オノンの副作用と安全性

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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オノンは、抗ロイコトリエンとしてアレルギー症状を抑えるお薬です。気管支喘息とアレルギー性鼻炎に使われるお薬です。

小児に対しても多く使用されるお薬ですので、副作用は非常に少なく、安全な抗アレルギー薬として定評があります。ただし安全といっても、完全に何もないわけではありません。

オノンではどのような副作用に気を付ければよいのでしょうか?ここでは、オノンの副作用と安全性についてみていきましょう。

 

1.オノンの副作用の特徴

オノンの主な副作用としては発疹や腹部症状がありますが、出現頻度は1%と非常に少ないです。

オノンの添付文章では、承認時の臨床試験及び市販後調査の結果が記載されています。これによれば、

喘息では、4963例中1174例(3.5%)に副作用が認められました。主なものは発疹・そう痒等30例(0.6%)、腹痛・胃部不快感29例(0.6%)、下痢19例(0.4%)、嘔気15例(0.3%)でした。

アレルギー性鼻炎では、4277例中200例(4.7%)に副作用を認めました。主なものは下痢42例(1.0%)、腹痛・腹部不快感35例(0.8%)、発疹24例(0.6%)、眠気17例(0.4%)でした。

以上の結果から、オノンの主な副作用としては発疹と腹部症状になりますが、いずれも1%前後です。喘息やアレルギー性鼻炎などアレルギー症状がある人は、蕁麻疹などの皮疹が出現しやすいです。このため、オノンの副作用なのか関係なく皮疹が出現したかは判断は難しいところです。また腹痛や下痢も、軽度であったという報告がほとんどです。

以上より、オノンは副作用なく非常に安全に使用できる薬剤だと思います。実際に患者さんに使っていて、副作用で困ってオノンを中止せざるを得なくなることはほとんどありません。

 

2.オノンの飲み合わせで注意が必要なのは?

絶対避けなければいけないお薬はありません。

オノンの添付文章では、併用してはいけないお薬は記載されていません。ただしCYP3A4という肝臓でお薬を分解する酵素の影響を考える必要があります。CYP3A4が関係するお薬としては、以下のようなものがあります。

  • CYP3A4の働きを邪魔するお薬
  • CYP3A4で分解されるお薬

このどちらのお薬も、併用することでオノンの血中濃度が上昇すると報告されています。CYP3A4に関係するお薬は非常にたくさんあるので、すべてを避けることはできません。それでは、どれくらいの影響があるのでしょうか?

オノンの血中濃度への影響を調べた研究があります。健康成人男性15例に対して、CYP3A4阻害作用のあるクラリスロマイシンという抗菌薬400mg 7日間投与し、その後オノン225mgを投与したとき、オノンの血中濃度は平均して1.17倍上昇しました。

実際にオノンを内服するときに、CYP3A4関係のお薬を飲んでる人と飲んでない人を比較した研究もあります。それによるとCYP3A4関係のお薬を飲んでる人2888人中54例(1.9%)に副作用を認めていて、飲んでない人は392例中6例(1.5%)となりました。

どちらをみても、ほとんど差がないことが分かると思います。以上より、オノンを服用するときにCYP3A4が関与する薬を飲んでいるかどうかを過度に気にする必要はありません。

 

3.妊娠中にオノンを内服することは可能なの?

妊娠している女性でも、オノンは内服することは可能です。

オノンの添付文章には、以下のように記載されています。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断され る場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]

実際に妊娠中に投与して安全かどうか、人体実験して調べることは倫理的に出来ません。このため安全と言われるお薬でも、ほぼこの記載は添付文章にされています。

妊娠中にオノン服用しながら出産した24例中、心室中隔欠損症と停留睾丸と診断されたケースが報告されていますが、赤ちゃんの異常がオノンの影響とは結論付けられませんでした。

ただし海外の奇形性情報専門家機構での試験では、オノンと同じ作用のある抗ロイコトリエン薬を服用した96例のうち、84例が出産、5例が自然流産、1例が死産となり、うち5例で奇形が認められたとの報告しております。

このため、完全に抗ロイコトリエン薬が危険とは言えませんが、安全とは断定できませんでした。アメリカの薬剤胎児危険度分類基準ではオノンは情報不足となっていますが、同じ抗ロイコトリエン薬のシングレアはカテゴリーBに分類されており、妊娠中の安全性は比較的高いといわれています。カテゴリーのうちわけとしては、

  • A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
  • B:ヒトでの危険性の証拠はない
  • C:危険性を否定することができない
  • D:危険性を示す確かな証拠がある
  • ×:妊娠中は禁忌

ですから、Bはかなり安全と言えます。

ただし喘息のガイドラインでは、妊娠中比較的安全に使用できる喘息治療薬は以下のように示されています。

  • 吸入薬:インタール・吸入ステロイド薬・吸入β刺激薬
  • 内服薬:テオフィリン(テオドール・ユニフィルなど)・ステロイド薬(プレドニン)

オノンを含めた抗ロイコトリエンは記載されていません。これは、リザベン(一般名:トラニラスト)など一部の抗アレルギー薬では胎児に影響を与えるため、妊娠中は禁忌となっているからです。抗アレルギー薬として分類されているオノンもその煽りを受けて、抗アレルギー薬としてひとくくりにされて安全性のランクが下がっています。

しかし上記のように、オノン自体は危険性が少ないお薬とされています。

特に喘息は、妊娠を契機に悪化する人が3分の1程度いるといわれています。喘息発作が出現すると治療に大量のステロイドが投与する必要になる事態になります。またお母さんの体内の酸素が喘息発作で低くなると、赤ちゃんにも低酸素の影響が出ます。このため、オノンも併用しての喘息のコントロールが必要と医師が判断した場合は内服するようにしましょう。

花粉症の場合は、症状は軽い方はナゾネックスアラミストなどの点鼻薬に変更するのも良いかもしれません。

 

4.授乳中はオノンは内服できるの?

オノンは、授乳中にも比較的安全に使用できる薬剤です。

動物実験では、母親ラットに大量のオノンを2週間以上続けた場合、5000万分の1位の確率で、新生児がけいれんを起こすという報告があります。しかし大量に投与してこの確率であれば、通常量を内服している限りはかなり安全に内服できるといえると思います。

添付文章上では授乳については記載されていませんので、授乳しながらオノンを服用することは問題がないことを意味しています。動物実験の結果から、人では乳汁にお薬が移行しにくいことが分かっているためです。

出産後の育児のストレスを契機に喘息発作が出現するということは、臨床の現場ではしばしばあります。そのため、赤ちゃんに影響がないか不安でオノンの内服を止めることはありません。育児はただでさえ大変ですので、授乳中でもオノンをしっかり内服して症状をコントロールしましょう。

 

まとめ

  • オノンの主な副作用としては発疹と腹部症状ですがいずれも1%前後です。
  • オノンは飲み合わせが悪いお薬はありません。
  • オノンは妊娠中でも授乳中でも比較的安全なお薬です。

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