの関係になっています。

 

まとめ

精神安定剤は抗不安作用だけでなく、催眠作用・筋弛緩作用・抗けいれん作用があります。このため、眠気やふらつきに注意が必要です。また、依存性にも注意が必要です。

「眠気」と「ふらつき」は、様子を見ても改善しないようならば、抗不安薬の減量か、眠気の少ない薬に変更します。

「依存性」に関しては、長期にわたる時はSSRIなどの抗うつ剤へと切り替えていき、漫然と使わないようにしましょう。

作用時間の短い精神安定剤では依存性が高いです。作用時間が長い精神安定剤では、眠気やふらつきが多いです。

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