チアリール錠(チアプリド錠「日医工」)の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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チアリール錠は、1987年に発売された第一世代の抗精神病薬(定型抗精神病薬)グラマリールのジェネリックです。平成26年6月に、チアプリド錠「日医工」に名称変更されています。

チアリール錠は統合失調症のお薬として使われることはなく、よく高齢者のせん妄や認知症による不穏症状を抑えるために使われることが多いです。

厳密には、脳梗塞の後遺症による攻撃性や興奮、せん妄や徘徊などに適応が認められています。勝手に身体の一部が動いてしまうジスキネジアにも適応が認められていますが、現実的にはほとんど使われていません。

ここでは、チアリール錠の効果と特徴を詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.チアリールの作用の仕組み(作用機序)

中脳辺縁系のドーパミンをブロックすることで、攻撃性や衝動性が緩和されます。

チアリールは大きく2つの状態で使われるお薬です。

  • 興奮が強いとき
  • ジスキネジアが認められるとき

攻撃性や衝動性が高まって興奮が強いとき、脳の中脳辺縁系という部分ではドパミンが過活動になっていると考えられています。このドパミンをブロックしてあげることで、興奮を落ち着かせる鎮静作用が期待できます。

チアリールはドパミンD受容体をブロックする作用が強いお薬です。その他の受容体にはあまり作用しないので、眠気やふらつきなどは少ないです。その分、鎮静作用はそこまで強くありません。

 

ジスキネジアとは、身体が勝手に動いてしまう症状のことです。どうしてこのような症状が認められるのか、明確にはわかっていません。一般的には、ドパミン神経の過活動が原因と考えられています。

ジスキネジアは、長期にわたって抗精神病薬を服用していた副作用として認められることが多いです。長期間ドパミンがブロックされていると、ドパミン受容体が敏感になります。ちょっとのドパミンでも作用するようになってしまって、ドパミンのバランスが崩れてしまいます。これが原因と考えられています。

チアリールは過活動になってしまったドパミンを抑えることで、ジスキネジアに対して効果を発揮します。効果はあくまで一時的で、チアリールを長期で使うと悪化してしまうこともあります。

 

2.チアリールの効果と特徴

まずは、チアリールの作用の特徴をまとめたいと思います。

チアリールは症状の改善のために補助的に使うお薬なので、抗精神病薬に分類されていますが統合失調症の治療薬としては使われません。ですから、用いられる量も少ないです。このことを前提にして、チアリールのメリットとデメリットについて整理したいと思います。

 

2-1.チアリールのメリット

  • 穏やかな鎮静作用がある
  • 眠気やふらつきが少ない
  • 肝臓の負担が少ない(腎臓で排泄)
  • 作用時間が短く、身体に薬が蓄積しない

チアリールの特徴は、「ドパミンをピンポイントでブロックするお薬」です。このためチアリールには、攻撃性や衝動性を和らげて、気持ちを落ち着かせる鎮静作用があります。

その他の受容体にはほとんど作用しないので、眠気やふらつきといった副作用は少ないです。このことから、高齢者にも使いやすいお薬といえます。穏やかな鎮静作用が期待できるお薬と言えます。

 

チアリールでは、薬を分解して排泄する代謝の中心は腎臓です。多くのお薬では肝臓をメインに代謝をするので、チアリールは肝機能障害が認められるときに負担が少ないです。

また、チアリールは作用時間が短いので、身体に蓄積しません。肝臓への負担が少ないこともあわせると、チアリールは高齢者には比較的使いやすいお薬といえます。

 

2-2.チアリールのデメリット

  • 鎮静作用が弱い
  • ジスキネジアが悪化してしまうことがある

チアリールの最大のデメリットは、その鎮静作用の弱さです。眠気やふらつきが少ないのは良いことなのですが、興奮が強い時には眠らせてしまった方がよいこともあります。

夜間に興奮が強くて手が付けられなくなってしまったり、睡眠が上手くとれなくなってしまうことがあります。このような時は、チアリールでは力不足となってしまうのです。

 

また、ドパミンをブロックする作用が強いので、暫く使い続けているとジスキネジアを悪化してしまうことがあります。ジスキネジアは、長期間にわたってドパミンがブロックされることが原因と考えられています。チアリールはドパミン遮断作用が強いので、ジスキネジアの原因のひとつになってしまいます。

 

3.チアリールの作用時間と使い方

チアリールは、最高血中濃度到達時間が2時間、半減期が3.9時間の非定型抗精神病薬です。25~75mgから使われ、最大150mgまで使えます。

チアリールを服用すると、2時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、3.9時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

 

このようにチアリールは、即効性が期待できますが作用時間がとても短いお薬です。1日しっかりと効かせようと思えば1日3回、夜だけ落ち着けたいときは1日1回就寝前で使われます。

チアリールの添付文章では、

  • 興奮が強い時:1日75~150mgを1日3回に分割投与
  • ジスキネジア:1日25mgから少しずつ増量

実際には、25~75mgから開始することが多いです。効果をみて少しずつ量を増やしたり、飲み方を調整します。最高150mgまで使えます。

 

4.チアリールの副作用とは?

  • 全体的に副作用が少ない
  • ドパミン不足による副作用が認められることがある
  • 鎮静作用が穏やかで、眠気やふらつきは少ない
  • 身体に薬がたまりにくいので、副作用も一時的なことが多い

チアリールは、第一世代の抗精神病薬(定型抗精神病薬)になります。ドパミンをピンポイントでブロックするという特徴があります。

チアリールは抗精神病薬に分類されていますが、あくまで症状にあわせて使っていくお薬です。統合失調症の治療薬ほどに薬の量は必要ありません。このためチアリールは、用量が低めに設定されています。一般的に副作用は、薬の量が多くなるほど副作用は多くなります。ですからチアリールでは、副作用は全体的に少ないのです。

チアリールで比較的認められる副作用は、ドパミン不足による副作用です。錐体外路症状(ソワソワやふるえ)や高プロラクチン血症(生理不順や性機能障害)といった、ドパミンが不足による副作用がごくまれに認められます。

ドパミン以外の受容体には作用しにくいので、眠気やふらつきといった副作用は少ないです。このため、転倒して骨折してしまうことのリスクがそこまで高まりません。

チアリールは作用時間が短く、また肝臓の影響を受けにくいお薬です。このため、身体にお薬がたまりにくいといえます。副作用が認められたとしても、時間がたつと薬が身体から抜けていきます。

 

5.チアリールの適応疾患とは?

<適応>

  • 脳梗塞後遺症に伴う攻撃的行為、精神興奮、徘徊、せん妄の改善
  • 特発性ジスキネジア、パーキンソニズムに伴うジスキネジア

<適応外>

  • せん妄
  • 脳梗塞後遺症に関わらず攻撃性や衝動性が高まっている時

チアリールは、添付文章上の適応疾患としては大きく2つあります。ジスキネジアに使われることはめっきり減っています。一時的にジスキネジアが改善しても、チアリールによってドパミンがブロックされ続ければ、中長期的にみればジスキネジアが悪化してしまうこともあるからです。

このため、チアリールは鎮静作用を期待して使われることが多いです。添付文章上では、脳梗塞後遺症の場合のみになっています。かつては、脳動脈硬化症による慢性脳循環性障害に適応が認められていました。しかしながら、もっと厳密に再評価したところ、脳梗塞後遺症と範囲を限定した上での適応が認められました。

 

チアリールの効果は実際のところ、脳梗塞の患者さんに限られたものではありません。病気を問わず、攻撃性や衝動性が高まっていて不穏な時に使われることがあります。

また、チアリールはせん妄に使われることがあります。せん妄とは、急激に脳機能が低下して意識がぼやけてしまう状態になることです。せん妄が認められたときは、まずは考えられる原因を取り除きます。お薬が原因のこともあれば、生活リズムが原因のこともあります。

暗くなるとせん妄になりやすくなるので、夜中にせん妄が認められるときは室内の電気をつけると落ち着くこともあります。それでも改善がないときは、チアリールなどの抗精神病薬で効果が期待できます。

 

6.チアリールが向いている人とは?

  • 高齢者
  • 興奮がそこまで強くない方
  • 不眠がそこまで強くない方

チアリールの特徴は、「ピンポイントでドパミンをブロックするお薬」でしたね。この特徴を踏まえて、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

チアリールは3つの特徴から、高齢者に向いているお薬といえます。

  • 作用時間が短いこと
  • 肝臓への負担が少ないこと
  • 鎮静作用が弱いこと

高齢者は生活習慣病を抱えている方も多く、いろいろなお薬を服用していることがあります。さらには身体の機能が低下してしまって、薬を排泄する能力も低下しています。チアリールは半減期が短いので、身体に蓄積しにくいお薬です。

また、チアリールが代謝されるときに、肝臓にほとんど影響をしません。インヴェガは水に溶けやすい形になって、腎臓から代謝されます。このため、肝機能が低下している高齢者には向いています。高齢者に限らず、飲酒や肥満により肝機能が低下している方に向いています。

チアリールは鎮静作用が弱いです。これは高齢者にとっては転倒を防げるなどのメリットにもなります。ですが、不眠がひどかったり興奮が強くて抑えられない時は、チアリールでは力不足なことが多いです。そのような時には、もっとしっかりとした抗精神病薬を使います。リスパダール・ルーラン・セロクエル・ジプレキサ・セレネースなどが使われます。

 

7.一般名と商品名とは?

一般名:チアプリド 商品名:グラマリール・チアリール

まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。

一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「チアプリド(tiapride」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。

一方で商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「グラマリール(gramalil」は、製造元であるアステラス製薬が独自でつけた名前です。「チアリール(tiaryl)」は日医工株式会社の商品名です。

 

最近のジェネリックは、紛らわしさをなくすため、「一般名+会社名」とすることが多くなりました。グラマリール錠も、チアプリド錠として統一されてきています。チアリール錠は、2014年6月にチアプリド錠「日医工」に名称変更されました。

グラマリール錠の薬価と比べると、ジェネリックのチアリールでは薬価が2~3割になっています。かなり薬価が安くなっています。

 

チアリールの効果や副作用について詳しく知りたい方は、
グラマリール錠の効果と特徴
グラマリールの副作用(比較と対策)
をお読みください。

 

まとめ

チアリールの特徴は、「ドパミンをピンポイントにブロックするお薬」ということです。

チアリールのメリットとしては、

  • 穏やかな鎮静作用がある
  • 眠気やふらつきが少ない
  • 肝臓の負担が少ない(腎臓で排泄)
  • 作用時間が短く、身体に薬が蓄積しない

チアリールのデメリットとしては、

  • 鎮静作用が弱い
  • ジスキネジアが悪化してしまうことがある

チアリールが向いている方は、

  • 高齢者
  • 興奮がそこまで強くない方
  • 不眠がそこまで強くない方

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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