オルベスコの効果と特徴
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
オルベスコは、2007年に帝人ファーマ社より発売された吸入ステロイド薬となります。
吸入ステロイドは喘息の発作が起きたときに吸うものではなく、喘息の発作が起きないようにコントロールするために吸入するものです。オルベスコはシクレソニドというステロイドが含まれています。
成人で喘息と診断された方は、まずはβ2刺激薬と吸入ステロイドの合剤から治療することが多いです。
それに対して小児では、症状がひどくなければβ2刺激薬は使われません。このため単剤の吸入ステロイドであるオルベスコは、小児の方が使うことの方が多いかもしれません。
オルベスコは、エアゾールというスプレータイプで吸入します。他の吸入ステロイドと違うのは、1日1回の吸入で治療が可能であるということです。
ここでは、ステロイド吸入薬であるオルベスコの効果と特徴について詳しくお伝えしていきます。
1.オルベスコの効果の特徴
<メリット>
- スプレーで吸いやすい
- 1日1回の吸入が可能
- ステロイド単剤のためβ2刺激薬の副作用がない
<デメリット>
- 喘息発作に対して即効性はない
喘息を語るうえで、ステロイドは切っても切れないお薬になりました。喘息で多くの方が1950年までは亡くなっていましたが、この吸入ステロイドが登場してからは多くの命が救われています。
とはいっても、吸入ステロイドは発作を止めるお薬ではありません。発作を止める時には点滴や内服などで大量のステロイドを投与する必要があります。吸入ステロイドは発作が起きないようにするために予防投与するためのお薬です。オルベスコは、喘息を予防する吸入ステロイドのお薬になります。
オルベスコの良い点としては、1日1回の吸入で済む点です。これは他の吸入ステロイドにはない唯一の特徴です。ただし1回の吸入は400μgまでが最大ですので、1日投与量が800μgまで増量すると2回吸う必要が出てきます。
もしオルベスコ800μgでも症状がコントロールできない人は、β2刺激薬の合剤に切り替える必要があると思います。1日1回の吸入にこだわりたい人は、グラクソスミスクライン社が発売しているレルベアが1日1回吸入ですみます。
最近では吸入ステロイドとβ2刺激薬の合剤が使われることも多いですが、吸入ステロイド単剤であるオルベスコの良い点としては、β2刺激薬の副作用である手のふるえや動悸が出現しないことです。もしこれらの症状が気になる方は、合剤からオルベスコに切り替えるのを考慮するのも良いと思います。
2.オルベスコの剤形の種類と用法とは?
オルベスコディスカスは、軽症から中等症の喘息の人に適応がある吸入薬です。
オルベスコは、エアゾールというスプレー式のタイプの吸入薬です。
オルベスコは、
- オルベスコ50μg112吸入用
- オルベスコ100μg112吸入用
- オルベスコ100μg56吸入用
- オルベスコ200μg56吸入用
があります。オルベスコ100μgだけ、112と56の吸入があります。
投与方法としては、成人にはオルベスコ100~400μgを1日1回吸入投与します。なお、症状により適宜増減しますが、1日の最大投与量は800μgです。800μgを投与する場合は、朝・夕の1日2回に分けて投与します。
つまりオルベスコ200μgを朝・夕2回ずつ計4回吸入します。こうなると56吸入では14日分(半月)しか持たないため、注意が必要です。
一方で、小児にはオルベスコ100~200μgを1日1回吸入投与します。なお、症状がうまくコントロールされている場合は、50μg1日1回まで減量できます。小児の場合は、どの量でも1日1回で済ますことができるお薬です。
そのためオルベスコは、小児に多く処方されているお薬になります。スプレー式のタイプのお薬なので、ドライパウダーが上手く吸えない小さなお子さんに広く使われるお薬です。スプレー式でもうまく吸えない方は、スペーサーという補助器具を使うことができます。
オルベスコは、しっかりと吸入できないと効果が十分に出ないお薬です。帝人ファーマのサイトで、ぜひ吸入方法を確認してみてください。こちらのサイトでも、主に小児を対象に説明されていることから、やはり小児に処方されやすい薬だと思います。
3.オルベスコの適応は?
オルベスコは、軽症の喘息に適応があるお薬です。
喘息のガイドラインでは、最も軽症な方は吸入ステロイドのみで加療するようになっています。その次はステロイドの吸入量を増やすとともに、
- β2刺激薬の吸入
- 抗ロイコトリエンの内服
- テオフィリンの内服
の併用を指示しています。そのためオルベスコ50・100・200エアゾールは、吸入ステロイド単剤で症状が抑えられている軽症な方に適応があります。
しかし成人の喘息の治療としては、β2刺激薬とステロイドの合剤から使っていくことが一般的です。症状が落ちついてきたら徐々に減量することが多いです。
喘息は咳や喘鳴、呼吸困難など非常に苦しい疾患であり、命にもかかわる病気です。そのため喘息の炎症の炎を最低限の水で済ませようとすると、一気に被害が拡大してしまう可能性があります。
ですから、合剤で長期間コントロールできている方に限って、オルベスコにステップダウンすることができます。
そのためオルベスコは、どちらかというと小児の方で多く使われるお薬です。小児の場合は年齢によって治療方針が若干違いますが、子供はなかなか理解できないので症状がない時に吸入を続けることができません。このため、まず内服薬が処方されることが多いです。それでも喘息のコントロールがつかない場合、吸入ステロイドが適応になります。
オルベスコは1日1回しか吸入しなくてよいというメリットがあるため、小児に広く使用されています。一方で小児でオルベスコが処方されているということは、少なくとも医師は軽症ではないと判断していることになります。
絶対に自己中断しないように、保護者の方は注意して治療しましょう。
4.オルベスコの薬価は?
オルベスコは、ステロイド単剤で薬価が低めです。ただし、投与量が増えて吸入回数が増えると費用は倍増します。
オルベスコディスカスの薬価は、以下のようになっています。
商品名 | 吸入回数 | 薬価 | 1日薬価 | 1日薬価(3割負担) |
オルベスコ50 | 112 | 1848.7 | 16.5 | 4.9 |
オルベスコ100 | 56 | 1888 | 33.7 | 10.1 |
オルベスコ100 | 112 | 2378.4 | 21.2 | 6.3 |
オルベスコ200 | 56 | 2376.3 | 42.4 | 12.7 |
※2016年5月22日時点での薬価です。
オルベスコ50は112吸入となりますが、オルベスコ200は56吸入しかありません。オルベスコ100は、56も112吸入もあります。1日1回吸入からになりますので、初期用量では112吸入は約4か月、56吸入は2か月になります。
オルベスコ100で病態が安定している方は、56より112吸入の方が1回当たりの値段も安いですし本数も少なくて済みます。
またオルベスコ200で効果不十分な人は、400・800と増えていきますが、吸入回数が増えるということは1回当たりの値段も25.4円・50.8円と倍増していくことに注意が必要です。
5.オルベスコが向いている人とは?
- 喘息の吸入薬を1回で済ませたい方
- 喘息の治療が吸入ステロイドで安定している方
現在の成人の喘息治療は、アドエアやシムビコートなどのβ2刺激薬とステロイドの合剤から治療することがほとんどです。
症状が安定している場合は、オルベスコなどの吸入ステロイドだけに薬を減らしていくようにガイドラインでは記載されています。しかしアドエアやシムビコートで症状が安定しているのに、あえてβ2刺激薬を減らす必要があるのか、かなり意見が分かれています。
喘息発作の回数が増えれば増えるほど、喘息が難治性になることが近年報告されています。そのため治療をどんどん削っていくメリットより、デメリットの方が大きい印象があります。
一方でこれは医師側の意見です。毎日治療するのは患者さんなので、患者さんが継続できる吸入薬が必要になります。その一つの大きな問題として、毎日吸入しなければいけない手間が問題になります。特に1日2回の吸入だと、夕方は忙しくて吸い忘れてしまうという人も多いと思います。
1日1回の吸入で済むステロイド単剤の吸入薬は、現時点ではオルベスコのみになります。そのため朝だけ吸入で済ませたい方は、オルベスコが積極的に使用されて良いと思います。
もし違う吸入薬をお使いの方でオルベスコに変更したい方は、自分の症状で変更できるか医師に確認してみましょう。
まとめ
- オルベスコは、ステロイドの単剤の吸入薬になり、喘息の治療薬となります。
- オルベスコは1日1回吸入することで治療します。1日1回の吸入で済むステロイド単剤はオルベスコのみです。
<メリット>
- スプレーで吸いやすい
- 1日1回の吸入が可能
- ステロイド単剤のためβ2刺激薬の副作用がない
<デメリット>
- 喘息発作に対して即効性はない
<向いている人>
- 喘息の吸入薬を1回で済ませたい方
- 喘息の治療が吸入ステロイドで安定している方
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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