セレコックスの副作用と安全性、その対策とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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セレコックス(一般名:セレコキシブ)は、痛み止めや解熱剤として多くの人に使用されています。

セレコックスは副作用の原因となるCOX-1阻害作用がわずかで、痛みの原因となるCOX-2のみを選択して阻害します。このため、現時点では最も安全なNSAIDsといわれています。

そのため、他のNSAIDsで副作用を認めたためにセレコックスに変えたという人も多いかもしれません。しかしセレコックスでも、副作用は出現します。セレコックスには、わずかながらCOX-1阻害作用もあると考えられています。

ここでは、セレコックスにどのような副作用があり、どのような点に気を付ければいいかみていきましょう。

 

1.セレコックス含めたNSAIDsが副作用が起きる原因は?

NSAIDsがCOX-1を阻害することで、胃腸障害や腎機能障害が起きます。

セレコックスはCOX-1を阻害せずに、COX-2を阻害することで副作用が少なくなるお薬と言われています。そのためセレコックスの副作用について説明する前に、COXについてまず知っておきましょう。

セレコックス含めてNSAIDsの作用機序としては、アラキドン酸カスケードのCOXという物質を阻害するためです。COXは、1と2に分けられます。

  • COX-1は、胃粘膜や血小板などを含め多くの細胞に常に発現しており、痛みの症状とは無関係です。逆にCOX-1を邪魔することで、胃が荒らされて胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる副作用が出現します。
  • COX-2は、体が炎症など種々の刺激を受けると、関連細胞で発現が増します。これが阻害されると、痛みや炎症を引き起こすサイトカインの産生が抑えられます。つまりNSAIDsは、COX-2に結合することで鎮痛作用を発揮するのです。

セレコックスは、痛みの原因となるCOX-2のみを抑えることに特化したお薬です。そのため副作用の原因となるCOX-1をほぼ阻害しないため、NSAIDsの中で最も副作用が起こりづらいと言われています。

 

2.セレコックスの副作用とは?

セレコックスでも胃腸障害と腎障害は起こり得るため、注意が必要です。また選択的COX-2阻害薬は、心筋梗塞・脳梗塞のリスクが少し高いと言われています。

セレコックスの添付文章では、

  • 関節リウマチ及び変形性関節症では、1734例中、副作用発現症例は426例(24.6%)
  • 腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱・腱鞘炎では1304例中451例(36.1%)
  • 手術後、外傷後並びに抜歯後の消炎・鎮痛では861例中(13.1%)

となっています。これを鵜呑みにすると、

  • セレコックスは、疾患によって副作用の出方が大きく違うのか?
  • セレコックスは、そこまで安全ではないのでは?

と感じる方が多いかもしれません。しかし、臨床試験によって大きく結果が変わるのは、よくあることです。セレコックス内服中に何か症状が出たときに、

  • 薬の副作用か?
  • 病気の悪化か?

を見分けるのは非常に難しいです。そのため試験に参加している医師の裁量にゆだねられますが、薬の副作用と判断しやすい医師だと容易に副作用の頻度が上がります。

そのため、この結果だけで他のNSAIDsの試験結果と比較してセレコックスが副作用が多いと感じてはいけません。一方で副作用として最も多いと考えられる胃腸障害も、

  • 1~5%未満:腹痛・下痢 

となっています。セレコックスといえども、数%は胃腸障害が起こると考えた方が良いでしょう。またCOX-1は、代謝される際に腎臓を傷つけることで腎機能障害が起こります。添付文章でも、

  • 1~5%未満:BUN上昇(腎機能障害)

となっています。ここまでは他のNSAIDsと同様の副作用です。選択的COX-2阻害薬で怖いのが、

  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞

です。添付文章では、

外国において、シクロオキシゲナーゼCOX‐2選択的阻害剤等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で 場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象のリ スクを増大させる可能性があり、これらのリスクは使 用期間とともに増大する可能性があると報告されてい る。

と怖いことが記載されています。そのためこのページでは、セレコックスで考慮すべき副作用である

  1. 胃腸障害
  2. 腎機能障害
  3. 心筋梗塞・脳梗塞

の3点について考えてみましょう。

 

3.セレコックスの胃腸障害の対策は?

セレコックスを空腹時に内服しないようにしましょう。また胃粘膜を保護するため、ムコスタなどのお薬を一緒に内服するのも良いです。

NSAIDsを内服する時に最も気を付けなければいけないのが、胃や腸が荒れてしまうことです。胃や腸の粘膜保護が少なくなって、胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができてしまいます。

NSAIDsの中でもセレコックスはこの胃潰瘍や十二指腸潰瘍が最も起こりづらいと言われています。最もNSAIDsでよく使用されるのがロキソニンです。ロキソニンはプロドラッグとしてすぐに溶けないことで胃腸障害を起こしづらくするお薬です。そのロキソニンと比較した試験でも、

  • ロキソニンで1190人中8例の潰瘍が認められた。
  • セレコックスで1184人中1例のみ潰瘍の発生が認められた。

となっています。先ほどの副作用の試験同様に同じ試験ではないので単純比較は危険ですが、非常に少ないと考えられています。直接比較でも、

  • ロキソニンとムコスタ(胃粘膜保護)
  • セレコックス

の比較対決で、セレコックスの方が優位に胃腸障害が少なかったデータも存在しています。これらのことから、

  • 他のNSAIDsで胃腸障害が出現した
  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍が既往にある
  • 胃腸が弱い

などの方は積極的にセレコックスが処方されます。ただしセレコックスも、全く胃腸障害が起きないわけではありません。むしろセレコックスが考慮される方は、基本的に長期間内服する人が多いです。そのためセレコックス内服中に、もしお腹が痛くなってこれらの病気が疑われたら、胃カメラで実際に胃や腸の粘膜が傷ついているか確認する必要があります。

さらに重篤な潰瘍ができてしまうと、セレコックスをやめても中々治りません。またセレコックス内服中に胃腸障害が出現したとなると、今後他のNSAIDs含めて再度使用するのは難しいと思います。そのため、セレコックス内服中も胃腸障害対策を行う必要が出てきます。具体的には、以下の4つが挙げられます。

  1. 腹痛にはセレコックスを使用しない。
  2. 空腹時は避けて、水分でしっかりとセレコックスを内服する。
  3. セレコックスを乱発しない。
  4. 胃粘膜保護のお薬と一緒に内服する。

それぞれ順を追ってみていきましょう。

①腹痛にはセレコックスを使用しない。

痛ければとりあえずセレコックス、このように考えている方も少なくないです。セレコックスは痛みを一時的に感じにくくしますが、痛みの根本的な解決は自分自身の治癒力に任せるということになります。

つまり胃潰瘍や十二指腸潰瘍があってお腹が痛い人が気軽にセレコックスを内服すると、飲んだ数時間は痛みが感じにくくなるかもしれませんが、それは潰瘍が治ってるわけではなく、潰瘍が発している痛みの物質をブロックしているに過ぎません。

むしろ胃腸が荒れてしまい、もっと悪くなってしまいます。お腹の痛みといっても、その原因は様々です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍ではなくても、

  • 胆石
  • 膵炎、肝炎
  • 卵巣捻転
  • 虫垂炎(盲腸)

など怖い病気が隠れていることもあります。また、腹痛で最も多いのは便秘です。これらはセレコックスではなんの解決もないため、お腹が痛い人はまず病院を受診してみましょう。

②空腹時は避けて、水分でしっかりとセレコックスを内服する。

セレコックスの効果には食事の影響はないとされていますが、副作用を防ぐため、食後に飲むようにするとよいでしょう。胃は食べ物を食べることで働きます。この時に胃の粘膜も生成されるのです。そのためセレコックスで多少COX-1が邪魔されていても、粘膜保護が弱まることが少なくなります。

頓服で飲むときでも、牛乳を飲んだりクッキーを先に食べておき、胃壁を守るようにしましょう。また、水なしで服用してはいけません。きちんとセレコックスを胃に落とし込むために、コップ1杯の水とともに内服するようにしてください。

ただし一緒に飲めばいいからといって、アルコールと一緒に飲むのは厳禁です。アルコール自体が胃や腸を荒らすため、絶対にビールなどと一緒に内服などしないようにしましょう。

③セレコックスを乱発しない

セレコックスに限らず、副作用を予防するには正しいお薬の飲み方を厳守する必要があります。セレコックスは、1日2回飲んだ場合でも蓄積性はないとされています。いわゆる「キレがいい」のも特徴です。

ただしこれは、セレコックスの適切な内服回数を守った場合です。セレコックスを内服する場合は、定期的でも、頓服でも6時間空けて1日2回までです。

効かないからといってセレコックスを一日何度も内服したり、一度に沢山内服するのは非常に危険です。そもそもセレコックス自体、非常に強い鎮痛作用や解熱作用を有するお薬です。癌に伴う痛みも、まずはセレコックスなどのNSAIDsが推奨されています。

つまりセレコックスが効かないのは、何か重大な警報が鳴らされているということです。このようにセレコックスが効かない場合は、早急に病院を受診するようにしましょう。

④胃粘膜保護のお薬と一緒に内服する。

今までに胃腸障害が起きたり。胃腸が弱い人は事前に予防策を張った方が安全です。そのためセレコックスと一緒に胃を保護するお薬を飲んでみると良いかもしれません。胃粘膜保護のお薬としては、

  • ムコスタ(一般名:レパミピド)

が良く処方されます。医師によってはセレコックスとセットで処方する人も多いです。なんで胃薬がついてくるんだ?って思う方もいるかもしれませんが、胃腸障害の副作用対策のためです。

ムコスタ自体は副作用も少ないですし、比較的安心して使用できるお薬です。また、胃薬と言われているお薬は、様々なお薬があります。

  • お腹の動きを止める(ブスコパン)
  • 胃の粘膜に麻酔をかける(ストロカイン)
  • お腹の動きを整える(ビオフェルミン)

これらのお薬は、今回のセレコックスの胃腸障害を抑制するのには不十分です。胃薬なら何でも良いわけではないので注意しましょう。

 

4.セレコックスの腎障害の対策は?

腎機能が悪い人は、まずセレコックスを飲まないことが一番です。また体調が悪い時は、脱水になりやすいので注意しましょう。

セレコックスは主に腎臓で排泄されるため、漫然と服用していると、気が付かないうちに腎臓を傷めてしまうことがあります。

対策としては、

  1. 自分の腎臓の状態を把握する
  2. 脱水に気を付ける
  3. 腎機能障害で出現する症状を知っておくこと

が挙げられます。順にこちらもみていきましょう。

①自分の腎臓の状態を把握する

もともと透析を受けていたり、腎障害のあるかたは、腎臓に関しては注意を払っていると思います。しかし大部分の方は、自分とは無関係と思ってるかもしれません。実は高齢者のほとんどの方は、軽度とはいえ腎機能障害があることが多いです。腎機能は採血して、

  • 尿素窒素(BUN)
  • クレアチニン(Cre)
  • GFR

の数値で確認されます。クレアチニンの値から、体重などで計算した値がGFRです。一般的にGFRが定期的に80を下回ると、慢性腎不全という診断がつきます。健康診断などで採血結果を持っている方は確認してみてください。もしこれで腎機能障害がある方は、セレコックスを使用するべきか医師に確認した方が良いでしょう。

最初は腎機能が良くても、漫然と長期服用されている方も要注意です。腰痛などで年中セレコックスを飲んでる人は、気が付かないうちに重度の腎機能障害になっていることが度々あります。

おすすめは、定期的(理想は3ヶ月から半年に1回です)に血液検査を受けることです。腎機能低下に伴う血液中のミネラルバランスが崩れ、不要物の排泄が滞りなどを数値でとらえることできます。

②腎機能障害で出現する症状を確認しよう

腎臓の機能は、セレコックスで急に悪くなることは稀です。セレコックスを飲み続けているうちに徐々に悪くなっていきます。しかし、これは個人差があります。先ほど3か月から半年の採血を推奨しましたが、3か月以内に腎臓がダメージを受ける方も中にはいらっしゃいます。

そのため腎不全が出てきたら、どのような症状が出るか知っておくことが大切です。腎不全の初期症状は、

  • 食欲不振
  • 倦怠感
  • むくみ
  • 血圧上昇

があげられます。特に特徴的なのは、むくみです。むくみは、足を押してみると分かりやすいです。もし足を指で押してみて跡が残るようなら、むくみが疑われます。そのため気になる方は、足を指で押してみると良いかもしれません。靴下の後が残るようになって気が付いた方もいます。

腎不全は悪化すると、

  • 尿毒症による意識障害
  • 心不全による呼吸困難
  • 電解質異常による脱力感

など非常に怖い症状が出現します。さらに腎臓は尿を作って出す臓器ですが、腎臓が悪くなると尿がでなくなります。この状態は一気に体中に毒が回るため非常に危険です。セレコックスで腎臓が問題人がここまで悪くなることはまずないですが、もともと腎臓が悪い人がセレコックスで後押しされて、腎機能が一気に悪くなることは度々あります。

ただしセレコックスは胃腸障害以外の副作用も起こりづらいといわれています。直接腎機能を見たデータは少ないですが、腎臓に薬が影響を与えたことによる浮腫の発生を見ると、セレコックスはロキソニンの3分の1程度に抑えられているというデータもあります。

もし軽度の腎機能障害が指摘されてセレコックスを内服している方は、腎障害の症状も覚えておいてください。

③脱水に気を付ける

先ほど腎障害でむくみと書いたので、水分はなるべくとらない方が良いのでは?と考える人もいます。確かに重度な腎臓や心臓の病気の方は、水分は制限すべきです。ただしその場合は、そもそもセレコックスは禁忌になるため使用できません。

セレコックスを内服している方は、もし腎障害があっても軽度な方だと思います。そのため、基本的には循環を良くして、腎臓を常に潤しておいた方が腎臓を守ることができます。水分が少なくて、血液が淀んで濃縮している方が腎臓にダメージを与えやすいです。

特にセレコックスを解熱薬で内服している方は、高温の発熱をしている方だと思います。発熱している方は、体の水分が非常に失われやすいです。また体調が悪いので、食事量や水分量が低下しがちです。

実はこのような状態の方は、脱水による腎機能障害が出現しやすいです。そのため発熱している方は、普段より多めに水分をとるようにしましょう。解熱作用のあるセレコックスは汗をかきやすくするため、血管内の水分も失いやすいです。

水分を摂取する時に注意するのは水やお茶ではなく、電解質が含まれているものにしましょう。汗は水だけではなく、塩分などの電解質も一緒に出ていってしまいます。お勧めはポカリスエット等です。

腎臓を守るためにも、体調が悪い時ほど脱水には気を付けましょう。

 

5.セレコックスの重大な副作用として記載されている心筋梗塞・脳梗塞は大丈夫?

同じ選択的COX-2阻害薬であるロフェコキシブでは、頻度が高いため副作用が記載されています。実際にセレコックスでおこったという例は非常に少ないです。

セレコックスの添付文章では警告として、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが記載されています。なぜこのような警告文が記載されているかというと、同じ選択的COX-2阻害薬であるロフェコキシブが脳梗塞や心筋梗塞の頻度が高かったためです。

実際の比較試験でもロフェコキシブを投与していない群と比較すると、投与した群では心筋梗塞・脳梗塞の発生頻度が4倍に増えたとなっています。

これを受けて、ロフェコキシブは2004年に世界中で製造が中止しています。日本では治験止まりで、市場に登場していません。ただしロフェコシシブが、なぜ血管系イベントが増えたか明らかになっていません。

国としては、同じCOX-2阻害薬であるセレコックスを日本で発売させてから心筋梗塞や脳梗塞になった方が大勢いると困るため、この一文を記載して発売させるようにアステラス製薬に通達をしました。

しかし、ロフェコキシブよりセレコックスの方が明らかに心血管イベントのリスクが少なく、国内の臨床試験において、心筋梗塞や脳卒中は報告されていません。2007年以降も全く問題になっていないことから、過度に心配する必要はないでしょう

むしろ脳梗塞や心筋梗塞を心配する人は、セレコックスの副作用よりも、自分にリスク因子が無いか考えてみた方が遥かに有意義です。この二つの病気は、動脈が硬化して固くなることをきっかけに血管が詰まって起こります。リスク因子の病気としては、

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 高脂血症
  • メタボリックシンドローム(肥満)

です。これらは死の四重奏といわれています。さらにこれらの病気に加えてリスクファクターになるのが、

  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • 過食

などです。脳梗塞や心筋梗塞は一度発症すると取り返しのつかないことも多いです。もしセレコックスの副作用を読んで心配になった方はこれらのリスクをまず心配してみましょう。

特にセレコックスがよく使われるリウマチは、ステロイドであるプレドニンを内服している人も多いです。プレドニンは、上にあげた病気全て悪化もしくは発生させるリスクを持っています。プレドニンの副作用について知りたい方は、「プレドニンの副作用と対策」についてを一読してみてください。

 

まとめ

  • セレコックスは選択的にCOX-2を阻害するため副作用が少ないお薬です。
  • NSAIDsの代表的な副作用である胃腸障害と腎機能障害はセレコックスでも全く起きないわけではありません。
  • セレコックスの胃腸障害の対策として空腹時にセレコックスを飲まないようにしましょう。
  • 胃腸が弱い方がセレコックスを内服する場合はムコスタなど胃粘膜保護のお薬を内服するようにしましょう。
  • セレコックスは腎臓を傷つける可能性があるため、腎機能障害がある方は注意が必要です。
  • セレコックスの添付文章には脳梗塞と心筋梗塞の可能性が示唆されていますが、別のCOX-2阻害薬を受けての物です。過度に心配する必要はありません。

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