エビリファイで痩せる3つのケース

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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エビリファイを服用していて痩せる方は確かにいらっしゃいます。エビリファイは太りにくいお薬ですし、活動的になることで体重が減少する方もいるのです。

ですが、「エビリファイを服用していて太ってしまった」という方もいらっしゃいます。このように、人によって差が出てしまうのはどうしてでしょうか?

エビリファイを服用している方が、誰しも痩せるわけではありません。ここでは、どのような状況だとエビリファイで痩せるのか、3つのケースに分けてお伝えしていきたいと思います。

 

1.エビリファイの体重への影響

エビリファイは抗精神病薬としては太りにくいお薬で、統合失調症の患者さんでは体重減少します。うつ病や双極性障害では、体重増加傾向があります。

エビリファイの臨床試験での承認時の副作用報告をみてみましょう。エビリファイでは、統合失調症・双極性障害・うつ病の3つの病気で適応が認められていますので、それぞれの病気ごとに副作用がまとめられています。

<体重増加>

  • 統合失調症(743例):2.96%
  • 双極性障害(192例):9.38%
  • うつ病(467例):10.06%

<体重減少>

  • 統合失調症(743例):9.15%
  • 双極性障害(192例):1.56%
  • うつ病(467例):0.21%

このように見てみると、それぞれの病気によって体重への影響が異なります。統合失調症に関しては、体重減少することが多いです。確かに臨床の現場では、他の抗精神病薬からエビリファイに切り替えると体重減少することが多いです。

ですが、双極性障害やうつ病では、むしろ体重増加になることが多いです。体重減少することがないわけではありませんが、非常にまれです。

 

このように見ると、エビリファイは、痩せるというよりも太る傾向にあるお薬といえます。他の抗精神病薬と比較すると太りにくいお薬なので、他の抗精神病薬から切り替えた時に体重減少することが多いと考えられます。統合失調症の患者さんで体重増加に悩んでいる方は、エビリファイはひとつの選択肢になります。

 

エビリファイが太りやすい傾向がある理由を知りたい方は、
エビリファイは太るの?体重増加と4つの対策
をお読みください。

 

2.エビリファイで痩せるのはなぜ?

「太りやすい薬からの切り替え・飲み始めの下痢や嘔吐・症状がよくなって活動的になった」の3つが考えられます。

エビリファイでは痩せる方はどのようなケースでしょうか?私の患者さんで振り返ってみると、3つのケースに分けられます。

  • 太りやすい薬からの切り替え
  • 飲み始めの下痢や嘔吐
  • 症状がよくなって活動的になった

 

順番にみていきましょう。

エビリファイで痩せるのは、多くが太りやすい薬から切り替えた時です。エビリファイは抗精神病薬の中では太りにくいお薬になります。このため、MARTAのジプレキサ・セロクエルやSDAのリスパダールなど、より太りやすいお薬から切り替えると、体重が減少します。これは痩せたのではなく、元の薬の副作用が軽減しただけです。

エビリファイの飲み始めには、下痢や嘔吐の副作用がみられることがあります。こうなると、食べ物が吸収されないですし、水分も身体からどんどん失われてしまいます。すると体重が減って痩せることもあります。ですが下痢や嘔吐は、時間がたって身体に慣れていくにつれて薄れていきます。エビリファイは太る傾向にあるお薬なので、長い目で見ると太りやすくなっていきます。

エビリファイで痩せていく方の中には、病気が回復している結果であることもあります。エビリファイが効いてくると、いままで気力がでなくて自宅にひきこもっていたり、不安が強くて外出できなかったような方が、活動的になっていきます。身体を動かす機会が増えることで、エネルギーが消費されます。筋肉量が増えることで、代謝がよくなっていきます。エビリファイは、陰性症状や認知機能を改善しやすいお薬です。

 

エビリファイの副作用について知りたい方は、
エビリファイの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

3.エビリファイで痩せた時の考え方

エビリファイで痩せていったときはどのように考えればよいでしょうか?先ほどの3つの場合に分けて考えてみましょう。

 

3-1.太りやすい薬からの切り替え

効果がしっかりと出ているならば問題ありません。

太りやすい抗精神病薬から切り替えたことで、痩せることは好ましいことです。エビリファイは、副作用が全体的に少なく、抗精神病薬の中では太りにくいお薬です。ですから、薬を切り替えて痩せてきた場合、効果がしっかりと出ているならば問題ありません。

うつ病や双極性障害の臨床試験では、他に抗精神病薬が使われていない条件で調査しています。実際の臨床では、抗精神病薬を使うこともあります。抗精神病薬が原因で体重増加した方は、切り替えることで体重減少が期待できます。

エビリファイの臨床試験では、体重への影響だけを調べてもいます。315人の統合失調症の患者さんに、エビリファイを52週間服用させました。その結果、平均1.4kgの体重減少が認められました。BMI25以上の肥満の方では、平均2.4kgの体重減少が認められています。

 

3-2.飲み始めの下痢や嘔吐

身体に負担になるので、痩せる効果を期待してはいけません。

下痢や嘔吐によって体重が落ちている状態は、身体には大きな負担となっています。痩せるのでラッキーと思われる方もいるかもしれません。ですが、水分が失われたり、必要なミネラルのバランスが崩れてしまいます。

エビリファイは他の抗精神病薬と比較すると、吐き気の副作用が多いです。ですが副作用としての下痢や吐き気は、ほとんどの場合が身体に慣れてしまいます。

中には、下剤を使ったり、自分で吐いたりすることを続けてしまう方もいます。ですが、下剤を使い続けると正常な便通 が乱れて便秘の原因になってしまいます。嘔吐をしすぎると、胃から食道に逆流しやすくなってしまい、逆流性食道炎になってしまいます。下痢や嘔吐に頼った ダイエットはやめましょう。

 

3-3.症状が改善し活動的に

活動的になることで、体重が減少していくことはよいことです。ですがうつ病や双極性障害の方は、元気すぎに注意をしましょう。

調子が悪くなっていくと痩せてしまうイメージが強いかも知れませんが、太ってしまうこともあります。

統合失調症では、陰性症状が目立ってくると意欲がなくなり、活動性が低下してしまいます。うつや不安が強いときも、意欲もなくなってしまい、活動量が落ちてしまいます。家に引きこもりがちになるので、身体を動かすことも減ってしまいます。食欲が落ちる時もあれば、反対に増える時もあります。このように、消費エネルギーが減って食欲も増えれば、当然太ってしまいますね。

エビリファイは、統合失調症治療薬としては陰性症状や認知機能の改善効果が大きいです。また、抗うつ効果も期待できるお薬です。

エビリファイの効果が出てきて症状が改善してくると、少しずつ意欲が戻ってきます。活動的になってくるので、消費エネルギーも増えていきます。運動は気分のさらなる改善につながるので、ますます活動的になるという良い循環が生まれます。このようになると、エビリファイを使い続けて痩せていくこともあります。これは良いことなので、身体を動かすのは続けていただきたいです。

 

ただ、「元気すぎではないか?」というところに注意が必要です。気分の波がある方は、回復すると元気になり過ぎることがあり ます。「目が冴えるから寝なくていい」「アイデアが次々浮かぶ」「何でもできる気がする」なんてときは、ブレーキをかけなければいけません。

うつ病であても、双極性障害が隠れていることもあります。心当たりがある方は、主治医に相談しましょう。エネルギーを使いすぎると、その反動が後からきてしまいます。

 

まとめ

エビリファイは抗精神病薬としては太りにくいお薬で、統合失調症の患者さんでは体重減少します。うつ病や双極性障害では、体重増加傾向があります。

「太りやすい薬からの切り替え・飲み始めの下痢や嘔吐・症状がよくなって活動的になった」の3つが考えられます。

エビリファイで痩せる原因は、

  • 太りやすい薬からの切り替え
  • 飲み始めの下痢や嘔吐
  • 症状がよくなって活動的になった

の3つが考えられます。それぞれの注意点としては以下になります。

①効果がしっかりと出ているならば問題ありません。
②下痢や嘔吐は身体に負担になるので、痩せる効果を期待してはいけません。
③うつ病や双極性障害の方は、元気すぎに注意をしましょう。

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