お酒・タバコは高血圧にどのような影響があるのか
お酒やタバコは健康に良くないとよく言われているかと思います。お酒やタバコは、様々な病気のリスク要因となっています。
健康は失ってみないと分からないもので、なかなかお酒やタバコをやめた方がいいと言われても難しいです。
お酒というと肝臓、タバコというと肺というイメージがあるかと思いますが、高血圧にも影響があります。健康診断で高血圧を指摘された方もいるかと思いますが、高血圧と聞いてお酒やタバコのことを思い浮かべる方は少ないでしょう。
お酒やタバコは、血圧にどのような影響があるのでしょうか?最新のガイドラインに基づいて、ご紹介していきたいと思います。
1.高血圧へのお酒の影響
1回の飲酒では血圧は下がりますが、習慣的にお酒を飲むと血圧は上がっていきます。
お酒を飲むと、一時的には血圧が下がることが多いです。お酒を飲むと血管が拡張しますし、利尿作用で脱水傾向になるからです。お酒を飲んでいて、ドキドキして脈が速くなることはありませんか?これは、心臓というポンプが頑張って血液を全身に送り届けようとしているためです。
ですが、長期的にお酒を飲んでいると血圧は上がってしまいます。お酒には落ち着かせるような作用があります。お酒が常に身体にある状態になると、身体はバランスをとって興奮させる方向になっていきます。グルタミン酸という興奮物質が増加している状態になっていきます。ですから、平常時での血圧が上がってしまいます。
また、お酒には糖質や脂質も多いので、肥満や脂質異常症、糖尿病につながることもあります。いわゆるメタボリックシンドロームにつながります。このため高血圧だけでなく、脳卒中や心房細動、睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高まります。さらには、がんのリスクもあがってしまいます。
2.高血圧を改善するための節酒目標
男性は1日1合まで、女性は0.5合までを目標にしましょう。
昔から少量のお酒は身体によいといわれてきました。二宮尊徳も、夜なべで作ったわらじを打ったお金で、病弱な父にお酒をすすめています。
少量のお酒は血管が拡張するので、高血圧の方では心血管病のリスクが改善するともいわれています。およそ0.5合~1合がもっともリスクが少なく、それを超えるとリスクが高まっていくといわれています。
だからといって、飲まない人がお酒を飲むのは控えた方がよいです。お酒は少しずつ強くなって、量が増えていってコントロールできなくなってしまうからです。
酒飲みの方は、お酒の量を8割減らすと、3か月のうちに血圧が下がっていきます。急激に節酒すると一時的に血圧が上がってしまうこともありますが、続けていくにつれて下がっていきます。
男性では、エタノール量にして20~30ml(1合程度)が適切といわれています。女性は、その半分の10~15ml(0.5合程度)が適切といわれています。
3.高血圧へのタバコの影響
タバコによって血圧があがります。また、虚血性心疾患や脳卒中のリスクになります。
タバコを1本吸うと、その直後から15分以上血圧が上昇することが示されています。腕の血圧測定の場合はそこまで大きな影響が出てはきませんが、身体の中心部にある大きな血管での血圧が大きく上がります。
タバコをずっと吸っていた時の影響についてははっきりしませんが、血圧が上がる方向にいくのは間違いありません。タバコを続けていくと体重が太りやすくなるので、これも加わって血圧は上がっていきます。
また、長期にわたって喫煙を行っていると、いろいろな疾患を生じやすくなります。様々ながんのリスクにもなりますし、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)や脳卒中(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血)になるリスクは高くなります。
高血圧を治療する目的は心血管病の予防になりますので、タバコ対策はとても重要です。
4.高血圧を改善するための禁煙
減煙ではなく、禁煙をすすめます。
タバコ対策にあたっては、減煙はなかなか成功しません。思い切って禁煙をしていくことをお勧めします。喫煙は依存の一種ですので、しっかりと断ち切らなければ、いずれ本数が増えてしまいます。禁煙には2つの依存を断ち切る必要があります。
1つ目は心理的な依存です。タバコを吸うことが習慣となり、それによって日常生活でどんなメリットをうけているのかをよく知ることが必要です。
2つ目は身体依存です。身体からニコチンがなくなると離脱症状として現れてきます。イライラや落ち着きのなさ、集中できなくなったり、不眠や頭痛、食欲が増したりすることでタバコへの切望感がでてきます。
通常禁煙後3日以内にピークとなりますが、おおむね1週間、長くても2~3週間で消失していきます。これをしのぐ必要があります。
5.高血圧を防ぐための禁煙の方法
心構えを作り、できれば病院で禁煙治療にとりくみましょう。
禁煙にあたっては、心構えが大事です。
1点目は、禁煙する理由をリストアップしておくことです。そしてこのリストを自分の生活で持ち運んでいきます。トイレやお風呂場、寝室や職場のディスクトップ画面などに張り出したりしてみてください。禁煙中に喫いたくなった時に役に立ちます。
2点目は、自分の喫煙パターンを知ることです。タバコは習慣化していて、生活上のストレスのはけ口やリラックスの手段となっています。自分の喫煙パターンを見返してみてください。喫煙をする時、どんな状況でどういう心境で吸ったかをリストアップしてみましょう。その上で、それぞれに対する対処方法を考えていきましょう。
3点目は、協力者を探すことです。禁煙することを周囲に宣言し、協力をお願いします。要は背水の陣をしくわけです。この際に喫煙グッズをすべて捨てるなど、行動面でしっかりと決別をします。このことは、心理的にも大きな楔になりますし、また再び吸いたいという気持ちがでてきても、準備に時間を要するので足止めになります。
4点目は、禁煙していることを自信にもつことです。目標を禁煙と大きく掲げるとなかなか達成感がえられません。小さな目標をたてて、ある期間を達成するごとに自分にご褒美を用意してもいいかもしれません。
その上で自分にあった方法を選択します。
- 自分の意志で、我慢することによる禁煙
- 電子タバコや禁煙パイポを利用する禁煙
- 禁煙セラピーによる禁煙
- ニコチンパッチやニコチンガムを利用する禁煙
- 禁煙外来による禁煙
自分に合った方法を選択していただきたいですが、保険適応が効く方は、禁煙外来による禁煙が最も確実です。医師と協力して、身体依存を薬で抑えながら、心理依存に対して取り組んでいきます。
まとめ
1回の飲酒では血圧は下がりますが、習慣的にお酒を飲むと血圧は上がっていきます。
男性は1日1合まで、女性は0.5合までを目標にしましょう。
タバコを吸うと血圧があがります。また、虚血性心疾患や脳卒中のリスクになります。
減塩ではなく、禁煙をすすめます。
心構えを作り、できれば病院で禁煙治療にとりくみましょう。
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