妊娠中に使える鎮痛剤とは?

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妊娠をしていても、ケガをしてしまうこともあります。風邪をひくこともあります。そんな時、お薬はどうすればよいのでしょうか?市販薬を安易に使ってはいけません。中には赤ちゃんに影響を与える成分が含まれているものがあります。

ここでは、妊娠中に安全に使えると考えられている解熱鎮痛剤についてお伝えしたいと思います。

 

1.妊娠中に解熱鎮痛剤を使いにくい理由

胎児の動脈管が閉じてしまう可能性があります。

妊娠中に一番使われる可能性があるのは、解熱鎮痛薬ではないでしょうか?妊娠中の解熱鎮痛剤は慎重に使わなければいけないので、その理由からみていきましょう。

解熱鎮痛剤の効果には、プロスタグランジンという物質が大きく関係しています。

プロスタグランジンは身体に炎症が起きた時に作られて、熱を上げたり、痛みを増大させたりします。このプロスタグランジンを作るには、シクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素が必要になります。この酵素の働きを邪魔してしまえば、プロスタグランジンが作られなくなりますね。解熱鎮痛剤は、このようにして痛みや発熱を抑えるのです。

 

このプロスタグランジンですが、赤ちゃんにはとても大切な働きがあります。動脈管という血管を広げる働きをするのです。胎児の血液の流れは、産まれる前後では大きく異なります。

お腹にいる時は、へその緒を通してお母さんから栄養や酸素を受け取ります。うけとった血液は心臓の右側に戻ってきます。産まれた後でしたらそこから肺に血液が運ばれて酸素をうけとりますが、胎児には必要ないですね。そのまま送り出してしまう方が効率的ですので、心臓の右側から左側へショートカットするようになっています。これが動脈管です。

動脈管を広げるプロスタグランジンの働きを邪魔されてしまうと、血液の通り道が狭くなってしまいます。

 

ほとんどの解熱鎮痛剤では、プロスタグランジン阻害作用があります。このため、動脈管が収縮してしまい、ショートカットがふさがってしまいます。すると、肺に通常よりも多くの血液がいってしまうので、肺高血圧症という病気になってしまうことがあります。

また、もう一つ問題が起こります。本来は産まれてくるときに自然と動脈管は閉じるようになっていますが、上手く塞がらなくなってしまうのです。動脈管開存症となってしまって、産まれた後に動脈管を塞ぐ必要があります。この場合は反対に、インドメタシンなどの解熱鎮痛剤を使ったりもします。

 

これが妊娠時に解熱鎮痛剤を利用できない最大の理由です。他にも、腎臓に負担が大きいので、赤ちゃんがおっしこを上手くできなくなってしまうことがあります。赤ちゃんのおしっこは羊水ですので、羊水が少なくなってしまい、発育が遅れてしまうことがあります。

 

2.妊娠中での鎮痛剤の比較

カロナールやピリナジンが比較的安全と考えられています。妊娠初期はブルフェンやロキソニンも使うことはできますが、後期は控えましょう。

妊娠への鎮痛剤の影響を比較しました。

解熱鎮痛剤を服用していて、明らかに奇形が増えたという報告はありません。ですから、妊娠初期は比較的安全性が高いといえます。ですが、妊娠が進むにつれて、プロスタグランジン作用が問題になります。ですから、妊娠後期にはプロスタグランジン作用が弱いものだけ使うことができます。

この中で比較的安全性が高いのは、カロナールやピリナジンといったお薬です。どちらもアセトアミノフェンという成分でできています。腎臓への負担もないので、使いやすいお薬です。ただ、効果が弱いことは否めません。妊娠中の鎮痛剤としては、まずはこのお薬を使っていきます。

妊娠の初期でしたら、効果が強いものとしてブルフェンやロキソニンも使うことができます。催奇形性はありませんが、プロスタグランジン作用はあるので、妊娠が進むにつれて控えた方がよいです。ナイキサンは、妊娠の初期で使っていて口唇口蓋裂が増えるとの報告もあります。ですから、妊娠の初期は控えた方がよいです。

 

また、解熱鎮痛剤と同じ作用を持っているバイアスピリンやバファリン81といったアスピリンを低用量で使うと、血小板の働きが抑えられます。これによって血の塊ができるのを防ぎ、心臓や脳血管の病気を防ぎます。これらの抗血小板薬は、妊娠期間中に使うことができます。出産の1~2週前になったら、出血を防ぐために中止しましょう。なお、市販のバファリンはアスピリンではなく、アセトアミノフェンが主成分です。まったく別物と思ってください。

 

3.妊娠中に鎮痛剤入りの湿布は大丈夫?

一部の湿布剤では、妊娠後期は使用禁止となっています。ケトプロフェンの入っている湿布(モーラスや)は妊娠後期は避けましょう。

鎮痛剤の入った湿布や塗り薬、スプレーなどは大丈夫でしょうか?従来は比較的安全と考えられていましたが、現在は一部の湿布で妊娠後期には使用禁止になっています。

多くの湿布薬に関しては、通常の使用量であれば問題ありません。例えば、湿布を貼った場合、皮膚から血液の中に薬がうつるのは、同じ量を内服するのと比較して1%程度です。ごく微量には血液にまわってしまいますが、ほとんど無視できる程度ではあります。

しかしながら一部の湿布薬では、動脈管管収縮との因果関係が否定できないとして、妊娠後期での使用が禁忌となりました。

  • ケトプロフェン(商品名:モーラス・ミルタックス)

これ以外にも、ジェネリックを含めると様々な商品名があります。ご自身の使おうとしている湿布の一般名(成分名)を調べてください。市販薬の場合は、同じ名前の湿布薬であっても、成分が異なっていることがありますので注意してください。湿布薬に該当するようでしたら、お腹が大きくなってきた妊娠後期には使用を避けるようにしましょう。

もともとは湿布薬の影響は小さいと考えられますので、妊娠中に該当する湿布をしていても過度に心配する必要はありません。それ以外の湿布薬では、痛い場所に1日2~3枚貼る程度でしたら大丈夫と思われます。できるだけ少なく使った方がよいですが、痛みを耐えることがストレスになるのならば湿布を使ってしまった方が楽になります。

 

4.片頭痛の薬は大丈夫?

できれば、カロナールでしのぎましょう。

片頭痛の治療で鎮痛剤を使っている方もいらっしゃるかと思います。片頭痛は、治療をしなければ母体や胎児が危険となるような病気ではないので、できれば中止した方がよいといわれています。カロナールなどのアセトアミノフェンを頓服で、痛いときだけ服用するようにした方がよいです。妊娠中に片頭痛が自然と和らいでくることも多いです。

どうしても耐えられない、生活がボロボロになってしまうというレベルの方には、予防薬を使うことがあります。その場合は、βブロッカーを使います。プロプラノロール(®インデラル)30~60mgで様子を見ていきます。

片頭痛治療薬としてよく使われている、トリプタン系のお薬(イミグラン・アマージ・レルパックス・マクサルト)は、今のところ妊娠への悪影響の報告はなされていません。ですが、まだ安全性が確立されていないので、使わない方がよいとされています。

 

5.市販薬は大丈夫?

成分をしっかりみて、「アセトアミノフェン」の薬を使いましょう。

解熱鎮痛剤として、さまざまな市販薬が発売されています。安易に市販薬を手にしてはいけません。しっかりと成分をみて選んでください。有効成分が「アセトアミノフェン」のみのものを選びましょう。アセトアミノフェンは胎盤を通過してしまいますが、プロスタグランジン作用も弱く、安全性が高いです。

市販されている薬の中では、アスピリンやイブプロフェンは安全性が高いと考えられています。ですが、これらの薬は分娩時や赤ちゃんに影響が出るので、妊娠後期には控えるようにしましょう。

 

まとめ

解熱鎮痛剤は、胎児の動脈管が閉じてしまう可能性があります。

カロナールやピリナジンが安全です。妊娠初期はブルフェンやロキソニンも使えますが、後期は控えましょう。

鎮痛剤入りの湿布薬は、通常の使用量であれば問題ありません。

片頭痛は、できればカロナールでしのぎましょう。

成分をしっかりみて、「アセトアミノフェン」の薬を使いましょう。

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