東日本大震災でのPTSDと二次受傷

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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2011年3月11日、忘れもしない東日本大震災が起こりました。15786人にも上る犠牲者をだし、数えきれないほどの人々の心に、大きな傷を残しました。

被災地での心のケアは大きな課題で、精神科医も「心のケアチーム」をつくって救援活動に入っています。厚労省のメンタル系ポータルサイト「こころの耳」では、東日本大震災での心のケアに関する情報がまとめられています。

このような未曽有の大災害の中で、命の危険にさらされるような想像を絶する体験をされた方もいらっしゃいます。そのような方の中には、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでいる方もいらっしゃいます。

それだけではありません。救援や支援に入られた方の中には、あまりの体験を見聞きして、二次受傷してしまう方もいるのです。ここでは、東日本大震災でのPTSDのいまを考えていきたいと思います。

 

1.東日本大震災でのPTSD

被災者の精神的なケアはまだまだ必要です。

世界中の人々を震撼させたあの巨大津波をともなった東日本大震災から、はや4年半が過ぎました。しかし時が経過しても被害体験が癒されることなく、あの忌まわしい体験がトラウマになって、フラッシュバックとして恐ろしい場面が生々しく再現されたり、不眠が長い間続き、悪夢にうなされるような症状がある人は今 も少なくありません。

症状からしてそうした人たちの多くがPTSDではないのかと疑われています。震災被害者の精神性ストレスは時がたっ ても減少することはなく、逆に今でも増加を続けているということがいわれています。

東北大学の研究グループによると、2011年に調査した1180名のうち14.1%で、心的外傷後ストレス反応がみられたという報告があります。特に地震だけでなく津波の被害を受けた方に多く、男性よりも女性で多いと報告されました。

 

こうした人々がすべてPTSDであるとは断定できませんが、多くの方が PTSDで苦しんでいることは事実でしょう。

今回の震災のように凄惨な体験をされた方の中には、脳が自分を守るために記憶を封じ込んでいる こともあります。よく覚えていない当時の光景が急によみがえってきて、時間が経ってから突然フラッシュバックする方もいらっしゃいます。東日本大震災の被災者の精神的なケアは、これからまだまだ必要なのです。

 

2.PTSDの二次受傷(代理受傷)

患者さんのケアを通して追体験することで、PTSDを二次受傷することがあります。

PTSDについて語るときには、患者さん以外のことで忘れてはならないことが一つあります。それは「二次受傷(代理受傷)」ということです。二次受傷とは文字通り、患者さんのケアなどを通して、追体験してしまうことでPTSDにかかることを言います。

患者が話すトラウマの原因になった出来事に耳を傾けることによって、恐ろしい場面が目の前で再現されていきます。それが知らず知らずにトラウマになリ、PTSDの症状が認められるようになります。

子どものころ怪談の話を聴いて、恐ろしくなって一人ではトイレにもいけなくなったことがありますが、人の話を聞くことでも、場合によっては大きな影響を受けることも珍しくないのです。PTSDの二次受傷は、そうした体験の最たるものと思えば良いでしょう。

人は物事を実際に見たり体験したりしなくても、言葉を聞いてイメージするだけで、実際に出来事を体験したように感じることができます。このような想像力は時として、自分自身を苦しめてしまうこともあるのです。

東日本大震災での精神的ケアはまだまだ必要ですが、ケアにあたるスタッフも気をつけていかなければいけません。

 

3.こんな人がPTSDの二次受傷になりやすい

精神的苦痛が大きかった方や患者さんと接する時間の多さが関係します。テレビの影響も大きいという報告されています。

ではこの二次受傷を受けやすいのは、どのような人たちなのでしょうか。具体的にあげてみます。

  • 重大な犯罪被害者の治療に当たる医療関係者
  • 死に至るような交通事故に遭遇した子どもの両親
  • 戦争を取材するために自ら戦場に身を投じたジャーナリスト
  • 犯罪や災害被害者の調査・研究に当たる学者
  • 悲惨な事故や災害現場で救急にあたる救急隊員や消防士

このような人たちが二次受傷を受けやすいです。二次受傷を受けやすい要因としては4つあげられます。

  • 過去のトラウマ体験
  • 若い
  • 女性
  • 高ストレス

二次受傷の症状はPTSDと同じように、再体験(フラッシュバック)、回避、過覚醒などがあります。被害者の話に耳を傾けることによって、その場面が繰り返して再現されたり、悪夢となって夢の中に現れます。いろいろなことに過敏になって小さなことにも驚いたり、家族の安全がひっきりなしに気になるといった症状が認められます。

災害派遣医療チーム(DMAT)で行った研究では、感情が揺さぶられやすく精神的な苦痛が大きな方がPTSD症状を起こしやすいことが確認されました。これは考えてみると当たり前の結果ですね。この報告で興味深いのは、災害関連のテレビをみた時間が4時間を超えた方はPTSD症状を起こしやすいという結果がでたことです。テレビという映像メディアの影響の大きさを考えさせられます。

 

4.PTSDの二次受傷はどう予防すればいいのか?

自分の抱える葛藤を解消し、理解者を確保しながら、公私のバランスをとっていく必要があります。

二次受傷を最も受けやすいのは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)患者さんの治療に当たる医療関係者です。

こうした人たちにとって二次受傷は避けることのできない課題と言えます。つまり、彼らにいつこれが起こっても不思議ではないのです。したがって心的外傷治療にあたる方は、予防策をしっかりともっておきましょう。

患者さんの心的外傷と向き合うためには、自分自身に何らかの未処理のトラウマや葛藤をかかえていてはいけません。これが残っていると、患者さんの気持ちによってしまうことがあります。まずは自身の内面に対して整理をつけなければいけません。

また、心的外傷の治療は一人ではなく、多くの人と連携して行わなければいけません。同じ医療者同士でのサポートだけでなく、異業種でも構いません。心的外傷治療に対する理解者がいることで、自分の心を維持できるのです。

予防策としてもう一つ忘れてはいけないことがあります。それは公私のバランスに気をつけることです。外傷ストレス障害だけをひたすら診るということは避けなければいけません。気分転換をうまくはかって、私生活を充実させていく必要があります。そのためには仕事以外の時間を十分にとることが必要です。

 

まとめ

東日本大震災の被災者では、精神的なケアはまだまだ必要です。

患者さんのケアを通して追体験することで、PTSDを二次受傷することがあります。

二次受傷の受けやすさは、精神的苦痛が大きかった方や患者さんと接する時間の多さが関係します。テレビの影響も大きいと報告されています。

予防するためには自分の抱える葛藤を解消し、理解者を確保しながら、公私のバランスをとっていく必要があります。

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