パキシルの吐き気・下痢と5つの対策

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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パキシルを飲み始めると、胃がムカムカしたり、気持ち悪くなることがあります。これはセロトニンを増やす効果が強いSSRIによくみられる副作用で、パキシルでもよく認められます。お薬の飲み始めに多く、次第に慣れていくことが多いです。

ここでは、パキシルによって吐き気や下痢が生じる原因と、その対策を考えていきたいと思います。

 

1.パキシルはなぜ吐き気や下痢が生じるの?

セロトニンが胃腸に作用することが原因で、脳の嘔吐中枢を刺激してしまいます。

新しい抗うつ薬であるSSRIでは、薬の副作用としての吐き気がよくみられます。副作用が少ないパキシルでもよくみられる副作用で、薬の承認時には18.8%、薬の販売後調査では7.7%の方に認められています。1~2割の方にみられるといったところです。

ほとんどの場合、薬の飲み始めに認められます。ですが、身体が次第に薬に慣れていきますので、1~2週間ほどで軽くなっていく方が多いです。吐き気の副作用は怖さもあるので、薬をやめてしまう方もいらっしゃいます。ですから、パキシルに吐き気はつきものと覚悟していただいて、次第に薄れていくものだと知っておいていただきたいです。

 

このような吐き気が生じる原因は、実はセロトニンにあるのです。「あれ?セロトニンはいい物質でなかった?」と思われた方もいらっしゃるかと思います。確かにセロトニンは、抗うつ効果のある脳内物質です。パキシルはセロトニンを増やすために、脳内のセロトニン受容体にできるだけ作用するように作られています。ですが、お薬は脳だけでなく全身を回ってしまいます。実はセロトニンの受容体は、脳には10%もありません。90%以上の大部分は胃腸に存在していて、胃腸の働きを調節しているのです。

食べ過ぎてしまったり、異物を食べてしまったりすると、吐き気や下痢といった形で中身を身体の外に出そうとします。食中毒の時などをイメージしていただければわかりますね。これには、セロトニンが大きな働きをしています。もう少し詳しくみてみましょう。

胃腸にとって好ましくないものが入ってくると、胃腸の細胞からセロトニンが分泌されます。これが胃腸のセロトニン5HT受容体を刺激します。これが刺激されると迷走神経という神経に伝えられていきます。この神経が脳の延髄にある嘔吐中枢を刺激してしまいます。同時に、このセロトニン5HT受容体は腸の動きを活性化する働きがあります。このため、腸の動きが活発となり下痢が生じます。パキシルは、この5HT受容体を直接刺激してしまうことで、吐き気や下痢が副作用として生じるのです。

 

ほとんどの原因がセロトニンの胃腸への作用によるものですが、その他の吐き気の原因としては、薬による肝機能障害があげられます。肝臓への負担が蓄積していくと中毒性に肝機能が低下してしまいます。すると肝臓の解毒作用が弱くなり、吐き気が生じます。定期的に採血してチェックしていれば、ほとんど問題ありません。まれに、アレルギー性に急激に肝機能障害が進むことがあります。この場合は薬の飲み始めにみられることが多く、全身症状がみられます。

 

パキシルのその他の副作用について知りたい方は、
パキシルの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

2.薬だけではない吐き気の理由

妊娠や心因性、生活習慣病によるものが認められます。

心療内科や精神科の患者さんの吐き気の原因として、薬の副作用以外に考えなければいけないことが3つあります。

①妊娠
②心因性
③生活習慣病

まずは妊娠です。「女性を見たら妊娠を疑え!」というのは、医者の格言ともいうべき言葉です。「妊娠なんてすぐにわかるよ」と思われるかもしれませんが、自覚されていない方はとても多いです。適齢期の女性の場合は、吐き気がみられたときは妊娠の可能性がないか、必ず思い返してください。

次に心因性の嘔気です。明らかな身体の病気がなくても、ストレスをうまくコントロールできないと、その刺激が嘔吐中枢を刺激することがあります。子供の場合、中枢神経が未熟であるため発生しやすいと言われています。ストレスに上手く気づけていない時もあります。他の自律神経症状などとも合わせて、心因性か判断していきます。また、ストレスから胃酸の分泌が多くなり、胃炎になる方もいらっしゃいます。

最後に、生活習慣による吐き気です。患者さんはどうしても、生活習慣が乱れがちの方が多いです。いわゆる生活習慣病になりやすくなります。肥満による逆流性食道炎や糖尿病による吐き気がみられることがあります。

 

3.パキシルと他の抗うつ剤との比較

パキシルは、吐き気や下痢の副作用はよく認められます。SSRIは、他の抗うつ薬よりも多いです。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、吐き気・下痢を比較して表にしまとめました。

この表を見ていただくと、吐き気や下痢はSSRIとSNRIに多いことがお分かりいただけるかと思います。

SSRIの中では、ルボックス/デプロメールがやや多いです。私自身が試供品を飲んだ時に下痢気味になりました。その他のSSRIはあまり大きな違いはありませんが、パキシルは吐き気や下痢が少ない印象があります。おそらく、他のSSRIよりも抗コリン作用が強いことが関係しているのでしょう。抗コリン作用は、消化管を動かない方向に働きます。このため、セロトニン作用によって消化管が動かされるのを抑えてくれるのだと思われます。

SNRIはSSRIに比べると吐き気が認められません。サインバルタとトレドミンを比べると、トレドミンの方が吐き気は少ない印象があります。

新しい抗うつ薬のうちリフレックス/レメロンは、ほとんど吐き気が認められません。これはセロトニン5HT受容体をブロックする作用があるためです。三環系抗うつ薬などの古い薬やデジレル/レスリンも、このセロトニン5HT受容体をブロックする作用があります。古い薬は全体的に副作用が多いですが、吐き気と下痢に関しては新しい薬の方が多いのです。

 

4.パキシルの吐き気や下痢の対処法

パキシルの副作用としての吐き気や下痢は、飲み始めが一番つらいです。そこをしのげば慣れてくることが多いです。具体的にどのようにして対処していけばよいのか、考えていきましょう。

 

4-1.様子をみる

生活に支障がないならば、ガマンすると少しずつ慣れていきます。

パキシルによる吐き気や下痢は、飲み始めが一番しんどいです。ほとんどの方では、身体が薬に慣れていくにつれて自然と楽になっていきます。お薬が身体に慣れてくるには、1~2週間の時間がかかります。何とかここを乗り超えれば、自然と吐き気が落ち着きます。一度身体に薬が慣れれば、さらに薬を増量しても最初ほどの吐き気は感じません。

飲み始めの吐き気が軽いようでしたら、様子を見ていきましょう。生活に支障があるようでしたら、他の対処法を考えていきましょう。

 

4-2.胃薬を使う

制吐剤・制酸剤・胃粘膜保護剤・消化管運動改善薬などを使います。

吐き気はなかなかガマンがしにくい副作用です。吐き気が出てくるのは一時的であることがほとんどです。ですから、お薬が身体に慣れるまで胃薬でしのぐのもひとつの方法です。症状が認められてから使うことが多いですが、胃腸に不安がある場合は、パキシルの飲み始めから併用していきます。2週間もすれば身体に慣れてきますので、その後は中止しても大丈夫なことがほとんどです。

どのようなお薬を使うかというと、これといって決まった薬があるわけではありません。一般的によく内科などで使われている胃薬を、症状のあらわれ方に応じて使っていきます。よく使われる胃薬としては、

  • 制吐剤:ナウゼリン・プリンペラン
  • 制酸剤:オメプラール・タケプロン・パリエット・ネキシウム・・ガスター
  • 胃粘膜保護剤:ムコスタ・ソロン
  • 消化管運動改善薬:ガスモチン・ガナトン・アコファイド・ドグマチール

などがあります。

制吐剤は、頓服として吐き気が強い時に使うことが多いです。制酸剤は、胃がキリキリと痛んだり、胸焼けがするときにつかいます。胃粘膜保護剤は、副作用が特にないので使いやすく、パキシルの飲み始めから併用するときによく使います。消化管運動改善薬は、胃もたれなど胃腸が動いてないと感じる時に使います。ドグマチールは胃の動きをよくするだけでなく、抗うつ効果もあります。このため、低用量で併用することで、相乗効果を期待することもあります。

胃腸に不安がある方は、あらかじめ主治医に伝えておきましょう。そして、パキシルが身体に慣れてくると胃薬はなくても大丈夫になります。「中止したら再び吐き気が出てしまう」と誤解されている方もいらっしゃいますので、飲みっぱなしにならないように気を付けましょう。

 

4-3.回数を分けて服用する

1日2回などに分けるのも一つの方法です。

パキシルの吐き気の副作用は、お薬の量が増えれば増えるほど強くなります。用量依存性があるのです。ですから、薬を飲む回数を分けることで、パキシルの血中濃度のピーク(Tmax)が下がります。このため、多少ですが吐き気が軽減することもあります。

パキシルは半減期はそこまで短くはないお薬なので、血中濃度の変化は認められます。ですから、薬を分けて変化をさらに小さくできれば、多少は副作用が軽減されることが期待できます。例えば、お薬を飲んだ直後に明らかに吐き気が強くなる場合は、薬の服用を2回にわけると改善が期待できます。

 

4-4.増量のペースを緩やかにする

薬の変化のペースを緩やかにすれば、吐き気は軽減します。

パキシルを増量や減量させるペースを緩やかにすることで、吐き気は軽減されます。吐き気の副作用は用量依存性なので、薬の変化が小さければ影響も軽くなります。少しずつ薬の量を変化させて、段階的に身体に薬を慣れるようにしていきましょう。

パキシルは10mgずつ増量することが多いです。あまりに吐き気が強い場合は、10mg錠剤を半分に割る、ないしは5mg錠剤を使うことで、5mgずつ増量していくとペースを緩やかにすることができます。

 

4-5.他の抗うつ薬に切り替える

どうしても難しい場合は、リフレックス/レメロンなどに切り替えていきます。

これらの対処法でも改善しない場合もあります。また、嘔吐恐怖があって、吐くことを極度に恐れている方もいらっしゃいます。そのような方には、新しい抗うつ薬の中でリフレックス/レメロンに切り替えていくことがあります。この薬にはセロトニン5HT受容体をブロックする作用があるので、吐き気が起こりにくいのです。

昔からある三環系抗うつ薬なども吐き気は起こりにくいです。ですが、他の副作用がネックとなって使いづらいです。ドグマチールは、上述したように胃薬としての効果もある抗うつ薬ですので、ほとんど吐き気が認められません。ただし、女性には生理に影響したりするので使いにくいです。

 

まとめ

パキシルの吐き気や下痢は、セロトニンが胃腸に作用することが原因です。脳の嘔吐中枢を刺激してしまいます。

薬以外にも、妊娠や心因性、生活習慣病が原因として考えられます。

パキシルをはじめとしたSSRIでは、他の抗うつ薬よりも多いです。

対処法としては、

  • 様子をみる
  • 胃薬を使う
  • 回数を分けて服用する
  • 増量のペースを緩やかにする
  • 他の抗うつ薬に切り替える

などがあります。

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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