テオドールの副作用と安全性
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
テオドール(一般名:テオフィリン)は、カフェインと同じ成分のキサンチン誘導体という成分です。
- 気管支を拡げる作用(気管支拡張作用)
- 炎症を抑える作用(抗炎症作用)
の2つを併せ持ったお薬です。このような作用を利用して、テオドールは気管支喘息や肺気腫(COPD)の治療薬として使われています。2つの効果を併せ持っているということで、発売された当初は数多くの患者さんに処方されました。
しかしテオドールは、血中の濃度内を一定に保たないと副作用が出現するお薬です。あまりにテオフィリンの血中濃度が高いと、痙攣や呼吸停止など重篤な副作用も出現してしまいます。
このように、使い方を誤るとテオドールは非常に危ない薬です。ここでは、テオドールの副作用について詳しくお伝えしていきます。
1.テオドールの血中濃度と副作用
テオドールが安全域の血中濃度でも、吐き気、頭痛、食思不振などの副作用が出現します。血中濃度が高いと、痙攣や心室頻拍の副作用が生じ、最悪の場合は命を落とす可能性があります。
テオドールの添付文章によると、939例中85例(9.05%)に副作用が認められたと報告されています。主な副作用は、
- 吐き気38件(4.05%)
- 頭痛24件(2.56%)
- 腹痛14件(1.49%)
- 食欲不振12件(1.28%)
- 動悸11件(1.17%)
となっています。
この結果はお薬の安全性を解析するための試験ですので、定期的にテオドールの血中濃度をしっかり測ったうえでの試験です。テオフィリンの血中濃度が20μg/ml以上となると、副作用が出現しやすいといわれています。一方で血中濃度とは関係なく、上にあげた副作用は認められます。
特に気持ち悪いや食事がとれないといった副作用は、私も外来でよく経験します。テオドールを数日内服してから、これらの症状が出現する人もいます。数日でテオフィリンの血中濃度が急激に上昇することは考えづらいので、テオフィリンの血中濃度とは関係なしに認められる症状になります。
一方でテオフィリンの血中濃度が20μg/mlを超えると、テオフィリン中毒が出現するといわれています。
テオフィリンの血中濃度が20~30μg/mlでは、
- 消化器症状(特に悪心嘔吐)
- 頭痛心
- 頻脈
これらに加えて、
- 不眠
- 不安・興奮などの精神症状
- 横紋筋融解症(手足のしびれや筋肉痛)
などが加わります。さらにテオフィリンの血中濃度が30μg/mlを超えると、
- 痙攣
- 心室頻拍・心房細動(心臓のリズムがおかしくなります)
- 呼吸促進(息が苦しくなります)
などの副作用が出現するといわれています。テオフィリンの血中濃度が50μg/ml以上になると心肺停止になり、最悪の場合は死亡するといわれています。
これらの重篤な副作用は、前触れもなく突然起こることがあります。一方でテオフィリンの血中濃度が20μg/ml以下の人が、いきなりけいれん発作を起こして亡くなるようなことはまずありません。(テオフィリンの血中濃度が低いのに痙攣が起きた場合は、テオドール以外の他の原因を考えます。)
そのため、血中濃度を定期的に採血してみることが大切になります。
2.テオドールの副作用のために注意すべき病気とは?
テオドールが使えない人はいませんが、注意する病気は沢山あります。
テオドールが絶対に使えない病気は、添付文章には記載されていません。
ただ、気を付けた方がよいという病気は記載されていて、以下のようなものがあげられています。
- てんかんの患者〔中枢刺激作用によって発作を起こすおそれ〕
- 甲状腺機能亢進症の患者〔甲状腺機能亢進に伴う代謝亢進のおそれ〕
- 急性腎炎の患者〔腎臓に対する負荷を高め、尿蛋白が増加するおそれ〕
- うっ血性心不全の患者〔テオフィリン血中濃度が上昇することがある〕
- 肝障害のある患者〔テオフィリン血中濃度が上昇することがある〕
となっています。
特に重要なものは、肝臓に障害が出た場合です。テオドールは80%以上が肝臓で代謝されます。そのため肝臓の機能が急激に悪くなると、テオフィリンが代謝されなくなり血中に蓄積されるようになります。
そのため肝臓が悪くなった時にテオドールを内服し続けると、急激にテオフィリンの血中濃度が上昇してしまい非常に危険です。
肝臓に限らず、腎臓や心臓の機能が低下してもテオドールは注意するように記載されています。そのため体調が悪くなった際は、テオドールを継続した方が良いか主治医に相談した方が良いと思います。
テオドールは、小児でも使用できるお薬です。しかしながら慎重投与として、
- てんかん及び痙攣の既往歴のある小児〔痙攣を誘発することがある〕
- 発熱している小児〔テオフィリン血中濃度の上昇や痙攣等の症状のおそれ〕
- 6ヵ月未満の乳児〔乳児期にはテオフィリン血中濃度が上昇することがある〕
- 低出生体重児・新生児に対する安全性は確立していない.〔使用経験がない〕
と記載されています。
小児は成人と比べて、けいれん発作が出現しやすいといわれています。そのため喘息がよほど重症でなければ、上記4つの場合では使用しない方が無難かと思います。
3.テオドールは高齢者・妊婦・授乳中に使えるの?
高齢者・妊婦中の方には、慎重に投与するように記載があります。
高齢者の方では、
高齢者では副作用の発現に注意し、慎重に投与すること。〔高齢者では非高齢者に比べ、最高血中濃度の上昇が認められたとの報告がある。〕
と添付文章に記載されています。高齢者はご自身が自覚がなくとも、心臓や腎臓、肝臓などの臓器が弱ってる可能性があります。また体調が悪くなって食事がとれなくなると、若年者に比べて余力がないため、簡単に状態が悪くなります。
食事がほとんど取れないけど薬だけは飲ませ続けていたら、けいれん発作で病院に運ばれてしまったという患者さんは度々経験します。
一方でテオドールが使用されるCOPDや喘息は、年齢が高くなればなるほど悪化しやすい傾向があります。呼吸機能は、年をとればとるほど弱ってくるからです。そのため高齢者だから…という理由でテオドールを避けられない状況も多々あります。
そのため高齢者の方に使用する場合は、
- テオドールを投与する前に何か病気がないか確認しておく
- テオドールを少量から投与していく
- テオドールの血中濃度を密にチェックしていく。
- テオドールの副作用を理解し、出現したらすぐに病院に行くようにする。
- 体調を崩したりした場合は、医師にテオドールを継続した方が良いか相談する。
などを気を付ける必要があります。
一方で妊娠中の方ですが、
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。〔動物実験(マウス、ラット、ウサギ)で催奇形作用等の生殖毒性が報告されている。また、ヒトで胎盤を通過して胎児に移行し、新生児に嘔吐、神経過敏等の症状があらわれることがある。〕
と記載されています。動物実験での報告や、実際に胎盤を通過するといわれると、テオドールを使いたくなくなるかと思います。ただしこれらは、過量に投与した場合です。実際に適正量を守っていれば、喘息のガイドラインでもほぼ問題ない薬に分類されています。
しかし妊娠中は、薬が少ないにこしたことはありません。喘息の治療の中心であるシムビコートやアドエアは、妊婦の方にも安全と示されているお薬です。これらのお薬で十分にコントロールされている方は、あえてテオドールを追加する必要はないと思います。
さらにテオドールの副作用には、嘔気や食思不振などがあります。もしこれらの副作用が認められた際には、テオドールの副作用なのか、つわりなのか判別が難しいです。
一方で吸入薬で喘息がコントロールができない場合は、テオドールが積極的に適応になります。テオドールは副作用も多いし、気になる人もいるかもしれません。
しかし喘息のガイドラインでも、妊娠中の喘息発症は17.1%とする報告されていて、しっかりと治療することの大切さを記載しています。喘息の悪化による母体・胎児の低酸素血症のほうが、赤ちゃんの成長に関与する危険性が高いのです。そのため、妊娠中は、積極的な喘息管理が重要とされています。
そのため医師が必要と判断した場合は、テオドールを自己中断せずに内服することが大切になります。ただし、定期的に血中濃度を測ることが大切になります。
授乳中の方は、
本剤投与中は授乳を避けさせること。〔ヒト母乳中に移行し、乳児に神経過敏を起こすことがある。〕
となっています。ただし喘息の薬では、全てにこの一文が記載されています。授乳は、止めようと思えば止められるためです。母乳で育てたいからといって喘息の治療を急にやめると、喘息発作が起きて安定していた時よりもさらに薬が必要になります。
テオドールは授乳中に使うことはできますが、赤ちゃんがイライラしたりすることがあります。母乳で育てながらも注意して使っていくこともできるので、医師に相談してください。自己中断してしまうと喘息のコントロールがつかなくなる可能性がありますので、それだけはやめてください。
まとめ
- テオドールは血中濃度を定期的に測定しないとテオフィリン中毒が出現します。
- テオドールは血中濃度が基準値以内でも嘔吐や食欲低下、頭痛が出現します。
- テオドールが使用できない病気はないですが血中濃度が変動しやすい病気はあります。
- テオドールは小児の場合は副作用が出現しやすいので、注意が必要です。
- テオドールは老人や妊婦にも使用できるお薬です。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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