メンドンカプセルの効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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メンドンは、1979年に発売されたベンゾジアゼピン系抗不安薬です。副作用をできるだけ少なくしたいと、ジアゼパム(セルシン/ホリゾン)を改良して作られたお薬です。

副作用は軽減されましたが、残念ながら効果も弱くなってしまいました。さらには2週間までしか処方できないという制約があり、ほとんど使われることがないお薬となってしまいました。

抗不安薬は安定剤とも呼ばれたりしますが、不安感や緊張感を和らげてくれるお薬です。リラックスするお薬なので、眠気やふらつきなどの副作用には注意をしなければいけません。

ここでは、メンドン錠の効果と副作用について詳しくみていきたいと思います。他の抗不安薬とも比較しながら、どのような方にメンドンが向いているのかを考えていきましょう。

 

1.メンドンの効果と特徴

まずは、メンドンの特徴をまとめてみたいと思います。

メンドンは、脳の活動を抑えることで落ち着かせてくれるお薬です。これにより、以下の4つの作用があります。

  • 抗不安作用「やや弱い」
  • 催眠作用「弱」
  • 筋弛緩作用「弱」
  • 抗けいれん作用「中」

となっています。これをふまえて、メンドンの特徴をメリットとデメリットに分けてみていきましょう。

 

1-1.メンドンのメリット

  • 作用時間が長い
  • 依存性が低い

メンドンは作用時間が長いです。メンドンは、身体で代謝(分解)されていく過程で様々な物質に変化します。これらの物質が効果をもっているので、作用時間が長くなります。少しずつ活性代謝産物が身体にたまっていくので、不安になりにくい土台ができていきます。

抗不安薬にはいずれも依存性があります。メンドンは作用時間が長く、作用も穏やかなので依存性が低いお薬です。

 

1-2.メンドンのデメリット

  • 効果が弱い
  • 日中の眠気が多い
  • 睡眠の質が落ちる
  • 14日分しか処方できない

メンドンの一番のデメリットは、その効果の弱さにあります。メンドンの作用は穏やかで、抗不安作用がやや弱いお薬です。メンドンは効果の実感が少なく、飲み続けても効果がしっかりとでてきません。このため、中途半端なお薬となってしまうことが多いです。

メンドンでは催眠作用があります。不安感や緊張が強い時は眠気を感じることは少ないかと思います。薬をのんで気持ちが落ち着くと、急に眠気が強く出てくることがあります。

このように眠くなる方向にメンドンは作用しますが、睡眠の質を落としてしまう傾向にあります。レム睡眠やノンレムの深い睡眠を減らしてしまい、ノンレムの浅い睡眠を増やしてしまいます。このため、睡眠の質が落ちてしまって、熟眠感が薄れてしまうことがあります。

メンドンは、14日間分しか処方できないという制限がかけられています。なぜこのお薬だけが2週間までなのかは定かではありません。とくに副作用が多いわけではありませんし、安全性が低いわけでもありません。ただ、2週間しか処方できないとなると使いにくいお薬となってしまいます。

 

2.メンドンの作用時間と効き方

メンドンは最高血中濃度到達時間が1時間、半減期が24時間です。活性代謝産物が長く残って作用するので、長時間型抗不安薬に分類されています。抗不安効果はやや弱く、催眠作用や筋弛緩作用も弱いです。

実のところ、メンドン自体はほとんど薬効がありません。

メンドンの効果は、体内で分解される過程で作られる代謝産物によってもたらされます。メンドンが体内で代謝されると、ノルジアゼパムをはじめとした活性代謝産物が作られます。これらが身体から抜けていくには長い時間がかかります。このため作用時間が非常に長いのです。

このようなお薬をプロドラッグといいます。血中に取り込まれるまで余計な働きをしないので、副作用を軽減できるのです。

それに加えてノルジアゼパムは、ジアゼパム(セルシン/ホリゾン)の活性代謝産物でもあります。ジアゼパム→ノルジアゼパム→オキサゼパムというように分解されていくわけですが、メンドンはジアゼパムの段階を省くことで副作用を軽減しようとしたお薬です。副作用は軽減しましたが、効果も減弱してしまいました。

 

それでは、ノルジアゼパムの血中濃度の変化をみてみましょう。

メンドンを服用すると、およそ1時間でノルジアゼパムの血中濃度がピークになります。その後24時間ほどで、血中濃度が半分になっていきます。この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

メンドンでは、「最高血中濃度到達時間1時間・半減期24時間」と考えると、効き方を理解しやすいと思います。オキサゼパムなども薬効があるので、実際の作用時間はもっと長いです。

 

毎日メンドンを服用しているとノルジアゼパムが身体にたまっていきます。メンドンを毎日服用したときの血中濃度の変化を考えてみましょう。

薬を飲み続けると、定常状態となります。その様子を図であらわしました。

飲み続けていると、あるところで均衡状態ができます。この状態を定常状態といいます。メンドンでは1~2週間ほど服用を続けると、定常状態に達します。このように定期的に飲み続けていくと、不安になりにくい土台ができあがります。

メンドンはこのような作用時間となるので、「長時間型」に分類されます。

 

メンドンの効果の強さとしては、

  • 抗不安効果「やや弱い」
  • 催眠効果「弱」
  • 筋弛緩効果「弱」
  • 抗けいれん効果「中」

となっています。セルシン/ホリゾンよりも効果はかなり弱まっています。

用量は9~30mgとなっていて、最大30mgまで使える抗不安薬です。メンドンカプセルは、7.5mgのみ発売されています。1日2~4回に分けて服用していきます。

 

3.メンドンの副作用とは?

メンドンは作用時間が長いので、眠気やふらつきに注意が必要です。依存性は、他の抗不安薬より少ないです。

メンドンの効果の特徴を考えると、副作用もわかります。

メンドンは最高血中濃度到達時間が1時間、半減期が24時間の抗不安薬で、長時間型に分類されます。

メンドンの効果の強さとしては、

  • 抗不安効果「やや弱い」
  • 催眠効果「弱」
  • 筋弛緩効果「弱」
  • 抗けいれん効果「中」

このような効果の特徴をふまえて、メンドンの副作用を考えてみましょう。

まずは作用時間をみてみましょう。メンドンは代謝産物の影響の大きなお薬です。メンドンの代謝産物の半減期は長いです。このため副作用は、すぐにでてくることもあれば、蓄積して少しずつでてくることもあります。

 

効果の強さをみてみましょう。抗不安作用はやや弱く、作用時間が長いお薬です。このため、他の抗不安薬よりも効き方が穏やかで、依存性が低いお薬です。

作用時間が長いので、副作用が出てしまうとなかなか抜けなくなってしまいます。筋弛緩作用によるふらつきや、催眠作用による眠気に注意が必要です。とくに眠気は多いので、事故などにつながらないように注意しましょう。

メンドンの承認時および市販後調査では、眠気の副作用は4.0%、ふらつきの副作用は1.7%となっています。

 

4.メンドンとその他の抗不安薬(効果と副作用の比較)

メンドンの作用時間は長いです。長時間型の中では、効果の弱いお薬です。

抗不安薬には、さまざまな種類が発売されています。比較してみてみましょう。

抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。

  • 作用時間(最高血中濃度到達時間・半減期)
  • 4つの作用への強さ(抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれん)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬で、この2つのポイントを比較してみましょう。上段はよく使われる抗不安薬、下段はあまり使われない抗不安薬をまとめています。

代表的な抗不安薬の効果や作用時間について比較した一覧表です。

処方は少ないベンゾジアゼピン系抗不安薬の効果や作用時間を比較して一覧にしました。

まずは作用時間によってタイプがわかれています。作用時間は、ピーク(最高血中濃度到達時間)と半減期をみて推測していきます。

作用時間は短時間作用型~超長時間作用型までの4つに分類できます。

短時間~中間型に関しては、即効性を期待して使うことが多いです。一方で超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ち着かせる土台をつくるようなお薬です。長時間型はその中間に位置していて、即効性も期待できますし、飲み続けていくことで不安を落ち着かせていくこともできます。

作用時間による副作用の違いは、

  • 短いほど依存しやすい
  • 長いほど身体に薬がたまって眠気やふらつきが出やすい

といえます。

 

患者さんの不安の状態から、どの作用時間の抗不安薬が適切か考えていきます。その上で、作用の強さを比較して選んでいきます。抗不安薬には4つの作用がありますから、この作用のバランスをみて適切な強さのお薬を選んでいきます。

 

5.メンドンが向いている人とは?

  • 軽度の不安が一日続く方
  • 1~2週間に1回の通院ペースの方

メンドンは、作用時間の長い抗不安薬です。服薬を続けていくことで、不安になりにくい土台ができていきます。効果が強くないので、軽度の不安が1日中続くような方には向いているといえます。

また、2週間の処方制限があるので、1~2週間に1回の通院ペースの方にしか使うことができません。

残念ながらメンドンは、その作用の穏やかさがネックになってしまいます。長時間作用型のお薬は即効性が期待できないので、しっかりとした薬効がないと効果の実感が得られません。それでいて副作用はある程度少ないお薬でないといけません。メンドンは副作用は軽減できていますが、効果が不十分となってしまいます。中途半端となってしまって、使われることが少ないお薬というのが実情です。さらには14日の処方制限があるのがネックとなっています。

 

6.一般名と商品名とは?

一般名:クロラゼプ酸二カリウム 商品名:メンドン

まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。

一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「クロラゼプ酸二カリウム(dipotassium clorazepate)」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。

商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「メンドン(mendon)」は、先発品の製造元である塩野義製薬がつけた名前です。mental(心の)+don(指導者)というようにつけられたお薬で、心の疾患に対する指導的存在という願いを込めてつけられたお薬です。・・・残念ですね。

先発品のメンドンは、日本では1979年から発売されています。特許はとっくにきれていますのでジェネリック医薬品もつくれるのですが、ほとんど処方されていないので発売されていません。メンドンにはジェネリックはありません。

 

まとめ

メンドンの作用の特徴は、

  • 抗不安作用「やや弱い」
  • 催眠作用「弱」
  • 筋弛緩作用「弱」
  • 抗けいれん作用「中」

メンドンのメリットとしては、

  • 作用時間が長い
  • 依存性が低い

メンドンのデメリットとしては、

  • 効果が弱い
  • 日中の眠気が多い
  • 睡眠の質が落ちる
  • 14日分しか処方できない

メンドンが向いている方は、

  • 軽度の不安が一日続く方
  • 1~2週間に1回の通院ペースの方

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