ノロウイルスは牡蠣のせい?原因を知ろう!
-
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
みなさんは、「冬の生牡蠣は危険」ということをお聞きになったことはありますか?
生牡蠣は、冬の胃腸炎の原因であるノロウイルスに汚染されていることがあるからです。生牡蠣だけでなく、二枚貝といわれる貝にはノロウイルスが潜んでいます。ですから、冬には貝の生食は控えなければいけませんね。
どうして牡蠣にノロウイルスが潜んでしまうのでしょうか?牡蠣でとられている対策についてもお伝えしていきます。
1.ノロウイルスの原因とは?
人に病原性があるノロウイルスは、人の腸管でしか増殖しません。
冬になるとノロウイルスが流行します。このノロウイルスですが、牡蠣が原因とよくいわれています。確かにノロウイルスに汚染された牡蠣は冬に多くなります。ですが、ノロウイルス自体は人の腸管でしか増殖ができないのです。ですから、貝の中でノロウイルスが増殖することはなく、ただ汚染されてしまっているだけなのです。貝だけでなく、他の動物にノロウイルスを暴露しても感染しません。
ノロウイルスは人の腸管でしか増殖しないので、感染者の便が原因となります。下水として流され処理されますが、ノロウイルスは完全に除去できません。このノロウイルスに侵された処理水が河川に流されていくのです。これを河川で生息している貝がプランクトンと一緒に飲みこんでしまうのです。このためノロウイルスは、牡蠣をはじめとした二枚貝(貝殻が二枚あるアサリやしじみ)に潜んでいます。
このようにして、冬はノロウイルスの患者さんが増加するにつれて、ますます流行が広がっていきます。下水→河川→貝→人→下水というように循環するのです。
2.とくに牡蠣がノロウイルス食中毒の原因となる理由とは?
牡蠣は非常に食欲が旺盛で、牡蠣の中腸線にノロウイルスが濃縮して蓄積されます。
牡蠣は非常に食欲が旺盛です。1日に10億個以上ものプランクトンを食べると言われていて、このために大量に海水を吸引しています。牡蠣1個で、1時間に10~20リットルもの海水をろ過しています。
このため、牡蠣は海水の影響を強く受けます。牡蠣の消化器官のうち中腸腺という部分に、海水中のノロウイルスが濃縮されて蓄積されていきます。
河川などが流れ込んでいる海域の牡蠣では、ノロウイルスの検出される率が明らかに高くなっています。
ノロウイルスに侵されている貝は牡蠣だけではありません。シジミやホタテの方がノロウイルスの検出率は高いという報告もあります。ですがシジミはたいていが加熱されてお味噌汁で使われます。ホタテは生で食べるものは貝柱が多く、ノロウイルスを含む消化器官を食べません。このため、食中毒の原因にならないのです。
3.牡蠣の感染を防ぐ対策とは?
食品に流通させる際に、生食用と加熱加工用に分けられています。できるだけ加熱することがすすめられています。
よくスーパーの鮮魚コーナーにいくと、生食用と加熱加工用が分けられているかと思います。牡蠣を流通させる際にも、生食用と加熱加工用に分けられています。
何を基準に分けられているかというと、海水に含まれる大腸菌の量で決められています。大腸菌は下水にたくさん含まれるので、加河口では高値となります。100mlに含まれる大腸菌の数を調べることで、水質を評価していきます。通常の水産物では、1000個以下では生食用とされています。牡蠣の生食用はより厳格な基準が設けられていて、70個以下とされています。
しかしながら、生食用とされた牡蠣においても12.9%、加熱加工用に至っては24.4%にノロウイルスが検出されています。
牡蠣からのノロウイルス感染を防ぐためには、加熱をすることがもっとも効果的です。85℃以上で90秒以上の加熱をすると消毒できます。生で食べるのはグッと我慢をして、加熱しておいしく食べるようにしましょう。
4.最近は食品取扱者による二次感染が多い
牡蠣の食中毒よりも、食品取扱者による二次感染が増加しています。1回の食中毒での感染者も増加して、大型化しています。
ノロウイルスの感染の原因は、少しずつ変わりつつあります。以前は、牡蠣などの二枚貝による食中毒が中心でした。冬は牡蠣が危ないという認識が少しずつ出てくる中で、減少傾向にあります。患者さんの数では10~15%となっています。
最近は、食品取扱者による二次汚染による感染が増加してきています。不特定多数のお客さんが感染し、家庭に持ち帰って感染を広げてしまいます。このため1回の食中毒での感染者も増加し、大型化しています。患者さんの数では50%ほどとなっています。
ノロウイルスは、症状がよくなってもウイルスの排泄がしばらく続いてしまいます。また、不顕性感染といって、ノロウイルスに感染していることすら気づかないこともあります。調理される方などの食品取扱者を通して、ノロウイルスが広がってしまうのです。
消費者側としては防ぎようがない部分なので、飲食に関係される方の意識が重要となります。手洗いの徹底し、下痢や嘔吐の症状がある方を無理せず休ませるようにしましょう。
まとめ
人に病原性があるノロウイルスは、人の腸管でしか増殖しません。
牡蠣は非常に食欲が旺盛で、牡蠣の中腸線にノロウイルスが濃縮して蓄積されます。
食品に流通させる際に、生食用と加熱加工用に分けられています。できるだけ加熱することがすすめられています。
牡蠣の食中毒よりも、食品取扱者による二次感染が増加しています。1回の食中毒での感染者も増加して、大型化しています。
投稿者プロフィール
-
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
最新の投稿
- フリバス2020年7月30日フリバス錠・OD錠の副作用と安全性について
- フリバス2020年7月30日フリバス錠・OD錠の効果と特徴について
- 頭痛2017年4月9日痛み止めで逆に頭痛?薬物乱用頭痛について
- エビリファイ2017年4月8日アリピプラゾール錠の効果と副作用