花粉症の予防と対策

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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毎年春になると、花粉症で悩まれている方も多いかと思います。かく言う私もそのうちの一人です。暖かくなってきて過ごしやすくなるのに、何だか悔しいですよね。

まだ花粉症になっていない方も、予防しないと発症してしまうかもしれません。花粉症の症状から対策まで、お伝えしていきたいと思います。

 

1.花粉症の症状

「くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ」の4大症状で見過ごされがちなのが、頭痛や倦怠感などの症状です。

花粉症の症状として代表的なものは、目と鼻の症状です。目の症状は、「アレルギー性結膜炎」といいます。鼻の症状は、「アレルギー性鼻炎」といいます。

目の症状の特徴としては、白目の周辺の方が赤くなります。これは、花粉症がアレルギーの病気であるためです。目には血管が走っておらず、周辺部に血液があります。アレルギー反応による炎症は血液の中でおきるので、血流の多い目の周辺部で炎症がおきます。とても強い痒みを伴うのが特徴です。

鼻の症状としては、サラサラとした水っぽい鼻水が特徴的です。黄色い鼻水は、細菌と免疫細胞が戦った時に残った残骸です。アレルギーではこのようなことはなく、水っぽい鼻をたくさんだすことで、花粉の侵入から守ろうとします。このため、くしゃみや鼻づまりも起こります。

花粉症の症状というと目と鼻に気を取られがちですが、それ以外の症状もあります。花粉症のせいで頭痛や倦怠感がおきることもあります。また、花粉が口やのどに入ると、かゆみや違和感につながることもあります。アトピーや喘息を持っている方は悪化することもあります。

 

2.花粉症の原因

アレルギーコップがたまると発症の可能性があります。花粉症でない方も花粉を予防しましょう。

空気を飛んでいる花粉を吸いこんでいくにつれて、花粉に対する「IgE抗体」という免疫物質が身体の中でつくられていきます。これは花粉だけでなく、寄生虫など外部の異物を排除するのに必要な免疫物質です。ですが、寄生虫と違って花粉は身体にとっては大きな害ではないので、過剰に反応する必要がありません。無害の花粉に対してはIgEを作らないようにコントロールしてくれればよいのですが、アレルギー体質の人はこれができません。

このため花粉にさらされ続けると、IgEが少しずつ作られていきます。このIgEが十分量にまで達すると、IgEが花粉に対してすぐさま反応するようになります。こうなると感作といって、花粉症が成立します。

このIgEは肥満細胞という細胞にくっついて、ヒスタミンという物質を出します。すると、目や鼻に働きます。目ではかゆくて涙が出て、鼻からは鼻水とくしゃみが出ます。これらによって、異物である花粉を身体から出そうとするのです。

このようなメカニズムのため、「アレルギーのコップがあふれてしまうと花粉症が成立する」と表現されています。ですから、いまのところ花粉症の症状がない方でも、花粉を避けることは大事です。

 

3.花粉症の特徴

花粉の種類で時期があります。花粉の量が多い年は、花粉症でない人の方が要注意です。

花粉症の原因となる花粉は60種類以上報告されています。その中でも一番多いのはスギなのは言うまでもありませんね。その他にも、ヒノキ、イネ科、ブタクサやヨモギといったキク科などがあります。それぞれに時期があり、症状もその時期に一致します。

まず、2月頃よりスギから始まって次いでヒノキです。その後夏場を中心にイネ科で、秋になるとキク科になります。一年中症状がある方は、いろいろな花粉症を併せ持っている方もいますが、ハウスダストなどが原因であることも多いです。

花粉の飛散が多い年と少ない年は交互にくることが多いです。例年、花粉飛散量の多い少ないが話題になるかと思います。よく誤解されていますが、症状の強さと花粉の量が関係はしていません。

もちろん、花粉の量が増えれば症状は発症しやすくなりますし、症状は強く出ます。ですが、2倍の量だから2倍の症状・・・というわけではありません。むしろ、アレルギーコップがたまりやすくなるので、花粉が多い年は花粉症にかかっていない人ほど注意が必要なのです。

また、リラックスした状態でアレルギー症状が強く出ます。モーニングアタックといわれていますが、就寝中に花粉を吸いこみ、目覚めに症状が強く出る方もいます。

花粉症の症状は、花粉をシャットアウトすると時間と共に和らいでいきます。しかしながら、アレルギー反応が遅れて出てくることもあります。このため、室内の花粉をしっかりと除去しても症状が続く場合もあります。

 

4.花粉症の予防

花粉を避けて、除去することにつきます。

花粉症の予防としては、アレルギーの原因である花粉を避けて、除去することにつきます。これから花粉症にかからないためにも、花粉症の方は症状を重くしないためにも、花粉とサヨナラしましょう。

 

①メガネとマスク

花粉症を予防するゴーグルなども市販されています。そこまではいかなくても、普段コンタクトをつけている方は、メガネにかえるだけでも花粉症を軽減することが示されています。もちろん、だてメガネでもOKです。マスクは花粉を予防するだけでなくて、鼻粘膜の保湿保温をしてくれますので有効です。これらは、シーズンに入る前から着用したほうがよいです。

 

②室内に花粉を持ち込まない

室内に入る時に、玄関で花粉を払ってから帰宅するなどして、花粉を室内に持ち込まない対策も有効です。また、洗濯物などもしっかりとはたいたり、取り込んだら掃除機などで吸い取りましょう。花粉を除去するスプレーなども発売されています。

 

③空気洗浄器

花粉が室内にもちこまれてから、地面に落下する前に空気洗浄器で花粉をキャッチする必要があります。このため、風量の大きい空気洗浄器が必要です。また、帰宅時は空気洗浄機のパワーを上げるようにしましょう。

 

④濡れぞうきんで掃除

掃除をする時は、花粉を舞い上げないように濡れぞうきんで掃除することがすすめられています。掃除機も最新機種は花粉を除去する機能も向上しているようですが、古い掃除機をお使いの方は、花粉が舞い散ってしまいます。

 

⑤加湿

花粉は湿度が高いと重たくなって下に落ちやすくなります。ですから適度な加湿は有効です。加湿器がない場合は、濡れたタオルをかけておくだけでもよいです。加湿器をつかうならば、感染予防も考えて、水蒸気がでるタイプのものは避けた方がよいです。また、水道水を使うようにしましょう。

 

5.花粉症の対策

花粉症の症状がでてきたらどのようにすればよいでしょうか?花粉症は残念ながら、根治治療はみつかっていません。対症療法が中心となってきてしまいます。ただ、根治療法に近いものとして、減感作療法があります。ご紹介していきたいと思います。

 

5-1.花粉症の対症療法

抗ヒスタミン経口薬・ステロイド点鼻薬・抗ヒスタミン点眼薬が中心です。花粉が飛び始める2週間前から治療をはじめましょう。

花粉症の治療の原則は対症療法になってしまいます。免疫は身体にとって必要なものですので、完全に止めるわけにはいけません。症状が出てきたら、過剰な部分を薬でコントロールしていく形になります。

治療はできるだけ軽いうちから始めた方がよいといわれていて、花粉が飛び始める2週間ほど前から治療を始めておいた方が、悪化しません。症状が強くなると、薬で抑えるのが難しくなるので、軽いうちに治療をはじめるのがポイントです。

鼻炎症状に対して一般的によくつかわれるのは、抗ヒスタミン経口薬とステロイド点鼻薬の2種類です。

抗ヒスタミン薬としては様々なものが発売されています。薬によって強さや副作用の程度が異なります。抗ヒスタミン薬の副作用として注意が必要なものは、眠気です。ですから、病院で処方される抗ヒスタミン薬の説明書には、「運転などはさせてはいけない」と記載されています。「注意をすること」となっているのは、クラリチンとアレグラだけになります。

ステロイド点鼻薬は、重症の鼻炎症状や鼻づまりに有効です。ステロイドというと怖いイメージかもしれませんが、すぐに分解されるので副作用はほとんどありません。眠気が少ないため、運転業務の方にはこちらを意識的に使うこともあります。本当に重症の場合はステロイド内服をすることもありますが、まず使うことはありません。

目の症状に関しては、飲み薬でコントロールができない場合、抗ヒスタミン点眼薬を使います。その他として、レーザで鼻粘膜を焼いて鼻づまりや鼻水を抑える方法もありますが、一時的な効果しか期待できません。

 

5-2.花粉症の減感作療法

行っている施設が少ないですが、最近は注目されてきています。効果はまだ定まっていませんが、7~8割の方で症状が軽くなるという報告もあります。

花粉症の根治治療に近いものとして、減感作療法があります。どのようなものかというと、原因である花粉を常に身体にある状態にすることで、身体にとって当たり前のものにしてしまおうという治療です。

海外では舌下錠や液が発売されていて、自宅でも治療しやすくなっています。ですが従来、日本では注射での治療しか認められていませんでした。花粉の血中濃度が維持するために、毎週のように注射を打たなくてはいけません。慣れてくると月に1回ほどでよくなりますが、3~5年ほどかかります。治療が大変ですし、行っている施設もあまりありませんでした。2014年10月より、シダトレンという舌下錠が日本でも発売されました。今後、日本でも治療がすすんでいくことが期待されています。

私は医学生の頃、スギとハウスダウストの減感作療法を大学病院で行いました。その時の先生の話では、根治までいく方は3割程度とのことでした。ですが、7~8割の方で症状が緩和されたとのことです。私も根治まではいきませんが、確かに症状は緩和されました。

 

まとめ

花粉症の予防や対策を中心に、整理してまとめました。

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