エビリファイ持続性注射剤の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)のエビリファイでは、持続性注射剤が発売されています。海外では、エビリファイメンテナとして2013年から発売されてきていました。日本でもついに、2015年5月に発売となりました。

エビリファイ持続性注射剤は、4週間に1回の注射をするとしばらく効果が持続します。お薬の飲み忘れが防げるだけでなく、副作用も軽減されています。注射に対する抵抗がなければ、服薬の手間も省けて安定した効果が期待できます。

ここでは、エビリファイ持続性注射剤の効果と副作用を中心に、メリットとデメリットに分けて特徴をお伝えしていきたいと思います。

 

1.持続性注射剤(LAI)とは?

お尻か肩に筋肉注射をすることで、効果がしばらく持続します。

持続性注射剤とは、その名の通り、効果の持続する注射剤です。Long Acting Injectionの頭文字をとって、LAIとも呼ばれています。

お尻(腰の近く)か肩に筋肉注射をすることで、徐々に身体の中でお薬が溶け出していきます。このため、効果が2~4週間ほど持続していきます。

定型抗精神病薬としては、現在も2つのお薬が使われています。

  • ハロマンス・ネオペリドール(セレネースの持続注射剤)
  • フルデカシン(フルメジンの持続注射剤)

定型抗精神病薬としては、3つのお薬が発売されています。

  • リスパダールコンスタ(リスパダールの持続注射剤)
  • ゼプリオン(インヴェガの持続性注射剤)
  • エビリファイ持続性水懸筋注用(エビリファイの持続性注射剤)

定型抗精神病薬の持続注射剤は、1か月に1回の注射となっています。

リスパダールコンスタは2週間に1回、ゼプリオンは1か月に1回、エビリファイ持続性水懸筋注用では1か月に1回、臀部ないしは肩に筋肉注射します。臀部の方が痛みが少ない方が多いです。

 

2.エビリファイ持続性注射剤の特徴

エビリファイ持続性注射剤は、エビリファイの効果が持続するように作られた注射製剤です。効果や副作用のおおまかな特徴は同じなのですが、違いは大きいです。内服薬のエビリファイと比べたエビリファイ持続性注射剤の特徴を、メリットとデメリットに分けてまとめてみます。

エビリファイの効果について詳しく知りたい方は、「エビリファイ錠の効果と特徴」をお読みください。

 

2-1.エビリファイ持続性注射剤のメリット

  • 飲み忘れがなくなる
  • 副作用が軽減する
  • 減薬での身体の負担が少ない

エビリファイ持続性注射剤などの持続性注射剤での一番のメリットは、飲み忘れがなくなることです。ついお薬を忘れてしまうことは、誰しもよくあります。飲み薬ですと、飲み忘れを無くすこと自体が難しいのです。しっかり服薬指導をしていても、7~8割きっちり服用してくれていたらいい方です。

統合失調症の治療では、お薬をきっちりと飲み続けていくことが何よりも大切です。再発の一番のリスクは服薬中断なのです。エビリファイ持続性注射剤の最大のメリットは、飲み忘れがなくなることによって再発を防ぐことができる点にあります。

 

また、持続性注射剤では、血中濃度が飲み薬よりも安定します。というのは、注射によって直接静脈にお薬を注入しているので、お薬はダイレクトに脳に届きます。飲み薬では、小腸から吸収されて肝臓を通り、そこで代謝をうけてから脳に運ばれます。肝臓の機能の影響を受けてしまうので、効果が不安定になってしまうのです。

このように、エビリファイ持続性注射剤では血中濃度が安定するために、副作用が全体的に軽減されています。これによって効果もより安定します。

また、減薬をする時もゆっくりと身体からお薬が抜けていくため、身体への負担が小さくてすみます。ですから、スムーズに減薬することができます。

 

2-2.エビリファイ持続性注射剤のデメリット

  • 注射なので痛みがある
  • 副作用が出てしまった時に持続してしまう可能性がある
  • 薬価が高い

注射剤なので、痛みは避けることができません。エビリファイ持続性注射剤は注射の針は細いのですが、注射のときの痛みは強いです。注射した部位が硬くなってしまうこともあります。添付文章では肩か臀部に注射することとなっていますが、痛みが軽減される臀部に注射することが多いです。注射に対しては、抵抗が強い方も多いです。

一度注射をしてしまうと、薬の効果はしばらく持続してしまいます。もし副作用が出てしまうと、身体からなかなか薬が抜けないので持続してしまいます。

エビリファイ持続性注射剤の大きな問題が、薬価の高さです。非常に高額なお薬ですので、エビリファイ持続性注射剤を使う方は、必ず自立支援医療制度を利用します。自己負担が1割にはなりますが、それでも1か月のお薬代が3821~4654円になってしまいます。

 

3.エビリファイ持続性注射剤の薬価

自己負担1割でも、1か月3821~4654円となります。

商品名 剤形 薬価
エビリファイ持続性水懸筋注用 300mg 38212円
エビリファイ持続性水懸筋注用 400mg 46480円
エビリファイ持続性水懸筋注用シリンジ 300mg 38271円
エビリファイ持続性水懸筋注用シリンジ 400mg 46539円

エビリファイ持続性注射剤の薬価は非常に高いです。月に1回の注射で済みますが、自立支援医療制度を使って自己負担1割だとしても、1か月のお薬代が3821~4654円となってしまいます。

エビリファイ持続注射剤は、正式にはエビリファイ持続性水懸筋注用という名称となっています。アメリカなどの海外では、メンテナンスしてくれるお薬という意味をこめて「メンテナ」という商品名になっています。

エビリファイ持続性注射剤には、バイアルタイプとシリンジタイプの2種類が発売されています。患者さんにとっては大きな違いはありませんが、医療者側からみるとシリンジタイプの方が楽でミスがありません。

※2015年11月21日現在の薬価です。

 

4.エビリファイ持続性注射剤の使い方

まずはエビリファイの飲み薬からはじめて、安全性を確認します。問題がなければ、400mgの注射を行います。はじめの2週間は錠剤を併用します。その後は300mgか400mgで調整します。

エビリファイ持続性注射剤をいきなり注射すると、お薬が身体から抜けるのに時間がかかるので、まずは安全性を飲み薬で確認します。エビリファイの錠剤を使ってみて、目立った副作用がないことを確認し、できるなら錠剤で必要な量を見定めます。

エビリファイ持続注射剤は、まず400mgから注射することが決まっています。注射をしてからはじめの2週間(安全に切り替えるならば4週間)は、エビリファイの錠剤を併用します。

  • 6~15mg服用していた方は、6mg
  • 18~24mg服用していた方は、12mg
  • 30mg服用していた方は、15mg

注射は4週間おきに実施していき、量が多いと思った場合は300mgまで減量できます。エビリファイの分解を妨げるような薬(CYP2D6・CYP3A4阻害薬)を併用する場合は、200mgか160mgまで減量することができます。

 

このように、エビリファイ持続性注射剤の用量はかなりアバウトになっています。統合失調症では、エビリファイは高用量で使っていくことが多いことに加え、エビリファイでは副作用が少ないためでしょう。

400mgを注射した時の血中濃度は、エビリファイ6mgの最低血中濃度と24mgの最大血中濃度の間におさまります。データをみると、およそエビリファイ15mgを服用したのと同じような状態になります。

エビリファイ持続性注射剤は4週間に1回行っていきますが、通院できずに開いてしまった場合は、最後に注射をしてから7週間までは同じように注射をしていきます。8週間以上たってしまったら、スタートからやり直しになります。

 

5.エビリファイ持続性注射剤が向いている人とは?

  • 服薬を続けるのが難しい方
  • 症状が不安定な方
  • 再発を繰り返している方
  • 副作用で困っている方
  • 錠剤でもある程度の量が必要な方
  • 多剤が必要な方

それではエビリファイ持続性注射剤はどのような方にむいているでしょうか?

服用を続けていくのが難しい方に向いているといえます。お薬の飲み忘れが多そうな方、服薬を煩わしいと感じている方、単身生活の方など、今後を見据えて、飲み忘れや服薬中断のリスクが高い方に向いているお薬と言えます。

また、症状が不安定な方や再発を繰り返している方にも向いています。このような方では、多くの場合が服薬が乱れています。お薬が抜けてしまうと調子が悪くなり、一線を超えてしまうと現実的な判断ができなくなります。エビリファイ持続性注射剤によって少しでもお薬が効いていれば、急激な悪化を防げることがあります。調子の底をつくってくれるような働きがあります。

エビリファイ持続性注射剤は血中濃度が安定しているので、副作用が少ないのも特徴です。そもそもエビリファイは副作用が少ないお薬ですが、エビリファイで効果は十分だけれども副作用がネックという方には、エビリファイ持続性注射剤に切り替えるのも一つの方法です。

エビリファイ持続性注射剤は定期的な通院して注射が必要なので、病識がある程度ある方に使うお薬です。まったく病識がない方に、無理やり注射をするお薬ではありません。

また、エビリファイ持続注射剤では使い方が決まっていて、どんな患者さんも300~400mgが推奨されています。ですから、エビリファイの量を少なくできる方には向いていません。エビリファイをある程度の量を使う方に向いているといえます。

統合失調症の治療では、なかなか症状がコントロールしきれずに多剤になってしまうこともあります。現状では、3剤以上はお薬を使いにくくなっています。持続性注射剤に関しては1剤とはカウントされないため、多剤の方が切り替えていくことも増えてきています。

 

まとめ

エビリファイ持続性注射剤のメリットは、

  • 飲み忘れがなくなる
  • 副作用が軽減する
  • 陰性症状の改善効果が大きい
  • 減薬での身体の負担が少ない

エビリファイ持続性注射剤のデメリットは、

  • 注射なので痛みがある
  • 副作用が出てしまった時に持続してしまう可能性がある
  • 用量を少なくできない
  • 薬価が高い

リスパダールが向いている人とは、

  • 服薬を続けるのが難しい方
  • 症状が不安定な方
  • 再発を繰り返している方
  • 副作用で困っている方
  • 錠剤でもある程度の量が必要な方
  • 多剤が必要な方

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