セロクエルが糖尿病に禁忌な理由とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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セロクエルは、MARTAと呼ばれる第二世代(非定型)抗精神病薬です。2001年2月に発売されましたが、高血糖による死亡例が認められたため、糖尿病の患者さんには禁忌となりました。

セロクエルは統合失調症や双極性障害によく使われていて、非常に有効なお薬です。一番のネックが、体重増加の副作用となっています。食欲増加だけでなく、代謝も悪化してしまいます。

ここでは、セロクエルではどうして糖尿病が禁忌となったのか、その経緯をお伝えします。どのようなことに注意をすればよいのか、みていきましょう。

 

1.セロクエルはなぜ糖尿病に禁忌なのか

セロクエルによって急激に高血糖がすすみ、糖尿病性昏睡となって1人が亡くなったためです。

セロクエルは2001年2月に発売されました。同じタイプの抗精神病薬のジプレキサで、発売後まもなくの2002年4月にイエローレターが出されました。

イエローレターは緊急安全性情報と呼ばれていて、緊急で重大な注意喚起や使用制限が必要な状況に出されます。厚労省の指示や製薬会社の判断で、医療機関と患者さん向けに配布されます。抗精神病薬の持続注射剤のゼプリオンでブルーレターと呼ばれる安全速報が出されましたが、これよりも緊急性の高いものになります。

発売から数か月、およそ137000人にジプレキサが使われている中で、重篤な糖尿病性昏睡が9例(うち2例で死亡)という報告がなされたためです。

 

これをうけて、セロクエルでも注意が払われるようになりました。しかしながら2002年11月、セロクエルでも同様のリスクがあるとのことでイエローレターがだされました。およそ13万人にセロクエルが使われている中で、重篤な糖尿病性昏睡が13例(うち1例で死亡)という報告がなされたためです。

 

発売時点でも、セロクエルの添付文章の重大な副作用の中に、「高血糖が現れることがあり、糖尿病性昏睡や糖尿病性ケトアシドーシスに至った例が報告されている」と記載されていました。しかしながら、十分な注意はできていないのが実情でした。

このイエローレターをうけてセロクエルの添付文章が改定され、以下の2つが追加されました。

  • 禁忌:糖尿病・糖尿病の既往歴
  • 慎重投与:糖尿病の家族歴・高血糖や肥満などの糖尿病の危険因子を有する患者

さらに、重大な副作用と警告という形で、「血糖値の測定などの観察を十分に行い、口渇・多飲・多尿・頻尿などの異常に注意すること」とされています。

 

セロクエルでは、糖尿病が疑われたり肥満がみられる方では、このように急激な高血糖による昏睡のリスクは高くなります。ですが、血糖値が正常な方でも、代謝を急激に悪化させて高血糖になることがあります。このため、血糖を定期的にチェックしなくてはいけません。

セロクエルの体重増加について知りたい方は、
セロクエルは太るの?体重増加への5つの対策
をお読みください。

 

2.セロクエルによる高血糖をどのように注意するのか

定期的に採血をして、特に多飲に注意しながら慎重に見ていく必要があります。

糖尿病になるリスクとして、肥満は間違いなくあります。肥満傾向が強い人には注意が必要で、体重の変化に注意しながら運動や食事を整えていく必要があります。

ただ、体重増加や肥満がなくても高血糖や糖尿病になるケースも多く、肥満がないからといって大丈夫というわけではありません。セロクエルをはじめてすぐに体重が7%以上増加し、血糖値やHbA1cに異常を認める時は、内科を受診した方がよいです。

血糖値が100mg/dl以上110mg/dl未満の方は、正常高値なのでリスクがやや高いといわれています。より慎重に見ていく必要があります。

 

糖尿病は一般的に中年以降にリスクが高まりますが、若い人でもペットボトル症候群の可能性があります。ペットボトル症候群は重度の昏睡などにおちいることが多く、注意が必要です。

ペットボトル症候群とは、ソフトドリンクケトアシドーシスとも呼ばれていて、ソフトドリンクのペットボトルをがぶ飲みして悪化していくので、この名前がつけられています。

高血糖になると、水分をとって血糖を薄める必要があります。このため、のどが渇いて身体が水分を欲するのです。のどが渇いたからといって糖をたくさん含んでいるソフトドリンクを飲んでしまうと、さらに高血糖がすすんでしまいます。それを下げるために、血糖を細胞に取り込むインスリンというホルモンが膵臓から分泌されて帳尻をあわせます。

しかしながら徐々に膵臓が疲れてきて、インスリンの分泌が悪くなります。すると今度は、細胞に糖がとりこまれなくなってエネルギー不足となってしまい、脂肪を分解して細胞の栄養源にします。その時に脂肪から作られるケトン体がたまっていくと、身体のバランスがくずれて昏睡状態になってしまうのです。

 

セロクエルを服用するときは、高血糖になっていないかを確認するために定期的な採血が必要です。セロクエルをはじめてから半年は慎重にみていきます。リスクが特にない方は3か月に1回で大丈夫ですが、リスクがある方は服用開始後1か月後に採血を行います。

口渇・多飲・頻尿などの糖尿病を疑わせる症状にも注意をしていきます。とくに多飲はペットボトル症候群の可能性もあるので、飲み物の内容などにも注意をする必要があります。

これらを踏まえると、セロクエルでは以下のことに注意する必要があります。

  • 肥満や血糖が正常高値では特に気をつけること
  • 肥満でなくても油断しない
  • 若い男性の多飲傾向には注意する
  • セロクエル開始して半年は特に慎重に
  • 1年すぎても定期的に血糖チェックが必要

 

まとめ

セロクエルによって急激に高血糖がすすみ、糖尿病性昏睡となって1人が亡くなったためです。

定期的に採血をして、特に多飲に注意しながら慎重に見ていく必要があります。

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