アナフラニールの離脱症状と4つの対策

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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抗うつ薬が急に身体から抜けると、調子が悪くなることがあります。病気が悪化したと勘違いされる方が多いですが、そうとも限りません。身体に慣れていた薬が身体から急になくなることによる離脱症状、これが原因であることも多いです。

アナフラニールをはじめとした三環系抗うつ薬は、新しい抗うつ薬に比べると離脱症状は少ないです。ですが、減量のペースが早いとみられることがあります。

ここでは、アナフラニールの離脱症状について、詳しくお伝えしていきます。

 

1.離脱症状とは?

薬が身体から急になくなることで起きる症状です。薬を減らしてから1~3日ほどで認められることが多いです。めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り・イライラ・不安・不眠・ソワソワ感・シャンビリ感などの症状がみられます。

薬をしばらく継続して使用していくと、身体に薬があることが当たり前になってきます。その状態で薬の量を減らしたり、服用を中止したりすると、身体にいろいろな不調が出てくることがあります。これが離脱症状です。

身体の症状としては、「めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り」などがみられます。「イライラ・不安・不眠・ソワソワ感」といった精神症状がみられることもあります。また、「シャンビリ感」といって、金属音のようなシャンシャンという耳鳴りがし、電気が流れたようにビリビリとしびれた感じがすることがあります。こうした脳に衝撃を受けるような感覚はSSRIの離脱症状によくみられます。

これらの症状は、SSRIと三環系抗うつ薬では違いがあります。イライラ感といった攻撃性や、シャンビリ感やしびれといった感覚異常は、SSRIに特徴的です。アナフラニールをはじめとした三環系抗うつ薬にはあまりみられません。

薬を1か月以上服用してから減らしていくと、このような離脱症状が認められることがあります。およそ薬を減らしてから1~3日くらいしてから認められます。2週間ほどすると落ち着きますが、重症な場合は、2~3か月続くこともあります。

 

2.なぜアナフラニールで離脱症状が起こるのか?

三環系抗うつ薬のアナフラニールでは、おもにアセチルコリンの活動が急に強まることが原因と考えられています。セロトニンの低下も関係していると思われます。

薬を飲み始めてすぐの頃は、体内から薬の成分が消えても効果がなくなるだけです。しかし、長期間にわたって薬を飲み続けると、身体は薬が入ってくることを前提に体調を整えるようになります。その状態で急に減薬や断薬してしまうと、身体の調子がくるってしまいます。これが不快な症状となってあらわれるのです。

ただ、どのように調子がくるってしまうかは正確にはわかっていません。アナフラニールをはじめとした三環系抗うつ薬では、おもに抗コリン作用が関係していると考えられています。

詳しく知りたい方は、
抗うつ剤の離脱症状とは?
をお読みください。

 

3.アナフラニールの離脱症状と他の抗うつ剤との比較

アナフラニールは抗コリン作用が強いですが、半減期が長いため、離脱症状はそこまで多くはありません。

まずは、代表的な抗うつ薬の半減期をみてみましょう。これを踏まえて考えていきましょう。

抗うつ剤の半減期をまとめました。

一般的に、三環系抗うつ薬は新しいSSRIやSNRIに比べて、離脱症状は起こりにくいといわれています。

アナフラニールをはじめとした三環系抗うつ薬では、おもに抗コリン作用が関係していると考えられています。アセチルコリンが解放されるため、リバウンドによりアセチルコリンの活動が急に強まります。このアセチルコリンの過活動が離脱症状を引き起こしていると考えられています。

アナフラニールは抗コリン作用が強いので離脱症状が強そうに思われるかもしれません。ですが、半減期が21時間と比較的に長いので、薬が身体からゆっくりと抜けていきます。これらをトータルで考えると、離脱症状が起こりやすくはありません。

 

抗うつ薬の中でも、特にSSRIで離脱症状がよくみられます。このため、SSRI離脱症候群やSSRI中断症候群とも呼ばれています。その中でも、もっとも離脱症状を起こしやすいことで知られているのがパキシルです。

SSRIでは、ルボックス/デプロメールも離脱症状が多いです。半減期が短く、身体から抜けるスピードが早いためと思われます。ですが、薬の強さ(力価)がそこまで強くないために、症状の程度としてもパキシルほどではありません。ジェイゾロフトやレクサプロなどは比較的頻度は少ないです。

SNRIでは、サインバルタで離脱症状が起きやすいです。半減期が短いこともありますが、これはカプセル製剤であることが要因として大きいです。少しずつ減量することができないため、離脱症状が起こりやすいです。

 

4.アナフラニールの離脱症状での対処法

アナフラニールは離脱症状が起こりにくい薬です。ですから、離脱症状がみられるのは、そのほとんどが急に薬を自己判断でやめてしまった場合です。

抗うつ薬は状態がおちついてきても、しばらくは続けていく必要があります。必ず「薬をやめたい」という気持ちを、主治医に伝えてください。その上で計画的に減薬していきましょう。

ここでは、離脱症状が現れた時の対処法をご紹介したいと思います。

 

4-1.様子を見る

何とかなるなら様子をみましょう。

離脱症状が出てきていても、大きく日常生活に影響がなければ、様子をみていくのもひとつです。日常生活に影響が出ない程度で我慢できる場合、しばらく様子をみてください。

身体が少しずつ慣れていきます。このため、症状は少しずつ和らいでいきます。個人差はありますが、1~2週間ほどすると症状が治まることが多いです。

ただし、アナフラニールを自己中断した場合は医師の指示を必ずうけてください。結果オーライのこともありますが、アナフラニールを減量するタイミングでない時があります。もともとの病気が治りきらずに無理に減薬をすると、症状が悪化することがあります。

安定剤が頓服として処方されている場合は、離脱症状は多少軽減されます。頓服で症状が軽くなった場合、一時的に安定剤を併用するのも方法です。医師に相談してみてください。

 

4-2.元の量に戻す

自己中断の場合は元に戻してください。日常生活に支障が大きい場合も元に戻してください。

アナフラニールで離脱症状が起きるときは、ほとんどが自己中断によるものです。この場合は、元の量に戻してください。

医師と相談の上で減薬している場合は症状の程度によります。症状がひどく、日常生活に影響が大きい場合は、アナフラニールの量を元に戻しましょう。すると、比較的すみやかに状態は改善します。

一度落ち着いた後に、「薬をいつ減らしていくのか?」「どのように減らしていくのか?」を主治医と相談しましょう。しばらく時間をおいて、減薬をすると上手くいくこともあります。

 

4-3.減量ペースを落とす

再チャレンジする場合は、減量ペースを落とすことが原則です。

薬の減らすペースを落としていくと、薬の変化が緩やかになります。離脱症状が起こってしまった場合、次に減薬していくにあたっては、この戦略が原則になります。

アナフラニールの場合、50mgずつ減量していていくことが多いです。このペースを25mgずつに落としていきます。25mgずつですと問題になるケースはほとんどありません。これでも難しい場合は、薬を分割して、さらに少量にしていきます。

これ以上減量ができない量の場合、飲む間隔をあけていく場合もあります。毎日→休日抜く→2日に1回抜く→中止などとしていきます。

 

4-4.薬の服用回数を増やす

アナフラニールは半減期が長いので、効果はいまひとつかもしれません。

半減期の短い薬の場合は、少ない回数での服用ですと血中濃度の波が大きくなります。薬の服用回数を増やすことで、薬の血中濃度の波は小さくなります。身体から薬が抜けていくスピードが緩和されますので、離脱症状にも有効です。

アナフラニールの場合、他の抗うつ薬と比較して半減期は長い方です。このため、この方法はそこまで効果が期待できません。

 

まとめ

離脱症状とは、薬が身体から急になくなることで起きる症状です。薬を減らしてから1~3日ほどで認められることが多いです。めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り・イライラ・不安・不眠・ソワソワ感・シャンビリ感などの症状がみられます。

アナフラニールは、抗コリン作用が強いですが、半減期21時間と長いので、離脱症状はそこまで多くはありません。ですから、離脱症状がみられるのは、そのほとんどが急に薬を自己判断でやめてしまった場合です。その場合は、薬を元の量に戻しましょう。

医師と相談の上で減薬している場合、離脱症状の対処法としては、日常生活への影響の大きさで考えていきます。なんとかなるならば、そのまま様子を見ましょう。日常生活に支障が大きい場合は元に戻してください。

再チャレンジする場合は、減量ペースを落とすことが原則です。服薬回数を増やす方法や他の薬に切り替える方法がありますが、アナフラニールではあまり行いません。

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