セルシン錠の効果と強さ

アイコン 2015.9.19 セルシン・ホリゾン

セルシンは、1964年に発売されたベンゾジアゼピン系抗不安薬です。50年以上前に作られたお薬ですが、そのバランスのよさと効果の幅の広さから、今でもよく使われています。

抗不安薬は安定剤とも呼ばれたりしますが、不安感や緊張感を和らげてくれるお薬です。リラックスさせるお薬なので、眠気やふらつきなどの副作用には注意をしなければいけません。

セルシンは抗不安作用・筋弛緩作用・催眠作用・抗けいれん作用、いずれもしっかりと期待できるお薬です。そのかわり、副作用にも注意が必要です。

セルシンの特徴としては、注射剤があることがあげられます。抗不安薬の注射剤には、セルシンしかありません。内服できない状態の場合、セルシンは使いやすいお薬になります。

ここでは、セルシンの効果について詳しくみていきたいと思います。他の抗不安薬とも比較しながら、どのような方にセルシンが向いているのかを考えていきましょう。

 

1.セルシンの作用の仕組み(作用機序)

GABAの働きを強めて、脳の活動を抑えます。

セルシンの効果はどのようにしてでてくるのでしょうか?ここでは簡潔にご説明していきたいと思います。

セルシンはベンゾジアゼピン受容体に作用します。これによってGABAの働きを強めて脳の活動を抑えることで効果を発揮します。

「GABAってなんか聞いたことあるぞ?」って方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があります。

 

セルシンがベンゾジアゼピン受容体にくっつくと、GABAがGABA受容体にくっつきやすくなります。GABAが脳内で作用すると、脳の活動が抑えられて不安感や緊張感が和らぐのです。

もう少し詳しくみると、ベンゾジアゼピン受容体にはω1とω2の2種類があります。セルシンがω1受容体に作用すると、催眠作用や抗けいれん作用が認められます。ω2受容体に作用すると、抗不安作用と筋弛緩作用が認められます。

このためセルシンでは、脳の活動を抑えることで4つの作用があります。

 

2.セルシンの効果と特徴

セルシンは、脳の活動を抑えることで落ち着かせてくれるお薬です。4つの作用の強さは、

となっています。これをふまえて、セルシンの特徴をメリットとデメリットに分けてみていきましょう。

 

2-1.セルシンのメリット

セルシンは、薬を服用するとすぐに効果が期待できます。抗不安作用もしっかりとしているので、即効性が期待できるのです。不安に対してはSSRIなどの抗うつ剤も効果がありますが、効果が出てくるのが遅いので時間がかかってしまいます。

セルシンの作用時間はとても長いです。セルシンの血中濃度は2段階に変化して、いったん血中濃度のピークから急激に低下します。その後、ゆっくりと身体からぬけていくのです。このような変化なので、セルシンを服用しても薬効の実感としてはそこまで長くありません。しかしながら、一定量が残って身体にたまっていくので、不安になりにくい土台ができていきます。

 

セルシンには抗不安作用だけでなく、催眠作用や筋弛緩作用、抗てんかん作用があります。この作用がいずれも強いです。筋弛緩作用が強いので、身体の緊張が強い時に有効です。催眠作用もありますので、不安が強くて眠れない方には睡眠のサポートになります。

その中でもセルシンで特徴的なのは、抗けいれん作用の強さです。「てんかん」にも適応が通っているお薬です。セルシンには即効性があるので、今まさに痙攣がおきているような時には、まずはセルシンの注射や同じ成分の座薬などが使われます。

 

抗不安薬にはいずれも依存性があります。セルシンは、作用時間の長さから依存性が少ないお薬です。他の抗不安薬で依存になってしまった方は、セルシンに置き換えてやめていくこともあります。抗不安薬のほとんどは、処方数が30日までに制限されています。セルシンは依存性が少なく、てんかん治療としてもつかわれることから、90日まで処方ができます。

セルシンは、発売から年月もたっているので、たくさんの剤形が発売されています。抗不安薬の注射剤は、セルシンしかありません。坐薬やシロップ、粉薬なども発売されています。自分にあったお薬のタイプを選ぶことができます。

 

2-2.セルシンのデメリット

セルシンは、バランスよくいろいろな作用があるお薬です。これが場合によっては余計な作用となってしまい、副作用となってしまいます。さらに、セルシンは作用時間が長く薬の効果が残りやすいので、注意してください。

セルシンは筋弛緩作用が強いです。筋弛緩作用が強く働きすぎてしまうと、身体に力がうまく入らなくなってふらついてしまいます。また、催眠作用も強いです。不安感や緊張が強い時は眠気を感じることは少ないかと思います。薬をのんで気持ちが落ち着くと、急に眠気が強く出てくることがあります。

セルシンでは眠くなる方向に作用しますが、睡眠の質を落としてしまう傾向にあります。レム睡眠やノンレムの深い睡眠を減らしてしまい、ノンレムの浅い睡眠を増やしてしまいます。このため、睡眠の質が落ちてしまって熟眠感が薄れてしまうことがあります。

セルシンの副作用について詳しく知りたい方は、「セルシンの副作用(対策と比較)をお読みください。

 

3.セルシンの持続時間と効き方

セルシンは最高血中濃度到達時間が1時間、半減期が57時間の長時間型抗不安薬です。効果の持続時間は4~12時間ほどです。抗不安効果は中程度で、筋弛緩作用・催眠作用・抗けいれん作用が強いです。

セルシンの血中濃度の変化は2段階になっています。まずはどのような血中濃度の変化をするのか、グラフでみてみましょう。

セルシン/ホリゾンの血中濃度変化から本当の半減期を考えてみましょう。

このような変化をするのには、セルシンの脂への溶けやすさが関係しています。セルシンを服用すると、かなりのお薬が身体の脂肪に取り込まれてしまいます。脂肪に取り込まれなかった薬の成分が血中濃度のピークを作った後、血中濃度が急速に減少していきます。

セルシンの血中濃度が低下してくると、脂肪から血液中に少しずつ薬が戻っていきます。それが長く続くので、血中濃度はゆっくりと減っていくのです。

 

セルシンを服用すると、およそ1時間で血中濃度がピークになります。その後3時間ほどで急激に減っていきます。4時間ほどすると下げ止まり、そこからはゆっくりと減っていきます。トータルで考えると、血中濃度が半分になるまでに57時間かかります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

セルシンでは、「最高血中濃度到達時間1時間・半減期57時間」となっています。

服用してから1時間して効果のピークがくるので、即効性が期待できる抗不安薬です。半減期は長いですが、効果の実感は前半の山にあります。ですから4時間程度に感じる方が多いでしょう。長く効果を感じる方でも12時間ほどかとおもいます。このため、効果の持続時間は4~12時間です。

 

後半の台地の部分は、毎日服用していると身体にたまっていきます。セルシンを毎日服用したときの血中濃度の変化を考えてみましょう。

薬を飲み続けると、定常状態となります。その様子を図であらわしました。

飲み続けていると、あるところで均衡状態ができます。この状態を定常状態といいます。セルシンでは2週間ほど服用を続けると、定常状態に達します。このように定期的に飲み続けていくと、不安になりにくい土台ができあがります。

このようなお薬なので、頓服としても効果が期待できますし、定期的に服用して1日を通してカバーしていくこともできます。セルシンのような作用時間の抗不安薬は、「長時間型」に分類されます。

実際の効果としては、服用して15分~30分くらいで出てきます。効果のピークは1時間くらいしてやってきて、効果はしばらく続きます。

効果の持続時間は個人差があり、薬が効きやすい方と効きにくい方がいらっしゃいます。セルシンの分解に必要な肝臓の酵素(CYP2C19)を持っていない方が、日本人には2割ほどいます。このような方には効果が出過ぎてしまいます。このため、セルシンの効果の持続時間は、およそ4~12時間といったところになります。

 

セルシンの効果の強さとしては、

となっています。

用量は4~15mgとなっていて、最大20mgまで使える抗不安薬です。

 

4.セルシンと他剤の比較(効果と副作用)

セルシンの作用時間は長いです。他の抗不安薬と比較しても、全体的に作用が強い点が特徴です。

抗不安薬には、さまざまな種類が発売されています。比較してみてみましょう。

抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。

よく使われるベンゾジアゼピン系抗不安薬で、この2つのポイントを比較してみましょう。

代表的な抗不安薬の効果や作用時間について比較した一覧表です。

まずは作用時間によってタイプがわかれています。作用時間は、ピーク(最高血中濃度到達時間)と半減期をみて推測していきます。

作用時間は短時間作用型~超長時間作用型までの4つに分類できます。

短時間~中間型に関しては、即効性を期待して使うことが多いです。一方で超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ち着かせる土台をつくるようなお薬です。長時間型はその中間に位置していて、即効性も期待できますし、飲み続けていくことで不安を落ち着かせていくこともできます。

作用時間による副作用の違いは、

といえます。

 

患者さんの不安の状態から、どの作用時間の抗不安薬が適切か考えていきます。その上で、作用の強さを比較して選んでいきます。

短時間型では、デパス>>リーゼ>グランダキシンです。デパスは催眠作用が強く、睡眠薬にも分類されることがあります。また、筋弛緩作用も強いので、肩こりなどにも使われます。

中間型では、レキソタン>ワイパックス≧ソラナックス/コンスタンです。いずれも抗不安効果が強く、不安の発作にも使われます。レキソタンは筋弛緩作用が強いです。

長時間型では、リボトリール/ランドセン>セパゾン>セルシン/ホリゾンです。セルシン/ホリゾンには注射があります。服薬ができない時は、筋肉注射が有効です。

超長時間型では、レスタス>メイラックスです。このタイプは非常に作用時間が長いです。このため、副作用が一度出てしまうと抜けるのに時間がかかってしまいます。ですから、副作用の穏やかなメイラックスの方がよく使われています。

 

この他にも、抗不安薬はたくさん発売されています。頻度はかなり減りますが、服用されている方もいらっしゃるかと思います。それぞれのお薬の特徴を表にまとめましたので参考にしてください。

マイナーな抗不安薬の比較

 

5.セルシンが向いている人とは?

セルシンは、4つの作用にバランスよく効果が期待できるお薬です。不安感だけでなく身体の緊張が強い方、睡眠状態が不安定になっている方には効果が期待できます。セルシン1剤でいろいろな症状が改善されていく可能性があります。

即効性も期待できるので、頓服としても使うことができます。ただ、セルシンは薬が身体に残りやすいお薬です。頓服を続けて使うと、眠気やふらつきなどの副作用が出てしまうことがあります。頓服として使う場合は、そこまで頻繁に頓服を服用しない方の方がよいです。

また、セルシンは依存性が低いお薬です。作用時間が長く、抗不安作用がそこまで強くないためです。このため、他の抗不安薬で離脱症状が出てしまってなかなか減薬できない時に、セルシンに置き換えてみることがあります。セルシンに置き換えた後に少しずつ減量していくと、スムーズにやめられることが多いです。

 

まとめ

セルシンの作用の特徴は、

セルシンのメリットとしては、

セルシンのデメリットとしては、

セルシンが向いている方は、