授乳中に風邪薬を使っても大丈夫?

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お子さんを母乳で育てているお母さんは、だいたい1歳半まで授乳を続けることになります。その間に風邪だってひくことはあります。そんな時に、風邪薬は使っても大丈夫でしょうか?

ここでは、授乳中の風邪薬について考えていきたいと思います。

 

1.赤ちゃんの免疫

最初はお母さんの免疫で守られていますが、少しずつ自分の免疫を身につけていきます。

赤ちゃんは、産まれたばかりはとても未熟です。お母さんなしでは、ひとりで生きていくことができませんね。実は、目に見えない細菌やウイルスとの戦いでも、お母さんの力を借りているのです。

お腹の中にいる時から、免疫物質の免疫グロブリンIgGという抗体が胎盤を通って赤ちゃんに伝えられます。この物質は、細菌やウイルスなどの敵が体内にやってきたら、一気にやっつけてくれます。また、産後すぐの母乳である初乳には、免疫グロブリンIgA抗体という免疫物質が大量に含まれています。これを赤ちゃんが飲むと、腸の表面を覆ってくれて病原体の新入を防いでくれます。このように、悪いやつらの侵入をふせぎ、入ってきたらやっつけてくれるのです。

この免疫はすべてお母さんから頂いたものなので、産まれてから少しずつなくなってしまいます。生後3か月を過ぎてくると病気にかかりやすくなってきますが、それはこの抗体がなくなってくるためです。赤ちゃんが病気になった経験を積み重ねていくことで、自分で抗体を作っていくのです。このように、赤ちゃんは病気になってはじめて丈夫になっていきますので、ある程度は必要なことなのです。

 

2.授乳中の風邪薬は?

生後2か月は、できれば使わずに様子を見ましょう。その後は大きな心配はしなくて大丈夫です。

お薬の説明書(添付文章)やインターネットの情報をみていると、大丈夫とかいてあったり、飲んではいけないと書いてあったり、はっきりしないかと思います。

結論から申し上げると、風邪薬を服用することは、基本的には問題ないと思われます。ただ、生後2か月までの赤ちゃんに関しては注意が必要です。腎臓や肝臓の機能が未熟なのでお薬の排泄する能力が低く、身体にたまりやすいです。また、不必要なものが脳にいかないようにするバリアである血液脳関門もしっかりとしていないので、脳に影響がダイレクトにいくので注意が必要です。最初の2か月は、できれば薬を使わずに様子を見たほうが無難です。

それ以降は、できるだけ大きな心配をすることなく風邪薬を使うことができます。授乳で問題になるのは、お薬が母乳に含まれてしまうからです。赤ちゃんだって、風邪ひいたら小児科で薬が処方されるかと思います。母乳から出てくるお薬の量はそれよりも微量ですので、赤ちゃんへの影響は非常に少ないと考えられます。

風邪薬は基本的には問題ありませんが、できるだけお薬を少なくしたり、赤ちゃんへの影響を少なくする工夫はしましょう。

①授乳直後に薬を飲む
②最低限の量と期間にする

育児に支障がでてきてしまうのでしたら、風邪薬を服用してお母さんが早く元気になったほうがよいです。薬の心配を過度にしなくても大丈夫です。

ただし、インフルエンザの時には解熱鎮痛剤は、アセトアミノフェン(カロナールなど)だけにしておいた方がよいです。これは授乳中に関係なく、インフルエンザ脳症になってしまうことがあるからです。

授乳中の解熱鎮痛剤について詳しく知りたい方は、
「授乳中に解熱鎮痛剤を使っても大丈夫?」
をお読みください。

 

3.授乳中の抗生物質は?

ニューキノロン系とテトラサイクリン系は避けた方がよいです。

風邪をひいたら抗生物質を飲むとよくなると思われている方が多いですが、抗生物質はウイルスにはまったく効果がありません。細菌には効果テキメンですが、普通の風邪の多くはウイルス性なので、効果がないことが多いです。ですから、まずは本当に細菌が原因の風邪なのか、確認する必要があります。

  • 鼻水や淡は白くて透明ですか?
  • 関節の痛みがありますか?
  • 鼻の症状が中心ですか?

このような時は、ウイルス性であることが多いです。細菌性の風邪の場合、症状が長引いたり、一回よくなったと思ったら再発することもあります。喉や咳の症状がひどいときは、口をあけてもらってのどを見ないといけません。のどの奥に細菌の膿がこびりついていることがあります。

明らかにウイルス性の場合、基本的には抗生物質は使いません。細菌性が疑われるときは、授乳中であっても使うことができます。例えば、セフェム系のメイアクトなどはお子さんでも使うお薬なので心配いりません。ペニシリン系やセフェム系、マクロライド系などはお子さんでも使えるので問題ないでしょう。また、赤ちゃんが飲んだとしても吸収がほとんどされないアミノグリコシド系も安全といわれています。

ニューキノロン系は基本的には、関節や骨の成長に影響するので子供には禁止とされています。このため、授乳中も避けた方がよいといわれていますが、どうしてもというときはクラビットかタリビットが使われます。テトラサイクリンも歯の着色や骨の成長に影響するので、避けた方がよいです。

 

4.授乳中の市販の風邪薬は?

市販薬はほとんど影響ありませんので、過度な心配はしないでください。

市販薬はどれも病院のお薬よりも優しいです。ですから、病院の薬で問題がないものは、市販薬でも問題はありません。市販の風邪薬には、抗生物質は含まれていないので心配いりません。中には、眠気が強い市販薬もあります。赤ちゃんにも眠気がでる可能性があるので、この点だけ注意が必要です。

インターネットの情報をみると、アスピリンが含まれているものは避けた方がよい・・・など、いろいろな情報が出回っています。確かに、インフルエンザの時には、アスピリンに限らず解熱鎮痛剤は避けなければいけません。使うとしてもアセトアミノフェン(カロナールなど)です。ですがそれ以外の方では、過度に心配する必要はありません。

薬の説明書の中には、「授乳中に飲んではいけない」と書いてあるものもあります。薬が母乳に移行してしまうだけで、このように書いてある薬もあります。何かあったら訴えられてしまう時代ですので、製薬会社も身を守っているわけです。ですから、もしも知らずに薬を飲みながら授乳してしまっても心配しないでください。市販薬では、ほとんど影響はないと思っていただいてかまいません。

 

まとめ

赤ちゃんの免疫は、最初はお母さんの免疫で守られていますが、少しずつ自分の免疫を身につけていきます。

授乳中の風邪薬は、生後2か月はできれば使わずに様子を見ましょう。その後は大きな心配はしなくて大丈夫です。

抗生物質は、ニューキノロン系とテトラサイクリン系は避けた方がよいです。

市販薬はほとんど影響ありませんので、過度な心配はしないでください。

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