イナビルに異常行動はみられるのか?
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
インフルエンザ治療薬としてはタミフルが有名ですが、タミフルを服用した10代の患者さんが衝動的に飛び出して事故死してしまうという異常行動が報告されました。
タミフルによる異常行動は大々的に報道されたので記憶されている方もいらっしゃると思いますが、同じインフルエンザ治療薬のイナビルでは異常行動は問題にならないのでしょうか?
ここでは、インフルエンザ吸入薬として広く使われているイナビルの異常行動について詳しくお伝えしていきます。
1.インフルエンザの治療薬での異常行動とは?
インフルエンザの治療薬による異常行動が注目されたのは、タミフルによる異常行動がきっかけでした。ここでは、タミフルによる異常行動について詳しくみていきましょう。
1-1.タミフルで異常行動を認めた背景
タミフルを服用した10代の患者さんが、異常行動によりマンションより転落死した事故がおこりました。タミフルが原因かははっきりしていませんが、10代では慎重投与となっています。
タミフルの副作用で最も注目されているのが異常行動です。
2007年にタミフルを服用した10代の患者さんが飛び降り自殺したことを契機に、複数の10代患者さんの異常行動による飛び降りを認めた事が始まりです。色々な研究がされましたが、その後はっきりした原因がわからず、本当にタミフルで異常行動が起きるかどうかは未だに結論出されておりません。
しかしながら、「異常行動はタミフルのせい!」とは言い切れません。というのも、インフルエンザ自体でインフルエンザ脳症となり、異常行動が起こることがあるのです。ですから、タミフルを服用していて異常行動が認められたときは2つの可能性があります。
- タミフルの副作用の可能性
- インフルエンザが重症化して脳症にまで発展してしまった可能性
前者であればタミフルは服用するべきではないし、後者であればむしろ積極的に服用するべきです。どっちとも結論がつかないため、10代にはタミフルは慎重投与という扱いになっています。
タミフルの異常行動について詳しく知りたい方は、「タミフルで恐れられる異常行動とは?」をお読みください。
1-2.異常行動とはどんな行動か?
他の人から見て意味不明な言動や行動とされています。しかし、実際には色々な行動がみられるとされています。
異常行動って怖いなぁってイメージが先行しますが、具体的にはよくわからないですよね。厳密な定義はないですが医療の現場では以下の6つの行動を示します。
- 人が正しく認識できない。(両親を見ても知らない人という。)
- 食べ物と食べられるか物の判別ができない。(自分の手を噛んでしまう。)
- 幻視、幻覚を訴える。(アニメのキャラクターや動物が見える。)
- ろれつが回らない。(意味がよくわからない言動を発したり、うなっている。)
- 恐怖感情を訴える。(突然怖がり出す。)
- 急に怒り出す。泣き出す。(急に走り出したり、物を壊しだす。)
10代に異常行動が認められたことから子供だけ注意をすればよいと思い込みがちですが、大人でも異常行動は報告されています。また異常行動は、後から聞いても覚えてないと答えることが多いです。
寝てる時に急に異常行動を起こすこともあります。寝てるから安心だと思っても、できるだけ目を離さないようにしましょう。
2.イナビルでは異常行動が起きないのか?
イナビル投与後で異常行動が認めた症例は存在します。その中では飛び降りによる死亡事故も存在します。タミフルじゃなくてイナビルだから大丈夫と考えないようにしましょう。
イナビルが投与された患者さんでも、わずかながら異常行動が確認されました。発売前の10代を対象とした調査結果では、イナビル投与後に確認された異常行動・言動は5.0%(6/120例)、9歳以下を対象とした調査結果では2.4%(3/123例)でした。この時の調査では、異常行動の内容としては脈絡のない会話や大声で泣き出す等の行動が中心でした。
また、イナビルの市販後調査(調査期間:2010年11月~2011年4月)では、異常行動・言動の有害事象は、40例(1.13%)に認められました。その中で、人に危害が加わるような異常行動は7件でした。
2011/12年シーズンでは、10代の男性がイナビル吸入後、飛び降りによる亡くなったケースも確認されています。10代ではタミフルが慎重投与のため、イナビルやリレンザが処方されることが多いです。しかしながらこの吸入薬でも、飛び降りによる死亡事例があるので注意が必要です。
3.イナビルで異常行動が起きる原因とは?
なぜ異常行動が起きるか分かっていないのが現状です。イナビルもタミフルと同じノイラミニダーゼ阻害薬であることから、注意が必要です。
日本で発売されている、イナビル・タミフル・リレンザ・ラピアクタは全てノイラミニダーゼ阻害薬です。それぞれ投与方法も投与期間も違うお薬ですが、作用機序としては4剤ともインフルエンザウイルスの放出を阻害するお薬です。
このため異常行動の原因は、
- インフルエンザに作用するノイラミニダーゼ阻害自体が原因
- それぞれ個別に含まれてる添付剤が原因
- そもそも薬の副作用ではなくインフルエンザ自体の症状が原因
はっきりとした答えはどこにもありませんが、現在では、インフルエンザ自体の症状で異常行動が起きているのでは?という説が有力です。インフルエンザが進行すると、インフルエンザ脳症が発症して異常行動をきたすことがあるのです。
まとめ
- タミフルで10代の飛び降り事故が起きたため慎重投与になったことが、インフルエンザの治療薬と異常行動の関係の始まりです。
- イナビル投与後で異常行動が認めた症例は存在します。その中では飛び降りによる死亡事故も存在します。
- インフルエンザ薬による異常行動がなぜ起きるかはっきりとは解明されておりません。
- インフルエンザ脳症で異常行動が認めることがあります。
タミフルでなければ異常行動が起きないとは断定できず、病状が完治するまではいかなる時も起こりえると考えておきましょう。
異常行動を認める場合は、イナビル投与日および翌日に多いといわれています。10歳前後のお子さんに多いと報告があるので、お母さんはできるだけインフルエンザの時はそばにいるようにしましょう。
睡眠中に突然異常行動を認めることがあるので、寝てるから大丈夫と油断するのは危険です。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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