自分の症状はクリニック?大きな病院?どちらを受診すれば良いのか

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック

体調を崩してしまったとき、どこにいこうか迷われたか方も多いのではないでしょうか?

  1. ドラッグストア?
  2. クリニック?
  3. 入院施設がある大きな病院?

果たしてどこに行けばよいのでしょうか?結論から申し上げると、軽症な場合はまず、②のクリニックを受診するようにしましょう。

①のドラッグストアは、検査は一切できません。つまり診断ができないまま症状を止めてしまうため、重症例か軽症例か判断できません。

③の市中病院や大学病院などは、重症例の人や難治性の病気の人が集まる病気です。軽症な場合は門前払いされることが多いです。

つまり最初に軽症か重症か判断してもらうためにも、②のクリニックを受診して診断してもらう方が絶対良いのです。

  • ドラッグストアで痛み止め飲んで様子見てたら命にかかわる病気だった。
  • 大きな病院で3時間も待ってたのに2分で薬も処方されずに終わった。

こんなことが起こらないように、自分の状態をクリニックに判断してもらいましょう。ここでは自分の症状がどこの施設を受診すれば良いかまとめてみました。病院に駆け込む前に参考にしてみてください。

 

1.自分の症状がクリニックに行くべきか、大きな病院に行くべきか迷った場合は?

よほど重症例でなければ、必ず最初はクリニックをまず受診しましょう。軽症例で大きな病院を受診しても、期待している医療が受けられない場合がほとんどです。

医療機関は色々な種類があります。大きく分けると、

  • クリニック
  • 市中病院や大学病院

の2つに分けられると思います。「大きな病院の方が設備も整っているし色々調べてもらえるんじゃないの?」と期待されるかもしれません。確かに設備は整っているのですが、どんな患者さんも細かく見てくれるわけではありません。

大きな病院は、基本的にはクリニックからの紹介された患者さんを診ることになります。つまりクリニックが重症だと判断したお墨付きがある患者さんです。

  • 癌など命にかかわる病気が発見された時
  • クリニックで治療しても治らなかった時
  • そもそも診断ができなかった時

どのケースも非常に難しい患者さんです。こういった患者さんを主にみるのが大きな病院です。こんな重症患者さんに交じって、「ちょっとお腹が痛い」という患者さんが受診された場合を想定してみてください。

命にかかわる重大な病気を持った人と軽い症状の人に、医師は診察に同じ時間を割くでしょうか?ほぼ全ての医師が、重症例に時間を割くと答えると思います。

そのため「ちょっとお腹が痛い」といった程度で大きな病院をいきなり受診されても、期待していた医療が受けられないことが多いと思います。病院によっては、そもそも紹介状や予約がなければ受け入れない体制をとっているところも多いです。ときに納得してくださらなくて、「せっかく来たのに」と怒り出す人もいらっしゃいます。お気持ちは無理もないのですが、怒り出したから診察するようになることはありません。

そのため軽症例で大きな病院に行くことは、徒労になる可能性が非常に高いです。「○○内科の名医って書かれているから診てもらおう」と思って有名病院に行けば行くほど、重症例や診断が難しい病気の方が集まりやすく、門前払いになる可能性が高くなります。

一方でクリニックで最初に診てもらって、

  • なかなか治らない
  • 診断がつかない
  • 症状が強くて治療が難しい

となった時は、大きな病院に紹介してもらえます。このお墨付きがあれば、「クリニックの医療設備では対応できない=大きな病院の医療設備が必要」ということになるので、色々な検査をしてしっかりと調べてくれます。

この時に気を付けなければいけないのが、紹介状を必ずクリニックに書いてもらうようにすることです。クリニックの紹介状がないまま来ても、今までの治療経過が分からないので医師側も困ることが多いです。場合によっては、前医からの紹介状をもらってくるように言われて帰されてしまうこともあります。

また総合病院の先生にも、自己中断して勝手に来なくなってしまう患者さんなんだなぁという印象を与えてしまいます。紹介状を書いてもらうことにためらいを感じる人もいるかもしれませんが、クリニック側からすると紹介するのも仕事の一つです。紹介状は診療情報提供書といいますが、通院中であれば健康保険の適応にもなるので、必ずもらうようにしましょう。

そのため必ず大きな病院で調べてもらいたい旨を伝えて、紹介状を書いてもらいましょう。

 

2.自分の症状が軽症例か重症例かの判断は?

救急車で診てもらうべきかどうかが、一つの判断材料です。

先ほど軽症の患者さんはまずクリニックでと書きましたが、一方で重症患者さんですと、クリニックを受診してもすぐに大きな病院へ紹介ということもあります。ですが患者さんからすると、「どの状態で軽症でどの状態で重症?」と判断するか難しいと思います。

重症の判断材料としては、「救急車を呼ぶくらいの症状かどうか」です。状態が悪ければ、クリニックにいってもそのまま救急車で運ばれてしまいます。

一方でどの状態が救急車を呼べばいいかの、判断は人によってもかなり違いがあります。最近は救急車をタクシー替わりに呼ぶ人も散見され、非常に医療業界では問題になっています。

しっかりとした線引きは難しいのですが、救急車で呼ぶべき状態、呼ぶべきではない状態をそれぞれを例を挙げて考えてみましょう。

 

2-1.救急車を呼ぶべき状態

以下の状態の時は、救急車を呼ぶのを考えても良いと思います。

  1. 今までに経験したことがないくらい強い痛みが急激に出てきた場合
  2. 症状が強く動くことができない場合
  3. 意識がない、もしくはぼんやりしている場合

それぞれの解説していきましょう。①の急激に出現した強い痛みは、

  • 頭痛=クモ膜下出血
  • 胸痛=心筋梗塞・大動脈解離
  • 腹痛=腹膜炎・子宮外妊娠

など緊急に対処しないと命にかかわる可能性がある場合が多いです。急に出てきたというのは、一つ緊急性が高い可能性があります。一方で急に症状が出てきても、少し痛い程度であれば重症じゃない場合もあります。この時にほっといて良いというわけではありません。軽い症状のうちに、クリニックを受診するようにしましょう。

②の動けない場合は、入院になる可能性が極めて高いです。動けなければ、家で生活することもままなりませんね。

急に動けないほど強い症状が出た場合は、緊急性が高いです。

  • 動けないほど息が苦しい=気胸・肺塞栓
  • 手足が急に動かなくなった=脳梗塞
  • 高熱で動けない=肺炎・腎盂腎炎

これらは可能性の一部ですが、「動けないほど○○」というのは重症な場合が多いです。

③の意識がない、ぼーとしている場合をみてみましょう。

医療はまず会話から成立します。どんな症状があるのか?から始まり、関係する臓器を特定していきます。ある程度絞れたところで、検査を行っていきます。

意識がないと会話が成立しないため、疾患を絞り込むことができません。そのため、頭からつま先まで色々な疾患を考えていく必要があるため、大きな病院ではないと調べられないことが多いです。

急に意識が無くなった場合は、命にかかわる病気が多いです。人によってはそのまま息をしなくなった、心臓が止まった、なんてこともありえます。自家用車で運ばずに、急いで救急車を呼びましょう。

 

2-2.救急車を呼ぶべきではない状態=クリニックでまず診てもらう状態

一方で以下の場合は、救急車の適応ではないです。

  1. 何週間も前から症状が続いている
  2. 歩いて病院を受診することができる
  3. 以前に重篤な病気だったから心配だ

①の何週間も前から症状が続いていたのに受診をしなかった場合は、何週間も症状が我慢できるほど軽症だったと考えられます。そのため何となく症状が続くというだけで、救急車は呼んではいけません。

ただし、今までの症状とは明らかに違う症状が急激に出てきた場合は話は別です。軽症な病気が重篤な状態に悪化した可能性があります。ただしこうなる前に、クリニックを受診することが大切です。

②の歩いて病院を受診することができる場合は、必ずクリニックにまず歩いていきましょう。症状があって歩くのが大変なのは分かりますが、辛いのは皆同じです。

また、歩かせて良い病気なのか心配になる方もいらっしゃいますが、歩かせてはいけない病気はそもそも歩くことができないほど状態が悪くなることがほとんどです。

救急車を呼べば早く診てもらえるなんて安易に呼んでしまうと、「後日クリニックに行ってね」という冷たい対応をされてしまうこともあります。急がば回れという言葉が医療にも当てはまります。歩けるほど軽症な場合は、まずクリニックで重篤な病期かどうか判断してもらいましょう。

③のように重篤な病気を経験された患者さんは、そのことが苦い記憶となって甦るかもしれません。どうしてもまた同じような痛い目にあいたくないからと思い、救急車で急いでいこうと思う気持ちは分かります。しかしクリニックでも、○○の病気が心配だからと伝えていただければ、ある程度見極めることはできます。

医者もどうしても人間です。オオカミ少年ではないですが、何回も同じ症状でその都度救急車で来ると、「またか」と感じてしまい検査が甘くなってしまうことがあります。クリニックを受診したら大きな病院に行くように言われたとなると、医師側としてもだいぶ腰の入れ方が変わってくるので、重篤な病気が心配な場合こそクリニックをまず受診しましょう。

救急車で運ばれた場合は、大体が救急科でみられると思います。この救急科の仕事は、命を守るための仕事です。つまり命にかかわる重篤な病気かどうかを判断し、重篤な病気に対して緊急に治療することに特化しています。重篤ではない病気と判断されたら、基本的にはそれ以上深追いしないことがほとんどです。

救急科は夜間診療と似ていますので、詳しく知りたい方は「夜間・祝日の救急外来を受診して不満を感じた方へ」を参考にしてみてください。

 

3.自分の症状がクリニックに行くべきか、ドラッグストアに行くべきか迷った場合は?

診断がついてる症状が繰り返し起こってる時のみ、ドラッグストアで薬を買うようにしましょう。

私たち医師が診察していくときには、SOAPという基本的な流れがあります。SOAPとは、以下の事を示します。

  • S(Subject):主観的データです。主に患者さんからのお話の内容です。
  • O(Object):客観的データです。身体診察や・様々検査から得られた情報です。
  • A(Assessment):SとOの情報を元にした評価です。つまり診断になります。
  • P(Plan):Aを元にした計画です。つまり治療方針ということになります。

これを基本に医療は構成されています。

つまり(S)症状を確認し、(O)検査をして(A)診断をつけて、(P)お薬を処方することになります。一方でドラッグストアは、(O)検査ができません。つまり検査ができないので、(A)診断もあいまいです。

(S)症状→(P)お薬を購入という、OAが抜け落ちて最初と最後だけがつながった状態になります。これって実は非常に危ないです。

  1. (S)頭が痛いです→(P)頭の痛み止めを出しましょう
  2. (S)咳が続きます→(P)咳止めで咳を止めましょう
  3. (S)熱があります→(P)解熱剤で様子をみましょう

これらのうち(A)診断が、

  1. 脳出血
  2. 肺結核
  3. 腎盂腎炎

だった場合どうなるでしょう。

  1. 頭が痛いのを痛み止めで様子見てたけど効果がなく、吐き気が出てきました。そのうち意識がなくなり呼吸が止まりました。
  2. 肺結核と後から診断されて他の人に移ってしまうため隔離病院に長期間入院になりました。診断が遅れて子供たちも肺結核と後で分かりました。
  3. 腎盂腎炎でばい菌が体の中で繁殖して血液内にもあふれ出して敗血症ショックになりました。集中治療室で何ヶ月も加療が必要になりました。

どれも考えてみたら恐ろしい状態ですよね。これらは私が大学病院で経験した、実際の話になります。

  • 痛い
  • 苦しい
  • 熱がある

これらはどれも、体に異常があるよと教えてくれてる警報機になります。なんで警報機が鳴っているのか調べないまま薬でごまかしていると、後で痛い目にあいます。

ではドラッグストアで薬を購入する場合はどんな時でしょうか?(A)診断がはっきりとついていて、(P)薬の効果も実証されている時です。

  • (S):鼻水や目のかゆみがある→(O)(A)診察で花粉症と診断→(P)花粉症のお薬で症状が良くなった。

花粉症が一番分かりやすい例です。毎年症状がありますし、症状が同じであれば薬で様子見て良いと思います。ただしこの場合も、いつもと同じ症状であることが大前提です。

いつもと症状が変わったり、薬を飲んでも良くならない場合は、すぐにクリニックを受診しましょう。

 

まとめ

  • 軽症例である場合は大きな病院にまず行かずクリニックを受診しましょう。
  • クリニックで対応が難しい場合は紹介状を書いていただけます。必ず紹介状を書いてもらってから大きな病院を受診しましょう。
  • 軽症例か重症例か考える一つの目安として救急車で行くべきかどうかで判断しましょう。
  • ドラッグストアで対応する場合はクリニックで診断がついた病気を薬で治療する時のみにしましょう。

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