アルプラゾラムの依存性と8つの対策

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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アルプラゾラムは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬ソラナックスのジェネリックです。

アルプラゾラムは、効果のわりに副作用の少ないバランスのよいです。不安感や緊張感を抑えるためによく使われています。

効果はしっかりとしているので、「効いた」という実感も得やすい抗不安薬です。このためアルプラゾラムにも依存性があります。抗不安薬の中では、アルプラゾラムの依存性は「普通」です。依存してしまうと、アルプラゾラムをやめようとすると離脱症状が出てしまいます。これが辛くて、アルプラゾラムをやめれなくなる方もいらっしゃいます。

ここでは、アルプラゾラムの依存性について詳しく説明し、依存にならないための対策をお伝えしていきたいと思います。

 

1.アルプラゾラムの依存性の強さ

アルプラゾラムの依存性は「普通」です。

抗不安薬では依存性が問題になります。アルプラゾラムにも依存性はあります。

依存性は、厳密に分けると身体依存と精神依存の2つがあります。身体依存とは、薬が身体からなくなることでバランスが崩れて調子が悪くなる状態です。精神依存とは、薬がないと落ち着かなくなってしまう状態です。

さらに抗不安薬は、慣れると効きが悪くなってしまいます。このことを耐性といいます。

身体依存と精神依存と耐性、この3つが重なってしまうと、抗不安薬の量がどんどんと増えてしまいます。そして抗不安薬なしには生活できなくなってしまうのです。

 

アルプラゾラムは依存性が「普通」の抗不安薬です。他の抗不安薬と比較して依存性が高いわけではないのですが、できることならより依存性の少ない抗不安薬から使っていった方がよいでしょう。とはいってもアルプラゾラムは、他の抗不安薬に比べても効果と副作用のバランスがよいお薬です。アルプラゾラムがよさそうな場合は、気をつけて使っていけば大丈夫です。

それでは一体、抗不安薬の依存性はどこで決まってくるのでしょうか?
アルプラゾラムはどうして依存性が「普通」なのでしょうか?
どんなことに気を付ければよいのでしょうか?
詳しくみていきましょう。

 

2.抗不安薬による依存性の違い

効果が強く、半減期が短い抗不安薬の方が依存しやすいです。

現在の抗不安薬は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬がほとんどです。その他の抗不安薬としてアザピロン系と呼ばれるセディールが発売されていますが、依存性は認めないものの効果が弱いので使いにくいお薬です。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の中での依存性の違いを考えてみましょう。依存性が強い抗不安薬には、2つの特徴があります。

  • 効果が強い(力価が高い)
  • 薬の作用時間(半減期)が短い

 

効果の強い抗不安薬ですと、「効いた」という実感が強いです。精神的にも頼ってしまいますし、身体から抜けた時の変化も大きくなるので、依存になりやすくなります。薬の半減期が短くて作用時間が短い薬でも、「薬がきれた」という実感がでやすいです。身体からも急激に薬が抜けるので、依存になりやすくなります。

 

アルプラゾラムは、効果が「普通~やや強い」抗不安薬ですが、作用時間は「普通」です。このため、依存性は「普通」の抗不安薬になります。

特に依存性が強い抗不安薬としては、デパスが有名です。デパスは効果が強く、作用時間も短く、2つの条件を両方満たしているのです。

 

アルプラゾラムのその他の副作用について知りたい方は、
アルプラゾラムの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

3.抗不安薬以外の依存につながる要因

服薬期間が長く、量が多いと依存しやすいです。アルコールとの併用は絶対に避けましょう。お薬だけでない努力をしていくことも大切です。

依存につながりやすい薬以外の要因を考えていきましょう。依存につながりやすい要因として4つあげられます。

  • 服薬期間が長い
  • 抗不安薬の量が多い
  • アルコールと併用している
  • 抗不安薬以外の努力をしていない

 

服薬期間が長くなればなるほど、身体にとっては抗不安薬があるのが当たり前になってきます。抗不安薬依存の大きな特徴としては、精神依存が強いことです。「薬がないと不安なことに立ち向かえない」という思い込みが強くなってしまうのです。これは、年月が経てば経つほど強くなってしまいます。

抗不安薬の量が多いと、身体への影響も強くなってしまいます。薬が効かなくなって、どんどんと薬の量が増えている場合は要注意です。身体が抗不安薬に慣れてしまって耐性ができています。

 

また、アルプラゾラムとアルコールの併用は絶対にやめましょう。お酒の力を借りて不安を乗り越えることが習慣になってしまうと、アルコール依存症への入り口になってしまいます。また、アルプラゾラムとアルコールの相互作用によって、依存が一気に形成されてしまいます。

不安は少しずつ慣れて解消していく必要があります。慣れていくことで自信をつけていくことが大切なのです。いつも決まったことに不安を感じる方は、少しずつチャレンジして自信をつけていきましょう。漠然とした不安がある方では、しっかりと薬で落ち着かせることが必要です。アルプラゾラムを飲むことは割り切っていただき、できるだけ依存しにくいように対策をとっていきます。

 

4.アルプラゾラム依存にならないための対策とは?

抗不安薬依存になりやすい要因をみてきましたが、どのような点に注意すればアルプラゾラム依存を防ぐことができるでしょうか?

 

4-1.睡眠薬はベンゾジアゼピン系以外を使う

睡眠薬を併用するときは、できるだけベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬にしましょう。

不安が強い方は、不眠症を合併していることが多いです。このため睡眠薬も併用することが多いのですが、睡眠薬もベンゾジアゼピン系がよく使われています。ベンゾジアゼピン系は抗不安効果だけでなく催眠効果があるので、効果のバランスで抗不安薬か睡眠薬に分けられているだけなのです。

睡眠薬にもベンゾジアゼピン系を使ってしまうと、同じタイプの薬が増えてしまいます。このため、依存がより形成されやすくなってしまいます。他のタイプの睡眠薬を使ったほうがよいでしょう。

  • 非ベンゾジアゼピン系(マイスリー・アモバン・ルネスタ)
  • オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ)
  • メラトニン受容体作動薬(ロゼレム)

などがありますが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の効果に近いのは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬でしょう。具体的には、マイスリー・アモバン・ルネスタといったお薬です。依存性はベンゾジアゼピン系よりも少ないことが示されています。

ただ、これらの薬の難点は作用時間が短いものしかないことです。中途覚醒が目立つときは、オレキシン受容体拮抗薬のベルソムラもよいでしょう。ロゼレムは即効性に欠けるのが難点ですが、安全性の高い睡眠薬です。

 

4-2.適切な強さの抗不安薬を使う

不安の程度にあった、適切な強さの抗不安薬を使いましょう。

薬が強くなると依存も起こりやすくなりますので、必要以上に強い抗不安薬を使わないようにすることが大切です。できるだけ優しい抗不安薬から使っていく方が依存にはつながりにくいです。

ただ、不安をコントロールできなければ意味がありません。不安には「思い込み」の要素も大切で、「この薬を飲めば効く」と思い込めれば、実際以上の効果が期待できます。中途半端の強さの抗不安薬を使っていると、「本当に薬が効いているのかな?」という気持ちから、結果的により多くの薬が必要になってしまうことがあります。

どの強さの抗不安薬を選ぶかは難しいところで、医者の感覚的な部分によるところも大きいです。ですが、漫然と同じ強さで使っていくべきではありません。

アルプラゾラムを使って不安が落ち着いてきたら、今度は少しずつ薬を弱くしていく意識も大切です。必要がなくなっているのに強い薬を使い続けないようにします。アルプラゾラムの量を少しずつ減らしたり、効果の弱い薬への切り替えを考えていきます。

 

4-3.作用時間(半減期)が長い抗不安薬を使う

半減期が長い抗不安薬の方が依存性は少ないので、メイラックスなどを使っていきます。

依存の起こりやすさという面だけを考えると、作用時間が長い薬の方が安全です。身体から抗不安薬が抜けていくのがゆっくりなので影響が少ないのです。薬が「効いてきた」という実感や、「きれた」という実感も少ないのです。

1日を通して不安になることが多い方は、作用時間が長い薬にしてもよいかと思います。ただ、抗不安薬が身体にたまっていくので、日中の眠気やふらつきなどの副作用には注意が必要です。

依存が形成されてしまってやめられなくなってしまった方には、まずは半減期の長い抗不安薬に置き換えてからやめていくことがあります。このような抗不安薬としては、メイラックスが使われることが多いでしょう。

 

4-4.長期に使う場合はSSRIなどの抗うつ剤と併用する

抗不安薬を長く使う予想がつくときは、あらかじめSSRIと併用していきます。

アルプラゾラムは即効性が期待できますが、漫然と長期にわたって使っていくと依存してしまうことがあります。このため、治療が長引くことが予想されるときは、SSRIなどの抗うつ剤を併用していきます。

SSRIは効果が出てくるのが遅いことが多いです。感覚的な話になってしまいますが、SSRIの効果は「周りのことが気にならなくなる」といった形です。発作的な不安も減っていきます。

SSRIの効果が出てきたら、少しずつ抗不安薬からSSRIにシフトさせていきます。抗不安薬は「お守り」くらいになれば理想的です。

 

4-5.なるべくアルプラゾラムの服用期間を短くする

不安に対して自信をつけて、少しずつ減らしていく意識が大切です。

アルプラゾラムも必要がなくなったら減らしていく意識が必要です。服薬期間が長くなるほど、依存しやすくなります。精神的にも薬に頼ってしまいます。心身の状態が落ち着いてきたら、できるだけ薬を中止していく意識が大切です。

このため、少しずつ不安に対して自信をつけていくことが大切です。少しずつ薬を減らしても大丈夫かどうか、チャレンジしていきます。病状によっては薬を使っていた方がよい方もいるので、主治医と相談しながら減らしていきましょう。

 

4-6.アルプラゾラムの量はなるべく少なくする

必要最小限のアルプラゾラムを使っていくようにしましょう。

アルプラゾラムを使っていく時は、できるだけ少なく使うように意識します。理想をいえば、休肝日のように「休薬日」があるとよいです。

アルプラゾラムを使う時のステップとしては3段階あります。

①アルプラゾラム頓服
②メイラックスなどの長時間型抗不安薬+アルプラゾラム頓服
③アルプラゾラム常用

普段は不安がないけれども、何かきっかけがあると不安が強くなる方では、①のように頓服で使っていきます。不安になることが多く、1日中カバーする必要がある時は、②のように長時間作用型の抗不安薬(メイラックスなど)を常用しながら頓服として使っていきます。これでもコントロールできない時は、③のようにしっかりと常用します。アルプラゾラムは0.8~2.4mgで使っていきます。その際は、SSRIと併用することが多いです。

 

4-7.アルコールと一緒に飲まない

絶対にやめましょう。

アルコールとの併用は絶対にやめましょう。アルプラゾラムとアルコールを併用すると、相互作用によりアルプラゾラムとアルコールの影響が増大します。アルコールにもアルプラゾラムにも依存しやすくなってしまいます。人生を狂わすレベルでの抗不安薬依存になってしまう方の多くは、アルコールと併用してしまうことが多いです。一緒に飲むことは絶対にやめましょう。

 

4-8.薬に頼らない努力をする

薬に頼るのではなく、生活習慣を見直し、呼吸法や自律訓練法や漸減的筋弛緩法などを取り入れましょう。

不安の治療は薬だけではありません。生活習慣を整えたり、呼吸法や自律訓練法、漸減的筋弛緩法などを活用しましょう。

抗不安薬依存の大きな特徴は、精神依存が多いことです。不安は改善しているのに、抗不安薬に頼ってしまってやめられなくなってしまいます。ですから量が増えるということは少なく、常用量依存と呼ばれたりもします。

ですから、抗不安薬以外の柱を作って自信をつけていくことが大切です。

カフェインレスにしたり、生活リズムを整えることも大切です。呼吸法や自律訓練法、漸減的筋弛緩法といった自己暗示で、不安をコントロールできるようにしていくのも有効です。

詳しく知りたい方は、
薬に頼らずに不安を解消する4つの方法
をお読みください。

 

まとめ

アルプラゾラムの依存性は普通です。

効果が強く、半減期が短い抗不安薬の方が依存しやすいです。

服薬期間が長く、量が多いと依存しやすいです。アルコールとの併用は絶対に避けましょう。抗不安薬以外の努力をしていくことも大切です。

抗不安薬依存を避けるための対策としては、以下の8つがあります。

  • 睡眠薬はベンゾジアゼピン系以外を使う
  • 適切な強さの抗不安薬を使う
  • 作用時間(半減期)が長い抗不安薬を使う
  • 長期に使う場合はSSRIなどの抗うつ剤と併用する
  • なるべくアルプラゾラムの服薬期間を短くする
  • アルプラゾラムの量はなるべく少なくする
  • アルコールと一緒に飲まない
  • 薬に頼らない努力をする

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