ロゼレムの副作用(対策と比較)
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ロゼレムは、これまでの薬とは異なる新しいタイプの睡眠薬です。体内時計のリズムを調整するメラトニンというホルモンに働きかけて、自然な眠りを強くしてくれる睡眠薬です。
このようにロゼレムは、睡眠の生理的なメカニズムを利用しているので、副作用が少なく安全性が高いです。とはいっても、ロゼレムでも副作用がでてくることはあります。
ここでは、ロゼレムの副作用について、その対処法についてもお伝えしていきたいと思います。
1.ロゼレムの副作用の特徴
ロゼレムには、眠気の副作用が思った以上に多いです。依存性はありません。
ロゼレムは「メラトニン」というホルモンに働きかけることで、睡眠効果をもたらします。私たちが夜になると自然と眠気を感じ、朝になると少しずつ目が覚めていきます。この体内時計のリズムを作っているのがメラトニンです。
夜の20時頃になってくると、松果体というところでメラトニンが作られます。このメラトニンが、視交叉上核にあるメラトニン受容体にくっつくことで、自然な眠気が出てきます。メラトニンは真夜中の2時頃にピークになり、明け方に光が出てくると減少していきます。
ロゼレムは、このメラトニン受容体にくっつく「メラトニン受容体作動薬」です。メラトニンと同じように作用します。このように、生理的な睡眠のメカニズムを利用した睡眠薬なので、自然な眠りが期待できるのです。同時に副作用も少ないのです。
ロゼレムは服用してから0.75時間で血中濃度がピークに達し、代謝産物も含めると2時間ほどで半分の効果になっていきます。このような睡眠薬ですから、寝る前に服用すると朝まで残ることがありません。
その割には、ロゼレムでは眠気が多いのです。ロゼレムを服用すると、翌日に強い眠気が残ってしまう方がけっこうな割合でいらっしゃいます。不思議なものですが、生理的なメカニズムを利用しているために効き方も人それぞれなのかと思います。ロゼレムを服用中は、運転や危険作業をしてはいけないこととなっています。
頭痛がみられる方もたまにいらっしゃいます。メラトニンによる血管拡張が原因と考えられていますが、そこまで多い副作用ではありません。
ロゼレムで特徴的なこととしては、依存性がないことです。睡眠薬はどれも程度の差はありますが依存性があります。ロゼレムではまったく依存性がないため、スムーズに薬を止めていくことができます。
このようにロゼレムは、副作用も少ないですし、依存性もないと考えられています。以下ではロゼレムで重要な副作用について、ひとつずつ見ていきましょう。
ロゼレムの効果について詳しく知りたい方は、
ロゼレム錠の効果と特徴
をお読みください。
2.ロゼレムの副作用①-眠気
ロゼレムの作用時間は短いですが、眠気の副作用は多いです。減量するか、変更を検討します。
睡眠薬は夜だけに効いてくれれば理想ですね。ですが睡眠薬が効きすぎてしまうと、翌朝まで眠気が続いてしまうことがあります。これを「持ち越し効果(hung over)」といったりします。眠気だけでなく、だるさや集中力の低下、ふらつきなどがみられます。
「眠気が強くて朝起きれない」
「午前中がぼーっとしてしまう」
となってしまうと生活に支障がきてしまいますね。事故などにつながることもあるので注意が必要です。
ロゼレムは半減期が短く、薬が身体からすぐに抜けていく睡眠薬です。朝方にはまず薬の効果はのこっていないと考えられます。このため、理論的には持ち越し効果による眠気はほとんど起こらないように考えられます。
ですがロゼレムでは、持ち越し効果による眠気がよく認められます。実際に薬をつかっていると、10人に1人くらいは眠気が出てくるように思います。ロゼレムの添付文章では、薬の承認時に3.4%認められたと報告されています。
持ち越し効果が認められたときは、まずは睡眠時間をちゃんと確保できるかを確認します。睡眠時間が短かったら、薬の効果が朝に残ってしまうのも当たり前で すものね。その場合は、睡眠時間を確保するようにしていただきます。
それでも改善しなければ、ロゼレムを減量していくか、他の睡眠薬に変更していくことになります。ロゼレムを減量していく場合は、半錠(4mg)にしてみます。ロゼレムには割線が入っていないので、病院や薬局によっては嫌がられるかもしれません。
減量が難しい場合は睡眠薬を変更していきます。残念ながらメラトニン受容体作動薬は、2015年時点ではロゼレムしか発売されていません。このため、入眠障害で悩んでいる場合は非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、中途覚醒で悩んでいる場合はベンゾジアゼピン系睡眠薬やオレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ)などへの変更を検討します。
3.ロゼレムの副作用②-頭痛
ロゼレムによる頭痛は、まれに認められます。我慢できないほどでしたら、減量・中止していきます。
ロゼレムでは、頭痛がみられる方がたまにいらっしゃいます。ロゼレムの添付文章をみると、ロゼレムで頭痛がみられた方は、薬の承認時の調査で1.0%と報告されていました。
ロゼレムは血管に対する作用があります。MT1が活発になると血管収縮につながり、MT2が活発になると血管拡張につながることがわかっています。ロゼレムはMT1とMT2の両方に作用しますが、MT2作用が優位になると、血管拡張に作用します。血管が拡張すると、その周囲にある三叉神経が圧迫されて刺激をうけます。この三叉神経が痛み物質が放出されます。
ロゼレムの効果が安定してくると慣れることもあります。我慢できる程度でしたら様子を見てみましょう。あまりにつらい場合は、ロゼレムを減量・中止するしかありません。
4.ロゼレムの安全性-依存性
ロゼレムには依存性はなく、中止しても離脱症状や反跳性不眠は認められません。
「睡眠薬を一度使ってしまうと、やめられなくなる」と恐れている方は多いかと思います。確かに、多くの睡眠薬では依存性が認められます。嗜好性もあるので、乱用されることも多いです。このため、睡眠薬は習慣性医薬品とされていて、処方日数も30日までと制限されているのです。
とはいっても、ちゃんと用量どおり使っていれば、睡眠薬も心配はありません。もっとも依存しやすいアルコールを考えてみてください。節度を持って晩酌をしている方は、アル中になったりしませんよね?飲み会でちょっと飲み過ぎたとしても、アル中になったりしませんよね?アルコール中毒になってしまう方は、休肝日もなく常にアルコールが身体にあります。飲酒の量もコントロールができなくなり、浴びるようにお酒を飲んでしまいます。睡眠薬もちゃんと用量を守って使っていれば大丈夫ですし、休薬日があればまず大丈夫です。
それでも心配という方には、ロゼレムは救世主になるかもしれません。ロゼレムは依存性はありません。乱用される心配もないと考えられているので、睡眠薬の中では唯一、習慣性医薬品の指定から外れています。このため、処方日数に制限もないのです。ロゼレムを中止しても、離脱症状や反跳性不眠(以前よりも不眠がひどくなること)が起こることなく止めることができます。
まとめ
ロゼレムの作用時間は短いですが、眠気の副作用は多いです。減量するか、変更を検討します。
ロゼレムによる頭痛は、まれに認められます。我慢できないほどでしたら、減量・中止していきます。
ロゼレムには依存性はなく、中止しても離脱症状や反跳性不眠は認められません。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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