精神科・心療内科クリニックの選び方とは?
みなさんは、「愛想がよいけど腕はヤブの医者」と「腕はいいけど愛想が悪い医者」のどちらがよいでしょうか?
この質問をすると、多くの方が後者を選びます。身体の病気では、症例数○○件とか先生の経歴などから、医者の「腕」がある程度わかります。
心療内科や精神科では、目に見えない心の症状を治療するので、治療の過程や結果が分かりにくいです。ですから、どの医者が腕がよいのかがわかりません。
ここでは、精神科・心療内科の選び方について、私が思うところをお伝えしたいと思います。心が疲れてしまって、心療内科や精神科を探されている方の参考になればと思います。
1.心療内科と精神科は何が違うの?
精神科も心療内科も同じです。
まず、多くの方が思っている疑問についてお答えしたいと思います。街中の病院やクリニックをみていると、「精神科」や「心療内科」だけのところもあれば、「精神科・心療内科」となっているところもあるかと思います。
何が違うのかというと、何も変わりません。どちらも精神科医が診察をしています。心療内科の方がライトなイメージがあるかと思います。精神科といわれると、ずっしりと重たい気持ちになる方もいあらっしゃいますね。
このようなイメージを大事を考えて、病院は「精神科」や「心療内科」をかかげているのです。クリニックや病院では、ある程度自由に標榜科を看板に掲げても構わないことになっています。
病院としては少しでも患者さんに来てもらいたいので、少しでも興味をひくような「○○科」を掲げています。たまに、ブラックジャックばりに掲げている病院もありますが、背伸びをしているだけです。その先生が本当に専門にしているのは、1つや2つのことが多いです。
とはいえ、本来は精神科と心療内科は異なる診療科なのです。心療内科というと、心身症を治療する科のことをいいます。心身症とは、心の問題が大きく関係しているような身体疾患のことをいいます。ですから精神科としての知識もさることながら、内科の知識も必要になります。ストレスからくる身体のさまざまな病気を、心身の両面から治療できる必要があるのです。
心療内科を本当に専門とされている先生はとても少ないです。多くの「心療内科」では、事実上「内科」か「精神科」になります。
詳しく知りたい方は、「精神科と心療内科はどのような違いがあるのか」をお読みください。
2.入院が必要なら精神科病院へ
入院の可能性があるならば、心療内科や精神科のクリニックではなく精神科病院に相談しましょう。
まずはじめに考える必要があるのは、入院の可能性があるかどうかです。入院の可能性があるならば、街の心療内科や精神科のクリニックではなく、精神科病院に相談しましょう。
精神科病院への入院を検討しなければいけないのは、以下のようなケースです。
- 死にたいという気持ちが強く、自分自身を傷つける可能性がある場合
- 興奮や衝動性が強く、他人を傷つける可能性がある場合
- 患者さん本人が病気の自覚がなく、家族がみきれない場合
このような時は、患者さんを保護しなければいけませんし、クリニックでは治療を十分に行うことができません。精神科の病院は、なかなかベッドが空いていないこともあります。というのも、精神科はどうしても入院期間が長くなり、退院する患者さんが少ない病院が多いからです。
精神科病院で受診すれば、必要があれば入院の調整は病状によって融通を利いてくれます。心療内科や精神科のクリニックから入院の依頼をかけるときは、近隣の様々な病院に声をかけてベッドが空いている病院を探すことになります。状況によっては、なかなか病院が決まらないこともあります。
あなたが自分自身を傷つけてしまったり、他人を傷つけてしまう恐れがあるならば、入院することもできる病院で治療をうけるべきです。いきなり入院とならなくてもいつでも入院の相談ができるように、大きな病院で相談しましょう。
患者さん本人が病気の自覚がない場合も、入院施設のある精神科病院の方が選択肢が広がります。
3.精神科・心療内科クリニックを選ぶ上でのポイント
相性のよい医師を探すのも大切ですが、まずはクリニック自体に通いやすくて、適切な治療を受けられる病院を探しましょう。
どこの精神科・心療内科にしようかなぁを迷われている方も多いと思います。通院で治療できる場合に、どのようなことを判断基準にすればよいのか、そのポイントをお伝えします。
クリニックを探している多くの方が、「自分の治療を任せられる医師かどうか?」に関心があるかと思いますが、そもそもクリニック自体にしっかりと通えて、適切な治療を提供できるのかが大切です。
どんな医師かは実際に診察をうけてみないとわからない部分が大きいですが、クリニックのハード面やソフト面はホームページなどからもわかります。医師の見分け方は後ほど述べますが、まずは医師以外のポイントを見ていきましょう。
- 週に1回でも通える距離にあるクリニックか?
- 診療時間が自分の生活リズムとあっているクリニックか?
- カウンセリングが必要な場合、臨床心理士がいるクリニックか?
- 施設や制度を紹介してくれるクリニックか?
- 自分の病状にあったクリニックか?
精神科や心療内科の通院治療では、週に1回の通院間隔になることも多いです。とくに初診後しばらくは、薬が身体にあうかどうかや心の治療を一緒にすすめていくためにも、週に1回の通院間隔になることが多いです。また、調子が悪くなったら、通院間隔は短くしていく必要があります。あまりに遠いクリニックは適切ではありません。
診療時間もチェックしましょう。仕事が遅くなる方では、夜遅くまで行っているクリニックがよいですね。土日に診療しているクリニックもあります。多少の生活上のイレギュラーがあっても対応できる診療時間のクリニックにしましょう。
精神科や心療内科というと、「カウンセリングをしてくれる」「話をきいてくれる」と思っている方も多いです。ですがクリニックでの治療は薬物療法が中心になります。医師の精神療法は、物事の考え方や悩みへのちょっとしたヒントをくれたり、背中を押してくれるイメージでいただいた方がよいかと思います。じっくりとした心理治療をうける必要があるなら、臨床心理士によるカウンセリングができるクリニックがよいでしょう。パーソナリティ障害や摂食障害など、心理的な治療が不可欠な病気では、カウンセリングができるクリニックがよいでしょう。
施設や制度をしっかりと紹介してくれることも大切な要素です。例えば自立支援医療制度など、条件を満たせば医療費が1/3になる制度もあります。また、必要に応じてデイケアや作業所などの施設を紹介してくれるクリニックがよいです。ソーシャルワーカーが相談にのってくれるクリニックでは心配ないでしょう。ここに力をいれているクリニックは、いい医療機関であることが多い印象です。
そして、自分の病状にあったクリニックかも大事です。このクリニックがよいかも知れないと思ったら、ホームページをよくみてください。クリニックの特徴が自分にあったほうがよいです。口コミがよいからと無理して合わないクリニックにいっても、よいことはありません。よい先生ほど、できることとできないことは明確にしています。
4.相性の良い精神科・心療内科医を見つけるポイント
クリニックの医師の体制をみて、その上で口コミやホームページから判断するしかありません。その注意点は、以下をご覧ください。
それでは、相性が良い精神科医や心療内科医を見つけるためのポイントを考えていきましょう。
こればっかりは実際にお会いしてみないとわかりませんし、患者さんによっても相性があります。ですから、「いい医者≠相性の良い医者」です。こと心の治療においては、最低限の知識や技術は必要ですが、相性というのも重要だと思っています。この先生と一緒に治療していきたいと思るかどうかは大きいのです。
主治医を考える時に、クリニックの大きな違いとしては以下の2つがあります。
- 院長が中心で行っているクリニック
- 複数の医師で行っているクリニック(チェーン)
院長先生が一人でやっているクリニックでは、その先生と合うか合わないかになります。ですが院長が元気な限りは診療をしてくれますので、一度いい先生に巡り合えれば安心ですね。
複数の医者がいるクリニックでは、事情によっては主治医を変更してくれます。ただ、すぐには変更してくれないことが多いです。これは、治療的な意味もあるのです。というのも、医師は患者さんに対して、ときに嫌なことも言わなければいけません。すぐに担当を変えてしまうと、治療的ではありません。
クリニックを選ぶ段階で判断できることは、医師の経歴や口コミ、ホームページになります。医師の経歴の見方に関しては、後述させていただきます。
口コミを参考にするときは、強烈な悪口は無視した方がよいです。精神科や心療内科の患者さんの中には、反感をもつと非常に攻撃的になる方もいます。少数の強烈な口コミよりも、大多数の意見を大切にされたほうが良いと思います。少なくとも、感情的な口コミは参考にしない方が良いかと思います。
ホームページをみてみると、院長のメッセージや動画があったり、ブログを書かれている先生もいらっしゃいます。本音と建て前という部分はもちろんありますが、人柄などがわかることもあります。
外来の精神療法は、元々もっているコミュニケーション能力も含めて、医師の「センス」の部分も大きいです。知識や経験、資格が多ければよいというものではありません。ある程度の知識や経験があれば、親しみやすい先生がよいかと思います。
あとは実際に診察を受けてみないと分かりません。その先生との相性の問題もあるので、受診してみての印象を一番大切にしていただければと思います。自分の病気とちゃんと向き合ってくれているかをみてください。
5.精神科・心療内科医の経歴をみるポイント
指定医か専門医を持っているということは、少なくとも3年間は精神医療を行っていることを意味します。
多くのクリニックや病院では、医者の経歴がホームページなどに公表されているかと思います。それをみると、大病院や有名病院での勤務歴があったり、すごい肩書がついている先生もいます。論文をたくさん書かれている先生や、本をたくさん出版されている先生もいます。
これらの先生がみんな名医かというと、残念ながらそんなことはありあません。外来での治療ということに関しては、病院や大学での勤務歴や論文や本といったことは、まったくあてになりません。本は、今や自費出版によって広告に使われる時代です。町の名医を紹介する雑誌も、広告料を払えばのせてくれます。
年をとっていると良い先生かというと、そんなこともありません。精神科の薬物療法は、2000年に入ってから急激に進歩しました。勉強を怠ってしまい、ついていけていないご年配の精神科・心療内科医も多いです。
それでは経歴の中で、何があてになるのでしょうか?
資格としては、指定医か専門医の資格のどちらかをとっていることは目安になります。この2つの資格は、少なくとも3年間は精神医療を行っていないと取得できない資格です。精神科の開業には大きな設備投資が必要ないので、精神科経験がほとんどなく開業していたり、他の科の先生が片手間に行っていることもあります。
町で治療をしていくには必要のない資格ではあるので、どちらの資格も持っていなくても素晴らしい先生もいらっしゃいます。しかしながらこの2つの資格は、少なくとも3年間の教育は受けてきた証明になります。
指定医は厚労省が定める資格で、決められた症例レポートを提出することで評価されます。精神科は患者さんが自分のことを正しく判断で期待ないこともあるので、強制入院や隔離や拘束が必要になることもあります。法律を理解しながら、正しく判断できるかを問われる資格です。
専門医は昔は比較的簡単にとれた資格で、今では精神科に関する学問的な問題にパスすることで取得できる資格です。治療能力が高いかどうかの指標にはなりませんが、基本的知識をもっているかの確認にはなります。専門医をもっているメリットとしては、多剤処方が保険で認められるようになっています。専門医を持っていないと薬を多剤処方しにくい縛りがありますが、むしろその方がよいかもしれません。
それ以外としては、クリニックでの勤務歴があるかどうかでしょう。病院勤務だけの先生がいきなり開業すると、町の患者さんのニーズをあまり理解しないままに開業することになります。クリニックで外来経験を積んでいる先生の方が、お薬以外の引き出しも多いことが多いです。
6.私が理想とする精神科・心療内科医を想像して
自分としっかりと向き合ってくれている先生を見つけたら、信じて治療をしてください。
私が尊敬する先生たちを思い浮かべながら、私が患者だったらこんな先生がよいという理想像を箇条書きであげてみます。
- 初診は30分くらいかける
- 再診は5~10分くらい
- 近すぎず遠すぎず、適度な距離感
- 方向性がわかりやすい
- 押し付けることはしないけど、適度に背中を押してくれる
- 薬だけに頼らない
- 同じ種類の薬を同時に出さない
初診の患者さんは、どんなに急いでも30分くらいはかかります。患者さんの困っていることを把握し、治療の大筋を考えていくには時間がかかります。
再診に関しては、長ければいいというものでもありません。いい先生は患者さんも多いので、必要なことをうまく伝えることに慣れています。そして必要な患者さんには時間をとって、よくなった患者さんは短いです。むしろ良くなった患者さんは、自立していくことも治療的です。このように、患者さんによって診察時間を変えています。
また、距離感も大切です。最終的な目標は患者さんの自立です。ですから、近すぎてもいけないし、遠すぎてもいけません。方向性を明確にしてくれて、適度に背中を押してくれる先生が良いと思います。
薬だけでなく、生活習慣なども取り入れてくれる先生がよいでしょう。お薬のことは患者さんにはわかりづらいと思いますが、症状がかわらないからといって薬をどんどん処方する先生も多いです。簡単にでも薬の意図を説明してくれる先生の方がよいと思います。
反対に言えば、
- 医師がすぐに感情的になる
- 薬をいきなりたくさん処方する
- 調子が悪いといったらすぐに薬を追加する
- 薬の目的を説明してくれない
このような時は、要注意かもしれません。
あくまで私の理想像を語ってきました。この先生はちゃんと自分と向き合ってくれていると感じたら、信じてください。主治医の先生を信じて治療をしていくことが一番大切です。
「精神科医は今日もやりたい放題」な先生もいるのは否定できませんが、「精神科医は今日もけっこう頑張っている」先生のほうが圧倒的に多いのです。
7.さいごに
私が書くのはおこがましいということは理解しながら、この記事を書きました。
精神科や心療内科は、極端な話をすれば部屋に机と紙があればできてしまいます。レントゲンやCTなどの設備もいらないので、初期投資もかかりません。
最近は心の病で苦しむ患者さんの増加もあって、いろいろなクリニックが乱立しています。極端なケースですが、精神科での経験がほとんどない医師が開業するケースもあるのです。
ストレスチェック制度の導入もあり、メンタルヘルスの知識や産業医の経験もほとんどないのに、「メンタルヘルスに強い」とうたっているクリニックもあります。すでに開業して歴史があるクリニックでも、医師が自分自身の向上を怠っていることも多いです。
このような状況がまかり通るのも、精神科医療の不透明さと、患者さん側の判断材料の乏しさです。精神科医や心療内科医にも、素晴らしい先生はたくさんいらっしゃいます。患者さんが自分にあったクリニックをしっかりと見極めていくことが、医療側の変化につながると考えています。
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