セロクエルの半減期と効果時間とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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セロクエルは、第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)に分類されます。おもに統合失調症の治療薬として使われています。

セロクエルの効果時間は、半減期から考えることができます。セロクエルは最高血中濃度到達時間1.3~1.4時間・半減期3.3~3.5時間です。セロクエルは効果時間が非常に短いので、服用方法に工夫が必要です。

ここでは、セロクエルの半減期と効果時間について、詳しくみていきたいと思います。

 

1.薬の半減期とは?

薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

薬を服用した時の、血中濃度の変化を図に表わして、Tmaxと半減期を説明します。

薬を飲み始めると、直後は血中濃度がどんどんと上がっていきます。薬の吸収がおわると、薬は代謝されて身体から出ていきますので、少しずつ血中濃度が減少していきます。身体が薬を代謝できるスピードは決まっていますので、どれくらいの量であっても一定のスピードで身体から抜けていきます。このため、薬の量が半分になるまでにかかる時間は、内服量にかかわらず一定になります。

この血中濃度が半分になるまでにかかる時間を半減期(T1/2)といいます。T1/2が短いほど、薬の切れ味がよく身体からすぐになくなるといえます。反対にT1/2が長いほど、薬が身体に蓄積しやすいといえます。

薬の効き方を考えるにあたって、もう1つのポイントがあります。最高血中濃度到達時間(Tmax)です。これは文字通りで、血中濃度がピークに達するまでの時間です。効果がでるまでのスピードに関係しています。Tmaxが短いほど、薬の効果がすぐに表れることを意味しています。

 

2.セロクエルの作用時間と使い方

セロクエルは最高血中濃度到達時間が1.3~1.4時間、半減期が3.3~3.5時間の非定型抗精神病薬です。外来では25~50mgから、入院では50~200mgから使われることが多いです。最大750mgまで使えます。

セロクエルを服用すると、1.3~1.4時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、3.3~3.5時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

代謝産物のノルクエチアピンは、セロクエルと比べて約100倍強力なノルアドレナリン再取り込み作用や約10倍のセロトニン1A受容体作用があります。このため、ノルアドレナリンやセロトニンが増加し、抗うつ効果が期待できます。

 

セロクエルは作用時間がとても短いお薬です。このため、1日3回から服用を開始するのが一般的です。

セロクエルの添付文章では、1回25mgを1日2~3回から開始(50~75mg)して、最大量750mgまでとされています。実際には、外来では25~50mgから、入院では50~100mgから使われることが多いです。

セロクエルを頓服として使う時は、25mg~200mgで効果の実感をみていきます。

 

セロクエルはいろいろな受容体に優しく作用するので、他の薬から切り替えたり、新しく開始するときのリスクが少ないです。このため、副作用がおきてもすぐに対処できる入院治療では、比較的すぐに量を上げることが多いです。1週間ほどで400mg以上まで増量していきます。

幻覚や妄想などの急性期の症状が目立つときは1日中セロクエルを効かせる必要があります。このため、1日3回がっちりと服用する必要があります。

症状が落ち着いてきたら、セロクエルは1日1回にすることもできます。統合失調症の再発予防には、1日どこかのタイミングでしっかりとドパミンD受容体をブロックすることが重要と考えられています。400mg以上を服用すると、しっかりとドパミンがブロックできます。

 

セロクエルの効果について詳しく知りたい方は、
セロクエル錠の効果と特徴
をお読みください。

 

3.抗精神病薬の半減期と作用時間の比較

セロクエルは、他の抗精神病薬と比較しても半減期が短く、急性期は1日に3回の服薬が必要です。

抗精神病薬の半減期を比較してみましょう。

抗精神病薬の半減期を一覧にして比較しました。

抗精神病薬の半減期をみることで、それぞれの薬の作用時間や効き方がある程度わかります。

半減期の長いジプレキサやエビリファイでは、1日1回の服用でも十分に効果が持続します。半減期の短いルーランやセロクエルでは、落ち着くまでは1日に2~3回の服用が必要になります。

ロナセンやリスパダールでも1日2~3回の服用となることが多いですが、どちらも1日1回でも効果が持続します。ロナセンでは、反復投与によって半減期が60時間以上に延びていきます。リスパダールでは、活性代謝産物が長く残って作用します。

薬を服用する人によっても、分解のしやすさには違いがあります。ですから、半減期だけではわからないこともあるのですが、薬の作用を考えていく目安になります。

抗精神病薬は、しっかりと飲み続けていくことが大切なお薬です。患者さんが実際に服用できなければ何の意味もありません。効果や副作用の特徴はもちろん大切ですが、服用のしやすさも意識しながらお薬を選んでいきます。

 

まとめ

半減期とは、薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

セロクエルは最高血中濃度到達時間が1.3~1.4時間、半減期が3.3~3.5時間の非定型抗精神病薬です。外来では25~50mgから、入院では50~200mgから使われることが多いです。最大750mgまで使えます。

セロクエルは、他の抗精神病薬と比較しても半減期が短く、急性期は1日に3回の服薬が必要です。

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