リレンザで熱が下がらない?効かない時とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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冬の季節で発熱と言えばインフルエンザがまず考えられます。インフルエンザで高熱でだるさが続いていたら辛いですよね。

「長時間診察時間を待って、やっとリレンザの薬をもらって吸ったのに熱が下がらない!!」そんな人のために、リレンザで熱が下がらないケースについてまとめていきたいと思います。

大切なのは「熱」は必ずしも悪いものではなく、インフルエンザを退治するために体が頑張って出していることを知っておくことです。

熱をだすことの意味についてもふれながら、「リレンザで熱が下がらない」「リレンザが効かない」と感じた方に対して、その考えられるケースを詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.そもそも熱ってどうして出るの?

熱は、体がインフルエンザと戦うために出ている防御反応です。熱が出ているということは、体が頑張ってインフルエンザを退治している証拠です。

「発熱が出ると辛い!だから下げたい!!」そう思う人が大半だと思います。そもそも熱が、どうしてインフルエンザにかかると上がるのか?そこから説明していきます。まずは大まかな流れを理解してみましょう。

  1. インフルエンザウイルスが侵入すると、白血球やマクロファージなどの細胞でインフルエンザウイルスなどの異物を食べるように取り込みます。
  2. この際に取り囲んだ細胞が、サイトカインという発熱を促す物質を出します。
  3. サイトカインが脳に行くことで、体内にインフルエンザウイルスが侵入したことを知らせます。
  4. 脳の視床下部の体温調節中枢が、体内の温度を上昇させます。

この順序で熱は上がります。インフルエンザウイルスが体内に侵入した事がきっかけですが、私たちの身体が必要だから熱を上げているのです。ではなぜ、熱を上げるのでしょうか?以下の3つが挙げられます。

  • インフルエンザウイルス等は熱で繁殖が抑制されます。
  • 熱が産生されることで、インフルエンザウイルスと戦う白血球などの面積細胞の活動がさらに高まります。
  • 私達自身が病気になったと気づくことができます。これによって体を休めなきゃと自覚するのです。

熱が出るとき関節や筋肉痛、気持ち悪い、寒気がするなどの症状もサイトカインの働きです。これらの症状は辛いですが、そのために無理ができずに身体を休めることができます。「熱が高くなっているのは、インフルエンザを頑張って退治してるんだ!」って考えてみるといいかもしれません。

 

2.リレンザはインフルエンザにどうやって効くの?

リレンザはノイラミニダーゼ阻害薬といい、インフルエンザウイルスを殺す作用はなく、増殖を防ぐ作用で治療します。

次に、リレンザ自体がこのインフルエンザにどう作用していくのかをお伝えしていきます。インフルエンザは以下の3つの過程を経て増殖します。

  1. インフルエンザが体内への付着
  2. インフルエンザウイルスのRNA・タンパク質の合成
  3. インフルエンザウイルスの放出

このうち、日本で発売されている4種類の薬は、③のインフルエンザウイルスの放出を抑えるノイラミニダーゼ阻害薬となります。リレンザもインフルエンザウイルスの増殖を抑える治療薬であり、インフルエンザウイルス自体を殺す作用はありません。つまりリレンザを吸入したからといって、すぐにインフルエンザウイルスが体内からいなくなるわけではないのです。

基本的には、白血球がインフルエンザウイルスを退治するまで我慢するしかないのです。あくまでリレンザは、これ以上ひどくなるのを防ぐ薬なのです。

リレンザの効果について詳しく知りたい方は、「リレンザ(ザナミビル)の効果と特徴」をお読みください。

 

3.リレンザを吸入すると、どれくらいで熱が下がるの?

一般的にリレンザを吸入してから73時間(3日間)で効果があるといわれています。

リレンザは1日2回朝と夕方に吸入します。これを5日間続けることで効果を発揮する薬です。1回リレンザを吸入したら終わりではなく、計10回吸入する必要があります。これはリレンザが先ほど説明したようにインフルエンザ自体を殺す作用があるわけではなく、あくまでもインフルエンザウィルスの増殖を抑える止まりの効果しかないからです。

そのためインフルエンザウィルスの増殖を一時的に止めても、意味がなく自分の免疫力で退治するまでリレンザを吸入し続ける必要があります。つまり、インフルエンザの治療は即効性は期待できません。これはリレンザに限らず、

と他のお薬も同じ機序なので、即効性はありません。特にリレンザが5日間で10回吸わなければいけないのに対して、1回の吸入で済むイナビルは即効性があると勘違いされる方も多いですが、イナビルが1回の吸入で済むのは速効性があるからではなく、吸入した後、効果の持続時間が長いからです。

インフルエンザウイルスに対する有効成分はラニナミビルという成分ですが、イナビルにはラニナミビルオクタン酸エステルという成分が含まれています。イナビルは正確に言うと、これが体内に吸入されて代謝されることで有効成分のラニナミビルとなるのです。

ラニナミビルは、最高血中濃度到達時間が4時間、半減期が70時間程度となっています。つまり、一度吸入してしまうと、血中濃度が半分になるまでに3日ほどかかります。ですから、一回の吸入で十分に効果が持続するのです。

またリレンザとタミフルは昔からあるインフルエンザの治療薬ですが、

  • A型、B型
  • 年齢
  • 性差
  • 基礎疾患

などで様々な条件からどちらが効果があるか調査されていますが、どの条件でも優位な差がなかったとする調査がほとんどです。この点も、インフルエンザの治療薬がインフルエンザを倒すわけではなく、増殖を抑えて我々の免疫力でインフルエンザを退治されるのを待つ治療になるためです。

タミフルとリレンザの後から登場したイナビル、メリットは1回で済むという手軽さのみです。効果がより高いという報告は少ないです。そのため、どのインフルエンザ治療薬でも約3日間で解熱すると考えられます。

ここで示した3日というのはあくまで平均の日数です。これよりも早く熱が下がる人もいれば、一方で、3日目以降も続く人もいます。3日目以降も続いたからリレンザが効いていないというわけではありません。

インフルエンザ治療薬は、インフルエンザの増殖を抑えるお薬です。つまりインフルエンザウイルスが増殖し終わった状態であると効果が弱くなります。発熱してから48時間以降にリレンザを投与した場合は、リレンザの効果が弱まってしまいます。リレンザが効かない場合は、人によっては治療開始が遅れてしまった場合もあります。

大切なことは、インフルエンザが退治されるまでは体内の白血球に頑張ってもらうしかないということです。そのためには、熱が出てくるのは仕方がないのです。また熱が出なくなった=インフルエンザウィルスが完全に消滅したわけではありません。

積極的に熱を出さなくてもよいぐらい、インフルエンザウィルスが減っただけの可能性があります。熱が下がったからもう大丈夫なんて油断してリレンザの吸入をやめてしまうと、インフルエンザが再度増悪するリスクがあります。それだけではなく、リレンザに耐性のあるインフルエンザが誕生してしまい治療が非常に難しくなります。

リレンザの吸入をしている方は熱のあるなしに関わらず、必ず吸入し切るようにしましょう。

 

4.熱はどうやったら下げられるの?

熱を下げるのは解熱剤ですが、絶対に勝手に飲まないようにしましょう。よく解熱剤として出されるロキソニンは、インフルエンザ脳症との関連が指摘されています。

「リレンザ吸入したのに熱がまだある!前にもらったロキソニンがあるからしょうがないから飲んじゃおう!!」と思っている人は待ってください。

上述しましたように、熱はそもそも悪ではありません。あなたの体からインフルエンザウイルスを退治するために大切なことなのです。

患者さんによっては、「自分は普段から平熱が低いんです。36℃台は高熱だから薬がほしい。」とおっしゃる方もいますが、熱を下げることは体に良いことではなく、むしろインフルエンザが長引く原因になってしまいます。食事も水分もとれずに脱水の危険性があるときは解熱剤も使いますが、熱が〇〇度だから薬を飲んだ方が良いではないことを覚えておきましょう。

さらには解熱剤は、インフルエンザ脳症と関与しているのではないかともいわれています。ですから、インフルエンザの時は解熱剤を慎重に使っていく必要があります。インフルエンザ脳症の発症は急激で、発熱後数時間から1日以内に神経症状がおこります。主な症状は、けいれん、意識障害、異常行動といった神経症状が急激に進行します。そして、全身状態が悪化して多臓器不全となり、死に至ることもある合併症です。

詳しく知りたい方は、「インフルエンザと風邪の違いと注意すべき合併症」を参考にしてください。

インフルエンザ脳症にはロキソニンなどの解熱剤が関与していると疑われていることから、インフルエンザが疑われているときは処方しません。インフルエンザで発熱した時は、カロナール(成分名:アセトアミノフェン)を出すことが一般的です。

熱を下げること自体が治療ではないこと、解熱剤によってはインフルエンザ脳症がひき起こされる可能性があることを理解して、安易にインフルエンザ中に解熱しようと思わない方が良いです。

 

5.リレンザが効かない時、どれくらいで受診するべき?

正解はありませんが、5日間から1週間程度熱が下がらなかったら、病院を再受診することをお勧めします。

インフルエンザシーズンは病院にたくさんの発熱患者さんが来院されます。冬のインフルエンザ感染時期に発熱をみたらまずインフルエンザが疑われ、検査キットで検査されるかと思います。インフルエンザキットが陽性だと、ほぼインフルエンザと診断できます。

しかしながら発症から早期の場合は、陰性だからと言ってインフルエンザを否定できません。ですからインフルエンザとみなして治療が開始されることも多いですが、早期にインフルエンザの治療を開始して解熱しなかったら他の疾患を考慮しなくてはいけません。

では、どれくらい熱が下がらなかったら病院に行けば良いのでしょうか?正解はありませんが、一般的にはインフルエンザでは3日程度で解熱することが目安になります。1日~2日目で熱が下がらないといって受診しても、もう少し様子をみましょうとなってしまう可能性があります。一般的には5日~7日程度熱が下がらないとなったら、医師も他の病気の可能性を考えます。

具体的には、

  1. インフルエンザの治療が不十分だった。(うまく吸入できない、治療薬に耐性のインフルエンザ等を考えます。)
  2. インフルエンザ以外の感染の可能性。(インフルエンザにかかって免疫が落ちた時にかかる感染を2次感染といいます。またインフルエンザ以外に最初から感染していた可能性もあります。)
  3. 感染症以外の発熱の可能性。(患者さんによってはもともと発熱がしやすい病気をもっている人もいます。感染ではなく原疾患が悪くなった可能性、もしくは今回の発熱をきっかけに病気が発症した可能性があります。)

多くの医師はまず①・②の可能性を考えます。③は患者さんの背景やその時の状態によって考慮することなので、全部考えるとは限りません。

ただしここに書いたことは、状態が変わらなった場合の話です。状態が受診時よりも悪くなった場合は、全く別のことを考えなければなりません。

意識がもうろうとするようなことがあれば、インフルエンザ脳症の可能性があります。咳や痰が出てきて息が苦しいとなったら、肺炎が合併している可能性があります。熱だけじゃなく新しく何か症状が出現したら、病院をすぐに受診するようにしましょう。病気によっては様子を見ていたら重症化する場合もあります。

 

まとめ

  • 熱は、体がインフルエンザと戦うために出ている防御反応です。辛い症状ですが、インフルエンザを退治するためには必要なことです。
  • リレンザは、インフルエンザウイルスの増殖を防ぐ作用で治療します。そのため速効性はなく、平均して3日程度解熱に時間を要します。
  • 解熱剤として出されるロキソニンは、インフルエンザ脳症との関連が指摘されています。
  • 基本5日程度熱が下がらなければ再受診をお勧めします。ただし、熱以外の症状が出た場合はすぐに受診するようにしましょう。

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