メレックス錠(メキサゾラム)の効果と副作用
-
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
メレックスは、1984年に発売された長時間型ベンゾジアゼピン系抗不安薬です。
メレックスは効果も発売当初は使われていましたが、1989年により副作用の少ないメイラックスが発売されると、一気に使われることが減ってしまいました。
抗不安薬は安定剤とも呼ばれたりしますが、不安感や緊張感を和らげてくれるお薬です。リラックスするお薬なので、眠気やふらつきなどの副作用には注意をしなければいけません。
ここでは、メレックス錠の効果と副作用について詳しくみていきたいと思います。他の抗不安薬とも比較しながら、どのような方にメレックスが向いているのかを考えていきましょう。
1.メレックスの効果と特徴
まずは、メレックスの特徴をまとめてみたいと思います。
メレックスは、脳の活動を抑えることで落ち着かせてくれるお薬です。これにより、以下の4つの作用があります。
- 抗不安作用「中」
- 催眠作用「中」
- 筋弛緩作用「弱」
- 抗けいれん作用「わずか」
となっています。これをふまえて、メレックスの特徴をメリットとデメリットに分けてみていきましょう。
1-1.メレックスのメリット
- 即効性がある
- 作用時間が長い
- 依存性が低い
メレックスは血中濃度の立ち上がりが早く、即効性が期待できます。催眠作用もそれなりにあるので、就寝前に使うと睡眠のサポートにもなります。
ただ、作用時間が非常に長いので、頓服としてはあまり向きません。メレックスの服用を続けていくと、少しずつ薬が身体にたまっていきます。これによって、不安になりにくい土台ができていきます。1日1回の飲み方もできるお薬です。
この作用時間の長さは、依存性の低さにもつながります。身体からゆっくりと薬が抜けていくので、身体が変化に慣れていく時間をかせげるのです。
1-2.メレックスのデメリット
- 日中の眠気が多い
- 日中のふらつきが多い
- 睡眠の質が落ちる
メレックスでは、副作用に注意しなければいけません。作用時間が長いので、しばらく副作用も続いてしまいます。催眠作用や筋弛緩作用があるので、日中の眠気やふらつきが認められます。とくに眠気には注意が必要です。不安感や緊張が強い時は眠気を感じることは少ないかと思います。薬をのんで気持ちが落ち着くと、急に眠気が強く出てくることがあります。
このように眠くなる方向にメレックスは作用しますが、睡眠の質を落としてしまう傾向にあります。レム睡眠やノンレムの深い睡眠を減らしてしまい、ノンレムの浅い睡眠を増やしてしまいます。このため、睡眠の質が落ちてしまって、熟眠感が薄れてしまうことがあります。
2.メレックスの作用時間と効き方
メレックスは最高血中濃度到達時間が2時間、半減期が105時間です。長時間型抗不安薬に分類されています。抗不安効果・催眠作用・筋弛緩作用はいずれも中程度です。
実のところ、メレックス自体はほとんど薬効がなく、すぐに分解されてしまいます。
メレックスの効果は、体内で分解される過程で作られる代謝産物によってもたらされます。メレックスが体内で代謝されると、クロロノルジアゼパムやロラゼパムを中心とした活性代謝産物が作られます。ロラゼパムは、中間型抗不安薬のワイパックスです。
このようなお薬をプロドラッグといいます。血中に取り込まれるまで余計な働きをしないので、副作用を軽減できるのです。
ですから、実際のお薬の効き方をみていくには、活性代謝産物の血中濃度変化を知る必要があります。クロロノルジアゼパムの血中濃度の変化をみてみましょう。
メレックスを服用すると、およそ2時間でクロロノルジアゼパムの血中濃度がピークになります。その後105時間ほどで、血中濃度が半分になっていきます。この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。
メレックスでは、「最高血中濃度到達時間2時間・半減期105時間」と考えると、効き方を理解しやすいと思います。
メレックスを毎日服用していると、クロロノルジアゼパムが少しずつ蓄積していきます。グラフにしてみていきましょう。
飲み続けていると、あるところで均衡状態ができます。この状態を定常状態といいます。メレックスでは1週間ほど服用を続けると、定常状態に達します。このように定期的に飲み続けていくと、不安になりにくい土台ができあがります。
メレックスはこのような作用時間となるので、「長時間型」に分類されます。
メレックスの効果の強さとしては、
- 抗不安効果「中」
- 催眠効果「中」
- 筋弛緩効果「弱」
- 抗けいれん効果「わずか」
となっています。
用量は1.5~3mgとなっていて、最大3mg(高齢者では1.5mg)まで使える抗不安薬です。メレックス錠は、0.5mg錠と1mg錠が発売されています。
3.メレックスの副作用とは?
メレックスは作用時間が長いので、眠気やふらつきに注意が必要です。依存性は低いです。
メレックスの効果の特徴を考えると、副作用もわかります。
メレックスは最高血中濃度到達時間が2時間、半減期が105時間の抗不安薬で、長時間型に分類されます。
メレックスの効果の強さとしては、
- 抗不安効果「中」
- 催眠効果「中」
- 筋弛緩効果「弱」
- 抗けいれん効果「わずか」
このような効果の特徴をふまえて、メレックスの副作用を考えてみましょう。
まずは作用時間をみてみましょう。メレックスは即効性が期待でき、また少しずつ身体に蓄積していくお薬です。このため副作用はすぐにでてくることもあれば、蓄積して少しずつでてくることもあります。
効果の強さをみてみましょう。抗不安作用は普通で、作用時間はとても長いお薬です。このため、他の抗不安薬と比較しても依存性は低いといえます。
作用時間が長いので、副作用が出てしまうとなかなか抜けなくなってしまいます。筋弛緩作用によるふらつきや、催眠作用による眠気に注意が必要です。とくに眠気は多いので、事故などにつながらないように注意しましょう。
メレックスの承認時および市販後調査では、眠気の副作用は3.9%、ふらつきの副作用は1.29%となっています。
4.メレックスとその他の抗不安薬(効果と副作用の比較)
メレックスの作用時間は長いです。メイラックスと比較すると副作用が目立ちます。
抗不安薬には、さまざまな種類が発売されています。比較してみてみましょう。
抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。
- 作用時間(最高血中濃度到達時間・半減期)
- 4つの作用への強さ(抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれん)
ベンゾジアゼピン系抗不安薬で、この2つのポイントを比較してみましょう。上段はよく使われる抗不安薬、下段はあまり使われない抗不安薬をまとめています。
まずは作用時間によってタイプがわかれています。作用時間は、ピーク(最高血中濃度到達時間)と半減期をみて推測していきます。
作用時間は短時間作用型~超長時間作用型までの4つに分類できます。
短時間~中間型に関しては、即効性を期待して使うことが多いです。一方で超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ち着かせる土台をつくるようなお薬です。長時間型はその中間に位置していて、即効性も期待できますし、飲み続けていくことで不安を落ち着かせていくこともできます。
作用時間による副作用の違いは、
- 短いほど依存しやすい
- 長いほど身体に薬がたまって眠気やふらつきが出やすい
といえます。
患者さんの不安の状態から、どの作用時間の抗不安薬が適切か考えていきます。その上で、作用の強さを比較して選んでいきます。抗不安薬には4つの作用がありますから、この作用のバランスをみて適切な強さのお薬を選んでいきます。
5.メレックスが向いている人とは?
- 不安が一日続く方
- 抗不安薬が長期に必要な方
- 1日1回の飲み方がよい方
- 睡眠障害がある方
メレックスは、作用時間の長い抗不安薬です。服薬を続けていくことで、不安になりにくい土台ができていきます。このため、不安が1日中続くような方には向いているといえます。このような方は、抗不安薬の服用が長期に及ぶことが多いです。メレックスは依存性が低いので向いているといえます。
また、1日に1回の服用がよい方にも向いています。お薬を何回も飲みたくない方、職場でお薬が飲めない方などでは、メレックスでは1回の服用で効果が持続します。
睡眠障害がある方にもよいでしょう。不安が強い方は、不眠症になっていることが多いです。メイラックスは、催眠作用があります。服用を続けていくうちに、少しずつ眠りやすい土台ができていきます。就寝前に服用すれば、多少の催眠効果も期待できます。
このように、メレックスはけっこう用途の広いお薬です。ただ、同じような位置づけで副作用の少ないメイラックスが発売されると、使われることが一気に減りました。
6.一般名と商品名とは?
一般名:メキサゾラム 商品名:メレックス
まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。
一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「メキサゾラム(mexazolam)」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。
商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「メレックス(melex)」は、先発品の製造元である第一三共がつけた名前です。
先発品のメレックスは、日本では1984年から発売されています。特許はとっくにきれていますが、あまり使われていないお薬なのでジェネリック医薬品は作られていません。
まとめ
メレックスの作用の特徴は、
- 抗不安作用「中」
- 催眠作用「中」
- 筋弛緩作用「弱」
- 抗けいれん作用「わずか」
メレックスのメリットとしては、
- 即効性がある
- 作用時間が長い
- 依存性が低い
メレックスのデメリットとしては、
- 日中の眠気が多い
- 日中のふらつきが多い
- 睡眠の質が落ちる
メレックスが向いている方は、
- 不安が一日続く方
- 抗不安薬が長期に必要な方
- 1日1回の飲み方がよい方
- 睡眠障害がある方
投稿者プロフィール
-
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
最新の投稿
- フリバス2020年7月30日フリバス錠・OD錠の副作用と安全性について
- フリバス2020年7月30日フリバス錠・OD錠の効果と特徴について
- 頭痛2017年4月9日痛み止めで逆に頭痛?薬物乱用頭痛について
- エビリファイ2017年4月8日アリピプラゾール錠の効果と副作用