セルシンの半減期と作用時間

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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セルシンは古くからある抗不安薬ですが、幅広い効果が期待できます。抗不安作用だけでなく、催眠作用や筋弛緩作用、抗けいれん作用もあります。1剤でいろいろな効果が期待できるのですが、よけいな働きをしてしまうと副作用になるので注意が必要です。

セルシンの作用時間や効き方は、半減期から考えることができます。セルシンは最高血中濃度到達時間が1時間、半減期が57時間です。セルシンは即効性が期待でき、作用時間もとても長いです。このため、不安が強い時に頓服としても有効ですし、毎日服用して不安を和らげていくこともあります。

ここでは、セルシンの作用時間と半減期について詳しく見ていきたいと思います。

 

1.薬の半減期とは?

薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

薬を服用した時の、血中濃度の変化を図に表わして、Tmaxと半減期を説明します。

薬を飲み始めると、直後は血中濃度がどんどんと上がっていきます。薬の吸収がおわると、薬は代謝されて身体から出ていきますので、少しずつ血中濃度が減少していきます。身体が薬を代謝できるスピードは決まっていますので、どれくらいの量であっても一定のスピードで身体から抜けていきます。このため、薬の量が半分になるまでにかかる時間は、内服量にかかわらず一定になります。

この血中濃度が半分になるまでにかかる時間を半減期(T1/2)といいます。T1/2が短いほど、薬の切れ味がよく身体からすぐになくなるといえます。反対にT1/2が長いほど、薬が身体に蓄積しやすいといえます。

薬の効き方を考えるにあたって、もう1つのポイントがあります。最高血中濃度到達時間(Tmax)です。これは文字通りで、血中濃度がピークに達するまでの時間です。効果がでるまでのスピードに関係しています。Tmaxが短いほど、抗不安薬の効果がすぐに表れることを意味しています。

 

2.セルシンの持続時間と効き方

セルシンは、最高血中濃度到達時間が1時間、半減期が57時間の中間型抗不安薬です。即効性も期待できますし、服用を続けて不安になりにくい土台をつくることもできます。

セルシンを服用するとどのように血中濃度が変化するでしょうか?

セルシンの血中濃度の変化は2段階となっています。これには、セルシンの脂への溶けやすさが関係しています。

セルシン/ホリゾンの血中濃度変化から本当の半減期を考えてみましょう。

セルシンを服用すると、かなりのお薬が身体の脂肪に取り込まれてしまいます。脂肪に取り込まれなかった薬の成分が血中濃度のピークを作った後、血中濃度が急速に減少していきます。

セルシンの血中濃度が低下してくると、脂肪から血液中に少しずつ薬が戻っていきます。それが長く続くので、血中濃度はゆっくりと減っていくのです。

 

セルシンを服用すると、およそ1時間で血中濃度がピークになります。その後3時間ほどで急激に減っていきます。4時間ほどすると下げ止まり、そこからはゆっくりと減っていきます。トータルで考えると、血中濃度が半分になるまでに57時間かかります。

このため、「セルシンの最高血中濃度到達時間は1時間、半減期は57時間」となっています。

 

このような血中濃度の変化をするので、セルシンは2つの効き方があります。

  • 即効性のある不安を抑える効果(前半の山)
  • 飲み続けていくことで、不安になりにくい土台をつくる効果(後半の台地)

 

不安が強い時に頓服として使っても効果が期待できます。最高血中濃度到達時間が1時間と短いため、服用して15分~30分くらいで効果がでてきます。効果のピークは1時間くらいしてやってきて、4時間ほど続きます。長くても12時間ほどでしょうか。ですから、セルシンの効果時間は4~12時間となります。

 

毎日セルシンを服用していると、薬が身体の中に少しずつたまっていきます。およそ半減期の5倍たつと安定した状態(定常状態)になるといわれています。このため、57時間×5=285時間すると安定していきます。およそ12日間になりますね。この状態では薬が常に効いている状態となるので、不安になりにくい土台ができます。

薬を飲み続けると、定常状態となります。その様子を図であらわしました。

このようなお薬なので、頓服としても効果が期待できますし、定期的に服用して1日を通してカバーしていくこともできます。このような作用時間の抗不安薬は「長時間型」に分類されます。

 

セルシンの効果について知りたい方は、
セルシン錠の効果と強さ
をお読みください。

 

3.抗不安薬の半減期・作用時間の比較

作用時間が短い薬は不安発作への即効性を期待し、長い薬は1日を通しての安定に期待します。セルシンは長時間型に分類されます。

抗不安薬には、さまざまな種類が発売されています。抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。

  • 作用時間(最高血中濃度到達時間・半減期)
  • 4つの作用への強さ(抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれん)

よく使われるベンゾジアゼピン系抗不安薬で、この2つのポイントを比較してみましょう。

代表的な抗不安薬の効果や作用時間について比較した一覧表です。

作用時間によってタイプがわかれています。作用時間は、ピーク(最高血中濃度到達時間)と半減期をみるとわかります。

作用時間は短時間作用型~超長時間作用型までの4つに分類できます。

短時間~中間型に関しては、即効性を期待して使うことが多いです。一方で超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ち着かせる土台をつくるようなお薬です。長時間型はその中間に位置していて、即効性も期待できますし、飲み続けていくことで不安を落ち着かせていくこともできます。

 

この他にも、抗不安薬はたくさん発売されています。頻度はかなり減りますが、服用されている方もいらっしゃるかと思います。それぞれのお薬の特徴を表にまとめましたので参考にしてください。

マイナーな抗不安薬の比較

4.セルシンの使い方

セルシン頓服→セルシン少量常用+セルシン頓服→セルシンしっかり常用という3段階のステップで使っていきます。

セルシンはこのように2つの効き方があります。

  • 即効性のある不安を抑える効果
  • 飲み続けていくことで、不安になりにくい土台をつくる効果

抗不安薬はできるだけ少なくしたいところです。このため3つのステップで使っていきます。

①不安が強い時だけセルシンを頓服
②セルシン少量常用+セルシン頓服
③セルシンしっかりと常用

 

できるだけお薬は少ないにこしたことはありません。まずは、不安が強い時だけ頓服でセルシンを使っていきます。頓服でつらい時だけ使うような形でしたら、お薬に依存してしまうこともありません。

不安が1日を通して強い場合は、1日を通して抗不安薬でカバーする必要があります。この場合、セルシンを少しずつ常用していきます。セルシンを常用すると、薬が身体にたまってより安定した効果が期待できます。セルシンを常用する場合の用量は4~15mgが目安です。最高で20mgまで使えます。できるだけ少ない量で常用し、不安が強い時だけ頓服という形をとります。

このようにセルシンが常用となる場合は、SSRIなどの抗うつ剤と併用していくことが多いです。抗うつ剤の効果はジワジワと出てくるので、効果が出てきたらセルシンから切り替えていきます。

 

まとめ

半減期とは、薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

セルシンは、最高血中濃度到達時間が1時間、半減期が57時間の長時間型抗不安薬です。即効性も期待できますし、服用を続けて不安になりにくい土台をつくることもできます。

セルシン頓服→セルシン少量常用+セルシン頓服→セルシン常用という3段階のステップで使っていきます。

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