2016年9月6日 / 最終更新日時 : 2016年9月7日元住吉こころみクリニックスピオルト

スピオルトレスピマットの正しい吸入方法は？

元住吉こころみクリニック: 2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック

スピオルト(一般名：チオトロピウム‐オルダテロール)レスピマットは、2015年にベーリンガー製薬会社より発売された抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤の吸入薬になります。

気管支を拡張することで、主にCOPD(肺気腫)の第一選択薬として活躍しています。スピリーバレスピマットが抗コリン薬単剤として幅広く使われてきましたが、それにβ刺激薬が加わって効果が増強された吸入薬となっています。

スピリーバはスピオルトと同じ吸入方法のため、スピリーバからスピオルトに変更した方は抵抗なく吸入できると思います。一方ではじめからスピオルトを使っていく方は、吸入方法が分からない場合もあると思います。スピオルトは吸入する方法を間違えると、全く効果がありません。

ここでは、スピオルトレスピマットの正しい吸入方法を確認してみましょう。

１．スピオルトレスピマットの効果の特徴

スピオルトレスピマットは、長期作用型の抗コリン薬のスプレー式の吸入薬です。

スピオルトレスピマットは、1日1回2吸入、主に朝に吸入する長期作用型抗コリン薬β刺激薬の合剤になります。それぞれ違う機序で気管支を広げることで、慢性気管支炎や肺気腫などのCOPD（慢性閉塞性肺疾患）の治療薬として長年使われていました。

抗コリン薬の禁忌（処方してはいけない患者）として、

閉塞隅角緑内障の患者
前立腺肥大症による排尿障害のある患者

2つの病気がある患者さんにはスピオルトは使用できないので、注意が必要です。

スピオルトレスピマット自体の特徴ですが、スプレータイプのため吸入力が弱くても薬が吸えることです。特にCOPDは、タバコで肺がボロボロになってしまった病気です。肺がボロボロになることで気管支が狭まり、息が思いっきり吐けなくなります。息が吐けなくなるということは吸う力も弱くなります。

ただし、スプレーはボタンを押すタイミングと吸うタイミングを合わせる必要があるので注意が必要です。

詳しくスピオルトレスピマットの特徴を知りたい方は、「スピオルトレスピマットの効果と特徴」を一読してみてください。

２．スピオルトレスピマットを吸入する前に・・・

スピオルトレスピマットにカートリッジを差し込みましょう。そして霧状のミストが見えるまで、噴霧ボタンを押す作業が必要になります。

スピオルトレスピマットは、吸入する前にカートリッジをセットすることが必要になります。カートリッジのセットの仕方ですが、

スピオルトレスピマットのキャップを閉じた状態で、安全止めを押しながら、透明ケースをはずします。
カートリッジ上部の緑色の部分を上にして、スピオルトの吸入器具に挿入します。
カートリッジを固い平面の上でゆっくり押し込んで、カチッと音がするまで確実に挿入します。
スピオルトレスピマットの透明ケースを装着して下さい。

以上でカートリッジが、スピオルトレスピマットに装着されます。一度装着したカートリッジは、全部なくなるまで抜かないようにしましょう。

またミスト状の霧が見えるようになるまで、

透明な下のケースを右に180度カチッとなるまで回してください。
噴霧ボタンを押してください。

この2つを繰り返す必要があります。なお、スピリーバとスピオルトの見た目の違いはキャップの色です。スピリーバは水色なのに対して、スピオルトは緑色になっています。

ただしスピリーバからスピオルトに切り替えた人は、基本的にスピリーバに戻すことは少ないです。間違いのもとになるので、スピリーバは処分した方が良いです。

３．スピオルトレスピマットの吸入方法とは？

スピオルトの吸入方法は以下の手順で行います。

キャップを上向きにして持ち、透明ケースを右の方向にカチッと音がするまで180度回転させます。
キャップを完全に開き、息をゆっくり、最後まで吐き出します。
マウスピースを口にくわえ、息を口からゆっくりと吸いながら、噴霧ボタンを押し、できるだけゆっくり肺いっぱいに息を吸い込み、10秒を目安に苦しくならない程度に息を止めます。
1回につき2吸入するため、1～3の動作をもう一度行います。

それぞれの注意点です。

まず①のスピオルトレスピマットを回転させるときですが、目盛りは透明ケースを180度回転させるごとに1噴霧分進みます。そのため1回の噴霧時に360度回すと、2回分カウンターが進むため注意が必要です。

②のように、息を吐いてからスピオルトを加える習慣をつけてください。スピオルトを処方された方の大部分は、COPDや喘息など吸う力のない人かと思います。そのため息をゆっくりと吸うことが大変な人も多いです。そのためまず息をたくさん吸えるようにするために、息を吐いて準備します。

③の息を吸い始めたタイミングで噴霧ボタンを押すことが、一番大切です。息を吐いたタイミングでスプレーを押しても、気道にスピオルトが到達せずに全部吹き飛ばされてしまいます。必ず吸ってるを使う場合は、息を吸ってるタイミングで押すようにします。

またスピオルトがせっかく気道内に入っても、すぐに息を吐いたら全部出ていってしまいます。しっかり息を止めて、気道の末梢までスピオルトが行き渡るようにしましょう。

④のもう一度①～③を繰り返してスピオルトレスピマットを2回吸入することは、本当に習慣づける必要があります。1回吸って満足してしまう人が多いです。

スピオルトレスピマットを1回しか吸入してなくてCOPDや喘息のコントロールが不十分な人がいたとしても、医者は処方している量を吸ってると思いこんでしまうことが多いです。（医者側がスピオルトレスピマットを正しく使えているか再確認することがもちろん大切ですが…）

なお、吸入ステロイドの吸入薬は、吸ったらその都度うがいをすることが推奨されています。副作用である嗄声や口腔内のカビを防ぐためです。

スピオルトも、口の中が渇く口渇が副作用として認めます。そのため可能であれば、毎回うがいをした方が口渇予防につながります。

これらの吸入方法について動画で確認したい方は、ベーリンガー製薬会社のサイトを参考にしてみてください。

４．スピオルトレスピマットが上手く吸えない人へ

薬剤師さんに吸入指導をお願いしましょう。それでも吸えない人は吸入薬以外の投与方法を検討する必要があるかもしれません。

スピオルトレスピマットを初めて処方された方は、内服と違って戸惑うことも多いでしょう。このサイトも一つの参考になればよいのですが、どうしても実際にみてみないと伝わらない部分もあるかと思います。

スピオルトレスピマットに限らず新しい吸入薬を処方された方は、遠慮せずに必ず薬剤師さんに吸入指導をしてもらいましょう。その場で自分の吸い方のどこが悪いかを指導してもらった方が間違えないで済みます。

また、吸入薬は残薬がなければ全く意味がありません。スピオルトの残薬は図の目盛りをみます。

目盛りは一回吸うごとに上に上がっていきます。スピオルトレスピマットは、目盛りが0になっても回し続けられるため注意が必要です。

また、力がなくてうまく回すことができない人は、回すための補助器があるので積極的に使用してみましょう。

COPDの治療では、スピオルトを吸った瞬間効果があるわけではありません。長期間スピオルトを吸うことで、呼吸状態が低下するのを防ぐ意味あいが強いです。

うまく吸えてない
やり方はあっていても残薬がなかった

など、気が付かないことが多いので注意が必要です。

ただし認知症の方なので、どうしてもボタンを押したタイミングと吸入するタイミングが合わない人がいます。他のスプレー式のお薬は、スペーサーという吸入補助器を使用して、スペーサー内に噴霧したエアゾルをためて、吸ったり吐いたりしながら気道に入れていきます。

しかしスピオルトレスピマットに関しては、このスペーサーが使用できない構造になっています。そのためスピオルトレスピマットをタイミングが合わない人は、吸うことが困難かと思います。

スピオルトは、抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤です。抗コリン薬は口渇や排尿障害など、全身に副作用が出現する薬です。そのため抗コリン薬を吸入以外でCOPDや喘息に対して投与することは、現時点ではありません。

一方でβ2刺激薬は張り薬であるホクナリンテープに切り替えて使用することが多いです。

このように、現在は吸入薬が吸えなくても色々な方法でCOPDは治療することができます。スピオルトレスピマットが上手く吸えないからと諦めず、一度医師に相談してみてください。

まとめ

もう一度スピオルトレスピマットの吸入方法を確認しておきましょう。

スピオルトレスピマットのキャップを閉じた状態で、安全止めを押しながら、透明ケースをはずします。
カートリッジ上部の緑色の部分を上にしてスピオルトの吸入器具に挿入します。
カートリッジを固い平面の上でゆっくり押し込んで、カチッと音がするまで確実に挿入します。
スピオルトレスピマットの透明ケースを装着して下さい。
スピオルトレスピマットのスプレーが出てくるまでスピオルトを回転させた後、噴霧ボタンを押す作業を繰り返してください。

ここまでが準備段階です。次に吸入方法ですが、

キャップを上向きにして持ち、透明ケースを右の方向にカチッと音がするまで180度回転させます。
キャップを完全に開き、息をゆっくり、最後まで吐き出します。
マウスピースを口にくわえ、息を口からゆっくりと吸いながら、噴霧ボタンを押し、できるだけゆっくり肺いっぱいに息を吸い込み、10秒を目安に苦しくならない程度に息を止めます。
1回につき2度吸入するため①～③の動作をもう一度行います。

スピオルトレスピマットを吸入している人は一度確認してみてください。