グラマリールの認知症へのメリット・デメリット

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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グラマリールは抗精神病薬になります。

ですが、統合失調症の患者さんには使われることはありません。グラマリールの適応疾患は、「脳梗塞後遺症に伴う攻撃的行為、精神興奮、徘徊、せん妄の改善」となっています。脳梗塞後遺症に限らず様々な病気に使われていて、認知症の患者さんにもよく使われています。

グラマリールには、攻撃性や衝動性を抑え、穏やかに興奮を落ち着かせる鎮静作用があります。グラマリールは作用時間が短く、肝臓の影響も受けにくいので、高齢者に使いやすいお薬です。

ここでは、グラマリールの認知症への効果と副作用についてみていきたいと思います。

 

1.グラマリールの認知症へのメリット

グラマリールは3つの特徴から、高齢者に向いているお薬といえます。

  • 作用時間が短いこと
  • 肝臓への負担が少ないこと
  • 鎮静作用が弱いこと

高齢者は生活習慣病を抱えている方も多く、いろいろなお薬を服用していることがあります。さらには身体の機能が低下してしまって、薬を排泄する能力も低下しています。グラマリールは半減期が短いので、身体に蓄積しにくいお薬です。

また、グラマリールが代謝されるときに、肝臓にほとんど影響をしません。インヴェガは水に溶けやすい形になって、腎臓から代謝されます。このため、肝機能が低下している高齢者には向いています。

グラマリールは鎮静作用が弱いです。これは高齢者にとっては転倒を防げるなどのメリットにもなります。

 

認知症の患者さんにグラマリールを使うには、大きく2つのケースがあります。それぞれのケースについて、グラマリールの役割をみていきましょう。

グラマリールの効果について詳しく知りたい方は、「グラマリール錠の効果と特徴」をお読みください。

 

1-1.認知症による暴言・暴力・声出し・徘徊を緩和する

認知症の周辺症状(BPSD)として、興奮や易怒性などに効果が期待できます。

認知症の患者さんのもっとも基本的な症状は、認知機能の低下です。記憶や判断力、いままであたり前にできていた日常生活ができなくなっていきます。これは中核症状と呼ばれていますが、これが原因となってさまざまな行動面や心理面での症状が認められます。これを周辺症状(BPSD)といいます。

認知症の周辺症状として、暴言や暴力がみられることがあります。矛先は介護の方に向けられることが多く、高齢者とは思えない力でケガをしてしまうこともあります。声出しが止まらず、周りの方に迷惑してしまうこともあれば、突然思い立ったかのように歩き回って徘徊してしまうこともあります。

認知症になると、理性で抑えられなくなった性格がむき出しとなったり、自分の気持ちを上手く表現できないために、ストレスがたまります。そのために、興奮してしまったり、怒りっぽくなってしまったりするのです。

この状態が続いていると、本人も介護者も疲れてしまいます。施設に入っている場合は、まわりの方への影響も考えなければいけません。このような時に、グラマリールは効果が期待できます。

グラマリールは、穏やかな鎮静作用のあるお薬です。攻撃性や衝動性などの気持ちの高ぶりを鎮めてくれるので、結果として暴力や暴言、声出しや徘徊などがおさまっていくことが期待できます。

 

1-2.認知症などによるせん妄を改善する

グラマリールには抗コリン作用もわずかで、せん妄の改善に効果が期待できます。

せん妄とは、認知症に限らずにおこる急激に認められる意識障害です。急にぼけてしまって、今どこで何をしているのかがわからなくなってしまいます。このため周りの言葉も入らなくなってしまい、興奮したり暴力的になってしまうこともあります。

せん妄は高齢者はおこりやすいのですが、認知症の患者さんでもよく認められます。認知症の患者さんでは、生活リズムがどうしても乱れがちです。年を取ると睡眠が浅くなるのでリズムがただでさえ崩れやすいところに、認知症の患者さんでは理解ができなくなってしまいます。

このような状況に体調不良なども重なると、せん妄状態になってしまうことがよくあります。このような時は、グラマリールが効果を発揮します。グラマリールは、認知機能や記憶に対して悪影響のある抗コリン作用がわずかなので、せん妄を起こしにくお薬でもあります。

 

2.グラマリールの認知症へのデメリット

グラマリールは高齢者に使いやすいお薬ですが、デメリットもあります。グラマリールの副作用の特徴としては、大きく2つあります。

  • 眠気やふらつきがないわけではない
  • ドパミン不足による錐体外路症状の可能性がある

この2つの特徴が、グラマリールのデメリットに繋がります。認知症の患者さんでのグラマリールのデメリットについて、具体的にみていきましょう。

グラマリールの副作用について詳しく知りたい方は、「グラマリールの副作用(対策と比較)」をお読みください。

 

2-1.ふらつきによる転倒や骨折の危険が高まる

グラマリールは眠気やふらつきが認められることがります。転倒・骨折により日常生活能力が一気に落ちてしまうことがあります。

グラマリールは鎮静作用は穏やかなお薬です。このため、眠気やふらつきは少ないお薬ではあります。ですが、グラマリールで眠気やふらつきがないわけではありません。

高齢者はただでさえ身体が衰えていくのですが、認知症の患者さんではリハビリなどの努力が難しいので、衰えていくスピードも速くなってしまいます。筋力がかなり落ちていて、骨ももろくなってしまいます。身体の腎臓や肝臓の機能が落ちていて、代謝も悪くなっています。

グラマリールが効きすぎてしまうと、ふらついてしまって転倒してしまうリスクが高くなります。高齢者が転倒すると、骨折しやすくなっています。骨折してしまうと、安静や手術によって寝たきり状態が続いてしまいます。そうなると、ますます筋力が落ちてしまいます。日常生活能力(ADL)が一気に落ちてしまうことがあります。

 

2-2.飲みこみが悪くなり、誤嚥性肺炎のリスクがあがる

グラマリールは少ないものの、飲みこみを悪くする方向に作用します。

高齢者は食べ物を飲みこむ力が少しずつ衰えてきてしまいます。上手く飲みこめないと、食べ物が気管に入ってしまうことがあります。これを誤嚥といいます。

若い方ならば誤嚥しても、すぐに咳がでて食べ物を吐き出します。高齢者になると、その咳の力が弱くなってしまいます。そうすると、うまく食べ物が吐き出せなくなり、肺にはいってしまい、そこで炎症がおこって誤嚥性肺炎となってしまうことがあります。

グラマリールは、飲みこみを悪くしてしまう方向に作用します。錐体外路症状という症状で、抗精神病薬の中では少ない方にはなります。ただ、高齢者ではちょっとのことで誤嚥のリスクが上がる方もいるので注意が必要です。

 

3.グラマリールの認知症への使い方

認知症の患者さんにグラマリールを使う時は、どのような点に注意すればよいでしょうか。認知症の患者さんは高齢者がほとんどですので、その点を考慮しながら、グラマリールの使い方を考えていきましょう。

 

3-1.安易に使わない

環境調整や声掛けの仕方の工夫など、薬を使わないでできることはやってみましょう。

グラマリールは、認知症の根本をよくしていくお薬ではありません。鎮静作用を利用して、患者さんの気持ちの高ぶりを抑えるお薬です。風邪薬といっしょで、対症的なお薬なのです。このため、認知症に対しては正式な適応外で使っていくことになっています。

ですから、認知症の患者さんが落ち着かなくなってしまった時に、安易にグラマリールを使ってしまってはいけません。グラマリールは効果はあるのですが、患者さんにとってもデメリットがあるのです。転倒骨折や誤嚥によって死亡率があがってしまうという報告もあります。ですから、できるならば使わないほうがよいお薬です。

ですが、興奮している状態をそのままにしておくわけにもいきません。本人も疲れてしまうし、介護者も疲れてしまいます。施設などに入所している方では、周りの方への影響も考えなければいけません。

このため、グラマリールを使うべきかどうかは、2つの観点を見ていく必要があります。

  • 薬以外のことでできることはないか?
  • 介護で何とかなる範囲か?

薬以外のことでできることがあるならば、まずは試してみましょう。患者さんへの接し方や環境をかえることで、落ち着くこともあります。患者さんの世界にいるつもりで、どのようにしたらストレスなく過ごせるかを考えてみましょう。ちょっとした意識や工夫で大きく変わることもあります。

できることをやってもどうしようもない時はお薬を考えていかなければいけません。この時に考えなければいけないのは、介護とのバランスです。介護の方が何とかなる範囲でしたら、多少落ち着かないことが多くてもお薬をつかわないほうが良いです。介護の方が疲弊してしまうようでしたら、お薬をつかわなければいけません。

このように、グラマリールは安易に使うことはせず、やれることをやって限界になったら使うようにします。

 

3-2.できるだけ少量から

25mgから始めることが多いです。

お薬は症状を落ち着けるためのものなので、できるだけ少量から使うようにするべきです。

また、認知症患者さんはたいていが高齢者ですので、身体の機能は全体的に落ちています。筋力もなければ、飲みこみも悪いです。薬がちょっと作用するだけでも大きな影響が出てしまうこともあります。

お薬を分解して排泄する肝臓や腎臓の機能も低下しています。このため、お薬が身体にたまりやすく、作用が強くなってしまうことがあります。高齢者は内科のお薬を飲んでいることも多いです。いろいろなお薬との相互作用で、分解が遅れることもあります。

このためグラマリールは、高齢者では25mgから使うことが多いです。効果をみながら少しずつ増量していきます。

過去にグラマリールを服用していたり、似たようなお薬で明らかに大丈夫という状況があれば、50~75mgからはじめることもあります。

 

3-3.漫然と使わない

落ち着いてしばらくしたら、お薬を減薬していく意識が大切です。

どのお薬にもいえることなのですが、漫然とお薬をつかってはいけません。グラマリールを使って落ち着いた患者さんは、しばらくはお薬を使い続けて安定するのを待つ必要があります。ある程度落ち着いてきたら、お薬を減量していかなければいけません。

あくまでグラマリールは、一時的に症状を落ち着けるために使われるお薬です。お薬を続けていくことでのデメリットもありますので、漫然と使い続けてはいけないのです。

「また暴れられたら困ってしまう」などと考えてしまって、お薬が怖くてやめられなくなってしまうことがあります。少しずつお薬をやめていけば、問題ないことが多いです。接し方や環境での工夫もしながら、少しずつお薬を減らしていきましょう。

 

まとめ

グラマリールのメリットは、

  • 認知症による暴言・暴力・声出し・徘徊を緩和する
  • 認知症などによるせん妄を改善する

グラマリールのデメリットは、

  • ふらつきによる転倒や骨折の危険が高まる
  • 飲みこみが悪くなり、誤嚥性肺炎のリスクが上がる

グラマリールの使い方

  • 安易に使わない
  • できるだけ少量から
  • 漫然と使わない

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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