ブルフェンの副作用とその対処法

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ブルフェン(一般名:イブプロフェン)は、痛み止めや解熱剤として多くの人に使用されています。EVEとして、今やドラッグストアでも気軽に購入できるお薬です。

気軽に買えるお薬だから、副作用もほとんどない安全なお薬だと思っているかもしれません。確かにブルフェンはNSAIDsの中でも比較的マイルドな薬のため副作用は少ない方です。

しかしブルフェンなどのNSAIDs自体、副作用など様々なことが起こりやすいお薬になります。ですから、気軽にポンポン使用してはいけないお薬なのです。

ここでは、ブルフェンにどのような副作用があり、どのような点に気を付ければいいかみていきましょう。

 

1.ブルフェンの副作用とは?

ブルフェンの副作用として気を付けるべきものとして、胃腸障害と腎障害があります。

ブルフェンの添付文章では、総症例17,485例中、副作用が認められたのは532例(3.04%)690件で、その主なものは、

  • 消化器系(胃部不快感、食欲不振、腹痛、悪心・嘔吐等:2.99%)
  • 発疹(0.20%)、そう痒(0.14%)
  • 顔面浮腫(0.15%)

と報告されています。一番多いのは、消化器症状などの胃腸障害です。これは、ブルフェンがアラキドン酸カスケードのCOXという物質を阻害するためです。COXは、1と2に分けられます。

  • COX-1は胃粘膜、血小板などを含め多くの細胞に常に発現しており、痛みの症状とは無関係です。逆にCOX-1を邪魔することで胃が荒らされて胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる副作用が出現します。
  • COX-2は、体が炎症など種々の刺激を受けると、関連細胞で発現が増します。これが阻害されると、痛みや炎症を引き起こすサイトカインの産生が抑えられます。つまりNSAIDsは、COX-2に結合することで鎮痛作用を発揮するのです。

ブルフェンは痛みの原因となるCOX-2を抑えると同時に、胃の粘膜を保護する物質も阻害してしまうため、胃があれてしまうのです。このことが、結果として腹痛や嘔気につながります。

また、ブルフェンは主に腎臓で排泄されるため、漫然と服用していると、気が付かないうちに腎臓を傷めてしまうことがあります。腎臓は、おしっこを作って体の毒物を排泄する重要な臓器です。腎臓が痛んでしまうとおしっこが上手く排泄されなくなり、体に毒が蓄積されます。

そして水分が体に蓄積することで、むくみが出現します。さらに血管内に水分がパンパンになると、心不全にもつながるため非常に危険です。

胃腸障害も腎障害も、ブルフェンを1錠内服していきなり出現するというよりは、漫然と飲み続けてしまうと徐々に起こる副作用です。

そのほか、

  • 出血傾向
  • スピリン喘息
  • 急速な解熱による体温低下、四肢冷却感

などが報告されていますので、気になる変化がありましたらすぐに病院に相談してください。

 

2.ブルフェンで最もよくおこる胃腸障害の対策は?

ブルフェンを空腹時に内服しないようにしましょう。また胃粘膜を保護するため、ムコスタなどのお薬を一緒に内服するのも良いです。

ブルフェンを内服する時に最も気を付けなければいけないのが、胃や腸が荒れてしまうことです。胃や腸の粘膜保護が少なくなって、胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができてしまいます。もしお腹が痛くなってこれらの病気が疑われたら、胃カメラで実際に胃や腸の粘膜が傷ついているか確認する必要があります。

さらに重篤な潰瘍ができてしまうと、ブルフェンをやめても中々治りません。そのため、ブルフェンを内服する際は胃腸障害の対策が必要です。具体的には、以下の4つが挙げられます。

  1. 腹痛にはブルフェンを使用しない。
  2. 空腹時は避けて、水分でしっかりとブルフェンを内服する。
  3. ブルフェンを乱発しない。
  4. 胃粘膜保護のお薬と一緒に内服する。

それぞれ順を追ってみていきましょう。

①腹痛にはブルフェンを使用しない

痛ければとりあえずブルフェン、このように考えている方も少なくないです。ブルフェンは痛みを一時的に感じにくくしますが、痛みの根本的な解決は自分自身の治癒力に任せるということになります。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍があってお腹が痛い人が気軽にブルフェンを内服すると、飲んだ数時間は痛みが感じにくくなるかもしれません。ですがそれは潰瘍が治ってるわけではなく、潰瘍が発している痛みの物質をブロックしているに過ぎません。

むしろ胃腸が荒れてしまい、もっと悪くなってしまいます。お腹の痛みといっても、その原因は様々です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍ではなくても、

  • 胆石
  • 膵炎、肝炎
  • 卵巣捻転
  • 虫垂炎(盲腸)

など怖い病気が隠れていることもあります。また、腹痛で最も多いのは便秘です。これらはブルフェンではなんの解決もないため、お腹が痛い人はまず病院を受診してみましょう。

②空腹時は避けて、水分でしっかりとブルフェンを内服する

ブルフェンの効果には食事の影響はないとされていますが、副作用を防ぐため、食後に飲むようにするとよいでしょう。胃は食べ物を食べることで働きます。この時に胃の粘膜も生成されるのです。そのためブルフェンで多少COX-1が邪魔されていても、粘膜保護が弱まることが少なくなります。

頓服で飲むときでも、牛乳を飲んだりクッキーを先に食べておき、胃壁を守るようにしましょう。また、水なしで服用してはいけません。きちんとブルフェンを胃に落とし込むために、コップ1杯の水とともに内服するようにしてください。

ブルフェンは、内服直後から血中濃度が急激に上がるお薬です。そのためブルフェンが胃に入った時に胃の中が空っぽだと、ダイレクトに胃に影響が出てしまいます。

ただし一緒に飲めばいいからといって、アルコールと一緒に飲むのは厳禁です。アルコール自体が胃や腸を荒らすため、絶対にビールなどと一緒に内服などしないようにしましょう。

③ブルフェンを乱発しない

ブルフェンに限らず、副作用を予防するには正しいお薬の飲み方を厳守する必要があります。ブルフェンは、最高血中濃度に達するのは2時間ほどで、ブルフェンの血中半減期は1時間半ほどなので、1日3回飲んだ場合でも蓄積性が認められないことが添付文章で記載されています。

ただしこれは、ブルフェンの適切な内服回数を守った場合です。ブルフェンは定期的に内服する場合は、1錠を朝・昼・夕食後3回まで、最大ブルフェン3錠分(イブプロフェン600mg)しか成人でも認められていません。

効かないからといってブルフェンを一日何度も内服したり、一度にたくさん内服するのは非常に危険です。そもそもブルフェンが効かないのは、何か重大な警報が鳴らされているということです。

また、ブルフェンを飲んだら治るけど、効果が切れると症状が出てくるというときに、だらだらと何か月と飲み続けるのも危険です。このようにブルフェンが効かない場合は、早急に病院を受診するようにしましょう。

④胃粘膜保護のお薬と一緒に内服する

①~③までの対策をしても、ブルフェンで胃が荒れてしまう人も多いかと思います。そのためブルフェンと内服する時に、胃粘膜保護のお薬を一緒に内服することで対策ができます。胃粘膜保護のお薬としては、

  • ムコスタ(一般名:レパミピド)

が良く処方されます。医師によっては、ブルフェンとセットで処方する人も多いです。「なんで胃薬がついてくるんだ?」って思う方もいるかもしれませんが、胃腸障害の副作用対策のためです。私もブルフェンと処方する際は、ムコスタを一緒に処方します。

ムコスタ自体は副作用も少ないですし、比較的安心して使用できるお薬です。また、胃薬と言われているお薬は、様々なお薬があります。

  • お腹の動きを止める(ブスコパン)
  • 胃の粘膜に麻酔をかける(ストロカイン)
  • お腹の動きを整える(ビオフェルミン)

これらのお薬は、今回のブルフェンの胃腸障害を抑制するのには不十分です。胃薬なら何でも良いわけではないので注意しましょう。

 

3.ブルフェンの腎障害の対策は?

腎機能が悪い人は、まず飲まないことが一番です。また体調が悪い時は、脱水になりやすいので注意しましょう。

ブルフェンは主に腎臓で排泄されるため、漫然と服用していると、気が付かないうちに腎臓を傷めてしまうことがあります。対策としては、

  1. 自分の腎臓の状態を把握する
  2. 脱水に気を付ける
  3. 腎機能障害で出現する症状を知っておくこと

が挙げられます。順にこちらもみていきましょう。

①自分の腎臓の状態を把握する

もともと透析を受けていたり、腎障害のあるかたは、腎臓に関しては注意を払っていると思います。しかし大部分の方は、自分とは無関係と思ってるかもしれません。実は高齢者のほとんどの方は、軽度とはいえ腎機能障害があることが多いです。腎機能は採血して、

  • 尿素窒素(BUN)
  • クレアチニン(Cre)
  • GFR

の数値で確認されます。クレアチニンの値から、体重などで計算した値がGFRです。一般的にGFRが定期的に80を下回ると、慢性腎不全という診断がつきます。健康診断などで採血結果を持っている方は確認してみてください。もしこれで腎機能障害がある方は、ブルフェンを使用するべきか医師に確認した方が良いでしょう。

最初は腎機能が良くても、漫然と長期服用されている方も要注意です。腰痛などで年中ブルフェンを飲んでる人は、気が付かないうちに重度の腎機能障害になっていることが度々あります。

おすすめは、定期的(理想は3ヶ月から半年に1回です)血液検査を受けることです。腎機能低下に伴う血液中のミネラルバランスが崩れ、不要物の排泄が滞りなどを数値でとらえることできます。

②腎機能障害で出現する症状を確認しよう

腎臓の機能は、ブルフェンで急に悪くなることは稀です。ブルフェンを飲み続けているうちに徐々に悪くなっていきます。しかし、これは個人差があります。先ほど、3か月から半年の採血を推奨しましたが、3か月以内に腎臓がダメージを受ける方も中にはいらっしゃいます。

そのため腎不全が出てきたら、どのような症状が出るか知っておくことが大切です。腎不全の初期症状は、

  • 食欲不振
  • 倦怠感
  • むくみ
  • 血圧上昇

があげられます。特に特徴的なのはむくみです。むくみは、足を押してみると分かりやすいです。もし足を指で押してみて跡が残るようなら、むくみが疑われます。そのため気になる方は、足を指で押してみると良いかもしれません。靴下の後が残るようになって気が付いた方もいます。

腎不全は悪化すると、

  • 尿毒症による意識障害
  • 心不全による呼吸困難
  • 電解質異常による脱力感

など非常に怖い症状が出現します。さらに腎臓は尿を作って出す臓器ですが、腎臓が悪くなると尿がでなくなります。この状態は一気に体中に毒が回るため、非常に危険です。ブルフェンだけで腎臓が問題になるほど悪くなることはまずないですが、もともと腎臓が悪い人がブルフェンで後押しされて、腎機能が一気に悪くなることは度々あります。

もし軽度の腎機能障害が指摘されてブルフェンを内服している方は、腎障害の症状も覚えておいてください。

③脱水に気を付ける

先ほど腎障害でむくみと書いたので、「水分はなるべくとらない方が良いのでは?」と考える人もいます。確かに重度な腎臓や心臓の病気の方は、水分は制限すべきです。ただしその場合は、そもそもブルフェンは禁忌になるため使用できません。

ブルフェンを内服している方は、もし腎障害があっても軽度な方だと思います。そのため基本的には循環を良くして、腎臓を常に潤しておいた方が腎臓を守ることができます。水分が少なくて、血液が淀んで濃縮している方が腎臓にダメージを与えやすいです。

特にブルフェンを解熱薬で内服している方は、高温の発熱をしている方だと思います。発熱している方は、体の水分が非常に失われやすいです。また体調が悪いので、食事量や水分量が低下しがちです。

実はこのような状態の方は、脱水による腎機能障害が出現しやすいです。そのため発熱している方は、普段より多めに水分をとるようにしましょう。解熱作用のあるブルフェンは汗をかきやすくするため、血管内の水分も失いやすいです。

水分を摂取する時に注意するのは水やお茶ではなく、電解質が含まれているものにしましょう。汗は水だけではなく、塩分などの電解質も一緒に出ていってしまいます。お勧めはポカリスエット等です。

腎臓を守るためにも、体調が悪い時ほど脱水には気を付けましょう。

 

まとめ

  • ブルフェンは胃腸障害と腎機能障害が起こりやすいお薬です。
  • ブルフェンの胃腸障害の対策として空腹時にブルフェンを飲まないようにしましょう。
  • 胃腸が弱い方がブルフェンを内服する場合はムコスタなど胃粘膜保護のお薬を内服するようにしましょう。
  • ブルフェンは腎臓を傷つける可能性があるため、腎機能障害がある方は注意が必要です。

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