メイラックスは頓服として使えるのか?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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メイラックスは抗不安薬や安定剤とよばれていて、不安や緊張を和らげる効果があります。

メイラックスは即効性があるので、症状が出てきたときに服用するという飲み方ができなくはないです。このような飲み方を「頓服」といいますが、メイラックスは作用時間が長いので、あまりこのような使い方はしません。

ここでは、メイラックスの頓服について考えていきたいと思います。

 

1.頓服とは?

調子が悪いときに、即効性を期待して使うお薬です。

頓服とは、調子が悪いとき、悪くなりそうなときに使うお薬です。本当につらい症状が出てきたときに、一時しのぎで使うお薬です。

このようなお薬ですので、

  • すぐに効果が期待できる
  • 効果がある程度強くて実感できる

という2つの条件があります。

効果がすぐに期待できなければ、効果が出てくるまで耐えていなければいけませんね。効果がでてくるまでのスピードは、お薬の最高血中濃度到達時間をみれば推測ができます。血中濃度がピークになるまでの時間が短ければ、効果が出てくるのも早いのです。効果が出てくるまで、せいぜい30分くらいまでのお薬になるでしょう。

また、効果が実感できなくては意味がありません。「のんだけど効いているのかな?」というお薬は頓服としては意味がありません。ある程度、ちゃんとした効果が期待できることが必要です。「楽になった」という実感が大切なのです。

 

このように頓服とは一時しのぎのお薬にすぎません。そういう意味では、根本治療として使うお薬ではないことが多いのです。それでは意味がないのか?というとそういうわけではありません。

とくに精神科では、頓服はよく使われます。症状を感じることなく平穏に生活をしていくこと自体が治療につながることも多いのです。その意味については、後述していきます。

 

2.メイラックスの頓服とは?

不安時や不穏時に使われることがありますが、メイラックスは作用時間が長いのであまり使われていません。

それでは、メイラックスの頓服について考えてみましょう。

メイラックスの効果の特徴をみてみましょう。

最高血中濃度到達時間が0.8時間、半減期が122時間

  • 抗不安作用「やや強い」
  • 催眠作用「やや弱い」
  • 筋弛緩作用「弱」
  • 抗けいれん作用「中」

 

まずはメイラックスを頓服した時の効果の出方からみていきましょう。

メイラックスは血中濃度のピークになるまでが短いので、即効性が期待できます。15~30分くらいで効果が出てきて、0.8時間後がピークです。半減期とは血中濃度が半分になるまでにかかる時間ですが、これが122時間と非常に長いです。このため、頓服として服用した後もしばらく効果が持続します。

メイラックスは作用時間が長いので、ほとんど頓服として使われることはありません。頓服でその場しのぎに使っても、その後も効果がしばらく持続してしまうためです。ですが、「即効性があって効果の実感もある」という2つのポイントを満たしているので、使えなくはありません。

メイラックスを頓服として使うケースとしては、「何となく不安が高まり、ときおりメイラックスを少し服用するとしばらくの期間落ち着く」という感じでしょうか。はっきりとした不安の高まりがある方は、効果時間の短いリーゼ・デパス・ワイパックス・ソラナックス/コンスタン・レキソタンなどを使います。

 

メイラックスの効果について知りたい方は、
メイラックス錠の効果と効き目の強さ
をお読みください。

 

3.頓服とプラセボ効果

できるだけ薬を少なくするために、「薬を飲んだという安心感(プラセボ効果)」を利用することもあります。

精神科のお薬では、効果が期待できないお薬をあえて使うということもあります。「詐欺じゃないか!」と思われる方もいらっしゃいますが、これは患者さんを思ってのことです。

明らかに身体に異常がある内科などの病気とは違って、精神科の病気では「薬を飲んだという安心感」で精神的に落ち着くことが多いのです。患者さんのためを考えると、できるだけ薬は少なくしたいのです。このため、あえて効果のない薬や弱い薬を使うことがあります。

 

このような「薬を飲んだという安心感」を、「プラセボ効果」といいます。

どのお薬も、発売されるまでに臨床試験を行います。その試験では、偽物の薬と本物の薬をわからないようにしてデータをとります。その上でちゃんと差が出たら、科学的に間違いなく効果があったと分かるのです。

このような試験をすると、偽物の薬でも3割くらいの方には効果がでてきます。お薬を飲んでいるという安心感が、気持ちの安定につながるのでしょう。

 

ちゃんと効くお薬だと思って服用しないと意味がありませんから、患者さんには「よく効く薬」といって処方します。ですが今の世の中は情報化社会です。インターネットで薬の名前を調べてしまえばすぐにわかってしまいます。また、病院と薬局は分業しています。プラセボ効果を期待して薬を処方しても、薬局ではその意図をくみ取ってくれないこともあります。ですから、入院中の患者さんや認知機能の衰えたご高齢の方に使うことがほとんどでしょう。

このように、プラセボを使ってくれる医者は良心的だと思うのですが、ヤブ医者と呼ばれてしまうかもしれません。

私は頓服としてプラセボを使う時は、粉薬ならば乳糖(その名の通り糖)、錠剤ならばガスコン(腸のガスを減らすお薬)かムコスタ(胃薬)を処方しています。私の患者さんでこれらのお薬が処方されていた方は、良心だと受け取ってもらいたいものです。

 

まとめ

頓服とは、調子が悪いときに即効性を期待して使うお薬です。

メイラックスはしっかりと効果が期待できる頓服で、不安時や不穏時に使われることがあります。

できるだけ薬を少なくするために、「薬を飲んだという安心感(プラセボ効果)」を利用することもあります。

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