テグレトールの眠気と5つの対策

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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精神科のお薬は眠くなるものが多いです。気持ちを落ち着かせるお薬が多いので、どうしてもリラックスして眠気につながってしまいます。日常生活を過ごしていかなければならない中で、眠気が強く出てしまうと困ってしまいますね。

テグレトールは、気分安定薬や抗てんかん薬に分類されています。これらのお薬は脳の興奮を抑える作用がありますので、薬によっては眠気が認められます。テグレトールは穏やかな鎮静作用があるので、眠気が認められることもあります。

ここでは、テグレトールの副作用による眠気とその対策について、他剤とも比較しながら詳しくみていきましょう。

 

1.テグレトールの眠気とは?

テグレトールには鎮静作用があるので、眠気が認められることがあります。

テグレトールがどのように作用するのかは正確にわかっていません。現在考えられているテグレトールの作用機序は、神経細胞膜の安定作用によるものです。

これにはナトリウムイオンが関係しています。通常の神経細胞では、内側がマイナスで外側がプラスの電位差があります。ナトリウムはプラスイオンですから、ナトリウムイオンが細胞内に入ってくると神経細胞が興奮(脱分極)します。

テグレトールは、このナトリウムイオンの通り道であるイオンチャネルをブロックします。するとプラスイオンが細胞内に入れなくなり、細胞が興奮しにくくなります。このため、神経細胞膜を安定させる作用があるのです。

 

添付文章によれば、眠気の副作用は1613件中223件(13.8%)に認められています。テグレトールの眠気は、飲み始めに認められることが多いですが、少しずつ慣れていくことも多いです。

 

テグレトールの副作用について詳しく知りたい方は、
テグレトールの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

2.テグレトールと他剤での眠気の比較

テグレトールは眠気が多少認められますが、抗精神病薬よりは少ないです。

眠気の副作用について、他の気分安定薬と比較してみましょう。

気分安定薬として使われるお薬には、大きく3種類があります。

  • 炭酸リチウム(リーマス)
  • 抗てんかん薬(テグレトール・テグレトール・ラミクタール)
  • 抗精神病薬(ジプレキサ・セロクエル・エビリファイ・リスパダールなど)

これらのお薬のうち、もっとも眠気が強いのは抗精神病薬になります。

抗精神病薬の眠気の副作用比較

炭酸リチウムや抗てんかん薬の中で比較すると、

テグレトール>デパケン>ラミクタール≧リーマス

といった印象になります。

 

3.薬だけでない眠気が起きる理由

薬以外の眠気の原因としては、精神症状・不十分な睡眠・生活リズムの乱れ・女性ホルモンが考えられます。

眠気がでてくる原因は薬以外にも4つほど考える必要があります。

  • 精神症状
  • 睡眠
  • 生活リズム
  • 女性ホルモン

薬によって変化が明らかでしたら、薬が原因といえます。ですがそれ以外のことが原因となることもあるので、注意が必要です。

精神症状で眠気や倦怠感がでてくる場合もあります。症状としての眠気の場合は、これまでの経緯や症状の変化などから総合的に判断していきます。双極性障害の方では、調子が悪くなると過眠がみられる方も多いです。

夜間の睡眠を十分にとれていなくて、日中に眠気が出てきている場合もあります。睡眠時間はとれていますか?朝に眠気はないですか?夜間にイビキなどはないですか?

また、生活リズムが崩れてしまっていることが原因のこともあります。体内時計のリズムが崩れると、睡眠時間は十分であっても睡眠の質が低下し、日中の眠気や倦怠感となることがあります。いわゆる時差ぼけは、この状態です。昼過ぎまで寝てしまって身体がだるい経験をされた方も多いと思います。起きる時間は大きくずれていませんか?

女性の場合は、女性ホルモンが自律神経に影響します。生理周期と関係して眠気が認められる場合や、女性ホルモンが減少していく更年期にあたる場合は、女性ホルモンの影響も考慮する必要があります。

 

4.テグレトールによる眠気の対策

テグレトールでは眠気の副作用が認められますが、そこまで強いお薬ではありません。ですが、お薬の効き方には個人差も大きく、眠気が強く出てきてしまう方もいらっしゃいます。

テグレトールを服用していて眠気が認められた場合、どのようにすればよいのでしょうか?

 

4-1.

・血中濃度を測り、しばらく様子を見る

生活に支障がでなければ、少しがまんしてみてください。

ある程度の量を使っていて眠気が認められた方は、まずは血中濃度を測ってみましょう。有効血中濃度内ではありますが、8μg/mL以上になると中毒症状が認められることがあります。テグレトール中毒が疑われた場合は、減量を考えていきます。

 

テグレトールの飲み始めで眠気が認められた場合、何とかなる範囲でしたらしばらく様子を見るのも方法です。薬の副作用は、飲みはじめに強くなる傾向があります。テグレトールによる眠気も飲み始めにみられることが多く、時間と共に慣れていくことが多いです。

1~2週間ほど様子を見て、少しずつ眠気が薄れていくか待ちましょう。生活への支障が大きかったり、危険性がある時は無理をしてはいけません。主治医と相談しながら、他の対策を考えていきましょう。

 

4-2.薬を分割して飲む回数を増やす

薬を飲んで暫くすると眠気が強くなる方には効果があることがあります。

薬の服薬回数を増やすのも方法のひとつです。

薬の副作用は、血中濃度のピークで一番強くでます。薬を分割して飲む回数を増やせば、血中濃度が安定します。このため、副作用は一般的に軽減されます。

これは眠気に関しても同じことがいえるので、薬をこまめに服用することで眠気が軽減することがあります。テグレトールの作用時間は長いのですが、飲み続けることで血中濃度が変化してしまいます。ですから1日2~3回に分けると、血中濃度がより安定します。

薬を飲んで暫くすると眠気が強くなる方は、試してみてもよいでしょう。ただ、回数を増やすと飲み忘れてしまうリスクが高まります。薬を飲み忘れてしまった場合、多少ずれても結構ですので服用するようにしましょう。

 

4-3.夕食後や就寝前に服用する

夕食後や夜に飲み方を変更するのも方法です。

睡眠をとる夜でしたら、眠気は出てきてくれた方が好都合ですね。テグレトールを服用して眠気がある場合は、夕食後や就寝前を中心に服用するという方法もあります。

テグレトールを日中に服用するには、理由があることもあります。ご自身で判断せず、主治医の先生と相談しましょう。

 

4-4.減量する

必ず主治医に相談してください。

テグレトールの効果がしっかりと出ているならば、少し減らして様子をみるのもひとつの方法です。テグレトールを減らしてみて、効果はそのままで眠気が軽減できれば、それに越したことはありません。

ですが、必ず主治医に相談してください。薬を減量しても大丈夫かどうかは、これまでの経過や症状をみて判断しなくてはいけません。

 

4-5.他の気分安定薬に変える

テグレトールでどうしても眠気が改善できないのなら、ラミクタールやリーマスなどを試してみましょう。

どうしてもテグレトールで眠気が改善できないのでしたら、他のお薬に変えていくしかありません。効果も含めて総合的に判断して薬を選んでいきましょう。

気分安定薬の中で眠気が少ないお薬としては、ラミクタールやリーマスになります。ただ、ラミクタールは抗躁効果は乏しいので、抗うつ効果や再発予防効果を期待したいときにはよいでしょう。抗躁効果を期待したいときには、リーマスになります。

どのお薬に変更していくのかは、眠気だけでなく総合的な判断が必要です。眠気が少し認められていても、総合的にみたらテグレトールが一番よいということもあります。主治医としっかりと相談してお薬を考えていきましょう。

 

まとめ

テグレトールには鎮静作用があるので、眠気が認められることがあります。

テグレトールは眠気が多少認められますが、抗精神病薬よりは少ないです。

薬以外の眠気の原因としては、精神症状・不十分な睡眠・生活リズムの乱れ・女性ホルモンが考えられます。

テグレトールによる眠気の対策としては、以下の5つがあります。

  • 血中濃度を測り、しばらく様子を見る
  • 薬を分割して飲む回数を増やす
  • 夕食後や就寝前に服用する
  • 減量する
  • 他の気分安定薬に変える

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