フルデカシンの効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬)のフルメジンには、持続性注射剤としてフルデカシンが発売されています。

フルデカシンは、4週間に1回の注射で効果が持続します。お薬の飲み忘れが防げるだけでなく、副作用も軽減されています。そこまで注射に抵抗がなければ、服薬の手間も省けて安定した効果が期待できます。

最近は非定型抗精神病薬でも持続性注射剤が発売されるようになり、フルデカシンが使われることも珍しくなってきました。

ここでは、フルデカシンの効果と副作用を中心に、メリットとデメリットに分けて特徴をお伝えしていきたいと思います。

 

1.持続性注射剤(LAI)とは?

お尻か肩に筋肉注射をすることで、効果がしばらく持続します。

持続性注射剤とは、その名の通り、効果の持続する注射剤です。Long Acting Injectionの頭文字をとって、LAIとも呼ばれています。

お尻(腰の近く)か肩に筋肉注射をすることで、徐々に身体の中でお薬が溶け出していきます。このため、効果が2~4週間ほど持続していきます。

定型抗精神病薬としては、現在も2つのお薬が使われています。

  • ハロマンス/ネオペリドール(セレネースの持続注射剤)
  • フルデカシン(フルメジンの持続注射剤)

定型抗精神病薬としては、3つのお薬が発売されています。

  • リスパダールコンスタ(リスパダールの持続注射剤)
  • ゼプリオン(インヴェガの持続性注射剤)
  • エビリファイ持続性水懸筋注用(エビリファイの持続性注射剤)

定型抗精神病薬の持続注射剤は、1か月に1回の注射となっています。

リスパダールコンスタは2週間に1回、ゼプリオンは1か月に1回、エビリファイ持続性水懸筋注用では1か月に1回、臀部ないしは肩に筋肉注射します。

フルデカシンの注射は麻酔用作用があり、痛みが出にくく、硬結ができにくい注射になります。

 

2.フルデカシンの特徴

フルデカシンは、フルメジンの効果が持続するように作られた注射製剤です。効果や副作用のおおまかな特徴は同じなのですが、違いは大きいです。内服薬のフルメジンと比べたフルデカシンの特徴を、メリットとデメリットに分けてまとめてみます。

フルメジンについて詳しく知りたい方は、「フルメジン糖衣錠(フルフェナジン)の効果と副作用」をお読みください。

 

2-1.フルデカシンのメリット

  • 飲み忘れがなくなる
  • 副作用が軽減する
  • 減薬での身体の負担が少ない

フルデカシンなどの持続性注射剤での一番のメリットは、飲み忘れがなくなることです。ついお薬を忘れてしまうことは、誰しもよくあります。飲み薬ですと、飲み忘れを無くすこと自体が難しいのです。しっかり服薬指導をしていても、7~8割きっちり服用してくれていたらいい方です。

統合失調症の治療では、お薬をきっちりと飲み続けていくことが何よりも大切です。再発の一番のリスクは服薬中断なのです。フルデカシンの最大のメリットは、飲み忘れがなくなることによって再発を防ぐことができる点にあります。

 

また、持続性注射剤では、血中濃度が飲み薬よりも安定します。というのは、注射によって直接静脈にお薬を注入しているので、お薬はダイレクトに脳に届きます。飲み薬では、小腸から吸収されて肝臓を通り、そこで代謝をうけてから脳に運ばれます。肝臓の機能の影響を受けてしまうので、効果が不安定になってしまうのです。

このように、フルデカシンでは血中濃度が安定するため、副作用が全体的に軽減されています。これによって効果もより安定します。

また、減薬をする時もゆっくりと身体からお薬が抜けていくため、身体への負担が小さくてすみます。ですから、スムーズに減薬することができます。

 

2-2.フルデカシンのデメリット

  • 注射なので痛みがある

注射剤なので、痛みは避けることができません。フルデカシンは痛みが強く、注射した部位に硬結ができてしまうこともあります。注射に対して抵抗が強い方も多いです。

筋肉注射は肩か臀部に行うことが多いですが、臀部の方が痛みは多少軽減されます。フルメジンは、他の持続性注射剤と比べると痛みは軽減されています。

 

3.フルデカシンの薬価

セレネースはもともと安価なため、フルデカシンも安いです。

商品名 剤形 薬価
フルデカシン 25mg/1ml 1564円

非定型抗精神病薬の持続性注射剤はいずれも非常に高価なのですが、フルデカシンは安価になっています。フルメジン自体が古いお薬で安いためでしょう。

月に1回の注射でよいので、この薬価から医療保険が適用されます。

※2015年11月25日現在の薬価です。

 

4.フルデカシンの使い方

まずはフルメジンの飲み薬からはじめて安全性を確認します。問題がなければ、1か月に1回注射していきます。

フルデカシンをいきなり注射すると、お薬が身体から抜けるのに時間がかかるので、まずは安全性を飲み薬で確認します。フルメジン糖衣錠で必要な量まで使っても、目立った副作用がないことを確認します。

フルデカシンは、注射をすると血中濃度がすぐにあがり、4~6時間のところが血中濃度のピークとなります。筋肉から血中に少しずつ移行して、血中でフルメジンに変換されていきます。

フルメジン2mg=フルデカシン15mgとなります。ですからフルデカシン50mgでしたら、フルメジン6.7mgに相当します。

フルデカシンは、12.5mg~50mgで開始し、最高で75mgまで使うことができます。フルメジンにすると10mgとなり、フルメジンの最高用量と同じになります。

 

5.フルデカシンが向いている人とは?

  • 服薬を続けるのが難しい方
  • 症状が不安定な方
  • 再発を繰り返している方
  • 副作用で困っている方

それではフルデカシンはどのような方にむいているでしょうか?

服用を続けていくのが難しい方に向いているといえます。お薬の飲み忘れが多そうな方、服薬を煩わしいと感じている方、単身生活の方など、今後を見据えて、飲み忘れや服薬中断のリスクが高い方に向いているお薬と言えます。

また、症状が不安定な方や再発を繰り返している方にも向いています。このような方では、多くの場合が服薬が乱れています。お薬が抜けてしまうと調子が悪くなり、一線を超えてしまうと現実的な判断ができなくなります。フルデカシンによって少しでもお薬が効いていれば、急激な悪化を防げることがあります。調子の底をつくってくれるような働きがあります。

フルデカシンは血中濃度が安定しているので、副作用が少ないのも特徴です。フルメジンで効果がしっかりとしているけれども副作用がネックという方には、フルデカシンに切り替えるのも一つの方法です。

注射をするために定期的な通院が必要なので、フルデカシンは病識がある方に使うお薬です。まったく病識がない方に、無理やり注射をするお薬ではありません。

 

まとめ

フルデカシンのメリットは、

  • 飲み忘れがなくなる
  • 副作用が軽減する
  • 減薬での身体の負担が少ない

フルデカシンのデメリットは、

  • 注射なので痛みがある

リスパダールが向いている人とは、

  • 服薬を続けるのが難しい方
  • 症状が不安定な方
  • 再発を繰り返している方
  • 副作用で困っている方

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