クリアナールの副作用と安全性

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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クリアナールは痰の成分を整えたり、杯細胞の産生を抑制して痰を出しやすくするお薬です。

幅広い効果に加えて、クリアナールはほとんど副作用がありません。さらに絶対に使えない病気もありませんし、飲み合わせに注意するお薬がないのもクリアナールの特徴的です。

そのためクリアナールは、妊婦・授乳中・高齢者など多くの場合に使用されるお薬です。一方で小児にはデータが少ないため積極的に勧められていません。ここではクリアナールがどれくらい安全か確認していきましょう。

 

1.クリアナールの副作用は?

クリアナールはほとんど副作用がないお薬です。

クリアナールの総症例4,486例中68例(1.5%)に副作用が認められました。その主な症状は、

  • 発疹10件(0.2%)
  • 悪心7件(0.2%)
  • 消化不良4件(0.1%)
  • 感覚鈍麻3件(0.1%)
  • 腹部不快感及び下痢がそれぞれ3件(0.1%)

となっています。クリアナールは、非常に副作用の少ないお薬です。全体でも1%程度の出現率ですし、皮疹を抜かすと多い副作用が吐き気や下痢、腹部不快、消化不良などの消化器症状です。

これらの副作用調査は患者さんの症状をみながら医師が報告して調査されるのですが、本当にクリアナールの副作用かどうか調べることはしていません。していないというより、できないといったところが正直なところです。これらの消化器症状も、

  • クリアナールの副作用か
  • 風邪などの症状か

どちらかはっきりと区別することは医学的に難しいところです。実際に風邪の人は喉にいたばい菌がお腹に移行すれば、下痢や軽度の腹痛なども風邪でも起こりえます。

クリアナールの作用のせいで食思不振や腹痛になるような作用機序は、現在のところ明らかになっていません。そのため、クリアナールの副作用は過度に心配する必要はありませんし、風邪などの症状が悪化しないか心配した方が現実的かと思います。

 

2.クリアナールに眠気の副作用はないのか?

添付文章でも、クリアナールの副作用に眠気は記載されていません。

クリアナールを内服すると、眠気が生じるとおっしゃる人が度々います。しかしクリアナールの添付文章では、副作用に眠気は記載されていません。作用機序的にも、クリアナールは眠気を生じることはありません。

クリアナールを内服中に眠気が生じる理由として、以下の二つが考えられます。

  1. 風邪の症状で眠気が生じる
  2. 他の薬の影響で眠気が生じる

まず①の風邪の症状で眠気が生じる可能性についてです。クリアナールが処方される方は、

  • 鼻水

などの症状がある方でしょう。痰が胸や喉につっかえたり、鼻水で鼻がつまったりするとかなりの不快感が伴います。これらの不快な症状が、安眠を妨げている可能性があります。

クリアナールは痰や鼻水を出しやすくするお薬ですが、原因となる病気を治す治療ではありません。そのため原因となる病気がある限り、痰や鼻水は出続けます。そのためクリアナールを内服している間は、痰や鼻水が出続けていて夜寝れてない人が多いです。

もう一つは、他のお薬の副作用です。風邪症状で最も多く処方されるのは、感冒総合薬のPL配合顆粒かと思います。このPL配合顆粒は、

  • NSAIDs
  • アセトアミノフェン
  • 抗ヒスタミン
  • 無水カフェイン

の4種類の効力があるお薬が配合されています。この中で抗ヒスタミン薬は、副作用として眠気を生じる可能性があるお薬です。抗ヒスタミン薬は、鼻水を抑えるために配合されています。そのため鼻水の症状が中心の人は、PL配合顆粒ではなくポララミンなど抗ヒスタミン薬単剤で処方されている方もいます。

また咳止めであるアスベリンやメジコンも、稀にですが眠気を起こす人もいます。このような原因によって、眠気が出現する可能性が高いです。少なくとも眠気が出現したからといって、クリアナールを中止する必要はありません。

 

3.クリアナールが内服できない人は?

クリアナールが内服できない人は、クリアナールにアレルギーがある人のみです。

クリアナールの添付文章では、禁忌にあたる人はクリアナールにアレルギーがある方のみとなっています。これはクリアナールに限らず、全ての薬に対していえることです。アレルギー反応として最も多いのが皮疹などの皮膚障害です。

先ほどの副作用の話に戻りますがクリアナールの副作用として最も多いのがアレルギー症状といえます。しかしこのアレルギー症状もほとんど軽度の皮疹の場合がほとんどです。ただし一度アレルギーが出た人は、再び投与するともっとひどいアレルギーが出るため基本的に禁忌になります。

また、クリアナールで慎重に投与が必要と記載されている方は、

  1. 肝障害のある患者[肝機能障害のある患者に投与した時、肝機能が悪化することがある。]
  2. 心障害のある患者[類薬で心不全のある患者に悪影響を及ぼしたとの報告がある。]

と記載されています。しかし実際の現場では、肝臓や心臓が悪いからといってクリアナールの投与を中止することはほとんどありません。もしクリアナールが使用できないくらい肝臓や心臓の状態が悪い方は、ほとんどのお薬が使用できないくらい重篤な状態です。

また、クリアナールは一緒に飲んではいけないお薬もなければ、一緒に飲むことで効果が減弱したり強くなったりということもないお薬です。

風邪の時に一緒に処方されることが多いPL配合顆粒などには痰切り成分は含まれていないため、クリアナールと一緒に内服することが多いです。その他の咳止めや解熱剤も、クリアナールとの飲み合わせは問題ないです。

そのためクリアナールは、どのような疾患の人にも、そしてどのようなお薬を内服してる人でも、基本的には使用して良いお薬となっています。

 

4.クリアナールはアルコールと一緒に内服して良いの?

クリアナールとアルコールは飲み合わせとしては問題ありません。ただしアルコール自体、風邪には良くないので注意しましょう。

クリアナールは、アルコールと一緒に内服することで効果が減弱したり、副作用が増えたりといったことがないお薬です。ただし問題ないからといって、クリアナールとアルコールを一緒に飲んでよいかはまた別問題です。

特に風邪でクリアナールを内服している人は要注意です。クリアナール以外の風邪薬は、アルコールと一緒に内服すると眠気が強く出てくることがあります。場合によっては、意識が低下してもうろうとしたりします。

また風邪薬は、あくまでも症状を一時的に緩和する対処療法にすぎません。風邪の一番の治療は安静です。そのため、アルコールを飲まずに体を休めることが一番の治療になります。

一方で病気によっては、長期にクリアナールを内服している方もいるかもしれません。COPD(肺気腫)などタバコで肺がボロボロになって痰が出続ける人に、クリアナールはよく処方されます。COPDは基本的には治らない病気のため、一生クリアナールを飲み続ける人も多いでしょう。タバコを吸ってる人はお酒が好きな人も多いです。

タバコを頑張って禁煙しているのに、アルコールも一滴も飲んではいけないというのは酷な話かもしれません。そのためクリアナールを長期に飲む必要がある人は、節度を守ればアルコールを飲んでも良いとは個人的には思います。ただしその場合も、禁煙のストレスでついついお酒がすすんでしまう人が多いです。あくまでも嗜む程度であって、大量にアルコールを飲んではいけません。

一方で非結核性抗酸菌症などでクリアナールを飲み続けている人は、クラリスやリファンピシンなどばい菌をやっつけるお薬を一緒に飲んでることが多いです。これらのばい菌をやっつけるお薬が肝障害を起こす可能性があるため、肝臓を悪くするアルコールは控えなければなりません。

そのため長期にクリアナールを内服している方は、アルコールを飲んでも良いか一度処方されている医師に相談してみると良いでしょう。

 

5.クリアナールは高齢者・小児・妊婦・授乳中の方に処方して良いの?

基本的にどの方も禁忌ではありません。ただし小児や妊婦の方は注意が必要です。

クリアナールは高齢者に関しては添付文章では、一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意することと記載されています。

しかしクリアナールは安全性が高いお薬です。逆にクリアナールを処方するような痰がでている方は、痰を出す力が高齢者の方の場合弱ってることが多いため、若い方より不快感が強くなると思います。そのため実際の医療現場では、高齢者でもほとんどが通常量処方されていると思います。

ただクリアナールは、小児に適応がありません。これだけ副作用が少ないのになぜ小児に適応がないのか、不思議に思う人がいるかもしれません。これは小児に対して、クリアナールが危険だからではありません。小児に対して安全性を確認したデータが存在しないからです。

実際に同じ痰の性状を良くして痰を出しやすくするお薬にムコダインがあります。ムコダインは鼻水などにも適応があるため、小児にも非常に使いやすいお薬です。

さらにムコダインとクリアナールを併用するくらい痰が切れない症例は小児ではほとんどないため、小児でデータが集められない経緯があります。そのため小児に対してクリアナールが使いたいなと思った方は、まずムコダインを試してみると良いかもしれません。

また、妊婦の方も適応になります。添付文章では、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること.〔ウサギを用いた胎児の器官形成期経口投与試験の600mg/kg(臨床用量の約30倍)で流産,ラットを用いた周産期及び授乳期経口投与試験の2,000mg/kg(臨床用量の約100倍)で出生児の発育抑制がみられている.〕

と記載されています。流産や出生時の抑制と記載されていると、ぎょっとする人も多いでしょう。ただしウサギに投与した量が30倍や100倍と、通常ではありえない量です。そのため常用で使用して問題になかったことはないため、禁忌にはなっていません。

一方でクリアナールは、痰を出しやすくするお薬であり、痰がでる原因を治す治療薬ではありません。そのため軽症な方は、あえてクリアナールを内服する必要はないと思います。またクリアナールを内服していて症状が軽くなった方も、飲み切る必要性が低いお薬です。

授乳している方も母乳への移行が認められているため積極的に勧められていません。そのため、妊婦や授乳している方に関しては主治医の先生とよく相談してみましょう。

 

まとめ

  • クリアナールは副作用が少ないお薬です。最も多いといわれている消化器症状も風邪による影響の方が大きいと思われるお薬です。
  • クリアナールで眠気の副作用が出現することは少ないです。
  • クリアナールは、どのような病気の人でも内服できるお薬です。
  • クリアナールは、飲み合わせが問題ないお薬です。
  • クリアナールを風邪で内服している人は、アルコールは控えましょう。一方で長期間クリアナールを内服する必要がある方は、一度医師と相談してみましょう。
  • クリアナールは小児では安全性の試験が実施されていないため、同じ効果のあるムコダインが推奨されます。
  • クリアナールは妊娠中や授乳中の方は、安全性の試験が示されていないため注意が必要と添付文章では記載されています。

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