モービック錠(メロキシカム)の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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モービック(一般名:メロキシカム)は、2005年にベーリンガーインゲルハイムで発売された解熱鎮痛薬です。

モービックは、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイド)の中の「オキシカム系」に含まれます。モービックの特徴としては、持続性に優れており、また選択的COX-2阻害薬であるため胃腸障害などの副作用が他のNSAIDsと比較して少ないことがあげられます。

ただし注意が必要なのは、モービックなどの解熱・鎮痛薬は症状をあくまで一時的に抑えるお薬であり、病気自体を治す治療薬ではないので注意が必要です。

ここでは、モービックの効果の特徴を詳しくお伝えし、どのような疾患・症状に使われるのか、説明していきたいと思います。

 

1.モービックのメリット・デメリット

<メリット>

  • 持続性がある
  • 選択的にCOX-2を阻害することで副作用が少ない

<デメリット>

  • 即効性がない
  • 痛みや発熱の原因を解決するわけではない
  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍を悪化させるため腹痛には使えない
  • 妊娠後期には使用できない

モービックも属するNSAIDsとは、ステロイド作用を持たない炎症を抑えるお薬の事です。ステロイドは熱や痛みの原因となる炎症や免疫を抑えますが、それ以外にも様々な作用を与えてしまいます。ステロイドについて詳しく知りたい方は、「プレドニンの効果と特徴」について一読してみてください。

モービックは、アラキドン酸カスケードをブロックすることで炎症を抑え、その効果を発揮します。炎症が抑えられると痛みを抑えるだけではなく、熱を下げる効果も期待できます。

NSAIDSは現在、20~30種類以上発売されています。その中でモービックは、持続性に優れているという特徴があります。モービックは、持続性が高いため基本的には1日1回の内服が適応となっています。一方で即効性がないため、突発的な痛みを抑えるには不向きなお薬です。また、NSAIDsの中でモービックの効果は中等度です。

さらにモービックのもう一つの特徴としては、選択的にCOX-2を阻害することです。詳しいことは後述しますが、NSAIDsはアラキドン酸カスケードのCOXをブロックします。COXは2種類あって、

  • COX-1・・・胃粘膜保護や腎機能保護の役割がある
  • COX-2・・・炎症の原因となる物質

となります。多くのNSAIDsは、COX1と2両方を阻害するお薬です。そのため痛みや熱さましの効果を発揮する一方で、胃腸障害や腎機能障害を引き起こす原因となります。

モービックはCOX-2を選択的に阻害するNSAIDsです。ただしCOX-2だけを100%選択して阻害するわけではありません。一部はCOX-1も阻害するため、胃腸障害や腎機能障害はモービックでも起こり得るため注意が必要です。モービックの他にCOX-2 を選択して阻害するNSAIDsは、

があります。選択的COX-2阻害薬で即効性を求めるのであれば、ハイペンの方が優れています。

また注意が必要なのは、モービックなどのNSAIDsは、病気を治しているわけではないということです。そのため、モービックを飲んで痛みが落ち着いても一時的なことが多く、病気の原因を治療する必要があります。

特におなかの痛みは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍による痛みの可能性があります。この時にモービックを使用して痛みを抑えようとすると逆効果になるため、おなかの痛みには基本的には使用しません。

さらに妊娠中もお腹の赤ちゃんに影響を与えるため、禁忌となっています。モービックは熱や痛みを抑えるといった効果の反面、すべての人に使えるわけではないので注意が必要です。

 

2.モービックの適応と投与量は?

モービックは、鎮痛剤として多くの病気に適応があります。

モービックは内服薬としては、

  • モービック5mg錠
  • モービック10mg錠

の2種類あります。モービックの適応疾患ですが、

関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群

となっています。添付文章では、痛み止めとしてしか記載されていません。解熱作用もありますが、熱はばい菌を倒すために体が自ら発している防御反応です。そのため一時的に使ったほうが良いため、持続性があるモービックは通常使用しません。

投与量ですが、成人はモービックを10mg1錠を1日1回内服します。なお、NSAIDsによっては頓服で使うこともできますが、モービックは定期的に内服する場合のみ適応があります。モービックが頓服で使用できないのは、持続性が高いうえに突発的な痛みに対しては即効性がないためです。

モービックを内服する時は、空腹時に服用すること避けてください。モービックの効果には食事の影響はないとされていますが、副作用を防ぐために食後に飲むようにするとよいでしょう。頓服で飲むときでも、牛乳を飲んだりクッキーを先に食べておき、胃壁を守るようにしましょう。また、水なしで服用してはいけません。きちんと胃に落とし込むために、コップ1杯の水とともに内服するようにしてください。

モービックは、最高血中濃度に達するのが約7時間後です。そのため最初の1~2時間は効果がほとんど得られません。そのかわりモービックの消失半減期は、約28.7時間になります。つまり1日以上効果が持続することを示しています。しかしこれは個人差があるため1日の効果を保証しているわけではないので注意してください。

 

3.モービックの薬価は?

モービックは後発品が発売されているお薬です。

次にモービックの薬価です。モービックは2005年に発売されたためジェネリック医薬品も登場しています。まず先発品のモービックの薬価ですが、

  剤型 薬価 3割負担
モービック 5mg錠 34.3円 10.3円
モービック 10mg錠 52.6円 15.8円

※2016年11月26日時点での薬価です。

となっています。なお後発品のメロキシカムですが

  剤型 薬価 3割負担
メロキシカム 5mg錠 19.8円 5.9円
メロキシカム 10mg錠 30.4円 9.1円

※2016年11月26日時点での薬価です。

ジェネリック医薬品ですと、先発品であるモービックの約6割程度の薬価になります。ただし、ジェネリックのメロキシカムは複数の会社が発売しています。そのため、薬価や製剤には多少の差はあるので注意しましょう。

 

4.モービックが向いてる人は?

<向いてる人>

  • リウマチや腰痛症などで痛みの原因が分かっている方
  • NSAIDsを長期間内服する方

NSAIDsは現在、20~30種類以上登場しています。その中でモービックの特徴としては、1日1回で済む持続性です。1日1回で済むということは、痛いと感じる都度内服しなくても済むということです。ただし痛みは我々の体に何か起こってるという合図になります。その時にモービックを飲んでやり過ごそうとすると

  • 急激な胸の痛みで心筋梗塞だった
  • 急激な頭の痛みで脳出血だった
  • 急激なおなかの痛みで腸管に穴が開いてた

なんてことが起こりえます。そもそもモービックは即効性がないために急激な痛みに対しては弱いです。そのため、痛みの原因がはっきりと診断がつけられている方、例えばリウマチや腰痛症などの方がモービックは良い適応かと思います。

またモービックのもう一つの特徴として、選択的COX-2阻害薬であることがあります。これを意識的に使うべきなのは、長期間NSAIDsを内服する方です。NSAIDsは胃腸障害が最もよく起きますが、1~2錠内服しただけで急に起きることは少ないです。長期間NSAIDsを内服して徐々に胃腸が荒れる場合が多いです。そのためNSAIDsを長期間内服する方は選択的にCOX-2を阻害するモービックが良いでしょう。

先ほどの術後の腰痛症やリウマチの方は、NSAIDsを1~2回内服しても一時的にしか改善せず長期間服用する場合も多いため、モービックが良い適応でしょう。特にモービックは1日1回内服すれば効果が1日中持続する薬です。そのためモービックで疼痛管理が良好な方は、痛みを感じる瞬間がないまま1日過ごせるかもしれません。

 

5.モービックの作用機序は?

モービックは、プロスタグランジンを産生するアラキドン酸カスケードのCOXを阻害して痛みや発熱を抑えます。

痛み、すなわち疼痛は、人それぞれです。一般的に、

  1. 侵害受容性疼痛
  2. 神経障害性疼痛
  3. 心因性疼痛

に分けられますが、人によっては混在するケースもあります。それぞれの内容ですが、

①侵害受容体性疼痛は、痛みを感じる神経が刺激しておこる痛みです。

  • 腕に火傷をおった
  • 風邪をひいて喉にばい菌がついた
  • 足に切り傷を負った

など必ず原因があります。その原因を脳に知らせるために神経が刺激されて感じる痛みです。

②神経障害性疼痛は、神経そのものが損傷された時の痛みです。じりじりと痺れるなどの特徴的な痛みが多いです。帯状疱疹など神経がウィルスにやられる場合や、手術で神経を傷つけた時に起こります。

③心因性疼痛は、気持ちからくる疼痛です。体は問題ないのにストレスなどから痛いと感じる疼痛です。

モービックは主に、①の侵害受容性疼痛に使われます。

一般的にモービックを含むNSAIDsは鎮痛作用だけでなく、抗炎症・解熱作用を有しますが、とくにモービックは鎮痛作用が強いのです。その作用機序を説明します。

侵害受容性疼痛には、過剰なプロスタグランジン(以下、PG)が関係しています。モービックを含むNSAIDsは、PGを生産する経路であるアラキドン酸カスケードをブロックすることでその効果を発揮します。その作用点は、シクロオキシゲナーゼ(以下COX)です。

COXには、2つあることが分かっています。

  • COX-1は、胃粘膜や血小板などを含め、多くの細胞に常に発現しており、痛みの症状とは無関係です。逆にCOX-1を邪魔することで胃が荒らされて、胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる副作用が出現します。
  • COX-2は、体が炎症など種々の刺激を受けると、関連細胞で発現が増します。これが阻害されると、痛みや炎症を引き起こすサイトカインの産生が抑えられます。つまりNSAIDsは、COX-2に結合することで鎮痛作用を発揮するのです。

この作用機序は、NSAIDsの共通の作用です。モービックはCOX-2を選択して阻害するNSAIDsです。ただしCOX-1も一部阻害するため胃腸障害が全く起きないわけではないので注意しましょう。

 

まとめ

<メリット>

  • 持続性がある
  • 選択的にCOX-2を阻害することで副作用が少ない

<デメリット>

  • 即効性がない
  • 痛みや発熱の原因を解決するわけではない
  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍を悪化させるため腹痛には使えない
  • 妊娠後期には使用できない

<向いてる人>

  • 腰痛症やリウマチなどで痛みの原因が分かっている方
  • NSAIDsを長期間服用する方

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