パキシルの半減期からわかること

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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半減期とは、薬を服用してから血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。この時間をみることで、薬の効き方や副作用の出方を考えていくことができます。この半減期、パキシルでは14時間です。

ここでは、SSRIであるパキシルの半減期について考えていきましょう。

 

1.薬の半減期とは?

薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

薬を服用した時の、血中濃度の変化を図に表わして、Tmaxと半減期を説明します。

薬を飲み始めると、直後は血中濃度がどんどんと上がっていきます。薬の吸収がおわると、薬は代謝されて身体から出ていきますので、少しずつ血中濃度が減少していきます。身体が薬を代謝できるスピードは決まっていますので、どれくらいの量であっても一定のスピードで身体から抜けていきます。このため、薬の量が半分になるまでにかかる時間は、内服量にかかわらず一定になります。

この血中濃度が半分になるまでにかかる時間を半減期(T1/2)といいます。T1/2が短いほど、薬の切れ味がよく身体からすぐになくなるといえます。反対にT1/2が長いほど、薬が身体に蓄積しやすいといえます。

薬の効き方を考えるにあたって、もう1つのポイントがあります。最高血中濃度到達時間(Tmax)です。これは文字通りで、血中濃度がピークに達するまでの時間です。効果がでるまでのスピードに関係しています。抗うつ薬は、ゆっくりと効果が出てくる薬ですので、Tmaxはあまり作用に関係してきません。

 

2.薬を飲み続けているとどうなるのか?

身体の中に一定の薬が残って効果が持続するようになり、これを定常状態といいます。

薬を飲み続けると、定常状態となります。その様子を図であらわしました。

それでは薬を飲み続けていると、どのようになっているでしょうか?薬が血中からなくなりきらずに次の日に薬を飲むと、少しずつ薬が身体の中にたまっていきます。半減期が長い薬は、どんどん蓄積していきます。

ですが、薬は無限に蓄積していくわけではなく、少しずつ一定の濃度に収束していきます。この状態を「定常状態」といいます。抗うつ剤では、一日中薬が作用することで効果が安定しますので、定常状態を作ることが大事です。この定常状態に達するまでは、およそ5日~1週間かかります。

 

パキシルの効果について知りたい方は、
パキシル錠の効果と特徴
をお読みください。

 

3.パキシルの半減期と特徴

半減期は14時間です。1日1~2回で服用します。すべての抗うつ剤の中で、最も離脱症状が強く認められます。

代表的な抗うつ薬の半減期を見てみましょう。

代表的な抗うつ剤の半減期を比較してみました。

これを見ると、パキシルは半減期は短い方ではありませんが、目立って長いわけではありませんね。薬を服用すると、4~5時間で血中濃度がピークになります。そこから14時間かけて半分くらいの量になります。残りの5~6時間でさらに薬が抜けていくので、だいたい飲んだ量の40%くらいが身体に残ります。これが少しずつ蓄積していって、定常状態になります。

ですから、1日に1回の服薬でも定常状態に達することができますので問題ありません。副作用を軽くするためには、1日2回に薬を分けて血中濃度を安定させてもよいかと思います。

 

また、半減期からは離脱症状の起こりやすさを予想することができます。離脱症状は、身体に慣れた薬が急に抜けることによって起きる症状です。ですから、薬が抜けていくスピードがゆっくりであれば起こりにくいです。パキシルは半減期からみると、他のSSRIに比べると離脱症状は起こりやすいことがわかるかと思います。

パキシルはこれだけではありません。パキシルは自分の薬の分解を邪魔するという性質があるので、薬の量を増やしていくとドンドンと濃度が上がっていきます。薬を減らしていくとは反対に、一気にガクンと血中濃度が下がってしまうのです。これらを合わせると、様々な抗うつ剤を比較しても、もっとも離脱症状が起こりやすい薬と いえます。

 

まとめ

薬の半減期とは、薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

繰り返し服用していると、身体の中に一定の薬が残って効果が持続するようになり、この状態を定常状態といいます。

半減期は14時間です。1日1~2回で服用します。すべての抗うつ剤の中でも、もっとも離脱症状が強く認められます。

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