ロヒプノールの半減期からわかること

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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半減期とは、薬を服用してから血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。薬の半減期をみると、睡眠薬の効き方を予想することができます。また、気を付けなければいけない副作用も変わってきます。

ロヒプノールの半減期は少し複雑です。半減期は7時間ほどですが、ロヒプノール全体で見ると24時間となります。そのため、中間型睡眠薬とよばれています。

このような半減期の違いはどうして起こるのでしょうか?ここでは、ロヒプノールの半減期からどんなことがわかるのか、詳しく説明していきたいと思います。

 

1.薬の半減期とは?

薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

薬を服用した時の、血中濃度の変化を図に表わして、Tmaxと半減期を説明します。

薬を飲み始めると、直後は血中濃度がどんどんと上がっていきます。薬の吸収がおわると、薬は代謝されて身体から出ていきますので、少しずつ血中濃度が減少していきます。身体が薬を代謝できるスピードは決まっていますので、どれくらいの量であっても一定のスピードで身体から抜けていきます。このため、薬の量が半分になるまでにかかる時間は、内服量にかかわらず一定になります。

この血中濃度が半分になるまでにかかる時間を半減期(T1/2)といいます。T1/2が短いほど、薬の切れ味がよく身体からすぐになくなるといえます。反対にT1/2が長いほど、薬が身体に蓄積しやすいといえます。

薬の効き方を考えるにあたって、もう1つのポイントがあります。最高血中濃度到達時間(Tmax)です。これは文字通りで、血中濃度がピークに達するまでの時間です。効果がでるまでのスピードに関係しています。Tmaxが短いほど、睡眠薬の効果がすぐに表れることを意味しています。

 

2.ロヒプノールの半減期と睡眠薬での比較

実質的な半減期は7時間ですが、全体で見ると24時間となります。

代表的な睡眠薬の最高血中濃度到達時間(Tmax)と半減期(T1/2)を比較してみましょう。

代表的ンな睡眠薬の作用時間(半減期)を比較しました。

これを見ると、ロヒプノールは実質的な半減期は7時間と短い睡眠薬です。ですがロヒプノール全体で見ると、24時間と長くなります。これは一体どういうことでしょうか?ロヒプノールを服用したときの血中濃度変化をみてみましょう。

ロヒプノール・サイレースの血中濃度の変化から、半減期に関して説明していきます。

 

ロヒプノールの血中濃度の変化は2段階になっています。ロヒプノールは脂に溶けやすい薬です。ロヒプノールを服用すると、身体の脂肪に取り込まれていきます。脂肪に取り込まれなかった薬の成分は血中濃度のピークを作った後、半減期7時間で血中濃度が減少していきます。ロヒプノールの血中濃度が低下してくると、じわじわと脂肪 から薬が血中に戻っていきます。それが長く続くので、トータルでの半減期は24時間となるのです。

このような血中濃度の変化をとるので、ロヒプノールは「中間型」に分類されます。実質的には半減期7時間の睡眠薬ですから、作用時間は短時間型の睡眠薬と同じです。ただ、24時間たっても薬が残っているので、薬が身体にたまっていきます。続けて服用する場合、3~4日すると血中濃度が安定します。この蓄積で副作用がでてくることがあるので注意が必要です。

 

ロヒプノールは、薬を飲み始めてから血中濃度がピークになるまでには1.5時間ほどしかかかりません。そこから7時間かけて半分の量となり、さらにゆっくりのペースとなって身体から抜けていきます。このため、作用時間は6~8時間程度です。即効性があって、しっかりと睡眠時間をカバーしてくれる睡眠薬といえるでしょう。

 

ロヒプノールの効果について知りたい方は、
ロヒプノール錠の効果と強さ
をお読みください。

 

3.ロヒプノールの半減期からわかる特徴

入眠障害だけでなく中途覚醒にも効果が期待できます。持ち越し効果や依存性に注意が必要です。

睡眠薬のタイプ(作用時間)と特徴をまとめました。

睡眠障害にもいろいろなタイプがあります。寝つきが悪い「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、明け方に目が覚めてしまう「早朝覚醒」。睡眠障害のタイプに合わせて、睡眠薬の作用時間を変えていきます。超短時間型や短時間型は、薬の効果はすぐに出てきます。中間型や長時間型は、身体に薬が少しずつたまって効果が出てきます。中間型は4~5日かけて、長時間型は1週間以上かけて効果が安定します。どちらも寝つきやすい土台を作っていくようなお薬です。

ロヒプノールは実質的には短時間型です。もちろん寝付けなくて困っている方に効果があります。睡眠時間をカバーするように作用するので、中途覚醒にも有効です。薬の効果の立ち上がりも早く、ロヒプノールを服薬すると15~20分もすると眠気に襲われます。

 

副作用としては、翌日に眠気やだるさなどが出てしまうことがあります。人によっては、ロヒプノールが朝まで残って効きすぎてしまうことがあるのです。翌朝にも睡眠薬の効果を持ち越してしまう「持ち越し効果」がみられるのです。また、ロヒプノールが少しずつ身体にたまって日中に作用してしまうこともあります。睡眠時間をちゃんと確保しても改善がない場合は、減薬や作用時間の短い睡眠薬への変更を検討します。

ロヒプノールの依存性も注意しなくてはいけません。作用時間はそこまで短くありませんが、ロヒプノールは強力な睡眠薬です。しっかりと眠れるようになる睡眠薬なので、「効いた」という実感も得やすいです。漫然と使用を続けていると、ロヒプノールが身体に慣れてしまいます。すると、中止しようとするときに離脱症状や反跳性不眠といったひどい不眠がみられることがあります。そのせいで薬をなかなかやめられなくなってしまいます。

 

まとめ

薬の半減期とは、薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

ロヒプノールの実質的な半減期は7時間で、全体で見ると24時間となります。入眠障害だけでなく中途覚醒にも効果が期待できます。持ち越し効果や依存性に注意が必要です。

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