双極性障害(躁うつ病)の躁症状・うつ症状とは?

アイコン 2016.1.12 双極性障害/躁うつ病

双極性障害は、かつては躁うつ病と呼ばれていた心の病です。エネルギーの高まった「躁状態」と低下している「うつ状態」、この2つの気分の間で波がある病気です。

このように考えると分かりやすい病気に思えるのですが、双極性障害は見過ごしてしまったり、診断が難しい場面が多々あります。患者さんが困って受診するのはうつ状態です。調子がよい躁状態は忘れ去られてしまいます。また、双極性障害は多くの心の病を合併しやすく、その症状の見え方は複雑になってしまいます。

診断が変われば、治療方法も異なります。精神科の診断は、患者さんからの言葉が大きな要素をしめます。ですから、患者さん自身が症状について気づいていただけることに越したことはありません。

ここでは、双極性障害の躁症状とうつ症状について、理解を深める一助になれたらと思います。

 

1.双極性障害の躁症状とは?

双極性障害の症状として、エネルギーが高まった状態でみられる症状が躁症状です。その程度には患者さんによって差が大きくあります。連続性のあるものなのではっきりと区別はできないのですが、治療のために基準をもうけて躁状態と軽躁状態の2つに分けています。

躁状態は周りから見ても明らかに異様に気分が高揚していて、病的だとはっきりと分かります。このような双極性障害をⅠ型といいます。双極性障害Ⅰ型の診断は、比較的つきやすいです。

しかしながら軽躁状態は、周りからみても機嫌がよい程度にしかみえないこともあります。このような双極性障害をⅡ型といいます。双極性障害Ⅱ型は診断がなかなかつかず、何年もかかることがあります。

それでは、躁状態と軽躁状態についてみていきましょう。

 

1-1.躁状態

自覚することなく、高まった気分や活力に基づいて行動してしまいます。

躁状態はエネルギーの高まりが周りから見ていても明らかで、仕事や家庭でも大きな支障が認められるような状態です。躁状態での一番の問題は、このような状態にもかかわらず自分が病気であることに気づきません。このことを病識がないといいますが、病識のなさがさらに問題を大きくしてしまいます。

躁症状では、気分と思考・行動の両面に症状が認められます。基本的症状と、その結果として認められることのある周辺症状をみてみましょう。

<基本症状>

<周辺症状>

典型的な躁状態の方の気分は、気分は晴れ晴れとしています。ウキウキしていて、「世界の頂上にいる感じ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。人によっては高揚感というよりも易怒性に支配されることもあります。このような気分が、少なくとも1週間以上にわたって認められます。

冒頭で述べましたが、躁状態の患者さんは病識がありません。自覚なくこのような気分に基づいて考え、行動してしまうのです。その結果として以下のようなことをしてしまいます。

 

1-2.軽躁状態

軽躁症状は、あまり気づかれないことが多いです。

躁状態と比べると、その程度の軽いものが軽躁状態です。気分や活力の高まりは認められますが、それによって不適切な行動につながることは少ないです。このため、借金を抱えたり、人間関係を大きく損なったりといったことは少ないのです。

このようにみると、大きな問題はないように感じるかもしれません。しかしながら軽躁状態のある方では衝動性が強く、躁状態よりも自殺される方が多いという報告もあります。苦しみの深い心の病なのです。

軽躁状態が続く期間は数日ほどです。周りから見ても「今日は機嫌がよいのかな?」といった程度ですので、なかなか気づかれません。本人としても、調子がよいことに疑問はもちません。後述しますが、軽躁状態は気づかれないことが多いのです。

躁症状ははっきりとしているので診断はつきやすいのですが、軽躁状態では気分の波がある他の病気と判断がつかないことがあります。

例えば、何度もうつ状態をくりかえす反復性うつ病性障害、自己が不安定で周囲の見え方が極端にうつろってしまう境界型パーソナリティ障害、生まれもって注意の維持が困難なADHDなどです。長く時間をかけてみていくうちに、その患者さんの本質がみえてきます。

 

2.双極性障害のうつ症状とは?

うつ病と双極性障害のうつ症状の違いは、「不全性・易変性・部分性」の3つで考えられています。

双極性障害での本人の苦しみは、うつ状態の方が深くなります。双極性障害Ⅰ型の方では、躁状態で失った社会的損失も重なります。時間でいっても、躁状態よりもうつ状態の方がはるかに長いのです。

双極性障害のうつ症状は、うつ病のうつ症状と基本的には変わりません。

それでは、うつ病と双極性障害では、うつ状態にどのような違いがあるのでしょうか?

双極性障害のうつ状態では、大きく3つの特徴があります。

  1. 不全性
  2. 易変性
  3. 部分性

不全性とは、「症状がすべてそろわないこと」です。うつ病では、気分の落ち込みはもちろんのこと、心身のすべてが抑うつ的になります。しかしながら双極性障害のうつ状態では、気分は落ち込んでいても行動はできたり、身体が動かなくても落ち込みはなかったりします。

易変性とは、「症状が変わりやすいこと」です。うつ病では、気分を持ち直すには時間がかかります。双極性障害のうつ状態では、時間がかかることもありますが、スッとよくなることもあるのです。

部分性とは、「状況によって症状が認められること」です。うつ病では、状況にかかわらずに症状が続きます。双極性障害のうつ状態では、つらい時にだけうつ症状が認められたりします。それでいて楽しい時は何ともなかったりします。

このような特徴から、しばしば非定型うつ病(いわゆる新型うつ病)と誤診されてしまうこともあります。

 

3.軽躁症状は気づけないことが多い

「調子がよいこと=普通」と感じてしまうため、軽躁症状に気づけないことが多いです。

双極性障害の患者さんは、軽躁状態にあるときは「調子がよいこと=普通」と感じます。周りから見ても「ちょっとテンションが高いなぁ」と感じることはあっても、それを問題には感じないことが多いです。自覚もなければ周囲から指摘されることもないので、双極性障害の軽躁症状には気づけないことが多いのです。

そして本人や周りが困るのは、うつ症状がみられてからです。うつ状態になってはじめて病院に受診するので、その時の症状ではうつ病にしか見えません。精神科の診察では患者さんの言葉に頼る部分も大きいので、うつ病と誤診されてしまうケースも少なくありません。

 

このように見過ごされてしまうと、2つの大きな問題があります。

うつ病では抗うつ剤を中心とした治療になります。双極性障害の方に抗うつ剤を使うと、うまく反応しなかったり、薬のせいで躁状態にしてしまう(躁転)ことがあります。

また、うつ病と双極性障害では再発率が全然異なります。双極性障害では再発防止という観点が大切になります。このため、再発防止を意識した治療がとられるのです。

 

見逃しを防ぐために、まずは双極性障害を疑うことから始めます。上述したようなうつ病に典型的でない特徴を認めた時には、軽躁状態がなかったのかを疑って質問をしていきます。

などといって確認をします。このようにしても、拾えないことはあります。薬への反応や治療の中での経過をみて、時間をかけて診断をしていくこともあります。

 

4.うつ症状を見極めるのは難しい

「双極性障害を疑ってかかること」が大切です。

うつ状態では、うつ病なのか双極性障害なのかを見極めるのは非常に難しいです。症状の違いは確かにありますが、後から振り返って感じる程度のことも多いです。実際には治療経過の中で分かってくることも多いのです。

早くから双極性障害を疑うにはどのようにすればよいのでしょうか?それには2つの段階があります。

双極性障害の患者さんに多い特徴があると感じたら、注意してみていくことが大切です。もしかしたら双極性障害の可能性もあるなと思って診察をしていると、症状の違いに気が付けることがあります。

また、治療がうまくいかない時には疑ってみることも必要です。双極性障害の患者さんでは抗うつ剤の反応が悪いことも多いです。

 

それでは双極性障害の患者さんでは、どのような特徴があるのでしょうか。JET試験とよばれる、双極性障害のうつ状態の患者さん114人とうつ病でうつ状態の患者さん334人を比較して分析した報告があります。これによれば5つの要素があれば双極性障害と関連が大きいと結論付けています。

それ以外にも、双極性障害に多い特徴を以下にまとめます。

 

4.双極性障害ではうつ状態の期間が長い

一生のうちで躁状態は1~10%に対して、うつ状態は30~40%の期間を占めます。

双極性障害の方の一生という長さで見た時に、それぞれの状態はどれくらいあるのでしょうか?双極性障害Ⅰ型の患者さんでは、以下のグラフのようになります。

双極性障害の躁状態やうつ状態の長さ

普通に過ごしていられる寛解期と呼ばれる割合は50%強になります。双極性障害は苦しむ期間が非常に長い病気なのです。そのうちで躁状態は5~10%となります。うつ状態は30%ほどです。うつ状態の方が数倍長いのです。

双極性障害Ⅱ型では、もっとこの差が大きくなります。双極性障害の患者さん86人を13年間追跡した研究では、躁状態が2%、混合状態が5%、うつ状態が93%となっています。うつ状態が非常に長いのです。

 

5.躁症状とうつ症状が入り混じった躁うつ混合状態

躁症状とうつ症状が、気分・思考・行動でバラバラに認められます。

双極性障害では躁状態とうつ状態を繰り返すのが普通ですが、この2つの状態が入り混じることがあります。その状態を「躁うつ混合状態」といいます。混合状態が長く続くこともありますが、躁状態とうつ状態の移行期によく認められます。

双極性障害がハッキリと診断されている時には混合状態としてもよいのですが、多少なりとも躁的な部分があっても、そこまで強くない場合があります。その時は混合性うつ病といったりすることもあります。双極性障害に発展していくこともありますが、基本的にはうつ病に躁的な成分が混じっていると考えていきます。

躁うつ混合状態では、いろいろな状態があります。気分・思考・行動に分けて、躁症状とうつ症状がバラバラに認められると考えると理解しやすいです。

これ以外の6つのパターンでは、混合状態となりえます。(うつ病の概念に含められることもあります)

例えば、気分はうつ状態で沈んでいますが、思考が活発になって飛躍した考えがどんどん浮かんで妄想的になってしまい、落ち着かなくなってしまうことがあります。(気分↓・思考↓・行動↑)このような状態では、衝動的な自殺の危険性も高いです。

 

6.合併症の多さが双極性障害の診断を複雑にする

不安障害・依存症・摂食障害・パーソナリティ障害などの合併が多く認められます。

双極性障害は、複数の心の病を抱える方が多いです。これは双極性障害Ⅰ型だけでなく、双極性障害Ⅱ型にもいえることです。双極性障害Ⅱ型では、実に60%の患者さんで3つ以上の精神疾患を合併するといわれています。

この合併症の多さが、双極性障害の症状を複雑にし、診断や治療を難しくしているのです。双極性障害の合併症として最も多いのが不安障害です。およそ75%の方に、パニック障害や社会不安障害などの何らかの不安障害が合併しているといわれています。不安障害の合併は、双極性障害Ⅱ型の方が多いという報告があります。

依存症を抱える方も多いです。アルコールや薬物といった物に対する依存では、双極性障害Ⅰ型で過半数、双極性障害Ⅱ型で37%という報告があります。ギャンブルや買い物といった行為に対する依存につながることもあります。

摂食障害の方も多く、拒食症というよりは過食症の方が多いです。双極性障害Ⅱ型の患者さんでは、14%で一生のうちに摂食障害が認められると報告されています。

また、気分の波に左右されて生きていくことで、考え方や行動が極端になってしまって、パーソナリティとして固定化されてしまうことがあります。このパーソナリティのために、うまく周りに適応できないとパーソナリティ障害と診断されます。境界性パーソナリティ障害の合併が多いです。

 

まとめ

「調子がよいこと=普通」と感じてしまうため、軽躁症状に気づけないことが多いです。

一生のうちで躁状態は1~10%に対して、うつ状態は30~40%の期間を占めます。

混合状態では、躁症状とうつ症状が気分・思考・行動でバラバラに認められます。

双極性障害では、不安障害・依存症・摂食障害・パーソナリティ障害などの合併が多く認められます。

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